昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空~(十六)そして、一ヶ月。

2015-08-08 09:08:56 | 小説
牧子からの手紙は、確かにショックではあった。 しかし不思議なことに、冷静な気持ちで読んでいた。 予感めいたものを感じてはいたのだが、努めて考えないようにしていたのだ。 悲恋に嘆く己を、楽しむような趣きがある。そんな己に酔っていた。 貴子との再会が、それを導き出したかもしれない。 思えば、異性関係に関して挫折を知らない彼だった。 気が付けば、誰かが傍らに居てくれた。 嬉しい時には共に喜び、悲しい時 . . . 本文を読む

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空~(十六)そして、一ヶ月。

2015-08-07 08:41:07 | 小説
一週間は、唯々、待った。 二週間目は、牧子の身に何かあったのか、と考えた。 しかし三週間となると、悲嘆にくれた 。と同時に、怒りが込み上げてくる。 “僕のことなんか、忘れてしまったの?” “くそお、浮気するぞ!” そして、一ヶ月。 やっと、牧子からの返信が届いた。 封を開けると、牧子の香が漂ってくるような、そんな錯覚を覚えた。 思わず、封筒に頬ずりをしてしまった。 ボクちゃんへ 返事が遅れて . . . 本文を読む

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空~(十五)茂作が夢枕に立った

2015-08-02 10:57:04 | 小説
その夜、茂作が夢枕に立った。顔を真っ赤にして、怒り心頭に発している。 武士、帰って来い!  母親が母親なら、お前もお前だ。 遊び呆けている場合ではなかろうが!  学生の分際で、女にうつつを抜かすなど、以ての外じゃ。 あれ程に、言ったじゃろうが。 都会の女は魔物じゃ、と。 所帯持ちの男に横恋慕するような女は、とんでもない食わせ者じゃ。 田舎者のお前を騙すことなぞ、赤子の手を捻るようなものじゃ。 . . . 本文を読む

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