今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

Seiko Sportsmatic 5 Deluxe 金銀スペシャルの製作

2012年12月10日 23時29分35秒 | インポート

Dscf032003 また時計をやります。ご常連さんのINOBOOさんからの新しい指令。セイコー・スポーツマチック5 DXの金めっきモデルとステンレスモデルのジャンクをニコイチで仕上げよ。とのことです。このモデルは1965年製でケースも大柄で、当時の高級モデル。25石で防水自動巻き、ハック機能(秒針規正)付きですが、手巻き機能は省略されています。基本的にステンレスモデルを母体に仕上げますが、ケースは、かなり傷が多いですので研磨が必要です。リューズとボタンの中間に、突起物がありますが、これは、オリジナルではなくて、途中で付けられたものです。

Dscf032603 研磨をしたステンレスケース。突起物は取り去ってあります。では、機械をO/Hして行きます。金めっきの個体は、一見きれいに見えますが、裏蓋を開けてビックリ。自動巻き機構が全て取り去られています。手巻き機能はありませんので、要するに動かないということ。

Dscf032703 機械は輪列を組んであります。ゼンマイの入っている香箱の内部はかなり磨耗をしていますね。オイルはカラカラの状態。洗浄注油をして組み込みます。

Dscf032802 特徴的の受けですね。大きなテンプが動き出しました。この上にマジックレバー式の自動巻き機構が載ります。

Dscf032901 自動巻き機構を載せたところ。ケースに収めるまでは回転錘は取付けません。中央のベアリングは多少磨耗気味で、回転錘が地板に接触した痕があります。研磨したケースに、金めっき仕様の日付送りボタンを取付けます。

Dscf033001 文字盤、秒針、日車、リューズは金めっき仕様を使います。長短針はアクセントで銀仕様です。この選択はINOBOOさんからの指示です。次は、ケーシングですが、純正の新品風防が明日届きますので、届き次第組み立てます。

Dscf032403 デッドストックの純正風防が到着しましたので交換をしてあります。新品なので、かなりきつ目でした。裏側です。回転錘を取付けて防水用のOリングをシリコングリス塗布にてセットをしてから裏蓋を圧入します。

Dx8 これがINOBOOさんから送られて来た完成予想イラストですよ。お仕事の合い間にせっせと書いています。

Dscf032604 で、これが完成現物です。イラストと全く同じですね。恐るべし。まぁ、そのように仕上げるのも結構大変だったりして・・元々付いていた風防は、角がちょっとドーム型で他の機種の流用だったようです。(純正は角ばっています) さて、金銀コンビスペシャルに似合うベルトはあるのでしょうかね? 金銀コンビのステンレスベルトですかね。


英国帰りのPEN-W

2012年12月08日 21時08分22秒 | インポート

Dscf032402 英国から帰った輸出機のPEN-W #1131XX (1964-9月製)が来ていますが、海外にあったものは外観の状態がよろしいですね。シャッターは不動ですが、特に大きな問題は無いと思いますので、簡単にUPしておきます。まず、この個体は未分解機ですが、シャッターユニットの留めビス1本が斜めに刺さっていますね。ビスのスリ割りには全く損傷はありませんので、これは工場で組まれたものでしょう。昨日採用した女工さんが組んだのでしょうね。検査で発見されないのは問題です。この部分もそうなんですが、米谷さんの設計は、工具が垂直に入らないところが多過ぎます。

Dscf032602 シャッターを分解洗浄をして組み立てて行きますが、ハウジングのネジ孔です。この部分がビスを斜めに締め込まれてねじ山が損傷しています。リーマを通した方が簡単ですが、ねじ山の数が少ない部分ですので、裏からビスを締めこんで矯正した方がねじ山の減りを防止できます。

Dscf032702 トップカバーの裏側の塗装もきれいですね。分解清掃をしたファインダーを組み込んでいます。ハーフミラーの状態も良好です。

Dscf032801 湿度の違いで、これだけ塗装の状態が違うのです。とは言っても、この個体は、あまり使用されなかったようです。国内保管の個体では、ピントリングやシボリ・シャッターリングが激しく腐食しているものが多いですね。良く、これらの修復は出来ませんか? とお問合せを頂きますが、母材が侵食されていますので、再メッキ(アルマイト)を掛けても、元の状態にはならないのです。レンズの状態と作動も良好なすばらしい1台。ft表示に注意。


アバンギャルドなシチズン・スクエアカスタム

2012年12月05日 22時32分25秒 | インポート

Dscf032101 私の趣味でセイコーの機械が多いのですが、ご常連さんが長く愛用されている時計が来ています。シチズンのスクエアカスタムというモデルで、ケースは巨大な真四角です。キャリバーcal5203 27石ですから、高級モデルでしょうね。しかし、入手された時から秒針が無くなっていたとのことで、それも含めて、全体のO/Hをしています。機械を分解してみると・・・セイコーとは随分と設計が異なりますね。セイコーはセオリーとおりで、シチズンは独創的なように感じます。部品点数が多く、高級なメカですね。

Dscf032001 欠落していた秒針を部品取り機から調達します。曲がりや腐食を修正研磨しておきます。

Dscf031022 あぁ、最初の画像を飛ばしてしまいました。ご覧のように無骨ともいえるぐらい真四角でケースもタイガー戦車みたいです。カレンダーの位置が特殊なデザインですね。グレーの文字盤は過去の分解で状態が良くありません。すでに秒針が失われています。これでは、時計が動いているのか、止まっているのかが分からず不便ですね。

