今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
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PEN-FVをやっておくよの巻

2018年09月06日 21時37分59秒 | ブログ

PEN-Sはまだ続くんだけどさ。直接ご依頼のPEN-FVをやっておきます。#1142XXと改良前のユニットが使われている頃の個体ですので、巻上げのゴリツキ他、いろいろ気になるところがあります。

 

まず、ご依頼に駒数ガラスの曇りというのがあります。この頃の駒数窓は何故かが滲んだり透明部分が曇って駒数板が見えにくくなっているものがあります。原因は不明ですが、オレンジと黒で2回塗装をしてあるわけで、塗料中のシンナー分が樹脂に対して悪さをしているのではと思います。

表面を研磨して、駒数板の見え方は多少改善はしたのですが、そもそも樹脂の劣化により内部崩壊をしていますので完全な改善は無理ですね。ということで、駒数ガラスを交換することにします。

 

最初の画像でセルフタイマーレバーがお辞儀をしているのが気になりましたが、取付け自体も水平ではないようです。(レバーの基部と歯車の角度に注意)

 

通院などでバタバタして時間が空きました。分解をしてみるとシャッター幕の左下部分が変形しています。言い忘れましたがこの個体は修理歴があります。これが後で問題になるのですが・・

 

一応シャッターユニットを組んでみたのですが、このシャッターは、シャッター幕が完全に戻り切らず、巻上げの時にカリッと引っかかる症状があったのです。これは、改良前のユニットを使われている個体に極稀に見られるもので、基本的にはテンションが弱くなっていることや、それ以外にも色々な原因が複合して起こります。殆どの個体は対策で改善できるのですが、この個体の場合はテストで良いかと思って組んでみると稀に引っ掛かりの傾向が出るのです。不具合は常に再現してくれる方が原因は突き止めやすいのです。あまりしたくはありませんでしたが、このユニットは諦め、同型式のユニットと交換をすることにしました。

全反射ミラーは使えないこともありませんが、オーナーさんのご希望により新品と交換します。

 

左は不良で交換したシャッターユニット。右は良品のシャッター幕ASSYですが、この個体に付いているユニットはシャッター幕に変形があるために、シャッターを切ると「キィーン」という金属的な共鳴音がします。まぁ、性能には関係ないのと、カバーとレンズを装着すると殆ど気にならない程度なので、今回は交換はしませんでした。

メカ部分の組み立て完成。セルフタイマーレバーのお辞儀は修正をしておきましたが、レバー自体にもガタが多く、取り付けるとレバーがグラグラしますね。これはレバーを交換する以外にありません。

 

駒数ガラスは純正部品で交換してあります。

 

 

問題は付属の38mmです。かなり曇っています。

 

 

レンズも過去に分解清掃を受けていて、後玉中側の拭き傷がすごい。どうしたらこれだけ傷に出来るのか不思議? 11時付近には作業者の指紋まで残っています。それも相当時間が経過をしていて焼き付いてしまい清掃では取り除くことが出来ません。

まぁ、そんなこんなで完成しました。出来るだけオリジナルのユニットを修理して安易な交換はしたくないと考えていますが、中には不安定な不良ユニットもありますので、その場合は交換しませんと工数ばかり掛かって私も困るのです。これからは安心して使ってもらえると思います。

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中古屋さんのお仕事の巻(2)

2018年09月03日 20時05分40秒 | ブログ

次はPEN-S 3.5#1504XXですけど、生産は新しいのにずいぶんと汚れていますよ。

 

ファインダーのハーフミラーが曇っています。これはメッキの内側が曇っているるもので、交換する以外にありません。かなり保管が悪かったようです。

 

すべて洗浄をして点検しましたが、他の部分に比べて裏蓋の塗装剥離が激しいですね。さて、このままで良いか・・

 

かなり使い込まれている個体です。距離リングは黒アルマイトの擦れが目立ち、洗浄しても彫刻文字が汚れたように見えにくいです。3.5の頃は赤字以外は彫刻のみで白の色入れを省略されているため、保存の悪い個体はアルミに粉が噴いてしまうのです。

ハーフミラーは交換しました。距離リングもきれいにしてあります。残念ですが裏蓋の塗装剥離は費用の関係でリペイントは断念しました。

 

 

なにか、PEN-Sの量産体制に入って来ましたね。この個体はPEN-S2.8 #3084XXで、かなり外観はきれいです。シャッターは不動ですけどね。

 

一見、未分解かとも思いましたが過去に修理を受けていますね。駒数ガラスが異常に落ち込んでいますね。このような場合は、接着が剥がれて脱落した駒数ガラスを古い接着剤を除去せずに再接着されているのです。見なくても分かるのです。

これこの通り。限られた工数内ですので、このまま黙っていれば通りますがそうも行きません。

 

古い接着剤を取り除いてから研磨後に再接着をします。

 

 

 温暖化の影響とも言われていますが、今年は台風の発生が多いですね。しかも、狙ったように日本列島に針路を取ります。今回の21号でも関西方面では大きな被害が出ており、被災された方々にはお見舞い申し上げます。みなさんお住まいの地区は大丈夫でしたか? うちは風でいろいろ飛ばされた程度でした。S800も濡れてしまいました。

しばらく見てやれないうちに、あちこち錆が出ていてショックです。若い頃の予定では、今頃は好きなS800をいじって悠悠自適の予定でしたが、現実は毎日カメラを直さないと生活が・・

 

