人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

新国立劇場「オペラトーク『エウゲニ・オネーギン』」を聴講する ~ ロシア・オペラのオーソリティー 一柳富美子さんと演出家ドミトリー・ベルトマン氏のトークは最高に面白かった!

2019年09月24日 07時10分55秒 | 日記

24日(火)。わが家に来てから今日で1676日目を迎え、受動喫煙対策はがん予防に欠かせないが、その目標値は国のがん対策の指針には盛り込まれなかった というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     ご主人さまは 歩行喫煙をしている者を見ると 張り倒したくなると常々言っている

 

         

 

昨日は、私が初台に外出中、息子が山形に帰る前に夕食を作っておいてくれました 「チンジャオロース」「豚ニラ玉」「チンゲン菜の温サラダ」「中華スープ」です。どれも美味しく、息子には敵わないと思いました

 

     

 

         

 

昨日午前11時半から新国立劇場オペラパレスのホワイエで「オペラトーク『エウゲニ・オネーギン』」を聴講しました これは新国立オペラ2019-2020シーズンの開幕を飾るチャイコフスキー「エウゲニ・オネーギン」の公演を前に、ロシア音楽の専門家と演出家による解説とカバー歌手による演奏によって、このオペラの理解を深めようという企画です 出演は今回のオペラを演出するドミトリー・ベルトマン、司会・解説・通訳=一柳富美子、ソプラノ=橋爪ゆか、テノール=内山信吾、ピアノ伴奏=石坂宏という面々です

 

     

 

ホワイエの座席は全席自由なので、最前列の右サイドを取りました。ちょっと右過ぎました

最初に司会進行役の一柳富美子さんから「エウゲニ・オネーギン」のペラ1枚(表・裏)のレジュメに基づき、このオペラの聴きどころの解説がありました 時間が限られていることから、一柳さんは”立て板に水の如く”早口でこのオペラの魅力を語りましたが、東京外国語大学卒業、東京藝術大学大学院修了という経歴を背景に、ロシア・オペラと声楽に造詣が深いところを披瀝しました

最初にこのオペラのポイントとして①主役はタチヤーナか、オネーギンか?、②19世紀ロシアの貴族社会が凝縮している、③作曲の動機は何か?、④プーシキンの詩的世界を音楽にしたもの、⑤今回の演出の特徴 ー について概要以下のように解説しました

①については、プーシキンの韻文小説「エウゲニ・オネーギン」のうちオネーギンや周囲の人々を描写した部分をチャイコフスキーはカットしてオペラ化しているので、タチヤーナが前面に出ているように思われるが、全編を通して登場するのはオネーギンであることなどから、主役はあくまでオネーギンである

②については、一例として、オペラの中にオネーギンとレンスキーの決闘場面が出てくるが、当時の決闘は同じ階級同士でないとできなかったし、介錯人についても同様だった オネーギンとレンスキーは同じ貴族階級だった。また、当時は、何かトラブルがあるとすぐに決闘になったが、なかなか弾が当たらなかった。プーシキンも何度も決闘していた

③については、「歌手のラヴロースカヤが提案した」とか、「トルストイが勧めた」とか、「結婚相手のミリュコーヴァに同情したから」とか、「ヒロインのタチアーナに共感を覚えたから」とか、いろいろ説があるが、どれも根拠がないデタラメである チャイコフスキーは西洋音楽一辺倒だったロシアのオペラ界に、自国のオペラを作って一石を投じたいと思っていた節がある また、チャイコフスキーは一家そろってオネーギンが好きだったことから、作曲するなら「オネーギン」を題材にしたいと思ったのではないか

④については、オペラのほとんどの部分が、四脚弱強格(1行に4つのアクセントがある)を反映して、プーシキンの原詩を使用している歌の箇所は全てアウフタクト(休符)で始まっている 四脚なので拍子もすべてゆったりした二拍子系である。したがって、原詩の引用以外の部分は、単調さを避けるため全て三拍子系である

