今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

SEIKO 新10Aの四角いのの巻

2016年12月16日 20時05分29秒 | ブログ

ここのところ、一時よりは当ブログをご覧頂け訪問者数は増えているのに、ランキングが落ち気味なんですね。どういう仕組みになっているんでしょう? 現在カメラ関係のブログ260万ほどの中で8,000番に落ちてしまいました。ランキングが上がっても何もくれないんでしょ?

で、今日はPEN-Dに掛かる予定でしたが、オーナーさんとのご連絡が遅れて作業が出来ませんでしたので、ひょんなことから入手したセイコー新10Aのジャンクを来年の初詣用に仕上げようと始めたのでした。先日やりました個体とは雲泥の差というか、これが普通の状態です。戦後すぐの製品ですからね。外観からの印象より、幾つかの点を除けば、機械はそれほど摩耗は進んでいない良いコンディションです。

使い込まれた個体では、地板のホゾ孔は拡大しているのが普通ですが、この個体は香箱(ゼンマイ)のホゾ孔が僅かに広がっている程度です。注油をしながら組み立てて行きます。

 

四番車はブルースチール。観察すると秒針が付く先端が僅かに曲がっています。過去の修理で乱暴に針を押し込まれたのでしょう。

 

前回もご紹介しているので組立は簡単に省略します。天真の摩耗も意外に進んでいないようです。

 

文字盤も年代相応のひどい劣化ですが、針も左のしょぼい金メッキ針が付いていました。当時の定番仕様ですが、文字盤のきれいな新品当時はきれいに見えても、現在では視認性が非常に悪いです。そこで、右の針はセイコー・ネーションの針ですが錆びているブルースチール針がありましたので、それを青焼きして使おうかと思います。画像は錆を落として研磨した状態。

四角いのは珍しいニッケルケースと文字盤は年代相応です。青焼きはもう少し焼いても良かったかも知れませんが、焼きすぎると失敗するので・・

 

で、針を取り付けようとしましたら・・短針は取付け出来ましたが長針は入りません。ネーションと新10Aは規格が違うんだぁ。調整をして取付け完了。最後の秒針は、今度は針側の孔が大きく留まりません。ピンバイスで潰してセットしました。

この時代のベルトラグ巾は16mmなんですね。現在では16mmのベルトは選択肢が非常に少ないです。仮にストックのものを付けてみました。ブルースチール針にしたら、見やすく高級感も出たような・・無いか。これで来年の初詣用が出来ました。

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やっぱり復活させることにPEN-S2.8ブラックの巻

2016年12月13日 20時48分27秒 | ブログ

このPEN-S2.8ブラックね。復活させることにしましたが、それにしても状態が悪すぎです。メッキ部品は手遅れ状態ですので、他の個体が移植して仕上げる方針です。貴重なブラックモデルを潰すわけには行きませんからね。

 

1つ前の三光PENと一緒で、革ケースに入れてあったため湿気でメッキ部品の腐食が進んでしまいました。

 

これね。

 

 

ここも手遅れ。

 

 

ターミナルまで。

 

 

トップカバーの留めネジの本体側のねじ山が無くなっています。

 

 

トップカバーの両肩の剥離は革ケースが当たっていたので腐食したもの。惜しいですね。腐食はかなり深く進行していて、このままにするとさらに腐食するので磨きます。ファインダーもひどい状態。

 

裏側まで腐食している個体は珍しいです。

 

 

ブラックモデルは16万台に集中していますが、この個体は#1669XXです。吊環はまだ真鍮製の頃ですので腐食しています。カバーのへこみを修正しておきます。

 

両肩の腐食を磨いたら乞食が歯を磨いたみたいになっちゃいました。酸化すれば落ち着くでしょう。本体は洗浄済み。

 

初期のシャッターユニットは、あまり調子の良いものが少ないのですが、この個体はスローガバナーに少し問題がありましたが復活しています。この頃の製造年の表示方法は入り混じっていて、この個体では「61-1」と西暦末尾二桁と月表示になっています。カム板(シャッターダイヤル)は手遅れ。

では、状態の良い部品を使って組み立てて行きます。

 

 

レンズを含めて鏡胴周辺はすべて交換することになります。

 

 

ファインダーもオリジナルを諦めます。細かなメッキ部品もすべて交換です。

 

 

ぐっと良くなりましたね。

 

 

 オリジナルのネジの有効長は2mmも無いのです。タップで奥までネジを切ってオリジナルより長いネジを使うことで固定することにします。

 

 

裏蓋はかなり錆がひどい状態ですが、簡単にタッチアップという時期はとうに過ぎていますので、今回はそのままとします。

 

