今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

カワイED14の巻

2024年07月19日 11時00分00秒 | ブログ

その前に、お取引のカメラ店様からローライ35のフィルム巻上げが重いとのお話がありました。フィルムが巻き取られた状態で来ましたが、スプールに妙に窮屈(変形)に巻き取られています。フィルムはFuMoToフィルムというのですかね。

昔のNEOPAN SSと比較するとフィルムの幅がFuMoTo 約34.95mm NEOPAN 34.80mm で、フィルムの厚みはFuMoTo 0.14mm NEOPAN 0.12mmでした。ローライ35のスプール幅は約34.85mmと狭いためとフィルムが厚い分だけ腰があってパトローネからの引き出しが重いようです。後のローライ35Tのスプール幅は35.25mmと、少し幅を広げたように思われますが、個体差や計測誤差もありますから一概には言えません。どちらにしても、ローライ35のような超小型のカメラに装填するには条件が厳しいのかも知れませんね。決して営業妨害の意図はなく私の感想です。

で、来月の運転会に持って行こうかと思っていたカワイモデルのED14ですが、現在バラバラの状態です。私の家には小学生の頃に同じED14がありましたが、今回の個体はかなり後期に生産されたもので組み立てキットとして販売されたものです。

まず、目につくのはデッキが車体側に取り付けられていることです。初期生産の個体は台車側に付いているので、急カーブを曲がるとデッキが大きく内側に向いてしまうという欠点がありました。

PS14のパンタ昇降はレバーで行うのは昔と一緒。しかし、メッキが妙にピカピカで、少しオーバースケール気味だった白い碍子が金属製になっています。これ交流用の碍子じゃないの?

台車の作りが全く異なります。古いモデルは真鍮の帯板を矩形に組んで、そこにデッキが取り付きます。この個体では普通のドロップ製に変わっています。

 

前所有者が台車のボルスターの取付けネジ(片側分)を紛失して頭の大きなネジで締め込んだため外板が変形しています。

 

これはメーカーの責任ですが、ボルスターを嵌めると中央梁よりボディーが広がってしまいます。これはボルスターを削って合わせるしかないですね。

 

後期の生産と言ってもライトはLEDではなく麦球です。ダイオードも含めて未組立ですので、このまま組むか、LED仕様にするか? このモデルは長い期間製造されましたが、メーカーのカワイモデルは日本の鉄道模型黎明期からの老舗でしたが、残念ながら最近閉店をされたようです。子供が小さい時に神田の交通博物館に行って、帰りにお店に寄るのが楽しみでした。

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また精工舎MXLの巻

2024年07月16日 20時00分00秒 | ブログ

コニカⅢですけど、前回と同じ精工舎のMXLを搭載していますね。この頃の多くの高級機に採用されていたのでしょう。例によってシャッター不動。シャッター羽根の張り付きもありますが、応急的に改善させてもチャージがロックしない。シャッターを開けてみると・・あぁ、惨憺たる状態です。セット環係止めバネがビョ~ンと伸びています。これではロックが掛かりません。何とか修正しようとしましたが無理でした。(折れた)

仮にバネを作って取り付けたところ。レバー関係も分解されていて曲がっていますので形状を修正しておきます。

 

その左隣りのシンクロ機構も分解を受けています。本来まっすくなヒゲバネがレバーにカシメられているはずが脱落しています。しかもL型をしていますね。オリジナルではないのかも知れません。ピアノ線で代用半田付けをしておきます。

1/500秒の補助バネも取り除いておきます。

 

 

恐らく、分解をして壊してしまい放棄をした個体なのでしょう。シャッター内に使われているバネはφ0.15mmなど極細で、代用で製作しても微妙にバネの強さが異なり、それがB(バルブ)レバーの作動に大きく影響をするのです。MXLのジャンクがあればオリジナルのバネ類を調達して交換した方が良いです。

国産であっても、この時代の精密機械は作りが良いですね。距離計のミラーに劣化がありません。この個体はfeet機ですので、海外にあったものが里帰りしたので光学系のコンディションが良いのでしょうか。しかし、あのシャッターの壊し方はいただけませんが・・

