今日はアイスランドのお医者さん事情です。まず始めに、ごくごく簡単にここでの医療の仕組みの見取り図を示してみます。ここではいわゆる「ホームドクター制」が取られています。国民は自分がどこに住んでいるかによって、その地域の「健康管理センター」に登録されます。
レイキャビクでは多分それぞれの健康管理センターにふたりくらいのお医者さんがいるはずと思います。そしてその中のひとりが住民である特定の個人のホームドクターになるわけです。これは調べたわけではありませんが、その人の家族は皆同じドクターに診てもらうようになっているはずです。
ですから、誰かが流感にかかったりお腹の調子が悪かったりすると、まずこのホームドクターの予約を取って診てもらう必要があります。ところがこの予約がなかなか取れず、「空いている時間は二週間先です」とかいう事態になることさえあります。
患者さんが深刻な状態だったり、事故にあったような場合は国立大学病院にある「急患受け付け」へ行くことができます。それでもずいぶん待たされる人もいるみたいですが。
国立大学病院には、ホームドクターの様な「何でも屋」ではない専門の科と専門医がいます。この病気はホームドクターでは無理だ、と始めから考えられる場合は直接専門医に行くことも可能ですが、原則に従ってホームドクターに差し戻されることもあります。ただそのまま診てくれることもあります。
さて、今日の本題ですがズバリ「医者不足」です。現在アイスランドには1.100人のお医者さんが働いています。その内640人が五十歳以上。さらにその640人の内303人は六十歳以上です。五年以内に135人が退職する予定となっています。
これに比して四十代のお医者さんは250人で数が落ち込んできます。三十代は136人でさらにぐっと落ち込みますが、特に三十五から三十九歳というのは僅かに52人しかいません。一番若い分類の二十四から二十九歳も少なく、78人です。
この数字から見て取れるのは、年齢が若くなるにつれてお医者さんの数が少なくなっている傾向があるということです。実はこれは外国に行ってしまうお医者さんが多いからなのです。
2009年から2013年の五年間には330人のお医者さんがアイスランドに「ブレスブレス(バイバイ)」をしてしまいました。逆に同期間に帰って来たお医者さんも140人いましたが、全体では190人のマイナスです。一年に換算すると38人ずつお医者さんが国を離れていることになります。
もう少し細かく見てみると、同五年間に医者の免許を取得した人は230人。そしてその内の90人が国を離れてしまっています。まさしく教育を終えたらすぐに出て行ってしまう、の感がありますね。
これに加えて、先に述べた定年退職で辞めていくお医者さんもいるわけですから、今後医者不足に拍車がかかるのは間違いありません。モルグンブラウズ紙の計算では、現在国民295人当たりに医者がひとりいるという割合が、今後十年間では国民390人につき医者がひとりという割合に向かっていくそうです。
で、若いお医者さんがなぜ国外へ行ってしまうかというと、やはり労働環境が良くない、特に給料が安いということなのです。
2008年の経済崩壊以来、政府の保健衛生行政に関する予算分配がのきなみ削られて来ました。当然スタッフ数も給料も減り、逆にスタッフ一人当たりの労働は増してきました。加えて、看護師さんも含めてですが、人の生命を直接扱っているという責任の重さは軽減されません。
肉体的にも精神的にもへとへとになるのに給料は見合ったものがもらえない。これでは外国に目が向くのは無理からぬことでしょう。先に示しました年齢別の数の違いの中で、三十五から三十九歳のお医者さんが52人と極端に少なかったですね。想像するには五年前の経済恐慌時に三十代前半だった人たちが国を離れたのと、子供が生まれたりして生活にかかりがする人たちが出て行ったのではないでしょうか?
新卒のお医者さんたちの基本給は約36万クローネとのこと。大学卒の人たちの平均収入が月54万クローネですから、本当に若いお医者さんたちの給料は安いのです。
アイスランド医師協会の会長さんであるソルビョルン ・ヨウンスさんの話しでは、「医者の労働環境を周辺国並の状態にするように国が努力をしないなら、本当に未来はなくなる」と述べています。
医学部の四年生から六年生は実際にインターンとして治療現場に立ちます。彼らも給料をもらいますが、これも薄給。医科学生協会の会長さんのラグンヒルドゥル・ホイクスドティールさんの話しでは、「きちんとした教育と労働の対価としての給与がもらえないなら、来年卒業予定の48人の六年生はみんな外国へ行ってしまうだろう」と昨日(二十六日)のニュースで語っていました。
医療現場はチームですからねえ。医者だけ条件が良くなれば、というものでもないでしょう。行政は何を考えているのか?と疑ってしまいます。確かに経済効果のない分野ですが、健康は人間生活の基本中の基本ですからね。きちんとこれからの青写真を示して欲しいものだと思います。
これもホントのアイスランドですよ。ちょっとコワッ!