 希少なブラックモデルなので生き延びたという個体ですね。じつはオーナーさんからはリペイントのご希望も頂きましたが、きれいには出来てもオリジナルでは無くなってしまう。オリジナルは尊重したいので基本を変えずにコンディションを改善する方法としました。両肩光りで、一見歴戦の勇士ですが、本当は革ケースの弊害というのが真相。しかし、遅れて来たペンマニアさんは何台のブラックモデルを所有されているのでしょうね? 今や有力なPENコレクターですね。

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シチズン・ホーマー鉄道時計の巻

2016年12月12日 19時13分21秒 | ブログ

時計をやります。シチズンのホーマーですが、国鉄に納入されて使用された鉄道時計ですね。普通のホーマーにはないハック機能がついています。あとは見やすいアラビア数字。最近は放出品が増えたようで玉数も多く、比較的見つけやすくなりました。

5振動ですが、非常に精度の高い良い機械です。しかし、この個体は極端な進み傾向となっています。

 

その場合は殆どヒゲゼンマイの絡みです。観察すると3か所ぐらいでゼンマイが接触しています。落下のショックなどて自然に起こる場合もありますが、このヒゲはいじられているようです。

 

で、テンプを分離してヒゲゼンマイの渦巻きの隙間が均等になるように修正しました。簡単に言ってますが、これが非常に困難な作業です。老眼には堪えます。高性能の実態顕微鏡が欲しい・・

 

過去のオーバーホールで油を多く付けられていますね。

 

 

ハック機能の部品を取り付けます。オリジナルには無い機能なので、追加工作には苦労したようです。

 

シチズンというと、特異な設計の機械が多いですが、この機械は非常にオーソドックスな機械ですね。セイコーのクラウンみたい。摩耗は少なく良いコンディションです。

 

文字盤側はカレンダー機構もないのでシンプルです。

 

 

汚れていた針を磨いてきれいですね。

 

 

パッキンにシリコングリスを塗布して取り付けます。

 

 

左は私の資料用で昭和50年採用。右の修理機は昭和48年採用ですが、文字盤は白くきれいです。使用状況や保管の違いもありますが、元々の仕上がりが微妙に異なっているようです。歩度は10秒/日以内の追い込むのも難しいことではありません。鉄ちゃんファンでなくても、シンプルで見やすくしかも高精度な時計で人気がありますね。そのうち別の個体をオーバーホールしてご希望の方にお譲りをしようかと思っています。

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コンディション最悪の三光PENの巻

2016年12月07日 21時55分16秒 | ブログ

遅れて来たペンマニアさんから三光PEN #1340XXが届いていますが・・う~ん、今までで一番状態が悪いと思いますね。革ケースに長期間入っていたカメラは湿気によりメッキが痛んでしまいますね。

 

ファインダーの樹脂は劣化して白化しています。汚れも相当です。

 

 

こういう保存状態ですと、後玉のコーティングはまずダメです。曇りは清掃ではきれいになりません。

 

程度の良いレンズは後で探すとして、取りあえず磨いておきました。

 

 

裏蓋内も汚れ放題。底部のメッキの劣化が激しい。

 

 

すべて分解をして洗浄します。

 

 

シャッター内の汚れもひどかったですね。あらら、カム板を無理に回したようです。

 

幸い、シャッター幕も含めて、致命的な部分はありません。超音波洗浄をします。

 

組み上がったシャッターユニット。きれいになりましたね。シンクロ接点の導通タイミングを確認しておきます。

 

角の部分はケースの革が腐食を誘発してしまいました。

 

 

白化したファインダーは研磨をしてグレーの輝きを復活させました。対物レンズは樹脂製のため乱暴な清掃は傷をつけるので気をつけます。

 

 今日、12月8日は太平洋(大東亜)戦争の開戦記念日ですね。「ニイタカヤマノボレ一二◯八」の新高山は台湾の玉山のこと。30年前に作った九九艦爆が残骸になってしまいました。真珠湾は若い頃に訪問しましたが、低いすり鉢のような地形で、どの方角からでも攻撃機が侵入できると思いました。九九艦爆は降下爆撃、九七艦攻は水平爆撃と雷撃でしたが手違いで攻撃順序が狂って攻撃開始時間が早まってしまったのでした。どちらにしても宣戦布告は間に合いませんでしたが・・しかし、前日まで在泊していた2隻の空母は攻撃時にはいなかった。私はルーズベルト大統領は攻撃を知っていて、アメリカ参戦(イギリス支援)の名目のために敢えて攻撃をさせたと思いますね。そもそもアメリカと日本を戦わせようと画策したのはコミンテルンですけどね。ソ連のスパイ、ゾルゲや尾崎秀実。その真珠湾に安倍総理が慰霊に行くという。感慨深いです。

