背広を脱がせた千勢すら気付かぬ匂いに、小夜子が噛み付いたのだ。
「小夜子、勘弁してくれ。キャバレーに行ったんだ。
香水の匂いも、少しは付くだろうさ。千勢、お前、気になるか?」
「いえ。奥様に言われて、ようやく気付きました」
「ほら見ろ。小夜子の気のせいだろうさ」
我が意を得たとばかりに、胸をそらせて大きな声で言う。
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いつも「お知らせしまーす」とアナウンスしてくれるのですが
まだ慣れていないせいか(三ヶ月ほどでしょうか)声が固いんです。
で、こう呼びかけたんです。
「こんどさあ『ねえ、聞いて』って、言ってくれない」
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(三)
その夜、武蔵の帰りを待ちわびる小夜子だが、中々武蔵は帰って来ない。
「遅いわねえ、武蔵は。会社はもう出たのよね?
千勢、千勢。武蔵は確かに一時間も前に、会社を出たのよね?
朝、何か言ってた? 寄り道するとか、なんとか」
イライラする気持ちを抑えきれずに、千勢に当り散らしてしまう。
身を小さくしながら、千勢が答える。
「はい。会社に電話しましたら、六時過ぎに会社を出られたと聞きま . . . 本文を読む
昨日までの小夜子ならば、
「そんなこと、あたしには関係ないわ。」
と、席を立つところだ。
しかし今は、妊婦の話を聞きたくてならない。
些細なことも、一言一句聞き漏らすものかと身構える小夜子だ。 . . . 本文を読む
翌日、早速大学病院へと向かった小夜子。大勢の妊婦でごった返す待合室で、その自信に満ち溢れた顔付きに圧倒された。ここでは御手洗小夜子という名前は、まるで通用しない。ただの小娘でしかない。 . . . 本文を読む
「今回は残念だったけど、またということもある。
それに私生児で産まれた子供の行く末は、酷い言い方だけどひどいもんだよ。
案外、これで良かったのかもしれないよ。
今度は、きちんとしたお相手の子供を、ね。
お父さんになってくれるお人を、お選びね。
あんたの器量なら、きっと現れるだろうさ」 . . . 本文を読む
流産の危機は、幾度となく訪れた。しかしその都度、赤子は生き抜いてきた。
梅子が気遣ったのではない。いやむしろ“流産、やむなし!”と考えた節がある。
赤子の生命力の強さには、医者も舌を巻くばかりだった。 . . . 本文を読む
医者はそう言う。しかし梅子の耳に届く赤子の声は違う。
“このままお母さんに知られることなく、静かに逝くつもりだよ。心配しないでいいよ。ぼくが産まれたら、お母さん困るものね。お父さんだって、歓迎しないだろうし。 . . . 本文を読む
もう皆さん、知ってますよね。
こんなのって、初めてじゃないですか?
実はね、わたし、応募してみようかな…と考えたりしてるわけです。
それで、初恋の女性から連絡が来たりして…くうぅぅ! 「PR by conecc」 . . . 本文を読む
ちょっと生意気なのですが、北朝鮮のことを考えてみました。
外交・国際問題については、まったくの素人のわたしです。
学者さんやら評論家さん、それに政治家の皆さんの話を聞いて、
「へー」「なるほど」「そうなんだ」「でもなあ」と、
相づちを打ったり感心したり、そりゃちょっと、と思ったりです。
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