こんにちは/こんばんは。
九月も半ばになりましたね。中秋の名月とは今頃かいな?と思いつきネットで検索したところ、今年は9月17日だったそうで、チョと遅かった。もっとも満月というのは、世界のどこから見ても同じなのでしょうか?
いやいや、そんなことがあるわけない。と思うのですが、それはまた気が向いた時に調べてみます。
アイスランドの月
Myndin er ur Vikurfrettir.is
日本とアイスランドではものの風情は随分と異なるのが普通ですが、それでも「中秋の名月」ということを思い浮かべると、結構同じような風情かなあ?という気もします。こちらの原野にぽっかり浮かぶ満月は、ススキの向こうのお月様と似たものがあると感じ入ります。
こちらで足りないのはお団子か?まあ、自分で作れば何とかなります。
さて、今回は愉快なトピックではありません。殺人についてです。このマイナーブログは、そもそもレイキャビク在住の日本人が感じる実際の生活感覚を気楽な感じでご紹介しよう、ということから始まっています。
楽しいことをご紹介できれば、それに越したことはありませんが、どの社会にも「闇」の部分はあります。アイスランドでのそういう「闇」のひとつがこのところ増加してしまっている「暴力」と「殺傷事件」なのです。
統計によりますと、1999年から2019年の二十年間にこちらで起きた殺人事件の犠牲者数は38人。年平均で1,9人となります。それが、2020年から2024年の五年間では犠牲者数23人、年平均で4,6人に跳ね上がります。二倍以上ですね。
今年に限っていうと、事件数は6件。犠牲者数は7人ということです。このうち3人が子供(未成年者)。殺人事件そのものが悲惨なものなのでしょうが、子供が犠牲者の場合はその度合いがはるかに増す気がします。
気分転換用ピック
Myndin er eftir Martin_jarnberg@unsplash_com
無差別事件は別として、大人が犠牲者の場合は、何かしらの関わりというか脈絡があることが多いでしょうから、「まったく予想外ではなかっただろう」とか勘ぐる余地があります。もちろん、それでも殺人が許されるわけではないですよ。
ですが、子供が犠牲者となると、ただただ「不条理」としか感じられません。
今年の一月、六歳の男の子が自宅で殺害されました。殺したのは何と母親。この家族は紛争地域からの難民として受け入れられた家族で、母親は精神的に病んでいたのではないか?と噂されました。
その後の詳細は... 私は聞いた覚えがないですねぇ。発表されたかも?しれません。
そして八月。レイキャビク市のカルチャーナイトのイベントの夜、十六歳の少年が、ティーンエージャーの男女二人をナイフで刺す事件が起こりました。男の子は大事に至りませんでしたが(刺された時点で大事か?)、女の子は数日間の集中治療の甲斐もなく亡くなりました。享年わずか十七歳。
何が起こったのかは、いまだにきちんと公表されていませんが、少なくとも亡くなった女の子は、ドラッグやその他の危険な行為にはまったく関わっていなかったことが明らかにされています。
女の子のための追悼会
Myndin er ur Facebook
アイスランドと日本では、このような事件の報道に違いがあるように思えます。それは事件を扱う当局、伝えるメディア双方の違いです。日本では、わりと捜査が進展する傍から情報を伝えてくれるようですが、こちらでは警察は極めて慎重で、なかなか事件の詳細や経過を発表しません。メディアも敢えて深追いしないようです。
これはですねえ、やはりアイスランドが「極小」社会であることに起因するものだと思われます。レイキャビク市の人口は15万弱、周辺の町を含めても25万強です。まさしく日本の小さな地方都市の大きさしかありません。
ですから何か事件が起きた場合、全住民にとって「身近で起きた事件」となるわけです。変に情報が与えられ過ぎたりすると、捜査や被害家族のプライバシーに思わぬ悪影響が出てしまうことは容易に推測できます。
かつ、捜査が終了して事件そのものは落ち着いたとしても、事件の顛末の詳細は特に発表されないこともあります。これはそれらの詳細がいたずらに被害者家族等に迷惑をもたらすものでしかない、と判断された時のようです。
この十七歳の女の子の父親は、娘さんが亡くなった後、すぐにSNSで名乗りを挙げ「娘は本当に罪のない明るい子供だった。このような若者による暴力事件がなくなるように、社会全体で考えて欲しい」訴えました。
数日して、この女の子が所属していた教会で追悼式が持たれ、さらに大きなハットゥルグリムス教会でも、追悼の祈祷会が超教派で行われました。
最近の大きな社会問題が、若者のナイフ等の凶器による暴力事件なのです。ファッションなのかブームなのか、おそらくはもっと根の深い精神的不安・不満足の故なのか、若者がナイフ等を携帯することが多くなっています。
多くの議論がなされており、そのようなナイフ等を扱うお店では、商品を鍵かかった棚に移したり、購入時にID提示を求める等の対策を取り始めました。
十七歳の女の子の追悼祈祷会、さらに葬儀が持たれたハットゥルグリムス教会
Myndin er eftir Ferdinand_stohr@unsplash_com
