10日(月).昨日,NHK交響楽団の年間会員2017-18の席替え手続きをしました 今年から年間会員券の席替えが「WEBチケットN響」でも出来るようになったことに伴い,今までと若干勝手が違い 手間取ったのですが,ほぼ希望通りの席が取れました 現在はC会員(金)の1階9列目の左ブロックで通路からいくつか入った席ですが,次期は同じC会員で何列か後方になりますが,センターブロック左寄りの席が確保できました 本当は通路側が取りたかったのですが,センターブロックは無理でしょうね 後は恐怖の請求書が届くのを待つのみです
ということで,わが家に来てから今日で1013日目を迎え,ドイツ北部ハンブルクで開かれていた主要20か国・地域首脳会議(G20サミット)が8日,首脳宣言を採択して閉幕したが,米国以外の19か国が結束して地球温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」に取り組むことが明記され,米国の孤立が鮮明になったというニュースを見て感想を述べるモコタロです
トランプ大統領の頭の中が温暖化しているんだから クールダウンしなきゃダメだよ
昨日の日経朝刊の「The STYLE / Culture」面のコラム「名作コンシェルジュ」でグレン・グールドの「モーツアルト:ピアノ・ソナタ集」が取り上げられていました 音楽評論家・鈴木淳史氏が書いています
「グレン・グールドがモーツアルトについて残した言葉は辛辣だ 『モーツアルトの作品が嫌いだというのではない.もっと否定的だ.つまり許し難いのだ』などといったように.そんなグールド,この許せない作曲家のソナタをしっかりと全曲録音している」
という皮肉から書き始めています 紹介されているディスクはピアノ・ソナタ全集から6曲(K.310,K.330,K.331,K.332,K.333,K.545) を抜粋して収録しています
鈴木氏がまず最初に取り上げているのは「トルコ行進曲」で知られる「ソナタ第11番K.331」の第1楽章です
「ピアノを習い始めた子供がおっかなびっくり弾いているような遅いテンポで始まる この楽章は変奏曲形式.ゆっくり弾かれた最初の主題が,次々に姿を変えて登場,最後の変奏曲はそれこそ猛烈な勢いに転じる これは,まさしくグールドがもっとも得意とした バッハの『ゴルトベルク変奏曲』の世界そのまま」
そして,次に「ソナタ第13番K.333」の第1楽章を取り上げ,
「冒頭は挑発するかのように高速でメカニカルに突っ走る モーツアルトの優美さに狙いを定め,真正面からケンカを売ってる!」
これらの演奏を実際に聴いてみると,まったくその通りだということが理解できます 最後に,グールドのモーツアルトへのアプローチについて,鈴木氏は次のように語っています
「冒頭で引用したグールドの言葉からも,単純に『嫌い』というより,自分と同じタイプの人間をあえて攻撃するようなニュアンスが感じられまいか そう,グールドにとってモーツアルトは,対峙すべきライバルなのだ この演奏からは,プライドを懸けたつばぜり合いが聴こえてくる.自己と対決し,自身を解体するかのような」
卓見です このCDに収められた6曲はどれもが個性的で刺激的な演奏で,「モーツアルトは優美に演奏すべきだ」という固定観念の人にとっては,「こんな演奏はモーツアルトじゃない」「ぶん殴ってやりたい」と思うかもしれませんが,グールドの思うツボです
「METライブビューイング アンコール2017」の4枚綴り券を取りました 当日一般@3,100円のところ,4枚綴り券は10,400円です.1枚当たり500円安い計算です しかも単価の高いワーグナーの「パルシファル」と「トリスタンとイゾルデ」も観ることができます.4回以上観る場合は絶対得です
なお,座席を指定する必要がありますが,東劇の場合はいつでも窓口で指定できるとのことです.もちろん観る当日でも可能です
アンコール上映の内容は下のチラシの写真の通りです
昨日,東京藝大奏楽堂で「ベルリン・フィル首席クラリネット奏者ヴェンツェル・フックスを迎えて」公演を聴きました プログラムは①ダンツィ「フルートとクラリネットのための協奏交響曲」,②クロンマー「2本のクラリネットのための協奏曲」,③モーツアルト「クラリネット協奏曲K.622」です ①のフルート独奏は高木綾子,クラリネット独奏はフックス,②のクラリネット独奏はフックス,山本正治,③のクラリネット独奏はフックス,管弦楽=東京藝大チェンバーオーケストラ,指揮=山本正治です
