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今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

元箱付きの普通のPENの巻

2019年04月19日 11時18分13秒 | ブログ

キヤノネット初代は部品待ちです。鼻かぜと思っていたら本格的になって体調悪いです。先日、近所の耳鼻科医院に行きましたら小さな待合室が満員であの時うつされたんだぁ・・

で、「遅れて来たペンマニア」さんから元箱付きPENです。もう、この方遅れてないで最先端に居るよね。元箱付きの美品収集では有数の方になりました。元箱の他に保証書やその他の書類が揃っていますね。こういうのオリンパスの瑞光洞さんも欲しいのではないですかね。PENは三光でもない普通の#3243XX工場製PENですね。

こういうのも資料的価値が高いですね。純正フィルターですけど、ほぼ未使用です。ケースと取説すべて揃っています。

 

 

カメラ本体はへこみも無く良い状態ですが、ソフトケースに長期間入っていたので、リング類のメッキ劣化とカビの臭いがします。これも特にこのままでもと思いますが、お仕事ですからオーバーホールします!(^^)!

 

距離リングの隙間に砂が入っています。たぶん海水浴に持って行って砂浜に置いたのでしょう。

 

 

では、本体を洗浄して組み立てて行きます。

 

 

劣化したモルトの影響でしょうかスプールナットのメッキが曇っている場合が多いですね。研磨をしてから組みます。

 

 

シャッターは特に問題はないのでサッと組んでおきます。

 

 

シンクロターミナル接片の半田付けは剥がれますね。こちらも研磨をして再半田付けをします。

 

 

たぶんフィルターは一緒に購入したけど装着していなかったのか、前玉に2条軽微なすり傷と後玉のコーティング端に僅かな劣化がありますけど、現状としては最上の状態です。

 

裏蓋も完成。圧板に少し腐食がありましたが磨いてあります。

 

 

元の所有者は「小寺」さん? 昔は貴重品には名前を入れたものです。過去にPEN-EEのオーバーホールでお預かりした個体が、裏蓋のシボ革部分にマジックで苗字が書いてあったのですが、それが手垢汚れで見えなくなっていて、私が洗浄したら判読できるようになったのですね。それでお返ししましたら、「これは私のカメラではない」とクレームを頂いたことがありましたっけ。いえ、あなたのカメラですよ。自分のカメラぐらいきれいにしましょうね。

シャッター完成昭和37年3月、カメラ完成1962年4月。この頃はPENとPEN-Sは併売で取説も共用となっていますね。私も資料として同じものを所有しています。併売でどちらを選ぶかの選択の時、私なら高性能のPEN-Sを選んだと思いますけど、28mmレンズでPENを選ぶようなハイアマチュアさんが居たんでしょうかね。やっぱり価格かなぁ? PEN 定価¥6,200 現金正価¥5,800 ケース¥800 PEN-S 定価¥8,300 現金正価¥7,800 ケース¥800 (昭和37年8月時) また、美品のコレクションが増えちゃいましたね。

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きれいな三光PENの巻

2019年04月14日 20時29分58秒 | ブログ

ミノルタ・レポのオーナーさんから追っかけで、きれいな三光PEN #1147XXが来ました。カニ目ネジを見ると過去に分解を受けていますが、取りあえず問題はないようですのでこのままでも・・

 

それではお仕事にならないのでO/Hをしておきますが、ヘリコイドのスリ割りを滑らせていますね。初期のスリ割りは幅が薄く、以後の広くなったスリ割りに合わせた工具ですとセット出来ないのです。で、滑らせてしまうのですね。全体的に他の部分のスリ割り幅は薄く、製造時に工具が掛かりにくいので設計変更されたのでしょう。

販売価格からしてコストをギリギリに切り詰めているので、カムはプレスで打ち抜いたのみで表面処理もしてありません。よって錆びだらけ。磨いておきます。

 

 

この頃のファインダーの対物レンズは樹脂製です。この時代に実用化され始めたのですが、これもコストの関係で採用されたのでしょう。しかし、何故か茶色の接着剤が使われているので、表から見えてしまうのですね。現代の品質管理からするとアウトです。以後はレンズはガラス製となって、接着剤もアラルダイトに変更され、四角に墨塗りを施して接着面が見えないようにしてあります。

これね。駒数ガラスなどはアラルダイト接着なのに、速乾の接着剤を使用する必要があったのでしょうね。だからと言って茶色の接着剤しか無かったのかよぉ・・

 

 

清掃・再接着をする場合、樹脂製は難儀です。茶色の接着剤を除去するのに溶剤を使えない。レンズが溶けてしまいます。まぁ、二度と分解など考えていない設計でしょう。

 

ファインダーのハーフミラーは金コートの頃で劣化が進んでいて悩みましたが、オリジナル性を重視して交換はしていません。その他のレンズはガラス製ですが、クラックが入っていますね。

 

 

洗浄をして二軸を組んで行きます。駒数ギヤの設計が以後と異なります。また、ダイヤルカバーは初期のためネジを使わない熱カシメのため分解は出来ません。分解は想定していないカメラでしょう。