で、研磨したファインダーに前面ガラスと対物レンズを接着しました。対物レンズの1つには目立つすり傷がありました。三光の頃の組立品質は素人のような部分が目立ちます。

ここの所、外出することが多いのと、1つずつ部品を磨き出しながらの作業ですので中々作業が進みませんね。スプロケット軸を組んで行きますが、クラッチの両側をテーパにヤスリ掛けしてあります。スプロケットの溝に嵌らないのでしょう。どんな寸法管理なんでしょうね。

巻上げダイヤルのカバーは初期の熱カシメではなく、それ以後と同じネジ留め式に変更されています。厳密には三光じゃないのかな? 外から見えない変更はエンドレスで行われているということです。

 

トップカバーは粉が噴いていましたからね。磨いて何とか光って来ました。完成したファインダーをセットしてASSY完成。シャッターの構造上仕方がないのですが、レリーズの長いシャフトは間が抜けた設計です。組立もコツが要ります。

トップカバーを本体に取付けてシャッターダイヤルを取り付けたところ。明日は完成させないと・・

 

 裏蓋の開閉鍵もグリスが切れて砂を噛み込んでいる状態。以後の製品と形状は変わりませんが、仕上がり精度が悪いです。洗浄して組み立てます。

 

相当汚れていた内面も洗浄磨きできれいになりました。初期の黒塗装は艶消しが弱めです。圧板は研磨しましたが取付が以後とは逆になっています。底部固定のリベットはカシメがきれいではありません。化粧塗装もされていません。

 

元々はそれほど使われた個体ではなく、リング類は奇跡的に良い状態で残っていました。革ケースに入ったままで、上下カバーのメッキは劣化したというところ。

 

中々雰囲気の良い革ケースなんですね。前蓋の取付け部が切れているものが殆どでしょう。今回は、コンディションの悪い個体でしたので、磨き出しで大幅な工数超過となってしまいました。まぁ、そこそこの状態になったので良かったですけどね。

で、やっと終わったかと思いましたら、同じオーナーさんから後追いで来ましたよ。オリジナルのPEN-Sブラックですけど、これは三光PENに輪をかけて状態は最悪ですね。光物は全てダメで、普通は手遅れですけど、どうしたものでしょうね? 貴重なオリジナルではありますが工数が・・・

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久々のPEN-FTブラックの巻

2016年12月03日 20時11分31秒 | ブログ

裏でこういう難儀なカメラをやっていたりして・・何でしょう?

 

 

最近、元々PENのご常連さん達がPENを送って来られないで、色々なカメラを送って来られます。PENファンの方たち頑張ってくださいね。で、PEN-FT(B)が来ました。#2074XXはブラックモデルとしては初期の方です。付属の40mmは派手にカビていますが、貴重な40mmですから、清掃して復活させることにしました。

過去に修理歴がありますね。青のビニールテープ、あまり意味はないと思いますけど‥ボディーに「不」と鉛筆書きされています。検査で落されたのでしょう。

 

ハーフミラーは過去に交換されていると思いますけど、それでもかなりメッキが薄くなっています。

 

プリズムのコーティングも曇り。かなり放置をされた個体ですね。

 

 

では、ついものように分解、洗浄のうえ組み立てて行きます。

 

 

巻上げレバーユニットを取り付けると・・吊環と干渉します。打撃で曲がっているので修正をしておきます。

 

 これも稀にありますが、シャッター幕はきれいですが、回転が異常に重いです。これはシャッタースピードに影響があります。前回の分解でいじられていますね。改善させておきます。

 

シリアル№は20万台初期ですが、クロームボディーと製造時期を合わせると22万台頃の製造になります。ブラックカバーは別に製造されて、少し遅れてラインに投入されたことが分かります。ということで、ユニットも改良後のものが多く使われています。シャッターユニットは摩耗も少なく良い状態ですが、各部の点検をして行きます。バックラッシュは少ない方の個体です。

このナットが緩みやすい。この個体は緩みはありません。

 

 

この画像はあまりUPしませんが、O/Hの個体の外装は全て洗浄しています。知ってましたか?

 

ボトムキャップが剥離している個体は多くあります。再接着をしておきます。

 

この個体は前板関係の汚れが激しかったですね。清掃できれいになっています。過去にピント調整を受けています。

 

 ハーフミラーは新品と交換しました。露出計ユニットの取付は3本のネジに寄りますが、たぶんSSなどで修理を受けた個体で1本省かれている状態を良く見ます。なにか意味でもあるのか? 確かに、後期の生産機になると、初めから2本留めとなっている個体も存在しますが・・今回はオリジナル重視で省かれたネジを追加しておきます。

 ということで、いつもの画像です。

 

 

付属の40mmですが、分解してみると内部もアルミが腐食しています。不足している40mmですから、何とか生かすことにします。

 

PEN-FTブラックモデルの初号機はいつ頃かの資料は持ち合わせていませんが、私のところに来た個体で一番若いシリアル№は#170257があります。但し、この個体は本体は26万台の個体の入れ替えとなっていました。1968-9月製。