ところが、このカルチャーナイトの事件の暗い影響がまだ漂っていた先週の日曜日の夜。また殺人のニュースが報道されました。
成人男性から警察に「娘を殺してしまった」という通報が入り、警察が現地の郊外の溶岩地帯で十歳の女の子の遺体を発見。居合わせた四十五歳の父親を逮捕したというのです。この事件も詳細はまったく公表されていません。
私のいる教会の女性牧師の人は、「これが、娘が誤って足を滑らせるかどうかして落命してしまい、父親が責任を感じて『殺してしまった』と言ったようなもので、せめてあって欲しい」と話しましたが、確かにそのような事件性のない悲劇であってくれれば、という気はします。今の段階では、何も言えません。
この事件では、事件が起きた直後からある教会の女性牧師さんが警察に同行して、被害者の女の子の母親等、遺族の方々を慰め鎮めるために働いています。こちらでは、事故・事件の知らせる役目を牧師が受け持つことが伝統的に多いのです。
先の十七歳の女の子の家庭も、今回の十歳の女の子の家庭も、私のいる教会と同じレイキャビク東という区域の教会に属しています。先に「実際は事故であってほしい」と話した女性牧師さんは、この地域の地域長の牧師さんなのです。起こる事件のひとつひとつが「身近なもの」になってしまう、ということがおわかりいただけるかと思います。
というわけで、この二、三週間は重く暗い空気とピリピリした雰囲気が、そこかしこに漂っています。残念なことですが、これもアイスランドの現実です。もしアイスランドへのご旅行を準備されている方がありましたら、このような現実も頭の片隅にキープしておいてくださいますように。
*これは個人のプライベート・ブログであり、公的なアイスランド社会の広報、観光案内、あるいはアイスランド国民教会のサイトではありません。記載内容に誤りや不十分な情報が含まれることもありますし、述べられている意見はあくまで個人のものですので、ご承知おきください。
藤間/Tomaへのコンタクトは:nishimachihitori @gmail.com
Church home page: Breidholtskirkja/ International Congregation
Facebook: Toma Toshiki
九月も半ばになりましたね。中秋の名月とは今頃かいな?と思いつきネットで検索したところ、今年は9月17日だったそうで、チョと遅かった。もっとも満月というのは、世界のどこから見ても同じなのでしょうか?
いやいや、そんなことがあるわけない。と思うのですが、それはまた気が向いた時に調べてみます。
アイスランドの月
Myndin er ur Vikurfrettir.is
日本とアイスランドではものの風情は随分と異なるのが普通ですが、それでも「中秋の名月」ということを思い浮かべると、結構同じような風情かなあ?という気もします。こちらの原野にぽっかり浮かぶ満月は、ススキの向こうのお月様と似たものがあると感じ入ります。
こちらで足りないのはお団子か?まあ、自分で作れば何とかなります。
さて、今回は愉快なトピックではありません。殺人についてです。このマイナーブログは、そもそもレイキャビク在住の日本人が感じる実際の生活感覚を気楽な感じでご紹介しよう、ということから始まっています。
楽しいことをご紹介できれば、それに越したことはありませんが、どの社会にも「闇」の部分はあります。アイスランドでのそういう「闇」のひとつがこのところ増加してしまっている「暴力」と「殺傷事件」なのです。
統計によりますと、1999年から2019年の二十年間にこちらで起きた殺人事件の犠牲者数は38人。年平均で1,9人となります。それが、2020年から2024年の五年間では犠牲者数23人、年平均で4,6人に跳ね上がります。二倍以上ですね。
今年に限っていうと、事件数は6件。犠牲者数は7人ということです。このうち3人が子供(未成年者)。殺人事件そのものが悲惨なものなのでしょうが、子供が犠牲者の場合はその度合いがはるかに増す気がします。
気分転換用ピック
Myndin er eftir Martin_jarnberg@unsplash_com
無差別事件は別として、大人が犠牲者の場合は、何かしらの関わりというか脈絡があることが多いでしょうから、「まったく予想外ではなかっただろう」とか勘ぐる余地があります。もちろん、それでも殺人が許されるわけではないですよ。
ですが、子供が犠牲者となると、ただただ「不条理」としか感じられません。
今年の一月、六歳の男の子が自宅で殺害されました。殺したのは何と母親。この家族は紛争地域からの難民として受け入れられた家族で、母親は精神的に病んでいたのではないか?と噂されました。
その後の詳細は... 私は聞いた覚えがないですねぇ。発表されたかも?しれません。
そして八月。レイキャビク市のカルチャーナイトのイベントの夜、十六歳の少年が、ティーンエージャーの男女二人をナイフで刺す事件が起こりました。男の子は大事に至りませんでしたが(刺された時点で大事か?)、女の子は数日間の集中治療の甲斐もなく亡くなりました。享年わずか十七歳。
