人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

バッハ・コレギウム・ジャパンのバッハ「マタイ受難曲」を聴く~冴えわたるノンヴィヴラート&古楽の響き

2014年04月19日 07時06分25秒 | 日記

19日(土)。昨夕、初台の東京オペラシティコンサートホールで、バッハ・コレギウム・ジャパン(B.C.J)の新年度第1回目のコンサートを聴きました。演奏曲目はJ.S.バッハの「マタイ受難曲」です

出演は、ソプラノⅠ=ハンナ・モリソン、ソプラノⅡ=松井亜希、アルトⅠ=クリント・ファン・デア・リンデ、アルトⅡ/証人Ⅰ=青木洋也、テノールⅠ/エヴァンゲリスト=ゲルト・テュルク、テノールⅡ=櫻田亮、バスⅠ/イエス=ペーター・コーイ、バスⅡ/ユダ、ペテロ、大司祭カヤパ、ピラト=浦野智行、指揮は鈴木雅明です

 

          

 

B.C.Jは年度初めのコンサートでは毎年のように「マタイ受難曲」を取り上げます。私は10年ほど前から会員なので10回近く「マタイ」を聴いてきたことになります

開演時間が18時30分と早いので軽く食事を済ませて会場に駈け付けると、すでにロビーは聴衆でごった返しており、2か所のプログラム売場には長蛇の列が出来ています 通常の定期公演では1,000円のプログラムが「マタイ」になると歌詞対訳が付くので1,500円になります それでも飛ぶように売れていました。いつもは1階の後方席に空きが目立つのですが、この日はほぼ満席に近い状態でした

オケのメンバーが登場しますが、通常よりも多く50人を超えています。それは、2つのオーケストラが左右に配置され向い合う態勢をとるためです 向かって左の第Ⅰ群は、コンミスが若松夏美、チェロが鈴木秀美、ヴィオローネが今野京、オルガンが鈴木優人、フラウト・トラヴェルソが菅きよみ、前田りり子、オーボエが三宮正満、星春海といった面々、それに対する右の第Ⅱ群は、コンミスが高田あずみ、チェロが竹澤秀平(新日本フィル首席)、ヴィオローネが西澤誠治(読響首席)、オルガンが今井奈緒子、フラウト・トラヴェルソが菊地香苗、鶴田洋子、オーボエが尾崎温子、前橋ゆかりといったメンバー。あとはヴァイオリン&ヴィオラとコーラスが左右に分かれます

エヴァンゲリスト(福音史家)役のゲルト・テュルクが曲の進行役を務めるわけですが、B.C.Jでエヴェンゲリストといえばこの人を置いて他にいません 正味3時間にわたる受難曲の最初から最後まで歌いっぱなしの大役です。優れた歌唱力はもちろんのこと、体力がなければ務まらないでしょう 以前は水入りのボトルを椅子の下に置いて時々飲んでいましたが、今回はありませんでした。プロ根性ですね

ハンナ・モリソンは安心して聴けるソプラノでした。クリント・ファン・デア・リンデは南アフリカ出身という珍しいアルト(といっても男性=カウンターテナー)ですが、深みのある素晴らしい声の持ち主です イエス役のペーター・コーイははまり役です。安定感のあるバスです。日本人歌手で今回目立ったのはアルトの青木洋也とバスの浦野智行です。とくに青木は最近よくソロを任せられるようになり、慣れてきたこともプラスに働いているでしょう

管弦楽で良かったのは、毎回そうですが、オーボエの三宮正満の演奏です ”超一流”というのはこういう人を言うのでしょう コンミスの若松夏美、高田あずみの二人の演奏は歌手を引き立てながら自らを主張する素晴らしい演奏でした

今回特に活躍が目立ったのは、新日本フィルの首席・竹澤秀平のチェロとヴィオラ・ダ・ガンバの演奏です。これは二重丸です

第1部が約70分、休憩が約20分、第2部が約100分。曲の最後「哀悼と告別」の合唱が始まった時は、「やっと、ここまでたどり着いたか・・・・・」と、自分が演奏している訳でもないのに感慨にふけっていました 

静かに曲が閉じられますが、指揮者・鈴木雅明が両手を下ろすまで聴衆は拍手を控えています。ほっと、指揮者が肩の力を抜いて両手を下ろすと、嵐のようなブラボーと拍手が会場を満たしました 気が付くと身体が汗ばんでいました。熱気で会場の温度が1度か2度上昇したようです 出演者のカーテンコールを最後まで付き合って拍手をしていたら、22時を回ってしまいました

 

          

 

プログラムの中にカウンターテナーのクリント・ファン・デア・リンデのインタビューが載っているのですが、「BCJが他の古楽器グループと違う点は何か」と訊かれ、彼は次のように答えています

「まず合唱がすばらしいですね 私が最初にBCJと『メサイア』を歌った時、合唱のアルト・セクションの1メートル前くらいに座っていたのですが、アルトの歌い手たちの声が完全にひとつに聴こえ、誰の声も目立つことなく、すべての子音、母音、二重母音がぴったりと揃い、声が完全にブレンドしていて、本当に驚異的でした もちろんオーケストラも素晴らしいです オーケストラで特に感じるのは、完璧であることに対するこだわりですね。これは日本人的な特徴だとしか思えません。他の国では見ませんから。もうひとつオーケストラの特徴だと思うのは、楽器ごとに先生と弟子の関係があることで、師匠の演奏を弟子がしっかりと手本として、受け継いでいることです。こうした点もヨーロッパのグループではあまり見ないですね

バッハ・コレギウム・ジャパンが世界に通用する数少ない古楽器集団である秘密の一端が現われているようで、興味深く読みました

今日は、すみだトりフォニーホールに上岡敏之指揮新日本フィルのコンサートを聴きに行きます

 

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする