上野みえこの庭

日本共産党熊本市議の上野みえこのブログです。

2020年度から導入となる「会計年度任用職員」の問題点

2019-10-03 15:22:51 | 熊本市議会
2017年の「地方公務員法」と「地方自治法」の改定により、2020年4月から導入される「会計年度任用職員」の問題点について、最終日の討論で指摘しました。

【討論の内容】
議題51号、議題52号、議題64号、議題65号、議題71号に提案されております、会計年度任用職員の導入に関する各条例について、一括して問題点を指摘し、反対討論を行います。
 「会計年度任用職員」は、2017年の「地方公務員法」と「地方自治法」の改定によって、次年度2020年4月から各自治体の非正規職員に導入されるものです。総務省の「会計年度任用職員制度の導入等に向けた事務処理マニュアル」に沿って準備がすすめられており、部分的に見れば、改善される点もありますが、「任期の定めのない常勤職員を中心とする公務運営」の原則が崩れている状況や、国や自治体がすすめてきた非正規化を追認し、固定化するものです。住民のいのち・暮らしを守る地方自治の担い手である地方公務員制度の大転換、公務運営・公務労働のあり方そのものをも、大きく変質させる危険性を含んでいます。
全国の自治体職員は、1994年の328万人をピークとして、定員適正化や民間委託によって減り続けたことなどに加え、平成の大合併による市町村合併によって一層の削減がすすみました。2006年からの10年間で、正規職員は約26万人減少し、一方で非正規職員は約21万人増加しており、正規職員が非正規職員に置き換えられているという実態があります。
今や自治体の非正規職員は、一般事務職はもちろんのこと、保育、給食調理、図書館職員、看護師、学童保育、ケースワーカー、消費生活相談などの各種相談業務など、多岐にわたる分野・職種へと広がり、恒常的な業務、専門的な業務までも担っています。一方、給料は正規の3分の1から半分程度という状況で、任用期間は半年もしくは一年という期限付きで任用繰り返され、何十年と働いても昇給はなく、通勤手当等の各種手当も不十分なまま、年休や各種休暇でも正規職員との大きな差があるというのが現実で、増え続ける非正規職員の置かれた状況は深刻です。
もともと、住民のいのちや暮らし、権利を守る自治体の仕事は恒常的かつ専門性が求められ、臨時的で非常勤的な職員が担うことは想定されていませんでした。ところが、行政コストの削減を理由にどんどん非正規化がすすみ、任用根拠や更新の方法なども様々に、労働者使い捨ての状況が広がっています。
臨時・非常勤職員は大きく分けて「特別職非常勤」と「臨時的任用職員」、「一般職非常勤」とがあります。今回の法改定で、特別職非常勤は「学識・経験の必要」な職へ、臨時的任用職員は「常勤の欠員」の対応へと厳格化されることになっています。それ以外の臨時・非常勤職員が、原則として会計年度任用職員に移行します。
 具体的な会計年度任用職員の問題点、その第1は、任用の問題です。任用は、試験または選考により、再任用もあり得るとされています。しかし、「1会計年度内を超えない範囲」と任用期間を明確にしたことで、更新しないことにも根拠を与えるものとなっている点です。
 第2は、雇用の中断です。これまで設けられていた雇用の中断は「不適切」、「是正すべき」とされています。ところが、学校給食調理員や学校図書館司書など、学期単位の任用による空白期間は、不適切とはいえないとされており、例外的に雇用中断が残っていく可能性があります。どのような職種であっても空白期間は廃止し、継続的な雇用とすべきです。
 第3は、フルタイムとパートタイムの規定があり、フルタイムには退職手当・特殊勤務手当等が支給できますが、パートタイムには支給できないなど、大きな格差が存在する点です。また、1週間当たりの勤務時間が常勤職員より短い場合はパートタイム会計年度任用職員となることも、実際には多くの臨時・非常勤職員がフルタイムでなく、パートタイムの会計年度任用職員にされてしまうという点です。
 第4は、会計年度任用職員は一般職地方公務員となるので、上司の命令に従う義務、信用失墜行為の禁止、守秘義務、職務専念義務や政治的行為の制限など、地方公務員法に規定された公務上の義務・規律、人事評価が適用されます。同時に、フルタイム会計年度任用職員には、兼業禁止規定も適用されます。労働条件の面では正規職員との格差を残したまま、義務や規律、処罰だけは正規職員並みという矛盾した状況におかれることになります。
第5に、給料水準でも、「会計年度任用職員制度の導入等に向けた事務処理マニュアル」に「類似職務の級の初号給、職務の内容や責任、必要となる知識、技術及び職務経験等の要素を考慮し」すること、再任用にあたっても、「常勤職員の初任給決定基準や昇給の制度との均衡を考慮することが適当」であるとされているにもかかわらず、一方では「職務経験すべてを考慮する必要はない」としていることや、事務補助職員については正規職員の初任給基準額を上限の目安としていることは処遇上大きな問題です。また、「同一労働同一賃金ガイドライン案を踏まえ」としながら、正規・非正規の差が厳然と残され固定化されていること、フルタイムのみ支給対象となる期末・退職手当等についても「支給しなければならない」ではなく、「支給できる」となっていることは、自治体の財政等を理由に支給しないことも考えられます。
さらには、「現存する職を漫然と存続するのではなく、必要性を十分吟味したうえで適正な人員配置に努める」よう求めているために、会計年度任用職員の導入が、民間委託の拡大や、臨時・非常勤職員の削減につながっていくことも懸念されます。
 会計年度任用職員の導入は、今後、公的業務の大半を会計年度任用職員に置き換えることが可能となるために、公の業務がどんどん民間へと委ねられていくことも考えられます。ひいては、非正規も正規も減らし、公の業務を縮小していくこととなり、継続性・専門性・地域性が求められる自治体職員の働き方が大きく変貌させられます。
 以上のように、多くの問題点をはらんでいる会計年度任用職員の導入には賛成できません。今求められているのは、「官製ワーキングプア」をなくし、自治体の仕事を住民本位に守り発展させていくことです。そういう立場で、今後も市役所の働き方改革が行われていくよう、私どもとしても取り組んでいく決意を述べて、反対討論といたします。
コメント (2)
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決算から見えてきた大西市政の問題点・・・2018年度決算に反対討論

