転勤の時に予習のために読んだ本の抜粋を、偶然にも先輩がまとめたメモを見つけたので、
備忘録として保存しておきます。
『監査役監査の基本と実践上の着眼点』
元住友化学常勤監査役 小川文夫氏
【監査役と監査】
・監査役へのアドバイス
監査役らしく振舞おうと思っても、実態が違うので高い壁にぶつかって悩むだけ。
実態を踏まえて振舞うことを優先すべき。
建前に沿って振舞うことは何のメリットもない。
・監査役の認識
監査役監査は「会社の所有者(株主)から業務執行を委託された者(取締役)が負っている
基本的な義務をどう履行しているか、その履行状況を監視・点検することである。
・監査役監査の出発点
取締役が株主に対して善管注意義務と報告義務をを負い、この善管注意義務と報告義務
(+忠実義務と監督義務)を適正に果たしているかを株主に代わって監視、点検することが、
監査役の出発点である。
また取締役の義務の拡大で監査役の監査責任範囲も拡大している。
監査役は、取締役が会社法や定款の定め、コンプライアンスの要請に従って
適正に会社を運営しているかを問う。
・取締役の4つの義務
善管注意義務と報告義務
善管注意義務を補充する忠実義務と監督義務
・監査役に求められる3つの視点
1.株主の目 オーナーの立場に立ったモニター
2.法律の目 法令・定款遵守・不正背任の違法行為
3.世間の目 客観的第三者の視点、「世間がこれを許すか」
【会計監査への取組み】
・会計監査へのスタンス
会計監査の役割は、計算書類等の準拠性と信頼性を担保すること。
その本質は、計算書類等による自己申告に偽りや間違いが無いかを点検し、
その適正さを保証すること。
全面的に依存するのではなく、原則として依拠し、監査役の立場から
足りない所を補完するのが実際的である。
・会計監査人の手の内を知る
(期中)監査人の監査方法や監査計画をよく聞き、計画通りにキチットとされているか。
現場に立ち会って見届ける。
コミュニケーションをとり、時には助け、時にははっぱを掛ける。
→会計監査人のステップごとに作る資料を見せてもらう。
→会計士協会に提出する資料を見せてもらう。
→監査調書を見せてもらう。
(期末)監査結果や方法を整った形で資料に基づいて説明を受ける。
(番外)色々なタイプの会計士と知合いになる。
現場をみている若い会計士と知合いになること。
・監査報告書等 会計士への質問内容
1.監査計画の中で重点監査項目として挙げたことに対しての監査結果は?
2.監査計画の中で主要な事項について、その結果はどうであったのか。
3.監査の最終結論をだす前の意見形成の段階で、監査チームの中で
出された主要な検出事項はどういうものがあったのか?
4.会社の経理部門との間で最終的にどんな点の調整を図ったか?
5.監査法人の審査を受けている中で、どんな評価になっているか。
どこが問題だと言っていたのか。
・監査の方法の相当性の点検と監査の結果の相当性の点検
着眼点
1.監査人の精神的独立性の確認(癒着はないか)
2.マンネリによる注意力の低下はないか。
3.専門家として手抜きはないか。
4.微妙な項目についての監査人の判断に揺らぎは無いか。
5.監査人によって、言うことに食い違いはないか。
・監査役自身でやれることは何か。
→月次決算や経営の動向を把握して、期末決算に対して自分なりに
点検できるベースを整えておく。
→決算や計算書類など納得のいくまで経理から充分に聴取する。
会社の決算方針、会計監査人との意見調整、B/S P/L前期差異、
営業外損益、特別損益の内訳、株式資本等変動計算書の内容
→事業報告の内容チェック
→例年と比べて違和感や異様な雰囲気がないか。
【業務監査への取組み】
・監査役の業務監査の一番の狙いは、
会社法381条1項「監査役は取締役の職務の執行を監査する」が基本
一番の狙いは、取締役の任務懈怠の防止と遵法経営の確保
3つの監査
1.経営意思決定過程
2.業務執行過程
3.事業報告書の点検
具体的には
1.経営意思決定過程
重要な会議への参加、稟議書等の書類を確認する
安易な意思決定やリスク見積の甘い意思決定がないか
正規の稟議手続きを経ずにトップと一部担当が関与していないか
2.業務執行過程
取締役面談や業務概況のヒアリング
月報を取寄せて分析
事業所や子会社を訪問し実態を把握
3.事業報告書の点検
誤った報告、虚偽報告、粉飾決算を真剣にチェックする
【監査活動のサイクルと意識的対応】
監査活動の7つのステップ
1.監査活動の準備
2.監査計画の作成
3.期中監査
4.期末監査
5.監査報告書の作成
6.定時株主総会への対応
7.事後対応
【社外監査役との協力と監査役会の活用】
社内常勤監査役は、社外監査役を敬遠したり、敵視するような対応を避け、
逆に心強い援軍と考え、社外監査役を含めた監査役会全体で監査役の必要条件を
満たす方向でリーダーシップを発揮する。
社外監査役の弱点である「経営の実情や関連情報に疎い部分」を如何に補うか。
社外監査役は、その会社の経営陣から独立性が高く、社内倫理に囚われず、