 

ダメかなぁと、確認したらやっぱりダメでした。初期のスプールのスリップ機構は内径に拡張バネを入れてあるので、長い年月の間にストレスが掛かって樹脂が割れてしまうのです。これは、この設計の個体の半分程度に発生しています。以後はスプール軸そのものの設計を変更していますので、部品単位の互換はありません。

 

別の個体から割れの発生していないスプールを調達して交換します。

 

 

シャッターは特に問題はないので洗浄・注油に留めて置きます。

 

 

カム板を取り付けます。

 

 

接眼レンズの茶色の接着剤を除去して清掃後、接着をしました。墨塗りをすれば良いのですが、するとオリジナル仕様ではなくなりますのでやりません。

 

 

レンズは奇跡的にきれいです。しかし、それが疑念にもなるのですね。後玉は曇りが多いですが、簡単に交換も出来ますからね。

 

 

組立完成で、トップカバーとドッキングさせる前の状態。過去の資料を調べていないのですが、ファインダーのダストカバーが金属性となっています。この個体より後の12、13万台付近では紙製です。その後工場製のPENになると金属製となっています。三光PENは途中で修復されてオリジナルでない部分もありますから何とも言えません。また、組立後巻上げがロックしない現象が発生しました。本体ダイカストとシャッターユニットとの位置とレリーズシャフトの長さの関係性により発生する不具合ですが、三光PENの場合、レリーズボタンの高さ調整機構(ネジ)が無いので、簡単に調整が出来ません。これらも生産の立ち上がりで生産数が伸びなかった原因でしょうね。以後は調整ネジが付いてシャッターが切れるレリーズボタンの位置(高さ)を調整出来るようになっています。駒数カニ目ネジと巻上げダイヤルのネジは初期ですから正ネジです。駒数ガラスにはクラックがありますが、目立ちませんので研磨に留めてあります。

吊環ですが、本来はトップカバー面と合うように斜めにネジが切れられているはずですが、この個体は水平です。よって、吊環を締め込んで行くと上部に隙間が空いてしまいます。

 

三光の頃は、少し製造時期がズレるだけで仕様変更がありまして、まるでHONDA S600のようです。私も細かな仕様の違いを出来るだけメモに残しているのですが、過去に修理のために部品を入れ替えられている個体も多い訳ですから完全というものはありません。11万台としては驚異的にきれいな個体には違いありません。

 

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MINOLTA repo 初期型の巻

2019年04月12日 18時18分19秒 | ブログ

どうも。桜が散ろうとしているのにいつまでも寒いですね。毎年、定点観測の百恵ちゃんちの前の桜ですが、まだ散っていませんね。あと何度桜を見られるかなぁ?・・

 

 

ミノルタ・レポですけど、初期型の方がカッコ良いですよね。外観はきれいですが、例によってシャッターが動きません。

 

 

シャッターは直すとして露出メーターが動きませんね。テスターで測ってみるとセレンが完全にダメですね。レポのセレンは弱いのかなぁ? ダメなのが多いです。

 

 

モルトも決まってこのような状態になっていて塗装面も侵しています。

 

 

もう一つのお決まりがシボ革の剥離。糊が良くないんですね。

 

 

シャッターをO/Hします。スローガバナーを洗浄・注油をして組み込みます。

 

 

レポの多くはシャコウトウとダイカストの接着が剥離していてカタカタと音がするようになっていますね。モルトを交換して接着をします。 

 

下部の巻上げリンケージを合わせてシャッターユニットを組み込み、シボ革を接着します。

 

 

レンズはきれいな個体が多いです。清掃をして組み込んでいきます。

 

 

オーナーさんからは色入れが抜けているので入れ直しご希望です。

 

 

ここの文字は彫刻ではなく刻印なんですね。文字の周辺が盛り上がっています。コストの削減でしょう。溝が浅いので色が抜けやすいのです。

 

で、メカ部分は組立完了。さて、露出計をどうするかです。ここのところレポが続いて良品のセレンもストックがありません。太陽電池への置き換えもされていますが、オーナーさんはセレンで行きたいとのことで・・

 

仕方がありませんのでミノルチナPのセレンを流用することにします。しかし、サイズは大きく異なります。電極の取り出し位置も・・

 

 

同じ寸法(30mmX9mm)にカットしました。画像はホルダーに収まり具合を見ているところ。これから切断面にニスを塗布して腐食防止と電極の取り出し位置を直します。(左端縦)

 

露出メーターと配線しました。こんな感じですね。

 

 

セレン受光部をトップカバーにセットして全くオリジナルの眺めです。

 

 

これで完成です。セレンは同時期の個体でも健全なものと全くダウンのものがありますが、本来は寿命は無いのだそうですね。腐食防止のニスが不完全なものや、使われずに長期間、太陽光を浴びないものも起電力が低下するようです。定期的に日向ぼっこさせた方が良いみたいですよ。

