人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

今年最高のパフォーマンス! マリエッラ・ディヴィーアでベッリーニ「ノルマ」を聴く~藤原歌劇団公演

2017年07月05日 08時02分12秒 | 日記

5日(水).わが家に来てから今日で1008日目を迎え,北朝鮮が4日午前,朝鮮半島西側から日本海に向けて大陸間弾道弾(ICBM)1発を発射したというニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

      トランプ大統領じゃないけど「金正恩は ほかにやることないのかね」と言いたい

 

                                           

 

昨日,夕食に「手羽元と野菜のスープ」「インゲンのお浸し」「冷奴」を作りました   「手羽元~」に使った野菜は,大根,人参,ジャガイモ,玉ねぎ,ホウレン草ですが,味付けは日本酒と醤油のみです

 

     

 

                                           

 

昨日,日生劇場で大好きなオペラ,ベッリーニの「ノルマ」を観ました   これは びわ湖ホール,日生劇場,川崎市スポーツ・文化総合センター,藤原歌劇団,東京フィルハーモニーの共同制作公演です   出演は,ノルマ=マリエッラ・デヴィーア,アダルジーザ=ラウラ・ポルヴェレッリ,ポリオ―ネ=笛田博昭,オロヴェーゾ=伊藤貴之,クロティルデ=牧野真由美,フラーヴィオ=及川尚志,管弦楽=東京フィルハーモニー,合唱=藤原歌劇団合唱部,指揮=フランチェスコ・ランツィッロッタ,演出=粟国淳です

 

     

 

舞台は古代ローマに征服されたガリア地方.ケルト人たちは知識層ドルイドに導かれ,オークの古木とそれに寄生するヤドリギを信仰の象徴として崇めている   ドルイドの長オロヴェーゾの娘,ノルマは巫女の長として,神事を執行し 神のお告げを人々に伝える役割を担っている   しかし,彼女は秘密裏にローマの地方総督ポッリオ―ネと愛し合い,二人の子供までもうけている   そのポリオーネの心は,今や若い巫女のアダルジーザに移っている.許されない恋に悩むポリオーネはノルマに打ち明けるが,ノルマは彼女の愛する男性がポッリオーネだと知り,子どもを道連れにして死のうとするが,可愛い子供たちに手をかけることが出来ない   それを知ったアダルジーザは,ポッリオーネがノルマの元に戻るよう説得すると約束し,二人はお互いの信頼を確かめ合う   しかし,ポッリオーネはアダルジーザの説得に応じようとしない.それに激高したノルマは人々に「ローマへの復讐の時が来た」と告げる.アダルジーザを連れてローマに逃れようとしたポッリオーネは捕らえられる.しかし,悩んだノルマは「裏切り者の巫女は私自身である」と告白し,父オロベーゾに子供たちの行く末を託して,ポッリオーネとともに,火刑台に向かうのだった

前回,日生劇場に来たのは何の公演だったのか,思い出せません   久しぶりのニッセイです.自席は1階I列26番,センターブロック右から3つ入った席です.会場はかなり入っています   舞台手前のオーケストラ・ピットは奥行きが狭く,これで十分な音が出るんだろうか?と少し不安になりました   中に入る東京フィルのメンバーの数は限られるでしょう

会場の照明が暗転し,ローマ生まれの指揮者ランツィッロッタがオーケストラ・ピットに入り,さっそく劇的な序曲の演奏に入ります   ピットの狭さを反映してか,音がやや痩せた印象がありますが,曲が進むにつれて気にならなくなりました.作品の力が大きいからだと思います

最初に登場するのはガリアの長オロヴェーゾ(ノルマの父)ですが,名古屋芸術大学大学院修了の伊藤貴之は役柄に相応しい立派なバスを聴かせてくれました   次いで,ローマの代官ポッリオーネが登場しますが,同じく名古屋藝術大学大学院修了の笛田博昭は,初めて聴きましたが,立派な体格と相まって終始力強いテノールを聴かせてくれました   将来有望な歌手だと思います

さていよいよノルマの登場です.歌うのはマリエッラ・デヴィーアです   実は,昨年11月6日に渋谷オーチャードホールで聴いたプラハ国立歌劇場来日公演でのエディタ・グルベローヴァによる「ノルマ」が史上最低のパフォーマンスだったので,デヴィーアが希望の星なのです

フルートの美しいメロディーに導かれて「清らかな女神(Casta Diva)」が歌われます   デヴィーアは完璧なコントロールで祈るように歌います   この間,私は背筋が寒くなるほど感動を覚えていました   思わず「これが本当のノルマだ」と心の中で叫びました.大きな月を背景に,人々よりも高い位置でノルマに歌わせた粟国淳の演出は冴えていました   歌い終わった後,長い間,会場いっぱいの拍手とブラボーが続きました

有料プログラム(1,000円)にオペラ評論家の香原斗志氏が「マリエッラ・ディヴィーアがいま唸らせた至高の『ノルマ』」というタイトルの論考を寄せていますが,冒頭の文章を読んでビックリしました   それは次のように書かれていました

「マリエッラ・デヴィーアがノルマ役に初めて挑んだのは2013年4月,ボローニャ市立劇場でのことだった   1948年生まれのデヴィーアは,すでに60代半ばに達していたことになる.その年齢までこの役を歌わなかったのは,歌う機会がなかったからではない.たしか,2003年に故江副浩正氏のラ・ヴォ―チェが「ノルマ」を上演した際も,最初はデヴィーアに声をかけたが,『ノルマという役は自分にはまだ早い』と彼女から断ってきた旨を聞いたように記憶している   60代半ばになったデヴィーアがボローニャ市立劇場で音楽監督ミケーレ・マリオッティの指揮で「ノルマ」を初めて歌った時,声の色彩も強弱もすみずみまで制御され,ノルマの愛情も,悲しみも,怒りも,苦悩も,絶望も描き尽くされた

65歳にして初めて,まだ歌ったことのないオペラ「ノルマ」を歌ったデヴィーアにあらためて驚きます  しかも,その歌唱力と演技力は完璧なのです.今回の公演におけるデヴィーアのノルマは,まさに上に引用した通り完璧にコントロールされた歌声で,ノルマのあらゆる感情を表現し尽くしていました.あと1年で70歳に届く歌手とはとても思えない美しい声でした

 

     

 

アダルジーザを歌ったラウラ・ポルヴェレッリはイタリアのシエナの出身ですが,国際的に活躍しているだけあって,力のあるメゾ・ソプラノです   とくに,第2幕第1場での,デヴィーアのノルマとの二重唱「お願い,お前と一緒に子供たちを連れていって」は感動的で,心が揺さぶられました

フランチェスコ・ランツィッロッタの指揮はテンポ感もよく,ノルマをはじめとする歌手陣のベルカントの魅力を十分引き出していたばかりでなく,時にオーケストラにもベッリーニを歌わせていました   最後に,シンプルながら工夫された舞台作りと巧みな演出の粟国淳にブラボーを送ります

この日の公演は,今年聴いたコンサート・オペラ公演の中でベスト3に間違いなく入る印象深い公演でした

この公演は10月22日(日)に川崎市スポーツ・文化総合センターホールで開かれます   指揮は沼尻竜典に代わりますが,デヴィーアがノルマを歌います  もう一度 聴いてみようかとも思いましたが,そうすると一人分聴きたい人の席が無くなってしまうので止めておきます   聴いて後悔しません.強くお薦めしておきます

 

     

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