今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

PEN-FT限定修理の巻

2016年11月17日 17時51分27秒 | ブログ

PEN-FTなどのカメラは古い精密機械ですので、症状が出ていなくとも不具合を抱えていることが多く、その意味でもなるべく全体に目が届くオーバーホールを基本としているわけでして、決して修理単価を上げるつもりではないのです。で、この個体ですが、本来はUP予定はありませんでしたが、色々な問題が発生しましたので、みなさんに見て頂こうとUPることにしましたよ。

#1406XXと初期型の個体ですが、外観は非常にきれいな個体です。すでに全反射ミラー(FV化)に改造されているものを最近購入された由。ご依頼は、ファインダーが見にくいので清掃と全反射ミラーの交換というものでした。トップカバーを開けて見ると・・ははぁ、最後期か補修用に使われた「基板別体タイプ」の露出計ユニットから露出メーターとCdsを取り去ったものにFから調達したと思われる全反射ミラーを取り付けたもののようです。

すり傷と清掃が不完全な全反射ミラーと接眼プリズムのコーティング劣化と汚れが気になります。

 

幸いプリズムのコーティングは良好でした。しかし、この画像中に問題が写されていたのでした。分かるかなぁ??

 

限定修理ですが、シャッターを切って調子を見ていると・・突然巻き上げがロックしました。ブレーキを留める真鍮ナットが緩んで手前に付くハンマーと接触噛み込んでいました。ここは緩みやすいのです。私の手元にある時に症状が現れて返って良かったです。

で、一応完成したのですが、ファインダーのピント(無限)が全くずれています。原因はリターンミラーを保持する上下2本のネジの上側が緩んで抜けたため。

 

ネジが抜けているのが分かりますね。ここは緩み止めのネジロックが施されていて工場組立のままであれば緩むことはありません。これはリターンミラーをホルダーごと他の個体から移植されているのです。急速回転する部分ですので、接着が無いと短時間で緩みます。

その他、セルフタイマーユニットも中期頃のユニットに交換されていました。初期型であまり使われなかった個体ですが、露出計や光学系などは劣化が進んで不良となった個体に別個体から部品を移植して仕上げられた個体です。限定修理もお受けしないわけではありませんが、このように外から見えない不具合もありますので、全体に責任を持った作業をしたいと思っています。

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フジカドライブは重いのだの巻(その2)

2016年11月15日 19時17分53秒 | ブログ

では、残った2台から1台を仕上げます。こちらは全て程度の良い部品を選択して組むことになります。レンズプレートはプレスで打ち抜いてから、すり鉢状にプレス加工されたものですね。

 

レンズを分離して清掃をします。シャッターも分解洗浄をします。

 

 

ファインダーは対物レンズを分解して清掃してあります。

 

 

残った良品の露出メーターユニットを使います。

 

 

セルフタイマーも洗浄注油をして組み込みます。

 

 

トップカバーは凹みの少ない方を選択修正をして磨いてあります。ASA感度レバーは、2台の識別のため、ブラックタイプを取り付けました。ブラックタイプは樹脂製で、梨地は真鍮クロームメッキです。ブラックはコストダウンですね。

3台から2台を仕上げました。オーナーさんはフジカドライブを12台所有されていらっしゃるとのことです。すごいですねぇ・・

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フジカドライブは重いのだの巻

2016年11月12日 12時35分20秒 | ブログ

すみません。裏でヤフオクを相手にしていましたので・・では次ですが、好物のアップルパイが来ちゃいましたのでお茶してから始めます。

フジカドライブですね。フジカハーフやコンパクト35などと兄弟カメラでしょう。オートハーフに対抗? してスプリングモーター付として連写を可能にしたカメラということで、1964年(昭和39年)6月ということは東京オリンピックの開催直前に発売されたんですね。外観のデザインはキヤノンデミに似ていて、前面カバーも最中(もなか)構造も同じです。レンズはフジノン2.8cm f2.8 セレン光電池によるプログラムオートはSEIKOSHIA-L。手動可能。

で、点検するとオートが利いていないですね。カバーを取り外して点検していくと・・。あ~ら、露出メーターの針が脱落しています。ギロチン式のEE機構ですと針を銜えるため、半田が外れて脱落するケースはありますね。じゃあ、楽勝じゃん、と思ったところが甘かったのでした。

セレン光電池付きの露出計ユニット。針はS字を描くような形状をしていますけど、これはギロチンのショックを吸収するためでしょうね。で、針はローター基部と先端が2ピース構造になっていて、半田付けになっています。

 

それではと半田付けしました。これね、ローターはピポットで支持されているだけなのでフラフラして、酸化気味の針を半田付けすることは容易ではないのですね。これで問題解決と思ってテストをしてみると、やはり針が動きません。グスン。

これ時計用のルーペで見ないと発見できませんでした。コイルから断線した銅線です。長さ2mmぐらいかなぁ。推理としては、半田付けの外れた針がコイル部分に嵌って、メーター自体は動くので針が銅線を切ってしまった。ということでしょうね。失敗した。先に導通を測っておくべきだった。無用な工数を掛けてしまいました。このメーターは終了~・・

ファインダーの清掃をして行きます。PENと同じ逆ガリレオ式ですが、プリズムが奢られています。こんなことするから高コストで重くなるんですね。セレン光電池ホルダーが一体になっているのがおもしろい。

 

フジカドライブでは、フィルムカウンター機構は縦型に配置されています。スプール軸の回転運動を往復運動に変換する機構が見えます。

 