⑤については、あくまでオネーギンにスポットを当てた演出になっており、極めて演劇性の強い演出になっている

以上の話は具体性があって説得力がありました 次にプーシキンの原詩による登場人物について次のように解説しました

タチヤーナは多感な文学少女だが、第1幕第1場で16,7歳、第3幕で19歳くらい。したがって、この間3年も経っていないし、まだ若い エウゲニ・オネーギンは悩める知的青年だが、同じく23,4歳⇒26歳くらい レンスキーは詩人でオーリガの婚約者だが、18歳くらい。いわば高校生 タチヤーナの妹オーリガは14,5歳くらい。言ってみれば中学生 以上の関係性から言えるのは、最初にタチヤーナがオネーギンに愛を告白したのに、オネーギンが冷たくあしらったのは、大人が中高生の申し出を断るようなもので、礼儀として当たり前の対応だと言える

この解説には大いに納得しました 続いて、今回のオペラ公演の演出を担当するドミトリー・ベルトマン氏を迎え、一柳さんが通訳をしてトークに入りました ベルトマン氏はモスクワ生まれ。ロシア舞台芸術アカデミーでオペラ演出を学び、1990年、23歳の時にモスクワでヘリコン・オペラを創立、間もなくロシアで有名なオペラカンパニーの一つの地位を確立しました

一杯ひっかけてきたような赤ら顔のベルトマン氏は話し方も酔っぱらい気味でしたが(失礼!  地顔?)、話は非常に面白く、親しみやすい人間性を感じました 彼は開口一番「新国立のスタッフは素晴らしい さらに合唱は本当に素晴らしい 正確なロシア語で歌っている」と述べ、次いでヘリコン・オペラを創立した当時の思い出話を中心に語りました とくに面白かったのは、「最初の頃、あるオペラを上演した時、初日は満席になった(つまり、家族、親戚、友人その他)が、翌日は激減、3日目は「今日、一人でもお客が来たら やらなきゃならないのかな」と話していると、一人の男が階段を降りてきた。何とそれは(世界的なピアニスト)スヴャトスラフ・リヒテルだった 今では リヒテル一人のためにオペラを上演したことを誇りに思っている」というエピソードです そうした面白いエピソードをいろいろ披露していたため時間が押してしまい、一柳さんが「あと2分でエフゲニ・オネーギンの演出の話をしなければならなくなりました」と宣言すると、会場からドットと笑いが起こりました

ベルトマン氏は、「これまでエフゲニー・オネーギンの演出は8回手掛けてきましたが、8回とも異なる演出でした 今回の演出は、ロシアの演出家スタニスラフスキーの1922年の演出をモチーフに現代的な視点からアプロ―チしたものです 歌手が歌って演技しているというよりも、生きた人間が歌って演じているというように、映画を観ているような感覚で鑑賞して欲しいと思います 悲しい場面ばかりでなく、可笑しい場面もありますから、そういう場面では声を出して笑って下さい」と語り、軽々と2分を超過しました

大きな拍手に送られてベルトマン氏が退席したあと、一柳さんが「このトークが始まる1時間ほど前に本人と打ち合わせをしたのですが、まったく別の話になってしまいました」と告白するや、会場は大爆笑でした

続いて、ピアノ伴奏=石坂宏(新国立劇場オペラ音楽ヘッドコーチ)により、タチヤーナ役カヴァー歌手のソプラノ橋爪ゆかさん(二期会)が第1幕第2場の「手紙の場面 たとえこの身は死に至るとも」を、続いてレンスキー役カヴァー歌手のテノール内山信吾さん(東京オペラ・プロデュース)が第2幕第2場のレンスキーのアリア「どこへ過ぎ去りしか」をそれぞれ表情豊かにドラマティックに歌い上げ、満場の拍手を浴びました

新国立劇場のオペラトークに参加したのは今回が初めてでしたが、こんなに面白いとは思ってもみませんでした 特に今回は一柳富美子さんの存在が大きかったと思います。一柳さんは今回、歌手陣へのロシア語による歌唱の指導や字幕も担当されているとのこと。米原真理ばりの大活躍です お茶もケーキも出ませんが、1500円は絶対に安いです 次回から毎回参加したいと思いました 10月1日の「エウゲニ・オネーギン」の初日公演が楽しみです

 

     

     

コメント
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