レイキャビク西街ひとり日誌 (Blog from Iceland)

北の小さな島国アイスランドはレイキャビクの西街からの、男独りブログです。

列車に乗り遅れたアイスランド人?

2013-02-15 05:00:00 | 日記
先日ASIという日本の連合のようなナショナル・センターが、アイスランド人の生活状況をフィンランドを除く他の北欧諸国と比較した報告書を発表しました。確か四年毎に行っている調査レポートです。

新聞で要約を見ただけなので、詳細が不明な点が多々あるのですが、日本から見ると往々にして「ひとまとめ」に見えてしまう北欧諸国の違いを知るためのひとつの手がかりにはなると思います。

新聞に出ていた要約は主に職業の分野別に見る収入の比較です。アイスランドでの収入の平均を100とした場合の国別の数値がどれほどになるか、というものです。

例えば専門職でない個人の収入の比較を見ますと、アイスランドが100として、スウェーデンは119、デンマーク135、ノルウェーが141ということです。

専門職の個人では、スウェーデン133、デンマーク142、ノルウェー159で、これは一番差が顕著なグループでした。

専門職でない職に就いていて、子供がふたりいる夫婦の場合。スウェーデン129、デンマーク136、ノルウェー148となります。

ざっと平均してみると、アイスランドが100の場合、スウェーデンが125、デンマークが135、ノルウェーが150と言う感じです。

ノルウェーが一番豊かですね。アイスランド人の収入の1,5倍あることになります。

経済破綻後、実際にノルウェーに移って行ったアイスランド人は多いのですが、個人的に、またメディアを通して聞く言葉は「ノルウェーの方が生活が楽だ」というポジティブな感想がほとんどです。

ちなみにノルウェー等に移っていった人達は、生活が苦しくて、と言う人ももちろんありますが、資格や技術を持つ、高収入を得ることが出来る人が多いのです。例えば多くの医師が移ってしまい、アイスランドは日本とは別の理由での医師不足になっています。

報告書では「アイスランド人は北欧国の平均的な生活を維持するために、かなりの長時間の労働をするはめになっている」と注釈しています。

この他目に付いたことは、低・平均所得者層に対する所得税の割合がアイスランドが一番高いこと。逆に高所得者層に対する所得課税はアイスランドが42%で一番低く、スウェーデンが57%で一番高いと言うようなことでしょうか。

ただ、ASIの専門家は収入別の課税による負担の実際は、それほど単純ではなく多角的に見ないといけない、とコメントしています。例えば最低所得層に関しての実際の負担はアイスランドでは他の北欧諸国に較べて「相当軽い」のだそうです。

「アイスランドは経済生活の様々な点で、北欧の列車に乗り遅れている」と言うのが報告書の総括的な見出し。

そうは言ってもですねえ、国家経済が恐慌で破綻してからまだ四年余りですからね。対等な比較なんてできるわけがないじゃん、と思うのですが。すっかり忘れているような風の物言い。

そう言えば「生活の基礎を見直す」「豊かさとは何かを考え直す」とか言っていた恐慌直後の殊勝な態度はどこへやら。「破綻している国には見えない」と旅行者の方々がおっしゃるように、生活ぶりは元へ戻っている気がします。

アイスランド的楽天主義なのか、単にバカなのか。(失礼) 一抹の不安がよぎる今日この頃でありました。

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スプレンギ・ダーグル 人生は「爆発」だ!

2013-02-13 05:00:00 | 日記
昨日、二月十二日火曜日は「スプレンギ・ダーグル」と呼ばれる日でした。先週「シュークリームの日」について書いた時、「スプレンギ・ダーグル」は金曜日だと書いてしまいましたが、それは誤り。火曜日でした。事実誤認でした。平に陳謝いたします。

このブログでの扱いも、今日の「灰の水曜日」と前後してしまいました。

私にはあまり身近な伝統でないことをバラしてしまいましたが、このスプレンギ・ダーグルには塩漬けの肉と豆を食べる習慣があります。塩漬けの肉は昔から保存食として作られていたようで、今でも安価な食べ物ですし、豆もまたしかり。