純正のハードトップもFRPがそろそろ限界に来ています。リヤウィンドウのHゴムから雨が侵入していました。カメラの修理代を値上げしてプロのレストアラーにレストアしてもらおうかしら? まぁ、無理ですね。

 

では本題。各リング類を洗浄研磨しておきます。

 

 

非常にきれいな個体なので当初は未分解かと思いましたが、シャッターは修理を受けていました。しかし、担当したリペアマンは、このシャッターを完全に理解していないようで、対症療法のような小細工をしてありました。すべてオリジナルのセッティングに戻してあります。12時の位置のネジのスリ割りが壊されていました。この程度です。

駒数ガラスはこのように接着します。

 

 

トップカバー横の留めネジを留めたのですが何か変です。これはオリジナルではありませんね。ここは皿ネジで丸頭です。

 

オリジナルに交換しておきました。ここも言わなきゃこのまま通る話ですが・・

 

スプロケットはアルミの黒アルマイト製、スプールはグレーです。ここは製造時期によって仕様が変化している部分ですが、私も正確な変更時期などは把握していません。今までに手がけた個体の仕様はすべて記録してありますので、データベースを集計すれば変更時期も推測は出来ると思います。やってません。

すべてオリジナルに戻して、今回のPEN-Sの中では一番の美品でしょう。ファインダーのリンクル塗装もほぼ完全に残っている個体は少なく、使用頻度は少ないことが分かります。但し、疑問点はシャツターの製造は昭和37年10月なのにカメラの完成が1962年9月となっています。通常はコパルで製造された月と同月か翌月(PEN-Wなどでは翌々月あり)に生産に使われて完成となることが多いのですが逆はあり得ません。どんな事情だったのでしょうね。どちらにしても30万台の美品には違いありませんけどね。欲しい方は都内の有名カメラ店様へ。

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中古屋さんのお仕事の巻

2018年09月02日 12時34分01秒 | ブログ

ブログ復活しました。なんでもgooがAndroidのソフトをバージョンアップしたことでトラブルが発生していたようですけど、うちは関係ないはずなんですけどね。で、しばらく中古屋さんの下請けが続くので工数も厳しいのであまりUP出来ないと思います。まずPEN-D3 #3044XX(1965-6月製)をやります。

シャッターユニットはオーバーホールを終えて二階建てのヘリコイド部とドッキングします。

 

本体に栄発動機を搭載します。

 

 

前面プレートを兼ねた距離リングを取り付けます。

 

 

絞りリングを取り付けます。

 

 

次に移っています。PEN-D #1877XX(1964-2月製)です。同時併売ではありましたが、やはり設計の古いセレンとシャッターリングのメッキ仕様が古さを感じます。

 

特に指示はありませんが巻き戻し側が陥没していますので、角は出ないのですが修正を試みます。

 

角の修正は極めて困難です。

 

 

メーター窓と駒数窓の接着が脱落しましたので再接着をしますが、メーター窓は接着面が表ですから難しいのですよ。

 

シャッターは特に問題はありません。D系は1/500が追加されている関係でシャッターバネが強化されているので、PEN-Sなどのように止まってしまう個体は少ないのです。

 

セレンですが、感度の劣化はありません。非常に良いです。調整抵抗の形から設計変更前のユニットと分かります。

 

右はD2ですが、レンズは1.9で同じです。うまいこと近代化改修されたもんですね。特に前面の距離リングをブラック化したことや、前面プレートにダイヤカットを施すことでデラックス感を出しています。

 

 次はPEN-S 2.8 #1349XX と初期型の個体です。PEN--Sは長く生産されましたので仕様は変化しています。致命的な欠点はないのですが、とにかく汚い、梨地メッキの劣化、シャッターは不動、ファインダーは曇って見えない等々の状態で、中古屋さんでは「現状品」として販売するしかない個体とのことでしたが、それでは可哀想ですのでびっくりするようなベッピンさんに仕上げますよ。すでに外装はきれいに洗浄してあります。

まず、シャッターユニットをオーバーホールしていきますが、初期型はストロボターミナルの配線は三光ペンなどと同じ半田付けです。以後はネジ留めになります。

 

シャッターは途中で止まってしまう状態。この個体は1961-1月製とすでに57年前の製品のためシャッターバネの張力劣化やシャッター羽根を作動させるリングと地板の摺動抵抗を減らす研磨加工がさせていない頃なので元気に作動するものが少ないのです。

エポキシ接着剤の耐用限度を超えているので駒数ガラスが脱落しています。

 

 

さぁ、洗浄をして組んで行きます。スプロケット軸が表面処理を終えた後でナットとの嵌合部を一発挽かれています。スプロケット軸とナットのどちらかが寸法不良だったものの救済でしょう。メッキを削ってしまうと耐摩耗性が落ちてしまいます。

別に仕上げておいたトップカバー側を取り付けます。巻き戻し軸部分は設計変更前のタイプ。

 

 

レンズは持病の後玉曇りもなくきれいです。リング類の状態も最高であまり使われてはいませんね。ただ、時間が経過して劣化をしたということ。

 

リングの彫刻はCOPAL 以後はCOPAL Xになります。

 

 

スプロケットはアルミのアルマイト地、スプールはグレー色の成形です。研磨をしておきました。裏蓋のリベット(4か所)には化粧塗装はありません。

 

限られた工数内ですが、塗装が剥げているところの補修とシボ革の剥離を補修しておきました。製造初期の個体で程度の良いものは極めて少なくなっている現在、当りもなく非常にきれいな個体となりました。都内のカメラ店様に並びます。

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