2019-10-03 12:49:25 | 熊本市議会
10月2日、約1カ月開かれてきた熊本市議会も最終日を迎えました。
今回、議案等への質疑は行いませんでした。
那須議員が補正予算への反対討論と、日本共産党市議団から提案した「幼児教育の完全無償化を求める意見書」(案)への賛同を求める討論を行いました。
私は、2018年度決算に対し問題点を指摘し反対討論、2020年度から導入となる「会計年度任用職員」関連条例の問題点指摘し、それぞれに討論を行いました。

大型開発ハコモノ優先、暮らし・福祉・教育切り捨ての市政ではいけません!
1、過去に例を見ない大災害「熊本地震」に対し、被災者の実態を見ず、支援終息へすすんだのは問題、今からでも被災者に寄り添った支援の継続・充実こそ求められています
2、桜町再開発への支援と熊本城ホール整備という市政史上最大のハコモノ建設を最優先、これだけでもとんでもない財政負担なのに、建設費だけでも300~400億円もかかる市庁舎建設を「建設先にありき」で推進
3、大型ハコモノ優先の一方で、医療・福祉・子育て・教育など、市民の一番の願いに背を向ける財政運用
・一般会計繰り入れをどんどん削って政令市で一番高い国民健康保険料を押し付け
・全国の政令市で2番目に高い介護保険料
・改善されない生活保護での嘱託ケースワーカー配置、充足率も80%台  
・子ども医療費助成制度改悪で、3歳から小4までの子どもの医療費負担が3倍に
・「さくらカード」制度は、見直しで「改悪」を検討、1万筆を超える署名の受け取りを拒絶してきた市長の態度は許されません!
・敬老祝い品は、100歳の方の金額を半分に減額、支給対象者は4年前の10000人がたったの200人くらいに
などなど、挙げればきりがないような医療・福祉・子育て等の負担増やサービス切り捨ては、命にもかかわることとして大いに問題です。
4、増え続ける非正規職員やメンタル、市役所の働き方も問題がいっぱい