これもオルゴールじゃないの? というぐらい地板がぶ厚い作りのセルフタイマーユニット。これも重い要因の1つ。

 

幸い、このレンズはあまりカビでひどいのは見ませんね。清掃とシャッターの洗浄注油をしておきます。セイコーのシャッターは、やたら長いコイルスプリングで引っ張るのが好きです。

 

キヤノンデミも初期は真鍮に梨地メッキですけど後に軽量化でアルミのパールアルマイトになって女性が持つのに柔らかなイメージとなっていますが、落下で凹みやすくなったのも事実。フジカミニでも重いのに、それに巨大なスプリングモーターをつけちゃったんだから、そりゃ重くて落とせば凹むよね。出来るだけ修正をしておきます。

あら、こっちもだ。

 

 

他の個体からメーターを調達しましたが、コイルの断線はありませんでしたがピポット部腐食とケースの緩みがあり不動でした。すべて分解をしてピポット調整をしておきます。

 

で、このように搭載しました。

 

 

オルゴールのようなセルフタイマーはかなり強いトルクがあります。機械の作動が重いので、これだけのユニットが必要なのでしょう。

 

結局、ファインダーの清掃にも前板を分離する必要があるので、最中構造が良いのか悪いのか・・露出メーターは元気に動いています。

 

裏蓋のモルトを貼り替えておきます。

 

 

最後にレンズプレートを接着します。外周に1か所切り欠きがあって、この部分が6時の位置が正規のようですから、そのように貼っておきます。

 

メーカーが変われば設計思想が変わるということです。かなり真面目にしっかりとした強度で作ったら重くなっちゃった。というところで、大衆に沢山売れる商品企画という観点からはどうなんでしょうね。さて、残った2台のドライブで1台出来ないかとのオーナーさんからのご注文です。やってみますかね・・


PETRI Color 35 ブラックのメンテナンスの巻

2016年11月08日 12時26分36秒 | ブログ

前回のクロームボディーのオーナーさんは一緒です。ペトリカラー35のブラックモデルですね。こちらも専用革ケース付属一式付きの個体です。本体カバー部分だけでなく、ダイヤルやASAリングもブラック化されているんですね。ペトリの塗装はPEN-Wのような劣化はなくきれいに残っています。しかし、状態は前回のクロームより悪く、シャッター不動、露出計不動ですね。メンテナンスでは無理かもしれません。

過去に分解歴はありますね。シボ革も自然に剥がれたのではないようです。

 

 

ペトリカラー35は製造時期によって改良の変更を受けていますね。この個体#4446XXはファインダー左に半固定抵抗の基板があります。これは電圧チェッカーの指針振れを調整するようです。

 

電池室を磨いて新しい電池を入れてみます。動きませんねぇ。。シャッターは目途は立ちますが、露出計が作動しないとなると・・各部の配線回路を点検していきます。

 

Cdsは生きていました。それではと点検をして行くと、あっ、ここが臭いね。電池室横の接片。チャージをするとピンセット先のピンが上方に逃げて接点に接片が接触する構造ですが、酸化による接触不良を起こしています。しかも1片の接片は接点に接触しません。過去にカバーを開けられた形跡がありますので、いじったのでしょうね。

ここは分解が出来ませんし無理をすると接片が開いて接触圧が掛からなくなりますので、磨き剤を塗布した厚紙で磨いておきます。

 

露出メーター針は作動していますね。

 

 

シャッターは難しい構造ではないのでサッサと直しました。

 

 

このレンズはカビなどは少ないみたいですね。あまり写りは良さそうに見えませんが・・清掃をしておきます。

 

トップ面が僅かにへこんでいますね。修正をしておきます。

 

 

 この小ささとボクシーな形状が気に入りました。

 

 

梨地クロームとブラックモデルを並べてみます。とてもペトリには見えませんね。どのくらい市場に出回ったのでしょうね。

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めでたくオリジナル三光PENの巻

2016年11月05日 17時50分59秒 | ブログ

「遅れて来たペンマニア」さんの努力はご立派です。前回O/Hをした三光PENですが、シャッターリング(カム板)が後年のオリンパス工場製となった「COPAL-X」表記のものが付いていました。そこで、オリジナルが付いている部品取り機を入手されて来ました。汚れがひどく、緑青も出ていますのでどうかなぁ・・

洗浄研磨をしてみました。このメッキは非常に弱く手汗による腐食が多いですが、製造時期を考慮すると奇跡的に大きなダメージがありません。

 

過去に何度も分解を受けているようで、ピンセットの傷が無数についていますね。私ではありませんよぉ・・クリック用の板バネはリン青銅地のもので、これはバネが弱く、クリック感に乏しいのです。

 

レンズを取り付けてピントの再調整をしました。

 

 

これで、めでたく完全オリジナルの三光PENとなりました。ここまで気づく人も少ないでしょうけど。

 

先日、お客様よりPEN-Sにフィルターをつけた方が良いですか? とご質問を頂きましたが、オリジナルのフィルターはすでにコーティングも劣化していますし、ガラス自体も黄ばんでいるんですね。画像はデジカメが補正していますが、それでも変色は分かります。コレクション用のレンズ保護が目的なら良いと思いますが、撮影派の方は、現在、入手が可能なマルミ製の新しいフィルターがよろしいと思いますね。ガラス板をオリジナルと同じ直径にカットすれば、プロテクターとして使えるかな?

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