人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

筒井康隆原作・吉田大作監督「敵」を観る ~ 77歳の元大学教授に訪れる「敵」の存在:誰にも「敵」はやって来る、じわじわとそして突然に

2025年01月24日 00時23分35秒 | 日記

24日(金)。わが家に来てから今日で3664日目を迎え、トランプ米大統領が発表したソフトバンクグループ、オープンAIなどによる人工知能(AI)開発への巨額投資計画について、起業家イーロン・マスク氏が21日、資金面の問題から実現性を疑問視する見方を示した  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

     

     超大型投資を否定するような発言をトランプはどう思うかな? 2人の決裂は近いか

         

昨日、夕食に「真鯛のアクアパッツァ」「生野菜とモッツアレラチーズと生ハムのサラダ」「舞茸の味噌汁」を作りました アクアパッツァは久しぶりに作りましたが、美味しく出来ました

     

         

昨日、池袋のシネマ・ロサで筒井康隆原作・吉田大作監督「敵」(2023年製作・モノクロ・108分)を観ました

77歳の渡辺儀助(長塚京三)は大学教授の職をリタイアし、妻には先立たれ、祖父の代から続く日本家屋に一人で暮らしている 毎朝決まった時間に起床し、料理は自分で作り、原稿の執筆などを淡々と行い、衣類から文房具に至るまで丹念に扱う 時には気の置けないわずかな友人と酒を酌み交わし、フランス近代演劇史の教え子・鷹司靖子(瀧内公美)を招いてディナーを振る舞う この生活スタイルを預貯金があと何年持つかを計算しながら、日常は平和に過ぎていった そんな穏やかな時間を過ごす儀助だったが、ある日、書斎のパソコンの画面に「敵がやってくる。北から」と不穏なメッセージが流れて来る はたして「敵」とは何なのか

     

映画の冒頭、独り住まいの男の繰り返される日常生活を描いているシーンは、ヴィム・ヴェンダース監督・役所広司主演「パーフェクトデイズ」を思い出させます

私は新潮文庫の原作を読んでいるので、ストーリーを思い出しながら映画を観ましたが、「文章で表現できることは、必ずしも映画では再現できない」ことを痛感しました 原作では、儀助が「敵」に立ち向かう場面が概要次のように描写されています

「儀助は立ち上がり喝と眼を見開いて天井桟敷を睨みつける 『うぬ、やってきやがったな。敵め。悪魔め。死霊め。ではこっちも迎え討ってやるぞ』『来た。来た。こいつらめ。老醜め。臆病め。自堕落め。老臭め。保守め。懐古め。頑固め。偏見め。卑怯め。虚栄め。ひとりよがりめ』」

つまり、「敵」とは上の文章に書かれている通り、老醜、臆病、自堕落、老臭、保守、懐古、頑固、偏見、卑怯、虚栄、ひとりよがりなのです ひと言で言えば、人が老いることによって生じ易い弊害、ひいては「死」を意味しているのではないか、と思います

映画では、雷鳴のような光と銃声が轟く中、儀助が木刀をもって「敵らしきもの」に立ち向かおうとするも 銃弾に倒れる姿が描かれます 「雷鳴のような光と銃声」は「敵」のメタファーであるとしても、この描写では「敵」の本質が分かりません これは映画の限界です

原作の映画化にあたり私が一番関心を抱いたのは、「ラストをどう映像化するのか?」ということです はっきり言って映像化は困難だと思いましたが、結果はやはり無理でした

     

・・・と、ここまで書いて 今さら書くのもナンですが、「小説を題材にした映画は原作通りに撮らなければならない」というルールはありません 原作は原作として読み、映画は独自の映像作品として観るのが望ましいのかもしれません その意味では、この映画は儀助役の長塚京三の名演と美しいモノクロ映像による シニア映画の金字塔的な作品と言えると思います

原作と映画の両方をあらためて振り返って思いました 「敵」は誰にもやってくるし、誰も避けることはできない、と

     

ところで、儀助の「預貯金があと何年持つかを計算しながら余生を過ごす」という生き方、つまり「将来必ず訪れる死を見越して、逆算型の思考により生活する」という人生について、どう捉えるべきだろうか 映画では、詐欺に遭ったような形で300万円を失ってしまう”予想外”の出来事が描かれています(これ、原作にあったかな?)。いくら預貯金残高を計算して余生を過ごそうとしても、世の中は自分の思い通りに行くとは限らないのです そういう意味では、予想外のアクシデントを見越して、人生には「予備費」が必要なのかもしれません

参考までに、原作を読んだ感想は2024年11月18日付toraブログにアップしましたので、興味のある方はご覧ください

     


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