何が起こったのかは、いまだにきちんと公表されていませんが、少なくとも亡くなった女の子は、ドラッグやその他の危険な行為にはまったく関わっていなかったことが明らかにされています。
女の子のための追悼会
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アイスランドと日本では、このような事件の報道に違いがあるように思えます。それは事件を扱う当局、伝えるメディア双方の違いです。日本では、わりと捜査が進展する傍から情報を伝えてくれるようですが、こちらでは警察は極めて慎重で、なかなか事件の詳細や経過を発表しません。メディアも敢えて深追いしないようです。
これはですねえ、やはりアイスランドが「極小」社会であることに起因するものだと思われます。レイキャビク市の人口は15万弱、周辺の町を含めても25万強です。まさしく日本の小さな地方都市の大きさしかありません。
ですから何か事件が起きた場合、全住民にとって「身近で起きた事件」となるわけです。変に情報が与えられ過ぎたりすると、捜査や被害家族のプライバシーに思わぬ悪影響が出てしまうことは容易に推測できます。
かつ、捜査が終了して事件そのものは落ち着いたとしても、事件の顛末の詳細は特に発表されないこともあります。これはそれらの詳細がいたずらに被害者家族等に迷惑をもたらすものでしかない、と判断された時のようです。
この十七歳の女の子の父親は、娘さんが亡くなった後、すぐにSNSで名乗りを挙げ「娘は本当に罪のない明るい子供だった。このような若者による暴力事件がなくなるように、社会全体で考えて欲しい」訴えました。
数日して、この女の子が所属していた教会で追悼式が持たれ、さらに大きなハットゥルグリムス教会でも、追悼の祈祷会が超教派で行われました。
最近の大きな社会問題が、若者のナイフ等の凶器による暴力事件なのです。ファッションなのかブームなのか、おそらくはもっと根の深い精神的不安・不満足の故なのか、若者がナイフ等を携帯することが多くなっています。
多くの議論がなされており、そのようなナイフ等を扱うお店では、商品を鍵かかった棚に移したり、購入時にID提示を求める等の対策を取り始めました。
十七歳の女の子の追悼祈祷会、さらに葬儀が持たれたハットゥルグリムス教会
Myndin er eftir Ferdinand_stohr@unsplash_com
ところが、このカルチャーナイトの事件の暗い影響がまだ漂っていた先週の日曜日の夜。また殺人のニュースが報道されました。
成人男性から警察に「娘を殺してしまった」という通報が入り、警察が現地の郊外の溶岩地帯で十歳の女の子の遺体を発見。居合わせた四十五歳の父親を逮捕したというのです。この事件も詳細はまったく公表されていません。
私のいる教会の女性牧師の人は、「これが、娘が誤って足を滑らせるかどうかして落命してしまい、父親が責任を感じて『殺してしまった』と言ったようなもので、せめてあって欲しい」と話しましたが、確かにそのような事件性のない悲劇であってくれれば、という気はします。今の段階では、何も言えません。
この事件では、事件が起きた直後からある教会の女性牧師さんが警察に同行して、被害者の女の子の母親等、遺族の方々を慰め鎮めるために働いています。こちらでは、事故・事件の知らせる役目を牧師が受け持つことが伝統的に多いのです。
先の十七歳の女の子の家庭も、今回の十歳の女の子の家庭も、私のいる教会と同じレイキャビク東という区域の教会に属しています。先に「実際は事故であってほしい」と話した女性牧師さんは、この地域の地域長の牧師さんなのです。起こる事件のひとつひとつが「身近なもの」になってしまう、ということがおわかりいただけるかと思います。
というわけで、この二、三週間は重く暗い空気とピリピリした雰囲気が、そこかしこに漂っています。残念なことですが、これもアイスランドの現実です。もしアイスランドへのご旅行を準備されている方がありましたら、このような現実も頭の片隅にキープしておいてくださいますように。
*これは個人のプライベート・ブログであり、公的なアイスランド社会の広報、観光案内、あるいはアイスランド国民教会のサイトではありません。記載内容に誤りや不十分な情報が含まれることもありますし、述べられている意見はあくまで個人のものですので、ご承知おきください。
藤間/Tomaへのコンタクトは:nishimachihitori @gmail.com
Church home page: Breidholtskirkja/ International Congregation
Facebook: Toma Toshiki
>ナイフによる殺人、ですか。一時期、日本でもコンバットナイフなどが流行って、派生し... への返信
kuwasannさん、いつもコメントありがとうございます。m(_ _)m
確かに気が重くなる事件が続いてしまっています。事件というのは、おそらく氷山の眼にみえる一角でしょうから、その下に何があるのかを真面目に考える時なのだろうと考えています。
世界の各地で起こっていることも、若者の心や考えに影響を与えていることは間違い無いだろうと思います。