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美品のPEN-D2の巻

2019年04月08日 19時26分27秒 | ブログ

最近、現存数の少ないPEN-D2が続いて来ますね。#1039XXは1964年(昭和39年)8月の製造になります。これが美品でして使用感も少なく保存状態も良好で、持病の後玉もきれいです。ファインダーが曇っていますね。

 

残念なことに露出計が動きません。

 

 

配線と露出メーターを点検しますが、どちらも問題がありそうです。

 

 

この頃のコパルシャッターには珍しく、低速まで正常に作動していました。すべて分解をしてO/Hをしますが・・

 

 

シャッターユニットを完成させて、ヘリコイド部とドッキングさせると、僅かにガタを感じました。点検のところヘリコイドグリスの抜けですね。

 

 

この個体は未分解機と思いましたが分解を受けていますね。とは言ってもシャッターなどには手を付けておらず、ファインダーや露出計周辺ですが、それが微妙に影響がありますね。露出計不動を調べて行くと回路のショートもあるようです。電池接点の形状が微妙で、ピンセット先の片は位置決め用と思われますが、ここが微妙にせり出していて電池の+側と接触するのです。最近は電池アダプターや簡易スペーサーなど異形を使うケースも多いですから、接触のケースも多いのかと思われます。接触をしないように調整をしておきます。

Cdsの作動は正常でした。

 

 

スペースの関係でしょうが、露出計のスイッチが斜めに付いていますね。これで正式です。これによって、ボタンの動きが真っ直ぐに伝わりにくく接触不良を起こす場合があります。また、このスイッチの接点も酸化により接触不良を起こしていることもあります。

 

ボタン側から見ると・・スイッチが中心から外れて取り付いていますね。すべての個体が同じ状態になっていて、ボタンの反応が良くない原因にもなっています。

 

駒数板の針の下にはキー付きワッシャーとプレーンワッシャーが重ねて入っているのが普通ですが、ダイカスト本体とトップカバーの組合せにより、プレーンワッシャーが省かれている個体もあります。この個体も入っていませんでしたが、トップカバーとカニ目ネジを組んだ時、カニ目ネジが駒数ガラスから飛び出し過ぎていますので、この個体は本来プレーンワッシャーは入っていたものと思いますので追加して組みます。その他、巻上げダイヤルの回転重さや引っ掛かり現象の原因ともなります。

清掃した前玉をセットして、シャッターダイヤルリングを取り付けます。

 

 

露出計は作動します。補正無しで正確です。

 

 

持病の後玉の曇りも無く、外観もきれいな素晴らしいコンディションの個体です。シリアル№からは後期型という訳でもないので保管が良かったのでしょう。

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SEIKO マチックスリムデートの巻

2019年04月06日 18時20分01秒 | ブログ

セイコーマチック・スリムデートは最近取り上げている83系の元祖ですかね。1963年(昭和38年)の発売ですが、約3年前に発売されていたセイコーマチック603の62系よりも薄く設計された機械ですが機械の外径は大型化しています。これはカレンダーを追加したCal.840です。

 

すべて分解洗浄をして組み立て開始です。

 

 

この個体は過去のO/Hでネジの締め付けを親の仇のように強く締めてあって、二番受けやガンギ受けが緩まない状態でした。ネジのスリ割りは傷んでしまいますし、受けに余計な歪みも出てしまいます。緩まない程度のトルクで締め込んであれば良いのです。

 

秒針カナ押エバネを留めるネジも強く締められていてスリ割りが痛んでいました。

 

 

薄く設計するために香箱も薄いですね。洗浄・注油をしてセットします。

 

 

見慣れた83系の輪列。

 

 

天真のダイヤショックに注油をします。

 

 

62系のマジックレバー式ではなく、ここのスペースに自動巻輪列が入ります。

 

 

左の歯車が反転車。二枚の歯車が内蔵されていて、ローラーロックされることにより一方向に回転が整流される方式。

 

 

非防水モデルとしては製造時期を考慮するときれいな文字盤です。補修部品として出た文字盤と交換されているのかも知れません。

 

 

私はドーム風防を着けた非防水の頃のモデルが好きなのですが、この頃はステンレス側より圧倒的に金ケース側の個体が多いです。しかし、使用によるメッキの摩耗により、地金が露出して良いコンディションの個体は非常に少ないのです。メッキは厚めのASGPですが、それでも角の部分は摩耗していますので樹脂で保護してあります。ドーム風防はトキライトではなく汎用品を使用しました。

非防水ではありますが、このモデルは裏蓋側にはパッキンが入っています。防水ケースになる直前の頃ですね。

 

 

回転錘を取付けて組立完了。62系のマジックレバー式も素晴らしい技術ですが、やはり歯車式の方がゴロゴロ感が無く高級な感じですね。

 

 

じつは、ケースの状態が良い同モデルをもう一つ(右)所有しています。このモデルは人気があるようで、セイコーマチックの中では程度の良い個体は高めの相場となるようです。

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