人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

武蔵野市民文化会館が低料金で海外オケを聴ける理由&チラシの効用 / 相場英雄著「トップリーグ」を読む ~ ロッキード事件をモデルにした新聞記者の苦悩の選択を描いた作品

2019年09月14日 07時18分49秒 | 日記

14日(土)。千葉県各地で台風15号の被害が報道されている中、千葉県勝浦市に住んでいる大学時代の友人S君のことが心配になり、一昨日の昼ごろメールで安否を尋ねたのですが、返信がありませんでした ひょっとして、電気がまだ復旧しておらず、スマホの充電さえもできないのではないか、と心配しました すると、昨日朝に返信が届き、S君の家と奧さんの実家には被害がなかったものの、市内の各地で大小の被害が出ていることが分かりました S君のメールによると、海岸線の住宅、倉庫、道路は大被害で、親類宅、友人宅、仕事でお世話になった家などで瓦が飛び、壁に穴が空き、窓ガラスが割れるなどの被害を被り、送電線が切れている所もあるとのことでした そうした中、東京電力のほか、東北電力、中部電力の車も駆けつけ復旧作業に尽力しているようです S君は地域の生活部長も担っていることから、独居生活者などの家を回って、買い物はないかなど、生活に不安がないように声掛けをしているそうです

私からは「思っていたよりも大変な状況に驚いている。つくづく自然災害は怖いと思う。地域のために頑張っているS君を誇らしく思う。こちらからは何もできないが、応援している」と応援メッセージを送っておきました 一日も早い全面復旧を祈るばかりです S君、頑張れ

ということで、わが家に来てから今日で1686日目を迎え、環境省と東京都は13日までに、東京湾・青海ふ頭(江東区)のコンテナヤード舗装の接ぎ目にたまった土中で、強い毒を持つ南米原産のヒアリの巣を発見し、約500匹を駆除したと発表した というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

       最初の発見者はヒヤリとしてハッとしただろうな これをヒアリハット認知という

 

         

 

昨日、約2週間ぶりに「鶏の唐揚げ」を作りました いつもの栗原はるみ先生のレシピです。ニンニクと削り節を醤油に漬け込んで冷蔵庫で冷やした「旨味醤油」で味付けしています あとは「卵スープ」と「冷奴」を作りました。どれもとても美味しかったです

 

     

     

 

         

 

12日(木)の朝日夕刊 社会面の「マダニャイ  とことこ散歩旅」が「三鷹通り① 武蔵野市民文化会館」を取り上げていました 見出しは「有名楽団  低料金で楽しめる」です 記事を超訳すると

「武蔵野市民文化会館は、自治体も運営に携わるホールだが、クラシックを中心に開かれるコンサートはファン垂涎の海外音楽家、有名楽団、しかも低料金という知る人ぞ知る施設だ 1984年開館で、地上5階 地下1階。客席は大ホールが1255席、小ホールが425席。年間70~80回の公演がある チケットは毎回、ほぼ完売 ホールの運営は武蔵野文化事業団。チケットの割引サービスがある『友の会』会員は6700人 有名楽団のチケットは都心のホールより2~3割安い ファンの間で『価格破壊』と呼ばれている なぜこんな料金設定ができるのか。海外の音楽家を招く時、施設は多くの場合、日本の音楽事務所を通じて打診するが、この事業団は1990年代から、海外事務所との直接交渉を始めた。事業課長の和田能さんによると、『日本に興味がある音楽家は多く、これから伸びるという若手を推薦してくれた 一度来れば、また来てくれる。蓄積が好循環を呼び、海外のネットワークが広がり、”武蔵野”が認知されるようになった』とのこと。楽団なら、平日の開催を依頼する。ほかのホールは休日中心のスケジュールを組む。ただ楽団側は平日を開けておくのは惜しい。『少し安いですが、うちでどうですか』と打診する。結果、公演料を低く出来るという仕組み。コンサートPRのチラシはすべて手作り