正直言ってこの日の正式な?メニューを食べたことがないのですが、塩漬けの肉は煮て、これも煮た豆と一緒に食べるようです。



Myndin er úr Fridur.is

さて「スプレンギ・ダーグル」のスプレンギはスプレンギャという動詞から来ています。Sprerengjaは「爆発する」の意味で「爆弾」という名詞でもあります。つまりお腹が爆発するほど食べる日、ということなんです。(「ダーグル」は「日」ですからね!もう何度も出てきました) 日常的にもお腹いっぱい食べた時には「イェフ エラ スプレンギャ」(破裂しそう)とよく言います。

明日の水曜日から始まるファスタの期間中は肉を食べることを避ける、という習慣が昔からあります。中世のカトリック文化ではかなり強い拘束力を持っていたようです。その反動から、ファスタの直前にお腹いっぱい肉を食べるようになり、いわゆる「謝肉祭」などが出てきたわけです。

アイスランドでは十八世紀中頃の文献にこのスプレンギ・ダーグルについて「白い火曜日」という名で紹介し、皆が満腹を過ぎるまでハンギ・キョート(アイスランド名物の半薫製のラム肉。現在ではクリスマス時の人気伝統料理)を食べたことが述べられています。

この「白い火曜日」には別の出自もあるようで、デンマークやノルウェーでは小麦粉の団子を牛乳で煮て食べる日のことを指したようです。どう考えても「オエッ」という感じですが... すみません。食習慣はお故郷それぞれですね。

現代では、昔のようにカトリック的な習慣には頓着のない人が増えてきましたし、ほとんどの家庭ではファスタの間も普通に肉食がされていることと思います。スプレンギ・ダーグルも「一ヶ月強、肉よさようなら」という悲壮な覚悟で迎えている人は少ないと思います。

もちろん、今でもファスタ中は肉食をしない、ということを信条として守っている方もいらっしゃいますし、それはそれで尊敬されてしかりと思います。

肉食をしないという習慣は、実は古くからのファスタ中の断食(肉に限らず)や節制の一部であったのですが、「肉食」がシンボル的に浮き上がって来たのは、昔の人はやはり肉が大好きだったからでしょうか?

確かにワタシも肉は大好きですねえ。ああ、焼き肉食べたい。特上ロース、カルビ、タン塩... そういうのはアイスランドでは食べられません。一度スーパーで牛タンの塊(安い)を買って来たことがありましたが、食べるまでの準備の道のりが長―いことを知らされました。

ああ、要らぬスイッチを入れてしまった。焼き肉屋さんにフラッと入れる皆さん、世界中のどこでもそう行くわけではないですからねェ!

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「灰の水曜日」の過ごし方

2013-02-11 05:00:00 | 日記
今週の水曜日からファスタ(受難節、四旬節、レント)に入ります。そのしょっぱなの水曜日は「灰の水曜日」と呼ばれます。もともとは「灰の日」だけだったのですが、いつも水曜なので一般に「灰の水曜日」が取って替わったそうな。

これはもともとカトリック教会の伝統で、受難節の始めに当たって「灰をかぶって嘆く」(旧約聖書などを読むと、人々は悲しいこと、恐ろしいことに出くわすと「服を引き裂き、頭から灰をかぶって嘆く」描写がよく出て来ます)という精神で始められたようです。

今もカトリックでは額に灰で十字を書く儀式があります。聖公会ではどうか?うーん、存じません。ルーテルでは儀式はないですね。

アイスランドではこの日は「オスク・ダーグル」と言います。「オスク」は灰、「ダーグル」は日です(もう、覚えてくれましたか?)。この日にはきちんとした伝統行事があります。「灰をかぶって嘆く」こととどう関わりがあるのか、全く不明です。

その伝統行事とは、まあ小学生が中心なのですが、思い思いの仮装をして歩く、ということです。この時期になると、町のおもちゃ屋さん等の店先にはざまざまな仮装用の衣装が並びます。スパイダーマン、シンデレラ、忍者、ジェイソン、妖精等々...