討論の内容は、以下の通りです。

【討論内容】
議題101号「2018年度熊本市各会計決算」について、賛成できない理由を述べ、反対討論を行います。
 第1に、熊本地震の発災から2年目となった2018年度、4月には8896戸だった応急仮設住宅等入居世帯は、年度末の2019年3月には4017戸へと徐々に減少した年度でありました。しかし、復旧道半ばという方々から、前年に打ち切られた被災者への医療費減免制度の復活を求める声が根強くあったにもかかわらず、復活には至りませんでした。被災者の圧倒的部分を占めていた一部損壊世帯についても、その多くが何の支援もないまま、何らかの支援を求める声に応えられることはありませんでした。また、入居期限を迎える応急仮設等入居者に対しても、延長を希望される世帯に対し、厳しい条件を示し、退去を余儀なくされる世帯が少なくなかったことは、被災者切り捨てのゆゆしき問題として指摘をしなければなりません。
 いずれにしても、熊本地震という過去に例を見なかった未曽有の大災害に対し、被災者の実態を見ないままに、支援終息の方向へとすすめられていった点は問題であり、今からでも被災者に寄り添った支援の継続・充実こそ求められていると思います。
第2に、熊本地震の復旧にも多くの課題を残す中で、市が最優先で取り組んできたのが、桜町再開発への支援と熊本城ホール整備という市政史上最大のハコモノ建設でした。昨年度は、再開発事業への補助金が54億3600万円、熊本城ホール整備費に約85億円が支出されました。再開発ビルは、この秋オープンの運びとなりましたが、民間事業でありながら事業費の大部分となる450億円もの投資を行ったことは、今後の市の財政運営に大きな負担となっていくことは間違いありません。
 桜町再開発・熊本城ホール整備への投資だけでも財政の後年度負担が心配されている中、市役所本庁舎の建替え問題が持ち上がりました。公共施設マネジメント特別委員会でも、種々論議されましたが、建替え先にありきの庁舎整備に関する委託状況報告書に対し、問題点が指摘されながらも、建替え先にありきの姿勢を崩さず、建設費だけでも300数十億から400億円もかかろうという建て替えしか道がないという立場に固執し、議会の声に耳を貸さなかった市の市政は問われるべきであったと考えます。
 財政面だけでなく、地元発注という面からも大型開発ハコモノ優先は問題であるという点を指摘しておきます。
 第3に、私ども日本共産党市議団が行ってきた市民アンケートでも、市政に望むことの第1は、「暮らし・福祉の充実」です。ところが本市は、大型ハコモノ優先の一方で、医療・福祉・子育て・教育など、市民の一番の願いに背を向ける財政運用となっていたことです。
 医療分野では、前市長の時代と比べ3分の一にも削減されていた国民健康保険への一般会計繰り入れがさらに前年対比で7,000万円も減額され、累積赤字は前年度に比べさらに増え、約25億円となりました。大西市長になって、昨年度までに2度の保険料が引き上げられ、今年度さらに3回目の値上げが行われました。今や本市の国民健康保険料は、全国の政令市20市で一番重い負担となっています。所得200万円以下という世帯が9割近くにのぼり、国民健康保険の矛盾は改善されるどころか、ますます行き詰り、3分の1の世帯が滞納で、本市の滞納率は全国平均の2倍にもなっています。短期保保険証の発行数は、11500世帯を超え、病院の窓口で全額医療費を払わなければならない資格証明書の発行は前年比で約10倍にも増えています。これに加え厳しい差し押さえが行われるなど、本来の国民皆保険制度の趣旨とは裏腹に、市民の医療を受ける権利が奪われる深刻な事態となっており、高すぎる保険料の引き下げは急務です。
 毎年毎年保険料が引き上げられる介護保険制度でも、保険料は全国の政令市で2番目に高くなり、被保険者の圧倒的多数が年金天引きの特別徴収でありながら、普通徴収となっている低年金の方々に滞納者は増え続け、約200人の方が償還払いや給付額を減額されるなど、ペナルティが課せられています。給付も抑制され、施設入所は介護度3以上に制限されるようになりましたが、特別養護老人ホームの待機者は約2000人にもなっています。給付制限をなくし、払える保険料、利用料へと軽減が求められています。