武蔵野の低料金の秘密が良く分かりますね。私も2度ほど海外オペラの来日公演を観に行ったことがあります R.シュトラウス「サロメ」とベッリーニ「ノルマ」です そのうちの一つ、ドイツ・ザクセン=アンハルト歌劇場による「サロメ」の来日公演(2001年11月3日・武蔵野市民文化会館)は、朝日新聞の「音楽評」はもちろんのこと、週刊新潮にも記事が載った珍しい公演でした。なぜか

 

     

 

サロメを歌ったのはカナダ生まれのフィンランド人で元ミス・カリフォルニアという異色の経歴の持ち主のエイラーナ・ラッパライネンです

2001年11月14日付の朝日新聞「音楽評」で、音楽評論家・白石深雪さんは次のように書いています

「ハイライトは、青白い月明かりを背中に浴びて、一糸まとわぬサロメが熱にうかされたように歌うラスト・シーンだろう。裸体で生首をかかえ、情欲に身を焦がす女の姿はさすがに不気味 やがて興奮が極まって接吻すると、月が赤く染まり、演出家はその瞬間にサロメのディオニソス的な開放を託す。しかし、大胆なヌードに目を凝らす観客にもたらす効果は弱い 人間的開放を目指すサロメ像を軸にした展開は不完全燃焼に終わった

一方、週刊新潮の2001年11月22日号「Arts」欄は、この公演を3回観たという音楽評論家・許光俊氏の次のようなコメントを載せています

「音楽はもちろん演劇的要素を重視するドイツ音楽劇の流れを汲んだバランスのよい演出でした 日本だと平気で手を抜く欧米の出演者もいるのですが、この主役は毎回熱演 ここまでやる必要があるのかと言われるかも知れませんが、終わりがないのが芸術でしょ

この2つの評からお分かりの通り、エイラーナ・ラッパライネンは一糸まとわぬ姿で「7つのヴェールの踊り」を踊ったのです 舞台上で演じられているサロメの踊りを観て、最初は「まさか」と思いましたが、どうも間違いなく何も着けていないので 文字通り身体を張った演技に度肝を抜かれると同時に、「オペラでそこまでやるか」というのが正直な感想でした


     


さて、話を戻します 武蔵野がどれほど安いか、一例を挙げてみましょう。10月~11月に来日する「トリエステ・ヴェルディ歌劇場」の来日公演「椿姫」の場合、11月2日(土)と4日(月・休)の公演(東京文化会館)はS席=29,000円、A席=24,000円ですが、10月28日(月)の武蔵野市民文化会館の公演はS席=16,000円、A席=13,000円となっており、45%も割安になっています

ただし、ここで注意する必要があります オペラの場合、会場によって出演者が異なる場合があるということです 上記の「椿姫」のケースでは、東京文化会館で歌う歌手は、ヴィオレッタ=マリナ・レべカ、アルフレッド=ラモン・ヴァルガス、ジェルモン=アルベルト・ガザーレといった有名な歌手陣ですが、武蔵野市民文化会館で歌うのは、ヴィオレッタ=ジェシカ・ヌッチオ、アルフレッド=ジュリオ・ペッリグラ、ジェルモン=イタロ・プロフェリーシェといった歌手陣です したがって、どうしてもマリナ・レべカのヴィオレッタや ラモン・ヴァルガスのアルフレッドが聴きたいという人は高くても東京文化会館の公演を選ぶべきでしょうし、「椿姫」が生で聴ければ歌手は誰でもよいという人は格安の武蔵野を選んだ方が良いでしょう

ところで、記事にもあるコンサートPRチラシは独特です よく見かけるキャッチフレーズは「サントリーホールなら30,000円、武蔵野なら24,000円!」という典型的な「比較広告」で、コンサートゴア―の間では有名です ざら紙のようなペラ1枚の白紙に激しいセールストークが躍っています 下の写真は手許に残しておいた7月の公演のチラシです。事業課長の和田さんも制作に関わっていると思われます

 

     

 

