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人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

「E.W.コルンゴルト~二つの世界の狭間で」を聴く~東京・春・音楽祭

2014年04月01日 07時01分05秒 | 日記

4月1日(火)。油断していたつもりはないのですが、今日から4月、新年度です 新入生たちのために、せっかく咲いた桜が入学式までもってくれるといいですね

昨夕、上野学園・石橋メモリアルホールで東京・春・音楽祭の「E.W.コルンゴルト~二つの世界の狭間で」公演を聴きました 企画構成とお話は「コルンゴルトを広め隊」を主宰する中村伸子さんです

プログラムは①歌劇「ポリュクラテスの指環」より冒頭部分、②7つのおとぎ話の絵~「魔法にかかったお姫さま」「えんどう豆の上の寝たお姫さま」「山の精」、③まつゆき草、④ヴァイオリン・ソナタ ト長調より第4楽章、⑤歌劇「死の都」より「マリエッタの歌」、⑥シュトラウスの物語、⑦4つのシェイクスピアの詩による歌曲~「デズデーモナの歌」「緑なす森の木陰で」、⑧弦楽四重奏曲第3番ニ長調、⑨ウィーンに捧げるソネットです

出演はソプラノ=天羽明恵、テノール=又吉秀樹、ピアノ=村田千佳、ストリング・クァルテットARCO(第1ヴァイオリン=伊藤亮太郎、第2ヴァイオリン=双紙正哉、ヴィオラ=柳瀬省太、チェロ=古川展生)です

 

          

 

上野学園は1年ぶりです。1年前も「東京・春・音楽祭」のコンサートでしたが、大雨でした。自席はJ8番、左ブロック右通路側。会場はほぼ満席です このホールは1階と2階を合わせて508席ありますが、ほぼ満席ということは500人近くの聴衆が集まったことになります コルンゴルトを聴くためにこれだけの人々が集まったことはコルンゴルト好きにとって嬉しい限りです ステージ後方には石橋メモリアルホールの象徴・パイプオルガンが偉容を誇り、中央にはスタインウェイが置かれています

最初にソプラノの天羽明恵とテノールの又吉秀樹がピア二スト・村田千佳とともに登場します。天羽は鮮やかなグリーンのドレス、村田は淡いピンクのドレスです

歌うのは1914年に作曲された最初の歌劇「ポリュクラテスの指環」の冒頭部分です。オペラ・ブッファですが、とても17歳の青年が作ったとは思えない完成度の高さです 二人は軽妙洒脱な雰囲気たっぷりに大人の歌を歌い上げました

ここでこのコンサートの企画構成を担った中村伸子さんが黒のドレスで登場です。プログラムにはさみ込まれたコルンゴルトの年表を基に、曲の合間にその生涯を解説していきます

次は「7つのおとぎ話の絵」から3曲をピアノ独奏で演奏します 最初の「魔法にかかったお姫さま」はシューマン風、次の「えんどう豆の上に寝たお姫さま」はドビュッシー風、最後の「山の精」はラヴェル風といった感じの曲です コルンゴルトがこの曲を作曲したのは13歳の時ですが、そのころ指揮者ブルーノ・ワルターが同じアパートの上層階に住んでいて、コルンゴルトの演奏するピアノの音がうるさいと苦情を言っていたというエピソードがあるそうです

次の「まつゆき草」は初期の歌で、次に演奏する「ヴァイオリンとピアノのためのソナタ」の第4楽章の中で引用されているということで、歌われました そのコルンゴルト唯一のヴァイオリン・ソナタは16歳の時の作品ですが、第4楽章は古き良きウィーンを感じさせるような曲想でした 伊藤亮太郎のヴァイオリンと村田千佳のピアノですが、若き日のコルンゴルトの音楽の魅力をよく表現していました