 生活保護制度においては、再三の指摘にもかかわらず、ケースワーカーへの嘱託配置が改善されず、嘱託・再任用を含めても充足率が88・4%にとどまっていることは、質の高い、丁寧なケースワーク業務の提供という点から問題です。充足率を速やかに100%にすること、国の考え方としても充足率には加えない嘱託ケースワーカーについては速やかな改善を要望しておきます。
 敬老祝い品制度は、年々縮小されてきましたが、昨年度は、100歳への祝い品予算が8100円から4500円へと約半分に減額されました。対象者も、100歳と最高齢者だけに限定されたために、4年前の約10000人から50分の1の200人程度へと減ってしまいました。長年社会の中で苦労して時代を築いてこられた高齢者に対し、あまりにも冷たくお粗末で、とてもお祝いと呼べるものではありません。
 子ども医療費助成制度は、2018年1月からの制度改正で、対象年齢が中学3年生になり、受診時の自己負担額が3歳から小3まで月額700円に引き上げられ、同じく薬剤費を新たに月額700円支払うこととなりました。制度の対象外だった小4以上は別として、3歳から小3までについては医療費・薬剤費の負担を合わせれば自己負担額が月額で3倍という大変大きな負担増となりました。3歳から小3までが約6割占めるので、圧倒的多数が負担増となる制度改定が行われたことは、子育てに係る経済的負担の軽減という制度の目的に全く反するものだったということを指摘しなければなりません。熊本都市圏のほとんどの自治体で行われている完全無料化の制度こそ実施すべきです。
 また昨年度は、市民に大変喜ばれている「さくらカード制度」見直しのための検討委員会が立ちあげられ、検討が始まりました。高齢者の利用者負担や対象年齢などの見直しについては、利用者から不安の声が上がり、市民団体による制度の後退を招かないよう求める署名活動も始まりました。結果的に、制度見直しは検討継続となりましたが、1万筆を超える署名が集まったにもかかわらず、市民団体からの受け取ってほしいという要望に背を向け、面会を拒絶してきた市長の姿勢は問われるべきではないでしょうか。市民の声に真摯に耳を傾ける姿勢こそ、74万市民のトップとして求められると思います。
 挙げればきりがないような医療・福祉・子育て等の負担増やサービス切り捨ては、命にもかかわることとして大いに問題である点を指摘しておきます。
 第4に、今、国を挙げての問題となっている働き方改革の面でも、職員数そのものが減らされ、再任用・嘱託・臨時を含めても、職員総数は1万人を切り、常勤職員については2019年4月現在6151人で、第5次行財政改革計画の目標値6300人をすでにきるまでになりました。しかし、どこの分野でも人員が不足し、残業の縮減が叫ばれながら、時間外労働時間は年間60万時間近くにも及び、残業が常態化している部署もあります。そういう中で、メンタルの面でも、心の相談室への相談は5年間で約6倍に増え、休職者の約7割がメンタル不調によるものとなっています。行き過ぎた職員数の削減や、全職員のうち非正規が3割を超えているという職場状況も今後の課題であることを指摘しておきます。すべての職員の雇用とくらしが守られるような真の働き方改革が求められているのではないかと思います。
 人口減少の低成長の時代を迎え、限られた財源の中で、何を優先していくのか、今こそ地方自治法に定められた地方自治の本旨に基づき、住民福祉の向上に努めていくべきであると考えます。大型開発よりも、地域住民のくらしの願いに沿った市政運営を強く要望いたします。
 縷々述べてまいりましたが、決算から見えてきた主な点を指摘して反対討論といたします。
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