シンクロ部分も作り直しをしていますのでストロボの発光テストをしておきます。

 

前玉を分離すれば、意外に簡単にシャッターにアクセス出来るのが不運だったようです。何度も組み立てては正常に動かず、ロック機構を開け閉めした形跡があります。

 

恐らくシャッター羽根が張り付いたかの故障で、関係のない部分を分解しては壊したという状態で、全体的なコンディションは悪くはないという個体でした。

 

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オリンパス・WIDE-Sの巻

2024年07月14日 11時00分00秒 | ブログ

私のところにはあまり来ませんが、根強い人気があるオリンパスWIDE-Sです。時代を考慮するときれいな外観ですが、当初は気が付かなかったファインダーの前面ガラスが割れています。さてどうするか・・

ガラス部を分解してみると、割れた部分は粉々になっていて接着などは無理ですね。

 

修復する方法は、割れているファインダー窓部分のみt=1mmのフロートガラスで作り直す方法と、全体を新規に作り直して中央のすりガラス部分はサンドブラスト加工をしておくかですが検討の結果、工数の掛からない部分交換としました。

再接着をしたところ。全く違和感はありません。

 

 

この個体はft機で北米からの里帰り機の可能性がありますが、そのせいか発売が昭和32年(1957年)にしてはファインダーのミラーは劣化が少ないと思いました。清掃をしておきます。また、距離計の二重像が僅かにズレています。長期間の作動により、接触部分の摩耗があるので微調整をしておきます。その他、ヘリコイドグリスの劣化による作動不良がありましたのでグリスの調整をしました。

シャッターはシャッター羽根の張り付きがあり作動しませんでした。コンパー型の精工舎MXLは張付き易いとの評価もあります。スローガバナーの洗浄と各部の注油。1/500秒用の補助バネがへたり気味です。長期間1/500にセットしてあったのでしょうか?
裏蓋の開閉鍵部がグラグラします。シボ革の下のネジ2本が緩んでいるのです。分解清掃とグリス塗布で再組立てをしておきます。

 

前面のシボ革も剥離気味でした。材質が劣化していて薄いので、不用意に剥がすとバリバリに割れてしまいます。慎重に接着します。当時、広角ブームの元になったモデルで、極端に大径に設計された前玉は傷もなく非常に良いコンディションでした。

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PEN-FT(B)の通常メンテナンスの巻

2024年07月10日 20時00分00秒 | ブログ

暑さもひと段落のようですので今のうちに作業を進めておきます。カメラ店様に並ぶPEN-FT #3121XXをやっておきます。良い頃の個体ですが、結構使い込まれているようで、外観の汚れ(彫刻文字が黄色)が目立ちます。点検では巻上げが1回で完了しない症状があります。また、ハーフミラーの劣化。

トップカバーを外してみます。過去に修理歴は無いようです。

 

 

やはり使い込まれた個体で、チャージギヤの軸(画像右側)が摩耗をしています。殆どの個体に摩耗はありますが、今回は中程度の摩耗なので調整としておきます。これ以上に摩耗が進んだ場合は軸のみのカシメ交換は出来ませんので、地板ごと交換することになります。この摩耗ですが、使い込まれた個体だけに発生するというわけではなく、それほど使い込まれていない個体にも発生することが有ります。潤滑の問題だけではなく他にも原因があるのか?

工数が限られていますのでサッサと進みます。完成した前板を取り付けて作動を見ます。

 

ここで問題。シャッターを切ると次の巻上げがロックが掛かって巻けない症状。この場合は一般的にはシャッターユニット側の「トメレバー」に関係する部分の作動不具合ですが、今回の原因はリターンミラーユニットのバネの掛かりが正規になっておらず、黒いレバーが左に走るとバネと接触するのが原因でした。(画像は正規に直したところ)私もPEN-FTは数百台は修理をして来ましたが、今回の原因は初めての経験でした。こんな原因もあるから分かったような気になってはいけないということ。

