(十一)
目を爛々と光らせて、小夜子の次の言葉を待っている。
男と女の生の話など、そうそう聞けるものではない。
しかも、いかに小夜子が否定しようとも、玉の輿に乗った小夜子の話である。
ひと言も聞き漏らすまいと、皆が皆、聞き耳を立てている。
「その時はね、お寿司を頂いたの。
お寿司といっても、あたしたちが食べるお寿司とは、まるで違うの。
夕べ、出たでしょ? ご飯の上に、お刺身が乗っかっていたもの。
あれなの、あれ。もうとっても美味しくて。
お店の大将がびっくりするほど、食べちゃったの。
『食べっぷりがいいねぇ。』なんて、褒められて。
それ以来、もうプレゼント攻勢。
毎晩みたいにやってきて、ブローチやらペンダントやらをプレゼントしてくれるの。
女給さんたちに羨ましがられて、どころか憎まれちゃって。
大変だったわ、ホントに。
でも、梅子お姉さんの計らいで、無事収まったけれど。
タケゾーも、女給さんたちを怒ってくれたし。」
「女給さんたちって、きっとおきれいですよね。
それでも、小夜子さまを旦那さまは選ばれたんですね?」
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