磐越西線の郡山から喜多方は電化されていて、電車は表磐梯の山裾を軽快に走ります。しかし、電化されていない喜多方の先へは、会津若松からのディーゼルカーで行きます。
4 月 21 日、端麗な磐梯山には雪が残っていましたが、会津の桜は終わっていました。
私は、この日 5 本めの 14 : 33 発新津行に乗車しました。座席は十分ありました。
列車は、右手に磐梯山、前方に飯豊山地(かな?)の山なみを眺めながら進み、喜多方に着くと一群の観光客を降ろし、進路を西に変えて森林地帯に入りました。
磐越西線の愛称は“緑と水とロマンの鉄道”ですから、まさにその核心部分に突入したわけです。
森は、雪がすっかり溶けて春の気配が感ぜられます。
水は、雪解けの水が川に流れ込み水嵩を増していることでしょう。トンネルをくぐるたびに車窓の右、左に現れる阿賀野川は、あるいはダムとなって水を貯え、あるいは大河となって滔々と流れています。
ロマン ? それは、各人の感受性によります。プラットホームの駅名表示、津川町の“きつねの嫁入りが似合う町”などからも感じられませんか?
兎も角、のんびり、ゆったりの磐越西線です。
さて、16 : 36 会津若松から数えて 21 番目の咲花(さくはな)駅に着きました。森を抜けた新津平野の入口です。
私は、咲花温泉の碧水荘に一泊の予約を入れておいたのです。
数人の客が去ると、この無人駅はひっそりして、折しも満開の桜が戊辰戦争の碑に散りかかっていました。
駅を出た道は阿賀野川に突き当たり、川沿いの道を宿に向かうと、かすかに硫黄が匂いました。
碧水荘の源泉かけ流しの湯はとても新鮮でした。湯口近くでは肌がヒリヒリしましたが、馴れてくるとかえって心地よく、温泉の成分が細胞から体中にしみこんでいくようで、とても爽快でした。
翌朝、散歩に出ると、線路脇にりっぱな 機材を持ち込んだ大勢のカメラマンがいました。土・休日に運転される“SL 特急ばんえつ物語”がお目当てです。新潟駅発のその列車がここを通るのは 10 時過ぎとのこと。「えっ、 3 時間も待つんですか」と私は驚いてしまいましたが、みなさん、それなりの楽しみ方があるのでしょう。
私が乗った下りの列車が五泉駅でその SL を待つ間、ホームに出て入線する SL を撮りました。イマイチ迫力が感じられません。やはり咲花駅の桜の下でこそ絵になるのだと反省しました。