前半最後の曲は、歌劇「死の都」から「マリエッタの歌」です。リュートの伴奏で歌われることから「リュートの歌」とも呼ばれています。天羽と又吉のデュオですが、天羽が歌い出した時、感激で背筋が寒くなりました。「死の都」は新国立オペラでゲネプロと本番を観たので、あの時の感激を思い出していました。本当に素晴らしいアリアです 何度聴いても飽きることを知りません。村田千佳のピアノも感動的です 村田千佳は東京藝大とウィーン国立音大の大学院を修了し、現在は東京藝大で講師をしているそうですが、センスの良いピアニストです

プログラム後半の1曲目は「シュトラウスの物語」です。ピアノ独奏で演奏されますが、「皇帝円舞曲」や「美しく碧きドナウ」や、その他もろもろのヨハン・シュトラウスⅡ世の音楽がアレンジされて、次から次へ出てきます 不勉強なボクはついていけない 村田千佳は楽しみながら弾いているのがよく分かりました。いいんですよ、それで。そういう曲なんだから 今は亡きヨーゼフ・ホフマンなんかがこの曲を弾いたら、途中でアドリブ入れたりして好き放題弾きまくるんじゃないかな

次に「4つのシェイクスピアの詞による歌曲」から「デズデーモナの歌」を天羽明恵が、「緑なす森の木陰で」を又吉秀樹が歌います。曲想としてはまったく反対の雰囲気の曲です

次に、「弦楽四重奏曲第3番」がストリング・クヮルテットARCOによって演奏されます。札響コンマス・伊藤亮太郎、都響第2ヴァイオリン首席・双紙正哉、神奈川フィル・ヴィオラ首席・柳瀬省太、都響チェロ首席・古川展生の4人がスタンバイします

第1楽章の冒頭はほとんどシェーンベルクのような感じで、大丈夫か・・・・と思っていると、やがてコルンゴルトらしいメロディーが現われてきて安心します 第2楽章はスケルツォで、最初はショスタコ風ですが、中間部に美しいメロディーが現われます。これは映画「二つの世界の狭間で」の音楽です。何かに憧れているような曲想です 第3楽章は厳かな雰囲気の曲で、第4楽章ではヴィオラが特徴的なメロディーを弾きます。これは映画「まごころ」の引用とのことです。コルンゴルトはこのように、自分の書いた映画音楽を、後にクラシック音楽に転用するケースが多く見られます

最後は天羽のソロで「ウィーンに捧げるソネット」を歌います。内容はウィーンが恋しくてたまらないというものです

コルンゴルトはウィーンとハリウッドというまったく異質な世界で生きたユダヤ系作曲家です。9歳で、かのマーラーが「天才だ」と言ったと言われています。23歳で完成させた3作目のオペラ「死の都」は彼の天才を証明し、名声を決定的なものとします 1938年にナチスのオーストリア併合により一家でアメリカへ亡命します オペラ作曲家としての経験を生かし、ハリウッド映画界に大変革をもたらし、今日の映画音楽の基礎を築きました ジョン・ウィリアムズの「スターウォーズ」の音楽は、コルンゴルトがいなければ生まれなかったろうと言われています

第2次世界大戦後には故郷ウィーンに戻ってクラシックの作曲家として活動を再開しようとしましたが、ウィーンの聴衆からは「時代遅れ」「映画音楽の作曲家」のレッテルを貼られ、失意のうちにハリウッドで晩年を過ごし、1957年11月29日に満60歳で死去します 現在の日本ではやっと定年の歳ですね

アンコールに、全員でオペラ「カトリーン」より「さすらいの歌」を演奏しました

この日の企画は、コルンゴルトの音楽をほぼ年代順に演奏することによって、コルンゴルトの天才性を明らかにし、彼の全体像を把握することを主眼としていました 彼の名曲「ヴァイオリン協奏曲」こそ演奏されませんでしたが、選曲といい、演奏者といい、適切な解説といい、センスの光る素晴らしいコンサートでした。魅力的な曲をたくさん作っているのに、なぜか認められないコルンゴルトに光を当ててくださった「コルンゴルトを広め隊」主宰の中村伸子さんに深く感謝します

 

          

 

 

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