メカの組み立ては、ほゞ終了。ハーフミラーは新品と交換してあります。これから、ストロボ発光、露出計の感度調整とファインダーの無限調整をします。

 

洗浄したカバーを取り付けようと思いましたが、使い込まれ気味の個体は彫刻文字の白塗料が変色と劣化で完全に艶を無くしていますので色入れをやり直しました。オリジナルは半艶ですので、そのように調合してあります。この文字に艶が無いとカメラの色気が無くなってしまいます。

ついでなのでPEN-FT #2212XXと中前期型をやっておきます。ケースに入ってこの頃の個体としてはきれいですが・・

 

裏蓋や圧板はカビが発生していますね。

 

 

未分解と思いましたがシャッターダイヤルと露出メーターの連動が変です。

 

ハーフミラーが汎用の恐らく反射率5対5のミラーから切り出されたものが付いています。情報窓部もメッキがありますが、意外に問題なく見えるのですね。

 

これでも代用にはなると思いますが、私は設計者の米谷さんに直接お伺いをしてメッキの種類や反射率など、出来るだけ正確に復元しています。汎用ミラーですとファインダーが暗くなる傾向があると思います。

前作業者がプリズムやスクリーンを分解してありますが、マスクがヨレヨレになっています。また、遮光クロスが正規の位置に通っていません。

 

スクリーンなどすべてを分解して組み直しておきます。

 

 

今回はハーフミラーはそのまま再使用としました。これでメカの組み立て終了。

 

 

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僕100円のPEN-S2.8の巻

2024年07月09日 18時00分00秒 | ブログ

PEN-S2.8 #2295XXと前期型ですけど、何と100円で購入されたとのことです。100円かぁ、がっかりですね。全体的に手油がしみ込んだ「ヌメッ」とした手触りの個体ですが、一応シャッターは切れますしレンズもきれい。このアンバランスがヒントでした。

製造は1962年5月と思われる前期型で、スプロケットはアルミ黒アルマイトにスプールがグレーの頃。

 

では、洗浄のために分解をしていきますが、あれっ? リングナットに回り止めの半月ネジがありますね。これは後期の生産に使われたシャッターにしかないのです。

 

トップカバーを外してみます。あぁ、やっぱりね。シャッターユニットのハウジングが黒アルマイト仕様です。これは最後期に使われたシャッターです。ということはシャッターユニットを換装されているということです。道理でスピードは遅いですがシャッターは作動したのでしょう。

チャージレバー軸にグリスがごってり。工場ではグリスは塗布しませんので途中の整備です。これは洗浄します。

 

トップカバーを外すと駒数ガラスの接着が外れました。前期のものはエポキシ接着が剥がれるのです。

 

トップカバーを洗浄して、研磨をした駒数ガラスを再接着します。

 

 

ファインダーは一度レンズを外して清掃していました。清掃をしてレンズを接着します。

 

シャッターは最後期の仕様ではなく、一つ手前の仕様でしたので何かと良かったです。換装されていたのはある意味残念ですが、一番良い頃のユニットが手に入りました。

 

完成したシャッターユニット。7時の位置にシンクロ接点がありますが、単にリン青銅の帯板ではなく、バイクのコンタクトポイントのように接点が加工されています。

 

確実な発光のための変更でしょう。右端の巻き戻し軸は変更前の前期型のダイカストである証拠。

 

清掃をしたファインダーをトップカバーに取り付けます。

 

 

レンズの状態は非常に良いことから、恐らくシャッターだけではなく、レンズとリング類も後期(1968年8月製)のものに交換されていると思います。

 

距離リング先端のローレット部分の黒アルマイトが剥離するのは持病ですね。シャッターダイヤルのメッキも含めて、相当コストを下げていたのでしょう。このまま放置すると、人の汗によりどんどん腐食が進みますので、塗料によりタッチアップをしておきます。

ついでに「PEN」の下の塗装剥げも気になるのでタッチアップをしておきます。

 

 

最良のシャッターユニットときれいなレンズを搭載したPEN-S2.8になりました。もう、100円じゃないからね。

 

 

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