私の長男が幼稚園だった頃、というのはもう十七年くらい前のことですが、出来合い物ではつまらない、と思いウルトラマンのお面を作ったことがありました。お面と言っても上頭部がすっぽり隠れるような七十五パーセントヘルメット的なものでした。

人間の頭に合うように紙や新聞を形作るのは難しかったですが、非常に良い出来映えで、園のスタッフや園児のお母さん方から賞賛をいただきました。「見たか!ウルトラマンを。知らねえだろう?」と、文化的適応未完了だった私は得意になったのを覚えています。

さて、子供達の仮装大会ですが、学校に集まることもあれば、この日は全くのお休みということもあります。それぞれの学校で決めているようです。



Myndin er úr Ferdamalastofa.is


仮装するだけなら問題はないのですが、続きがあります。スーパーマンやゾンビや赤毛のアンが集まると、彼らは町や近所のお店やオフィスを訪ねて回ります。そしてそこで何か一曲、コーラスを披露します。コーラスは大げさ、何か歌うのです。そして歌い終わるとキャンディとかチョコとか、小さなお菓子をもらえるのです。

配布用お菓子を用意しておくのはお店やオフィスの「大人の」常識です。面白いのは、ただお菓子をあげるのはよくないらしく、大人達の方から「何か歌え」と催促することがあることです。労働の対価?

というわけで、「灰をかぶって嘆く」はずのこの日は、ミニ・ハロウィーンと化しています。まあ、教会のオフィスにゾンビ軍団が入って来ても、子供だとやっぱりかわいいですけどね。

一言付け加えますと、先日のJapan Festivalでは大学生たちのコスプレ・コンテストをやっていました。仮装が好きなのかな?みんな。なんて他人事のように言っていますが、若い女性を含む邦人の仲間ではクリスマス仮装飲み会をしましたし、「またやろう」ということになっています。

大人の仮装もそれなりに「見所」がありますが、較べてみると、ちいちゃなゾンビ軍団の方がまだ健康的な気がしなくもないなあ...へへ)


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ボル・ダーグル シュークリームの日!

2013-02-09 05:00:00 | 日記
キリスト教文化圏ではクリスマスとならんで春のイースター(復活祭)が大きな祭事となっています。イースターのことをアイスランド語ではパウスカーと言います。パウスカーそのものについては機会を改めてご紹介するつもりです。

さてそのパウスカーから遡ること四十六日間は受難節または四旬節という期間で、キリストの十字架刑を偲ぶ時期なのですが、この期間は肉類を食することを控える、という習わしが広く伝わりました。この期間をアイスランド語でファスタといいます。英語のfastと関連がありますが断食のことも意味します。

で、このどちらかというと暗ーい?気分の四十六日間の始まりが、今年は来週の水曜日、二月十三日に当たります。パウスカーはクリスマスと違い、毎年日が動きます。日本でパウスカーがいまいち商業ベースに乗らないのはそのためだとか。このファスタについても日を改めて書いてみたいと思います。

さて、そのファスタに先立つ三日間、今年で言うと二月の十日、十一日、十二日をパウスカ・インガングと呼び、これはファスタへの入り口の期間とされています。この入り口の三日間を始め、来週はいろいろと伝統的な行事が並んでいますので、ご案内したいと思うわけです。

と、長ーい前置きになりましたが、今日の本題です。ファスタへの入り口の月曜日はボル・ダーグルです。「ボル」は「ボラ」の連語形。ボラというのは魚ではなくて、日本で言うシュークリームです。ダーグルは「日」です。

ただこちらのシュークリームはカスタードクリームばかりではなく、ブルーベリー、チョコレート、ストロベリー、キャラメル、ミックス等いろんなバリエーションがあります。共通しているのは、いずれもカロリー満点のクリームが目一杯つまっていることです。



Myndin er úr Vísir.is


このボル・ダーグル、ノルウェーとデンマークの影響があるとかで、アイスランドへやってきたのは十九世紀になってからだとか。ただノルウェー等ではこのボル・ダーグルは翌週の火曜日らしいのですが、アイスランドでは一週間強早まってファスタへの入り口の月曜日に落ち着きました。

