今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

PEN-FTのシャッタースピードの巻

2021年05月14日 17時10分00秒 | ブログ

最近、時間的余裕がなく、中々UPが出来ません。ちょうど同じタイミングで同時期のPEN-FTのシャッタースピードについての不具合がありました。1つはコントロールレバーの地板に付いている軸受けが緩んでガタが発生しスローガバナーとの接続が外れてシャッター不調となったもの。ここは、緩みやすいのでメーカーでもナットを左ネジ(逆)のダブルナットとして接着剤を併用して締め付けてあるのですが、それでも緩んでしまう個体があります。

もう1つはシャッタースピードが不正確となり特に特定のスピードで大きく外れるケース。これは意外に厄介です。基本的にはスローガバナーの精度が落ちていることが考えられます。いくら調整をしてみても改善せず、他の良品ガバナーと交換すると嘘のように正確なスピードとなります。最近多いですよ。

一緒に来ていたパンケーキ38mmf2.8ですが、過去に分解歴があります。レンズは傷が多いですがカビなどは無いようです。ヘリコイドグリスが抜け気味です。

 

各部を分解して清掃をして行きます。

 

 

さらに前群を分解しますが、ズイコーレンズは接着が強く工具を掛ける個所もありませんので簡単には分解出来ません。

 

ブラックモデルにはパンケーキが似合いますね。

 

 

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ローライ35Sを3台仕上げますの巻

2021年05月08日 18時30分00秒 | ブログ

まず、ここのところ直接の修理ご依頼と中古店様からのご依頼が集中しておりまして、着手の予定が経たない状況となっております。順番で対応させて頂きますのでご理解頂けますようお願いいたします。

まぁ、結局連休は一日もお休みしておりませんが、かと言って急いで作業をするということも出来ないのですね。「職人は能力以上の仕事は出来ない」(だから商売の方が良い)と昔に人から言われたことがありましたが全くだと思います。

で、いつものように今回はローライ35Sを3台ばかり仕上げています。作業はどれも同じなので気になったところをUPして行きます。すべての個体は過去に分解修理を受けていますが、この個体は沈胴のスリーブを抜いて再挿入したようですが、はみ出してくるフェルトをドライバーのようなもので押し込んだのかスリーブに傷をつけています。作動によるすり傷はないきれいなスリーブなのに残念だなぁと思います。

シャッターを取り出してみると・・あら~、6時位置のネジ部分を故意に座ぐってありますね。ネジを緩めようとスリ割りを回しても抜けて来ません。完全にネジバ〇になっています。

 

ネジを取り出してみると(左端)純正新品のネジです。表面処理が異なるのでサービスで使う補修ネジかも知れません。シャッター側の雌ネジが完全に破損しているので、の部分を削って一山でもネジが掛かるようにしたかったのでしょう。掛かっていませんでしたが・・

 

M1.4の長いネジはストックしてありますのでそれに交換して対応しておきました。ネジが1本締まっていないことから絞り羽根の復帰が緩慢の症状がありましたがこれで改善しています。

 

これは2台目のブラックモデルです。露出計は作動していますが過去に電池の液漏れがあって、後期の個体ですからトップカバー裏(前期は基板に直接)絶縁フィルムが貼られていますが、殆どグズグズの状態で絶縁の効果がありません。新しい絶縁フィルムを貼っておきます。

 

後期の後玉は分解可能となったことでレンズホルダー部が巨大化されていますが、これによって分解が他の部分と干渉してやりずらいです。基本設計では分解組立の整合性を考慮されているものが、途中で変更されると組みにくくなってしまいます。

 

フィルム装填での巻き上げテスト後巻き戻そうとするとフィルムがスムーズに巻き取れない症状が出ました。これはスプールバネに塗布されているホワイトグリスがゴムのように硬化していて抵抗となっているためでした。

 

3台目は前期型かな。後玉はこれが基本設計です。レンズ内の汚れが多いです。また、ヘリコイドの回転がスムーズではありません。

 

このようなヘリコイド部を初めてみました。前面からネジが貫通してヘリコイドネジ山を壊しているように見えます。しかし、オリジナルの加工なのかもしれません。分かりません。洗浄をしてヘリコイドグリスを交換します。

 

レンズを清掃をして組み立てていきます。

 

 

過去に分解された個体では、スプロケット軸上部に入る遮光マスクが無くなっている個体があります。この個体もありませんでしたので製作して取付けておきます。

 

中央回転部分の樹脂が荒れていますので研磨をしておきます。

 

 

この個体は過去に何度も分解を受けて、その度に前面プレートを再接着されたため、距離リングやネジ頭に接着剤がごってり付着していました。すべて洗浄をしてから前面プレートを接着します。尚、∞時、Rollei-HFTが真上に来るように接着しますが、この個体は全然違うところになっていました。 

まぁ、なんだかんだありますよ。これで皆良いコンデションとなりました。

 

 

