男との生活を、思い浮かべることがないわけではない。
しかし決まってその後に
“こんなうわばみ女を嫁にするなんて、可哀相じゃないか”
と、収まるところに収まっていく。 . . . 本文を読む
「社、社長に連絡してきます。こんな所に居てはだめですから、すぐに帰りましょう」
慌てて立ち上がる竹田だが、当の小夜子は悠然としている。
「竹田。そんなに慌てることはないわ。明日調べていただいてからでいいの!
もし違っていたら、どうするの。がっかりさせることになるでしょ。
それに、竹田が報告すべきことでもないでしょ。
あたしの口から、武蔵には話します。余計なことはしないで」
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(七)
「新しいお絞りです、どうぞお使いください」
実千代の差し出すお絞りを引っ手繰るように受け取った竹田、すぐさま小夜子に手渡した。
「小夜子、今夜はどうしたんだい? 体調が悪いようだね」
「煙草やらお酒の匂いがね、今夜はどうも。どうしたのかしら、疲れてるのかしら…」
弱々しい声の小夜子に、竹田はただオロオロとするだけだ。
“社長の留守中に、小夜子奥さまがご病気になんてことになったらど . . . 本文を読む
“社長が居ないから、元気がないのか? 小夜子は、見た目はきつい女だけれど、案外淋しがりやさんだからね。皆にきつく当たったり横柄な態度を取るのも、その裏返しかねえ。案外、張子の虎かも? この竹田という若者にきついのも、そのせいかい? . . . 本文を読む
「そうなの? 梅子姉さんでも神さまにお願いしたりするの? 小夜子ね、最近おかしい時があるの。さっきもね、この竹田と一緒にステーキを食べようとしたんだけど、どうしても食べられなくて」 . . . 本文を読む