まだまだ凄い。国営放送の火山の英語情報はこちら。
*都合によりしばらくの間、週に一回のブログ更新になります。m(_ _)m
応援します、若い力。Meet Iceland
藤間/Tomaへのコンタクトは:nishimachihitori @gmail.com
Home Page: www.toma.is
レイキャビクでは多分それぞれの健康管理センターにふたりくらいのお医者さんがいるはずと思います。そしてその中のひとりが住民である特定の個人のホームドクターになるわけです。これは調べたわけではありませんが、その人の家族は皆同じドクターに診てもらうようになっているはずです。
ですから、誰かが流感にかかったりお腹の調子が悪かったりすると、まずこのホームドクターの予約を取って診てもらう必要があります。ところがこの予約がなかなか取れず、「空いている時間は二週間先です」とかいう事態になることさえあります。
患者さんが深刻な状態だったり、事故にあったような場合は国立大学病院にある「急患受け付け」へ行くことができます。それでもずいぶん待たされる人もいるみたいですが。
国立大学病院には、ホームドクターの様な「何でも屋」ではない専門の科と専門医がいます。この病気はホームドクターでは無理だ、と始めから考えられる場合は直接専門医に行くことも可能ですが、原則に従ってホームドクターに差し戻されることもあります。ただそのまま診てくれることもあります。
さて、今日の本題ですがズバリ「医者不足」です。現在アイスランドには1.100人のお医者さんが働いています。その内640人が五十歳以上。さらにその640人の内303人は六十歳以上です。五年以内に135人が退職する予定となっています。
これに比して四十代のお医者さんは250人で数が落ち込んできます。三十代は136人でさらにぐっと落ち込みますが、特に三十五から三十九歳というのは僅かに52人しかいません。一番若い分類の二十四から二十九歳も少なく、78人です。
この数字から見て取れるのは、年齢が若くなるにつれてお医者さんの数が少なくなっている傾向があるということです。実はこれは外国に行ってしまうお医者さんが多いからなのです。
2009年から2013年の五年間には330人のお医者さんがアイスランドに「ブレスブレス(バイバイ)」をしてしまいました。逆に同期間に帰って来たお医者さんも140人いましたが、全体では190人のマイナスです。一年に換算すると38人ずつお医者さんが国を離れていることになります。
もう少し細かく見てみると、同五年間に医者の免許を取得した人は230人。そしてその内の90人が国を離れてしまっています。まさしく教育を終えたらすぐに出て行ってしまう、の感がありますね。
これに加えて、先に述べた定年退職で辞めていくお医者さんもいるわけですから、今後医者不足に拍車がかかるのは間違いありません。モルグンブラウズ紙の計算では、現在国民295人当たりに医者がひとりいるという割合が、今後十年間では国民390人につき医者がひとりという割合に向かっていくそうです。
で、若いお医者さんがなぜ国外へ行ってしまうかというと、やはり労働環境が良くない、特に給料が安いということなのです。
2008年の経済崩壊以来、政府の保健衛生行政に関する予算分配がのきなみ削られて来ました。当然スタッフ数も給料も減り、逆にスタッフ一人当たりの労働は増してきました。加えて、看護師さんも含めてですが、人の生命を直接扱っているという責任の重さは軽減されません。
肉体的にも精神的にもへとへとになるのに給料は見合ったものがもらえない。これでは外国に目が向くのは無理からぬことでしょう。先に示しました年齢別の数の違いの中で、三十五から三十九歳のお医者さんが52人と極端に少なかったですね。想像するには五年前の経済恐慌時に三十代前半だった人たちが国を離れたのと、子供が生まれたりして生活にかかりがする人たちが出て行ったのではないでしょうか?
新卒のお医者さんたちの基本給は約36万クローネとのこと。大学卒の人たちの平均収入が月54万クローネですから、本当に若いお医者さんたちの給料は安いのです。
アイスランド医師協会の会長さんであるソルビョルン ・ヨウンスさんの話しでは、「医者の労働環境を周辺国並の状態にするように国が努力をしないなら、本当に未来はなくなる」と述べています。
医学部の四年生から六年生は実際にインターンとして治療現場に立ちます。彼らも給料をもらいますが、これも薄給。医科学生協会の会長さんのラグンヒルドゥル・ホイクスドティールさんの話しでは、「きちんとした教育と労働の対価としての給与がもらえないなら、来年卒業予定の48人の六年生はみんな外国へ行ってしまうだろう」と昨日(二十六日)のニュースで語っていました。
医療現場はチームですからねえ。医者だけ条件が良くなれば、というものでもないでしょう。行政は何を考えているのか?と疑ってしまいます。確かに経済効果のない分野ですが、健康は人間生活の基本中の基本ですからね。きちんとこれからの青写真を示して欲しいものだと思います。
これもホントのアイスランドですよ。ちょっとコワッ!
まだまだ凄い。国営放送の火山の英語情報はこちら。
*都合によりしばらくの間、週に一回のブログ更新になります。m(_ _)m
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