Dscf032201 で、なんで秒針が無いかというと、この機械は特殊な設計で、秒針を秒カナ(画像)という部品で動かしていますが、上が組み込まれていたもの。先端が折れて短くなっています。たぶん、分解時、秒針を外す時に無理な力を掛けて折ってしまったのでしょう。よって秒針は捨てられた。

Dscf032301 秒カナはここに入ります。しかし、普段慣れているセイコーの機械とは全然眺めが違います。リューズの巻き芯は、中間でジョイントされる構造で、角型ケースに格納するための工夫です。

Dscf032401 自動巻き機構を組み込まれた受けを取付けます。これが、ピタッと各ホゾに収まります。シチズンの加工精度の高さですねぇ。

Dscf032501 ひっくり返して表のカレンダー機構。うぁ、複雑でしたね。慣れないと難しいです。曜車をセットしてから文字盤を取付けます。

Dscf032601 完成した機械。仮に秒針だけ載せて作動を見ています。ケースは研磨をしましたが、平面が大きすぎるので研磨も大変です。超音波洗浄をしましたら、接着の風防ガラスが剥離しました。これじゃ、防水も何もあったものじゃないね。

Dscf032701 同じ角型でもセイコーとの比較です。まぁ、どちらが沢山売れるか分かるような気がします。しかし、角型の場合は、どちらもケースと機械(裏蓋)の組み立ては、上下2ヶ所のフックによって行われるのは構造的に仕方のないのでしょう。普通の丸型ケースのように、ねじ込み式の裏蓋などと比較して、防水性能は圧倒的に劣ります。よって、水が浸入している個体が多いのです。

Dscf032002 すみません。ケーシング途中の画像を消してしまいました。オーナーさん念願の秒針も付いて完成です。このモデルは1969年製ですが、文字盤と針のデザインは、60年代に近代的なデザインとして良く使われていた印象があって、国立競技場の電光掲示板の時計も、こんなデザインだったような気がします。機械自体は薄型ですが、60~70年代までの日本の流行は、ケースが大型で厚いものが主流でしたので、このような巨大なモデルが発売されたのかなぁ? とか思います。ベルトの幅は20mmと、当時としては大きいですね。デザインは、おしゃれなドレスウォッチ風なんですけどね。


非常にきれいな PEN-F

2012年12月03日 21時04分04秒 | インポート

Dscf030828 ちょっとバタバタしていますので、UPはお休みと思いましたが、クリックしてくださる方が多いので・・しかし、書くこと無いのです。このPEN-F #2275XXは非常にきれいで、巻上げも軽い(軽すぎる)個体ですが、O/H済みを購入されていたようです。O/H済みですから、当然分解歴はあるわけですが、リターンミラーユニットが分解されていますね。まずこの画像から、プリズムとスクリーンが分離されたことが判ります。ゴムびきの遮光マスクが、スクリーンの金属枠の内側に入っています。本来は、プリズムの端の入ります。また、何故かリターンミラーの劣化は進んで、交換をご希望です。まぁ、現状でも問題はありませんが、気分の問題。

Dscf030914 トップカバーを外してみます。きれいに古いモルトを清掃してありますね。しかし、新しいモルトを貼ることも省略しています。

Dscf031025 では、本体の組立ての前に、時間の掛かるリターンミラーの接着をしておきました。(前日の作業)接着硬化後、前板に取付けておきます。

Dscf031116 洗浄をしたダイカスト本体。初期は黒ずんだ肌をしていますが、この頃はきれいなアルミ色。ロータリーシャッター幕の部分も無塗装ですが、その後(FTなども)軽く艶消し黒塗装を掛けるようになります。ミステリーは、シボ革の接着剤。バリバリに硬化しており、溶剤では溶けません。仕方なく、水で洗浄していましたら、あらら、溶けて来ましたよ。どんな接着剤だったのでしょう??

Dscf031318 シャッターユニットを洗浄しました。基本的には悪くはないユニットです。ただし、チャージギヤ軸は、やや磨耗が進んでいますね。テンションも正常範囲ですので、このままとします。

Dscf031401 この個体は珍しくブレーキは利いていました。ピンセット先のブレーキリングが、シャッターを切ると慣性によりの部分まで移動して衝撃を緩和します。今回はOリングの交換は致しません。

Dscf031501 前板の組立てます。残ったビスは短いビスが3本でしたが、中央下に使われるビスは、ピンセット先の長いビスが正規です。短いビスは左上下のみ。よく間違われて混用されています。

Dscf031601 シャッターダイヤルを付けてこのようになります。リターンミラーは新品に交換済み、フレネルレンズは汚れがモールドの谷部分の入り込んで、拭き上げでは取れませんので、超音波洗浄をしてあります。プリズムは、僅かに腐食があるのが残念ですが、Fとしては保存状態は良好な方です。

Dscf031901 おっと、ここで問題発生です。スプール軸とスプールギャとの組立てネジ山が破壊しました。これはPEN-Sなどでも起こりますが、工場での組立時に緩み防止で強く締め込まれたため、ネジ山が損傷しており、一度分解して再組立をすると破壊するものです。特にFは駒数カウンター用のギヤが嵌るため、細く設計をしてあるので、ネジ部が破損しやすいのです。ここは分解しない方が無難ですが、そうもいきませんので・・・

Dscf031701 スプール軸とスプールギヤは良品と交換して組み直してあります。全反射ミラーは良好のため再使用としています。

Dscf031801 トップカバーを着けると裏蓋と干渉するため、調整ワッシャーを追加して組んであります。レンズを装着して作動を確認しています。レンズの駆動トルクも回復して快調となっています。

http://www6.ocn.ne.jp/~tomys800/