開演に先立って,フックス氏と高木綾子さんを迎えてプレトークがありました 藝大教授の山本氏がフックス氏を迎えて夏にコンサートを開くのは今回が7回目ということですが,山本氏は今年度で藝大を退官するので最後の共演ということです 昨年のこのコンサートでも披瀝されましたが,フックス氏の父親はオーストリアでスポーツ用品店を経営していた関係で,本人もスキーが得意で競技選手を目指したようです しかし スキーで右足を骨折したため諦め,その後クラリネットと出逢い音楽の道に進んだとのことです プロ・スキーヤーのトニー・ザイラーはフックス家の9キロ離れた所に住んでいたそうで,もちろんその姿を見たことがあるそうです 世界中で演奏しているが,ヨーロッパ諸国は不穏な政治情勢にあるのに対し,日本はまったく不安を感じないので安心して演奏できると語っていました 今年は11月にベルリン・フィルの一員として来日するとのことです ドイツ語の通訳は藝大グローバルサポートセンターの特任准教授・横田揺子さんが務めましたが,完璧でした 一方,藝大准教授の高木綾子さんは3人のお子さん(7歳,5歳,3歳)の母親ですが,先生方の理解があり,教職や演奏活動と育児は両立しているとのことでした 良かったです
自席は1階11列12番,左ブロック右通路側を押さえました 会場は9割方入っているでしょうか ベルリン・フィルの首席奏者の演奏が2,000円で聴けるのですから無理もありません
藝大チェンバー・オケの面々が配置に着きます.コンミスは齋藤澪緒さんです
1曲目はダンツィ「フルートとクラリネットのための協奏交響曲変ロ長調」です フランツ・ダンツィは1763年生まれ 1826年没なのでモーツアルト(1756-1791)とほぼ同じ時代に生きた作曲家です 15歳からマンハイム宮廷楽団に加わり,その後,ミュンヘン宮廷楽団の首席チェロ奏者に就任,さらにシュトゥットガルト宮廷楽長に転身,そしてカールスルーエ宮廷楽長に就任するなど波乱万丈の音楽人生を送りました
この曲は第1楽章「アレグロ・モデラート」,第2楽章「ラルゲット」,第3楽章「ポロネーズ:アレグレット」の3つの楽章から成ります
フックスと共に高木綾子がグリーンの衣装で登場,ステージ中央でスタンバイします 山本の指揮で第1楽章が開始されます.変ロ長調という調性の通り,明るく軽快な音楽です フルートとクラリネットとの対話が楽しく聴けます とくに第2楽章でのラルゲットはまるでオペラの二重奏を聴いているようです 第3楽章では二人のソリストにより華やかなフィナーレを迎えます
2曲目はクロンマー「2本のクラリネットのための協奏曲変ホ長調」です フランツ・クロンマーは1759年生まれ 1831年没なので,彼もモーツアルトとほぼ同じ時代の作曲家です この曲は1815年頃に初版が出ていますが,初演等の記録は残っていないとのことです
第1楽章「アレグロ」,第2楽章「アダージョ」,第3楽章「アッラ・ポラッカ」の3つの楽章から成ります
フックスと山本正治が登場します.山本の合図で第1楽章が開始されます.躍動感あふれる曲想です モーツアルトの協奏曲もそうですが,この時代の協奏曲の第1楽章はなかなかソロ楽器が登場しません まるで女王様です.待ってましたとばかりに出てくるクラリネットは軽快そのものです フックスと山本による心地よい会話が続きます.軽快なリズムを支えているのはティンパニです 第2楽章「アダージョ」ではフックスの柔らかい音が印象に残りました 第3楽章は弦楽器のピッツィカートから入りますが,この演奏が素晴らしかった 弦楽器に乗って2本のクラリネットの饗宴が繰り広げられますが,「アッラ・ポラッカ」つまり「ポーランド風」のリズムはベートーヴェンの初期のピアノ協奏曲の「ロンド」を思い起こさせます.楽しい演奏でした
休憩後はモーツアルト「クラリネット協奏曲イ長調K.622」です この曲は,クラリネット五重奏曲K.581と同様,友人のクラリネット奏者アントン・シュタードラーの依頼により作曲されたものです 彼がいなかったらモーツアルトはクラリネット協奏曲などクラリネットの作品は書かなかっただろうと言われている重要な人物です
第1楽章「アレグロ」,第2楽章「アダージョ」,第3楽章「アレグロ」の3つの楽章から成ります
山本正治の指揮で第1楽章が速めのテンポで開始されます そこにフックスの軽快なクラリネットが入ってきます.クロンマーの演奏の時に感じた「柔らかい音」が会場を満たします この曲は第2楽章「アダージョ」が聴きどころです.フックスのクラリネットは抑制が効いて何と優しく柔らかいのでしょうか まさに天上の音楽です 第3楽章「アレグロ」では,今まで何事もなかったかのように軽快に音楽が進みます
「これがベルリン・フィル首席の演奏だ」という素晴らしい演奏でした.何よりもフックスの吹くクラリネットの柔らかい音色がいつまでも耳に残りました
フックスは会場の歓声を制して,プッチーニのオペラ「トスカ」から「星は光りぬ」を静かな感動と共に演奏し,聴衆のクールダウンを図りました アンコールを含めて まさにベルリン・フィル首席の演奏でした