PEN-FTなどのカメラは古い精密機械ですので、症状が出ていなくとも不具合を抱えていることが多く、その意味でもなるべく全体に目が届くオーバーホールを基本としているわけでして、決して修理単価を上げるつもりではないのです。で、この個体ですが、本来はUP予定はありませんでしたが、色々な問題が発生しましたので、みなさんに見て頂こうとUPることにしましたよ。
#1406XXと初期型の個体ですが、外観は非常にきれいな個体です。すでに全反射ミラー(FV化)に改造されているものを最近購入された由。ご依頼は、ファインダーが見にくいので清掃と全反射ミラーの交換というものでした。トップカバーを開けて見ると・・ははぁ、最後期か補修用に使われた「基板別体タイプ」の露出計ユニットから露出メーターとCdsを取り去ったものにFから調達したと思われる全反射ミラーを取り付けたもののようです。
すり傷と清掃が不完全な全反射ミラーと接眼プリズムのコーティング劣化と汚れが気になります。
幸いプリズムのコーティングは良好でした。しかし、この画像中に問題が写されていたのでした。分かるかなぁ??
限定修理ですが、シャッターを切って調子を見ていると・・突然巻き上げがロックしました。ブレーキを留める真鍮ナットが緩んで手前に付くハンマーと接触噛み込んでいました。ここは緩みやすいのです。私の手元にある時に症状が現れて返って良かったです。
で、一応完成したのですが、ファインダーのピント(無限)が全くずれています。原因はリターンミラーを保持する上下2本のネジの上側が緩んで抜けたため。
ネジが抜けているのが分かりますね。ここは緩み止めのネジロックが施されていて工場組立のままであれば緩むことはありません。これはリターンミラーをホルダーごと他の個体から移植されているのです。急速回転する部分ですので、接着が無いと短時間で緩みます。
その他、セルフタイマーユニットも中期頃のユニットに交換されていました。初期型であまり使われなかった個体ですが、露出計や光学系などは劣化が進んで不良となった個体に別個体から部品を移植して仕上げられた個体です。限定修理もお受けしないわけではありませんが、このように外から見えない不具合もありますので、全体に責任を持った作業をしたいと思っています。