ところで、上に 武蔵野のチラシを「手元に残しておいた」と書きましたが、これには理由があります 私が武蔵野のチラシが好きな理由は、「ロマン、爆発、憂愁、爽快が凝縮‼」といった檄文的セールストークはもちろんのこと、裏に何も書かれていないところです 私はこれをパソコン用の「裏紙」として利用しています チラシの効用ですね したがって、光沢紙でなく コピー用紙のような白系のA4サイズで 裏が白紙のチラシであれば、武蔵野に限らず家に持ち帰ることにしています この種のチラシでは、読響が多いように思います

 

     

 

         

 

相場英雄著「トップリーグ」(ハルキ文庫)を読み終わりました 相場英雄は1967年新潟県生まれ。1989年に時事通信社に入社。2005年「デフォルト 債務不履行」で第2回ダイヤモンド経済小説大賞を受賞しデビュー 2012年、BSE問題を題材にした「震える牛」がベストセラーとなる

 

     

 

「トップリーグ」とは、総理大臣や官房長官、与党幹部などに食い込んでディープな取材を続けるごく一部の記者を指す 中堅在京紙「大和新聞」の松岡直樹は、入社15年目にして経済部から政治部へ異動を命じられた。異動早々の記者会見で、想定問答にない質問を阪義家官房長官に浴びせたことをきっかけに、彼はあっという間にトップリーグ入りを果たす 一方、松岡と同期入社だった酒井祐治はある事情で大和新聞を辞め「週刊新時代」のエース記者として活躍している 酒井は、東京湾縁の埋立地で発見された金庫に入っていた1億5千万円の旧紙幣の出所を探るうち、1970年代に起きた昭和史に残る一大疑獄事件「クラスター事件」の闇献金に関連しているのではないか、と疑問を持つ 酒井は今も生きている議員の秘書を中心に取材を進め、この金の真相を究明していく。一方、トップリーグ入りを果たし阪官房長官と親しくなった松岡は、ライバルであり親友でもある酒井からのアドヴァイスをもとに真相を探っていく ついに松岡は1億5千万円の真相を突き止めるが、それを公表すると政権がひっくり返ることから、芦原首相と阪官房長官から、「公表するか、公表しない代わりに別の大スクープ・ネタをもらいトップリーグとして居続けるか」の選択を迫られる。松岡の結論はいかに

この小説の中で「クラスター事件」と呼ばれているのは、言うまでもなく「ロッキード事件」のことを指しています そして、芦原首相は安倍首相、阪官房長官は菅官房長官がモデルになっています

この小説を読んで、斬新だな と思ったのは松岡の家庭内の立ち位置です 彼にはフリーの編集者兼ライターの妻・藍子と2歳の娘・沙希がいます。娘が熱を出せば、松岡か藍子が病院に連れて行かなければならないし、長引けば仕事を休まなければならないという状況下にあります 松岡は政治部記者ということで、いつ何が起こるか分からないし、藍子も締め切りを抱えて仕事をしているので、二人とも沙希が病気になった時の状況に応じてどちらが面倒を看るかを決めることになります これまで私が読んできた新聞記者が登場する小説の主人公は、たいてい独身だったり、妻子がいても仕事に専念できる立場だったりで、育児を分担しながら記者を務めるというパターンの小説は読んだことがありません その意味では、「働き方改革」が喧伝される昨今の社会情勢を反映した斬新な小説だと思います

エピローグは、阪官房長官が、大和新聞の阿久津政治部長から芦原首相の元にもたらされた「松岡が出した結論」を聞きに行くシーンで終わっています したがって、松岡がどんな結論を出したのか、読者には分からないように書かれています 政権を転覆させる覚悟で「1億5千万円の真相」の記事を書くのか、あるいは事件は「なかったことにして」トップリーグの立場を続けるのか、読者は松岡の立場に立って考えを巡らせることになります。この辺の技法も巧みだと思います

とにかく読み始めたら止まらない面白さです。お薦めします

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