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ローライフレックス2.8Fの巻

2021年05月04日 12時00分00秒 | ブログ

いつものようにローライフレックスをメンテナンスしていますが、レンズも大径となってカメラが重いわけです。そこで落下をさせてしまうと裏蓋底部のダメージは大きくなります。二眼レフの場合、テーブルに置くと4点脚がギッタンバッコンする個体があって、それの修正もメンテナンスの項目に入っています。しかし、この個体はテーブルからの脚の浮きが4mmもあります。これは脚だけではなく、全体の変形があるのです。この個体の場合、すでに乱暴な叩き出し受けています。角(L部分)に大きな変形が入って、それを工具で乱暴に直したため塗膜が剥離しています。

取りあえず4点の変形を修正してタッチアップをしておきました。

 

 

まずは露出計を外しておきます。

 

 

巻上が異常に重いです。これはクランクの軸部分の潤滑が切れているためです。分解洗浄をしてグリスを入れておきます。

 

気になるのは巻き上げレバーが節度が無くプラプラです。

 

 

この部品何というのかな? これより古いモデルではベークライトのような材質ですが、このモデルは革が使われています。よって長期間にはへこんでしまいダンパーの役に立たないのです。

 

ちょっと探して来ました。ヌメ革の表皮だけを削りだして上から接着をします。

 

 

シャッターとレンズは特に問題は無いのでメンテナンスをして終了です。

 

 

フードを分離しようとするとスムーズに外れない。原因は片方の解除レバーシャフトが欠落していたためでした。

 

同じφ0.95mmのピアノ線から作りました。

 

 

組み立てるとこのようになります。脱落の原因は軸を保持するダイカスト爪が緩いのです。しかし、曲げると折れる危険が高いため再分解が可能な程度に瞬間で固定しておきました。

 

もう一台の2.8Fもメンテナンスしていきます。こちらの方が少し生産は早いのですがシボ革は本革になっています。

 

あら~、こちらもすでにロックレバーシャフトが接着されていますね。このモデルの持病なんでしょうか? あまりきれいではないのでやり直しておきます。

 

ビューレンズが曇りです。清掃をしておきます。

 

 

見比べると距離の彫刻文字がmとft併記の違いでダイヤルの厚みも異なるのですね。

 

 

画像は取り忘れましたが、このモデルはディファレンシャルギヤの組立がコツが要りますね。重量は1,220gと書かれていますので流石に重いです。

 

 

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フジカ35-MLの不動機の巻

2021年05月02日 11時30分00秒 | ブログ

いきなり始まりました。このカメラはフジカ35-MLです。「親の遺品の中にあった」そうです。発売は1958年(昭和33年)だそうですからかなり古いですね。しかし、外観のデザインは古さを感じさせないセンスの良いものです。状態は全くの不動で巻上げが出来ません。巻上げ機構はこの頃流行りの底部にあります。まず、巻き上げが出来ない直接の原因はの巻上げレバーストッパーが緩んで停止位置が不適のため。取付けネジが緩んでいるのが分かります。しかし、良く観察するとスリ割りが痛んでいて緩み止めの接着剤が塗布されています。ここを接着しても効果はありません。過去に修理に出されたようですが完全な修理にはなっていませんね。それ以外にも右側部分はフィルムカウンターの運進機構ですが、こちらも固着状態です。

このカメラはレンズの繰り出し機構が特殊でカムによって前後に繰り出されます。しかし、グリスが完全に乾いていてゴリゴリの状態です。清掃をして新しいグリスを塗布します。

 

フィァインダーは別部品の立派なものが使われています。レンズの清掃をしますが、流石に50年代のハーフミラーは蒸着面は拭けません。一発で剥離することが必定。

 

前面ガラスの接着剥がして清掃します。ブライトフレームは補正されます。

 

駒数板と距離ダイヤルをセットしてトップカバーを閉じますが、このような特殊な構造のメカは組立にコツが要りますね。

 

距離ダイヤルが正しい位置になるよう調整して固定します。電池蓋のようなフィルムカウンターはスタート位置のセットはコインで回すということでしょうね。露出計は内蔵されていませんので電池室はありません。

 

シャッターユニットも固着していて動きません。各部を分離して洗浄注油をしていきます。

 

 

シチズン製のシャッターは普通のものですが中央のギヤを介してライトバリュー式としています。流石に時計メーカーのシチズンシャッターは非常に精密な加工がされていて、コパルとはちょっと差があります。

 

定評のあるフジノンレンズはカビはありませんが前玉に目立つ傷があります。

 

 

分解清掃をして行きます。


 

各部にアタリが確認出来ますが、裏蓋の蝶番部が陥没していて、これはダイカスト本体も変形しています。光線漏れの危険もありますので出来るだけ修正をしますが、やり過ぎるとダイカストが割れてしまいます。

 

底部の巻上げレバーで巻き上げテストをしています。快調です。しかし、距離ダイヤルで巻上げをしようとしてしまいます。慣れた習慣は恐ろしい・・

 

「親の使ったカメラで撮影をしてみたい」というご希望は叶うと思います。ファインダー角のへこみも大切な思い出ですね。

 

で、一緒に来ていたPEN-EEDですけど、久しぶりだなぁ。ソフトケース入りで程度は良いのですけど定番のシャッター羽根張り付きは良いとしてCdsの感度が非常に低下しています。同年代のローライ35はCdsは比較的丈夫なのですが・・汎用Cdsで復活としたかったのですが、オーナーさんのご希望で残念ながら作業は中止となりました。

 

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