客観的に事態を判断できる長所をもち得る。
備忘録として保存しておきます。
『監査役監査の基本と実践上の着眼点』
元住友化学常勤監査役 小川文夫氏
【監査役と監査】
・監査役へのアドバイス
監査役らしく振舞おうと思っても、実態が違うので高い壁にぶつかって悩むだけ。
実態を踏まえて振舞うことを優先すべき。
建前に沿って振舞うことは何のメリットもない。
・監査役の認識
監査役監査は「会社の所有者(株主)から業務執行を委託された者(取締役)が負っている
基本的な義務をどう履行しているか、その履行状況を監視・点検することである。
・監査役監査の出発点
取締役が株主に対して善管注意義務と報告義務をを負い、この善管注意義務と報告義務
(+忠実義務と監督義務)を適正に果たしているかを株主に代わって監視、点検することが、
監査役の出発点である。
また取締役の義務の拡大で監査役の監査責任範囲も拡大している。
監査役は、取締役が会社法や定款の定め、コンプライアンスの要請に従って
適正に会社を運営しているかを問う。
・取締役の4つの義務
善管注意義務と報告義務
善管注意義務を補充する忠実義務と監督義務
・監査役に求められる3つの視点
1.株主の目 オーナーの立場に立ったモニター
2.法律の目 法令・定款遵守・不正背任の違法行為
3.世間の目 客観的第三者の視点、「世間がこれを許すか」
【会計監査への取組み】
・会計監査へのスタンス
会計監査の役割は、計算書類等の準拠性と信頼性を担保すること。
その本質は、計算書類等による自己申告に偽りや間違いが無いかを点検し、
その適正さを保証すること。
全面的に依存するのではなく、原則として依拠し、監査役の立場から
足りない所を補完するのが実際的である。
・会計監査人の手の内を知る
(期中)監査人の監査方法や監査計画をよく聞き、計画通りにキチットとされているか。
現場に立ち会って見届ける。
コミュニケーションをとり、時には助け、時にははっぱを掛ける。
→会計監査人のステップごとに作る資料を見せてもらう。
→会計士協会に提出する資料を見せてもらう。
→監査調書を見せてもらう。
(期末)監査結果や方法を整った形で資料に基づいて説明を受ける。
(番外)色々なタイプの会計士と知合いになる。
現場をみている若い会計士と知合いになること。
・監査報告書等 会計士への質問内容
1.監査計画の中で重点監査項目として挙げたことに対しての監査結果は?
2.監査計画の中で主要な事項について、その結果はどうであったのか。
3.監査の最終結論をだす前の意見形成の段階で、監査チームの中で
出された主要な検出事項はどういうものがあったのか?
4.会社の経理部門との間で最終的にどんな点の調整を図ったか?
5.監査法人の審査を受けている中で、どんな評価になっているか。
どこが問題だと言っていたのか。
・監査の方法の相当性の点検と監査の結果の相当性の点検
着眼点
1.監査人の精神的独立性の確認(癒着はないか)
2.マンネリによる注意力の低下はないか。
3.専門家として手抜きはないか。
4.微妙な項目についての監査人の判断に揺らぎは無いか。
5.監査人によって、言うことに食い違いはないか。
・監査役自身でやれることは何か。
→月次決算や経営の動向を把握して、期末決算に対して自分なりに
点検できるベースを整えておく。
→決算や計算書類など納得のいくまで経理から充分に聴取する。
会社の決算方針、会計監査人との意見調整、B/S P/L前期差異、
営業外損益、特別損益の内訳、株式資本等変動計算書の内容
→事業報告の内容チェック
→例年と比べて違和感や異様な雰囲気がないか。
【業務監査への取組み】
・監査役の業務監査の一番の狙いは、
会社法381条1項「監査役は取締役の職務の執行を監査する」が基本
一番の狙いは、取締役の任務懈怠の防止と遵法経営の確保
3つの監査
1.経営意思決定過程
2.業務執行過程
3.事業報告書の点検
具体的には
1.経営意思決定過程
重要な会議への参加、稟議書等の書類を確認する
安易な意思決定やリスク見積の甘い意思決定がないか
正規の稟議手続きを経ずにトップと一部担当が関与していないか
2.業務執行過程
取締役面談や業務概況のヒアリング
月報を取寄せて分析
事業所や子会社を訪問し実態を把握
3.事業報告書の点検
誤った報告、虚偽報告、粉飾決算を真剣にチェックする
【監査活動のサイクルと意識的対応】
監査活動の7つのステップ
1.監査活動の準備
2.監査計画の作成
3.期中監査
4.期末監査
5.監査報告書の作成
6.定時株主総会への対応
7.事後対応
【社外監査役との協力と監査役会の活用】
社内常勤監査役は、社外監査役を敬遠したり、敵視するような対応を避け、
逆に心強い援軍と考え、社外監査役を含めた監査役会全体で監査役の必要条件を
満たす方向でリーダーシップを発揮する。
社外監査役の弱点である「経営の実情や関連情報に疎い部分」を如何に補うか。
社外監査役は、その会社の経営陣から独立性が高く、社内倫理に囚われず、
客観的に事態を判断できる長所をもち得る。