ぐふふ…
終の車になりそうです。
とても気に入りました。
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ふと気付くと、遠巻きに人だかりが出来ていた。好奇の目を向ける者や、蔑みの目を向ける人で、一杯になっていた。
「赤の他人です。まったく知らない人なんです」と、彼は逃げるようにその場を離れた。
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彼の視線に気付いた酔っ払いは、傍らを通り抜けようとする彼の腕を掴んだ。
酒臭さをプンプン匂わせながら、「おいっ、兄ちゃん」と、話し掛けてきた。
「どうした、彼女にでも振られたか? それなら、酒を飲みな。
やけ酒は、男の特権だ。 . . . 本文を読む
どこといって行く当てのない彼は、初めに来たバスに乗り込んだ。
仏頂面で迎える車掌に対し「どうも」と声をかけてしまった。
毎朝のバスには目がクルクルとよく動く、まだ二十歳そこそこだという女性車掌が乗っている。
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牧子からの手紙は、確かにショックではあった。
しかし不思議なことに、冷静な気持ちで読んでいた。
予感めいたものを感じてはいたのだが、努めて考えないようにしていたのだ。
悲恋に嘆く己を、楽しむような趣きがある。そんな己に酔っていた。
貴子との再会が、それを導き出したかもしれない。
思えば、異性関係に関して挫折を知らない彼だった。
気が付けば、誰かが傍らに居てくれた。
嬉しい時には共に喜び、悲しい時 . . . 本文を読む
一週間は、唯々、待った。
二週間目は、牧子の身に何かあったのか、と考えた。
しかし三週間となると、悲嘆にくれた
。と同時に、怒りが込み上げてくる。
“僕のことなんか、忘れてしまったの?”
“くそお、浮気するぞ!”
そして、一ヶ月。
やっと、牧子からの返信が届いた。
封を開けると、牧子の香が漂ってくるような、そんな錯覚を覚えた。
思わず、封筒に頬ずりをしてしまった。
ボクちゃんへ
返事が遅れて . . . 本文を読む
アパートに帰り着いた彼は、その冷え冷えとした部屋にうんざりした。
早速ストーブに火を入れたものの、中々に暖まらない。
母親手作りの褞袍を着込み、部屋が次第に暖まり始めても、心の冷えは収まらなかった。
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その夜、茂作が夢枕に立った。顔を真っ赤にして、怒り心頭に発している。
武士、帰って来い!
母親が母親なら、お前もお前だ。
遊び呆けている場合ではなかろうが!
学生の分際で、女にうつつを抜かすなど、以ての外じゃ。
あれ程に、言ったじゃろうが。
都会の女は魔物じゃ、と。
所帯持ちの男に横恋慕するような女は、とんでもない食わせ者じゃ。
田舎者のお前を騙すことなぞ、赤子の手を捻るようなものじゃ。
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