レイキャビク西街ひとり日誌 (Blog from Iceland)

北の小さな島国アイスランドはレイキャビクの西街からの、男独りブログです。

教会の暦とはいったい何ぞや?

2018-04-08 02:00:00 | 日記
今年は日本では桜の開花がだいぶ平年よりも早かった、とニュースで見聞きしていました。冬が厳しかった割には、春が早く来たということでしょうか?

レイキャビクでも同じような感じで、二月は次々と襲いくるストームに辟易させられましたが、三月になると暖かくかつ穏やかな日々が続き、スパイクタイヤを愛するワタシでさえ、使用禁止になる三週間も前にサマータイヤに交換してしまいました。

イースターの日曜日も穏やかな好天。午後になると風が出て寒くなりましたが。ところが「イースターには雪が降る」という都市伝説があります。イースター第二日目である月曜日。朝起きて外を見ると、なんと一面の銀世界。都市伝説は生きていました...

この日は多くの教会で献信式という14歳の子供たちのおめでたい式があります。みんな、綺麗に着飾って教会にくるのですが、雪とはちょっと可哀想。まあ、風はなかったので、セットした髪がバサバサになるというようなことはなかったでしょう。




イースター第二日の月曜日の様子


さて、今回は前回に書き切れなかった「教会暦」について、少しご紹介してみます。まあ、教会に関係のない人にはつまらないトピック かもしれませんが、好むと好まざるとにかかわらず、キリスト教文化というものは確かにありますし、影響も大きいですから、知っていて損はないと思います。

教会暦というのは、言うまでもなく教会の使うカレンダーで、教会内のいろいろな行事をいつ行うか、ということの基礎になっているものです。

教会ですから、その暦の設定はキリストの生涯に沿って構成されています。

最初のピークはクリスマスなのですが、実は聖書はキリストの生誕が12月25日であったということは明言していません。ただ、一年のいずれかの日に生まれたことは確かですので、「光が闇に勝ち始める」という意味で、冬至の時期にしよう!と古の教会が定めたものと考えられています。

教会の行事というものは、宗教的な「意義」を重んじますので、必ずしも歴史的な事実や日常的な論理だけを基にして構成されているわけではありません。

で、教会の新年は、クリスマスに先立つこと四週間前の「待降節(アドヴェント)」から始まります。これはクリスマスに備えるための時期なので、肉食を絶って心身を備えるということも昔はよく行われたようです。今では、する人もあるかもしれませんが、私の周囲には見かけません。

クリスマスは年を越して、1月の6日まで続きます。1月6日は「主の顕現日」と呼ばれる日で、聖書の中にある「東方からの三人の博士」が幼子イエスを訪ねて贈り物をした日とされます。

その翌日の1月7日は東方正教会のクリスマスです。これは、前回書きましたように、正教会はユリウス暦に従っていますので、グレゴリオ暦とは13日間のズレを生じているためです。西方教会の12月25日が、東方正教会では1月7日になるわけです。




教会暦の説明図 Trinity Lutheran Church, Montana USA
Myndin er ur trinity=mt.org


教会暦の次のピークは復活祭です。これも前回書きましたように、復活祭は「移動祭日」で、毎年日付けが変わります。そして、この復活祭から遡って四十日が「四旬節」とか「受難節」と呼ばれる時期になります。

この「四十」という数は聖書的にはある種の聖数です。モーセがイスラエルの民を率いて四十年間荒野をさまよったとか、イエスが四十日間荒野でサタンの試みに合われたとかの記述にそれが現れています。

ただ、受難節の「四十日間」というのは、日曜日を含まずに勘定しますので、実際には、その期間中の日曜日の数を加えて四十六日間の期間となります。

これは復活祭に備え、キリストの十字架への苦難を偲ぶ期間で、アドヴェントと同じく、肉食を控えて心身を備えることがよく行われました。この時期に肉を避ける人とかは、私の周囲にもいらっしゃいます。ワタシはそのメンバーではありませんが。

今年出会った、ちょっと面白い例ですが、お菓子の好きな人が「私は受難節中は小麦粉を食べない」というのがありました。その方にとっては、肉よりは小麦粉の方が「断ちがい」があるのでしょう。