月曜になった理由はその翌日にあたる火曜日(今年で言えば十二日)の「スプレンギ・ダーグル」という別の伝統的な食習慣を邪魔しないように、との配慮だとか。このスプレンギ・ダーグルにはたらふく食べますので、シュークリームは余計だったのでしょう。

ボル・ダーグルには、見渡せる限りの周囲ではみんなシュークリームを食べています。幼稚園、学校、オフィス、教会でも。なぜか公費で買うことが認められているようで、オフィス等では代表が買いに行って何箱も持ち帰り、みんなただ酒、ではない「ただシュー」にありついています。私もこの日には必ず教会のオフィスへ顔を出すようにしています。

シュークリーム、結構いい値段でひとつ250から350クローネくらいします。スーパーなどではここ数年間はフライングが定着してしまい、月曜前の週末から特設売り場を開いてしまっています。

ワタシ、甘党では無いんですけどねエ、この日はシュークリームを食べるのが楽しみです。文字通り一年に一回かな?いや、まとめて幾つか買うので前後を合わせて年に三回程度のお楽しみです。


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日本大使館

2013-02-07 05:00:00 | 日記
つい一週間ほど前に、札幌にいる母から「今しがた今夜のニュースで『アイスランドに日本大使館を設立することが、政府閣議で了承された』と言っていたよ」とメイルがありました。

日本大使館設立??日本大使館は今でもあるけど...??

もう十年以上前の1999年でしたか、時の小渕恵三首相がアイスランドを公式訪問されました。何とジャンボの政府専用機の到着がテレビで生中継されましたよ。

話しが脱線しますが、機長はアイスランドの空港を知らなかったので、首相一行がその前の公式訪問地ドイツにいる間に、空のジャンボを飛ばして着陸のリハーサルに来たそうです。加えて首相の外遊にはいつも控えのジャンボが一緒に飛んで来るのだそうです。転ばぬ先の杖。

市内のホテルにプレス会場が設立され、報道陣や関係者でごったがえしました。なぜだったか良く覚えていませんが、多くの在留邦人と同様、私もアイスランドの報道の手伝いかなんかで呼び出されました。何をしたのか、とんと記憶がございません。

覚えているのはやたらに大勢に囲まれて動くんだなあ、ということでした。政府関係の若い女性に訊いたら、「首相のオペの時はいつもそうです」とお答えいただいたのはよく覚えています。

さて、この訪問時に当時のアイスランドのオッドソン首相との間で大使館の相互設置が合意されたと言うことで、2001年の2月に在アイスランド日本大使館が、そのあとの10月に在日アイスランド大使館が設立された、とウェッブで確認しました。

在日アイスランド大使館ホームページ


私の記憶では在日アイスランド大使館の方が先にオープンしたような気がしたのですが...ボケが迫っている。

当初は日本大使館はホテル・サーガという由緒あるホテルの一階に間借りしていました。しばらくして、新築された高級感のあるビルのペントハウスに引っ越しました。このビルの一階はアップルストアなのです。大使館に出向く時は要注意。ついつい無駄金を使ってしまう...(店に足を踏み入れたら負け。って、どっかのキャバクラか?)

どこでもいいというわけではなく、相当重い機械とかを設置できる設計でなければダメなんです、と当時の書記官の方が言われていました。重い機械って、何なんでしょうね?今のビルは広いし、廊下でボーリングができそうです。ボーリングの機械かも...

ところがこの日本大使館。実は大使不在の大使館だったんです。大使は在ノルウェー大使が兼任。そしてアイスランドには「臨時代理大使」という肩書きの方がおいでになります。

外務省の組織構成のことは良く知らないのですが、いわゆる「大使館」には「特命全権大使」というポジションの方がいらっしゃるのだそうです。いわゆる「大使」です。で、「臨時代理大使」がいらっしゃる公館は外務省の規約では「準大使館」的なところにあるようです。

それが今回、長年の嘆願?かなって「大使館昇格」が叶うと言うことのようです。とすると、特命全権大使のお越しはもとより、大使館のスタッフが増えたり、色々と変化もあるのでしょうねえ。

何だかんだと言っても、今まで大使館と在住邦人の皆さんは友好的に過ごして来ましたので、その点は変わりないことを願います。


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