受難節の最後の一週間が聖週間であることは、以前書きました。

そして、復活祭の四十日後が「主の昇天日」。キリストが天に昇ったという聖書の記述に基づいています。さらにそれから十日経つと、「聖霊降臨日」あるいは「ペンテコステ」というメジャーな祭日になります。

これは、もともとは「五荀節」というユダヤ教の祭日なのですが、聖書によるとこの日に聖霊がイエスの弟子たちに降臨し、彼らが積極的な宣教の任に着いたことが記されています。

このことから、この日はよく「キリスト教会の誕生日」とも理解されています。アイスランドでは、クリスマス、イースターと並んで、この祭りも「第二日」があり、翌日の月曜日も祝日です。

その一方で、この日はクリスマス、イースターほどの重要性は国民には浸透しておらず、ペンテコステの週末は「家族旅行の週末」と変身しています。

ペンテコステの翌週の日曜日は「三位一体主日」と呼ばれ、キリスト教の教義の柱である「三位一体説」を記念する日になります。

その後は、特に目立った祭日はなく、「聖霊降臨節」もしくは「三位一体節」と呼ばれる平穏な時期がアドヴェントの始まる十一月下旬まで続くことになります。

よくしたもので、この時期は夏でもあります。こちらでは教会も「夏休み」がありますので、まさしく平穏な時期です。

教会の夏休み


十一月になると、1日が「全聖徒の日」です。これは特に教会のメンバーで天に召された方々を記念する日です。前日のハロウィーンと何か繋がった背景があるのだろう、と勘が働いているのですが、まだ確証なしです。

さらに日が進んで、アドヴェントの始まる前週の日曜日、つまり教会暦で最後の日曜日は「王なるキリストの主日」と呼ばれ、「この世の最後」になぞらえて、「最後の審判」のようなことがテーマとして説教で語られることになります。個人的には、まったく思い入れのないテーマですが。

さて、教会暦の主な構成を一覧しましたが、もちろん上記以外にも多くの特別なテーマを持った「祭日」があります。例えば「殉教者ステファノの日」(ステファノは教会最初の殉教者)とか「マリアへのお告げの日」(3月25日。クリスマスの九ヶ月前)とか。

また、それぞれの教団、たとえばアイスランド国民教会が独自に設定している「若者の日」「年配者の日「聖書の日」等々のようなものもあります。




子供用の解説図 カトリック教会
Myndin er ur joyfulcatholicfalilies.com


教会暦はカトリック教会、アングリカン教会(英国国教会)、私の属するルーテル教会等、幅広い教会で用いられていますが、必ずしもすべての教会が用いているとは限りません。また、用いるとしても「クリスマスだけ」とか「クリスマスとイースター限定」のような関わりかたもあると思います。

教会暦は「従わねばならぬ」という性格のものではなく、むしろ、それに従うことによって、教会生活にリズムをつけ、かつキリストの生涯の全般にバランスよくかかわることを促し、助けてくれるものです。

「ガイドになるものが何もない」というのはかなりつらいものです。教会暦は基本的なガイドになるもので、メジャーな祭日の間の期間にも、読むべき聖書の箇所などを示唆してくれるものです。

必ずルーチン化してしまう部分がある、という弊害はあるのですが、それでもこの暦によって、私たちがキリストの地上での歩みから二千年を経た現在、クリスマスや十字架の受難を、「自分がその場にいる」ことを観想し、追体験する機会を得ることができるのです。

ただ、ひとつだけ難をつけるとすると、まあ「これは個人的な勝手な愚痴」と前もって言い訳しておきますが、クリスマスと受難節の間が短すぎるんですよね〜。クリスマスでイエスの生誕を祝った次には、イエスの受難を偲ぶ時期とは。

夏期の長〜い平穏な時期と比べてアンバランスだし、「二年周期」にしてもいいのでは?というのは末端牧師の浅はかな要望なのでした。


藤間/Tomaへのコンタクトは:nishimachihitori @gmail.com

Home Page: www.toma.is

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