2017年の「地方公務員法」と「地方自治法」の改定により、2020年4月から導入される「会計年度任用職員」の問題点について、最終日の討論で指摘しました。
【討論の内容】
議題51号、議題52号、議題64号、議題65号、議題71号に提案されております、会計年度任用職員の導入に関する各条例について、一括して問題点を指摘し、反対討論を行います。
「会計年度任用職員」は、2017年の「地方公務員法」と「地方自治法」の改定によって、次年度2020年4月から各自治体の非正規職員に導入されるものです。総務省の「会計年度任用職員制度の導入等に向けた事務処理マニュアル」に沿って準備がすすめられており、部分的に見れば、改善される点もありますが、「任期の定めのない常勤職員を中心とする公務運営」の原則が崩れている状況や、国や自治体がすすめてきた非正規化を追認し、固定化するものです。住民のいのち・暮らしを守る地方自治の担い手である地方公務員制度の大転換、公務運営・公務労働のあり方そのものをも、大きく変質させる危険性を含んでいます。
全国の自治体職員は、1994年の328万人をピークとして、定員適正化や民間委託によって減り続けたことなどに加え、平成の大合併による市町村合併によって一層の削減がすすみました。2006年からの10年間で、正規職員は約26万人減少し、一方で非正規職員は約21万人増加しており、正規職員が非正規職員に置き換えられているという実態があります。
今や自治体の非正規職員は、一般事務職はもちろんのこと、保育、給食調理、図書館職員、看護師、学童保育、ケースワーカー、消費生活相談などの各種相談業務など、多岐にわたる分野・職種へと広がり、恒常的な業務、専門的な業務までも担っています。一方、給料は正規の3分の1から半分程度という状況で、任用期間は半年もしくは一年という期限付きで任用繰り返され、何十年と働いても昇給はなく、通勤手当等の各種手当も不十分なまま、年休や各種休暇でも正規職員との大きな差があるというのが現実で、増え続ける非正規職員の置かれた状況は深刻です。
もともと、住民のいのちや暮らし、権利を守る自治体の仕事は恒常的かつ専門性が求められ、臨時的で非常勤的な職員が担うことは想定されていませんでした。ところが、行政コストの削減を理由にどんどん非正規化がすすみ、任用根拠や更新の方法なども様々に、労働者使い捨ての状況が広がっています。
臨時・非常勤職員は大きく分けて「特別職非常勤」と「臨時的任用職員」、「一般職非常勤」とがあります。今回の法改定で、特別職非常勤は「学識・経験の必要」な職へ、臨時的任用職員は「常勤の欠員」の対応へと厳格化されることになっています。それ以外の臨時・非常勤職員が、原則として会計年度任用職員に移行します。
具体的な会計年度任用職員の問題点、その第1は、任用の問題です。任用は、試験または選考により、再任用もあり得るとされています。しかし、「1会計年度内を超えない範囲」と任用期間を明確にしたことで、更新しないことにも根拠を与えるものとなっている点です。
第2は、雇用の中断です。これまで設けられていた雇用の中断は「不適切」、「是正すべき」とされています。ところが、学校給食調理員や学校図書館司書など、学期単位の任用による空白期間は、不適切とはいえないとされており、例外的に雇用中断が残っていく可能性があります。どのような職種であっても空白期間は廃止し、継続的な雇用とすべきです。
第3は、フルタイムとパートタイムの規定があり、フルタイムには退職手当・特殊勤務手当等が支給できますが、パートタイムには支給できないなど、大きな格差が存在する点です。また、1週間当たりの勤務時間が常勤職員より短い場合はパートタイム会計年度任用職員となることも、実際には多くの臨時・非常勤職員がフルタイムでなく、パートタイムの会計年度任用職員にされてしまうという点です。
第4は、会計年度任用職員は一般職地方公務員となるので、上司の命令に従う義務、信用失墜行為の禁止、守秘義務、職務専念義務や政治的行為の制限など、地方公務員法に規定された公務上の義務・規律、人事評価が適用されます。同時に、フルタイム会計年度任用職員には、兼業禁止規定も適用されます。労働条件の面では正規職員との格差を残したまま、義務や規律、処罰だけは正規職員並みという矛盾した状況におかれることになります。
第5に、給料水準でも、「会計年度任用職員制度の導入等に向けた事務処理マニュアル」に「類似職務の級の初号給、職務の内容や責任、必要となる知識、技術及び職務経験等の要素を考慮し」すること、再任用にあたっても、「常勤職員の初任給決定基準や昇給の制度との均衡を考慮することが適当」であるとされているにもかかわらず、一方では「職務経験すべてを考慮する必要はない」としていることや、事務補助職員については正規職員の初任給基準額を上限の目安としていることは処遇上大きな問題です。また、「同一労働同一賃金ガイドライン案を踏まえ」としながら、正規・非正規の差が厳然と残され固定化されていること、フルタイムのみ支給対象となる期末・退職手当等についても「支給しなければならない」ではなく、「支給できる」となっていることは、自治体の財政等を理由に支給しないことも考えられます。
さらには、「現存する職を漫然と存続するのではなく、必要性を十分吟味したうえで適正な人員配置に努める」よう求めているために、会計年度任用職員の導入が、民間委託の拡大や、臨時・非常勤職員の削減につながっていくことも懸念されます。
会計年度任用職員の導入は、今後、公的業務の大半を会計年度任用職員に置き換えることが可能となるために、公の業務がどんどん民間へと委ねられていくことも考えられます。ひいては、非正規も正規も減らし、公の業務を縮小していくこととなり、継続性・専門性・地域性が求められる自治体職員の働き方が大きく変貌させられます。
以上のように、多くの問題点をはらんでいる会計年度任用職員の導入には賛成できません。今求められているのは、「官製ワーキングプア」をなくし、自治体の仕事を住民本位に守り発展させていくことです。そういう立場で、今後も市役所の働き方改革が行われていくよう、私どもとしても取り組んでいく決意を述べて、反対討論といたします。
【討論の内容】
議題51号、議題52号、議題64号、議題65号、議題71号に提案されております、会計年度任用職員の導入に関する各条例について、一括して問題点を指摘し、反対討論を行います。
「会計年度任用職員」は、2017年の「地方公務員法」と「地方自治法」の改定によって、次年度2020年4月から各自治体の非正規職員に導入されるものです。総務省の「会計年度任用職員制度の導入等に向けた事務処理マニュアル」に沿って準備がすすめられており、部分的に見れば、改善される点もありますが、「任期の定めのない常勤職員を中心とする公務運営」の原則が崩れている状況や、国や自治体がすすめてきた非正規化を追認し、固定化するものです。住民のいのち・暮らしを守る地方自治の担い手である地方公務員制度の大転換、公務運営・公務労働のあり方そのものをも、大きく変質させる危険性を含んでいます。
全国の自治体職員は、1994年の328万人をピークとして、定員適正化や民間委託によって減り続けたことなどに加え、平成の大合併による市町村合併によって一層の削減がすすみました。2006年からの10年間で、正規職員は約26万人減少し、一方で非正規職員は約21万人増加しており、正規職員が非正規職員に置き換えられているという実態があります。
今や自治体の非正規職員は、一般事務職はもちろんのこと、保育、給食調理、図書館職員、看護師、学童保育、ケースワーカー、消費生活相談などの各種相談業務など、多岐にわたる分野・職種へと広がり、恒常的な業務、専門的な業務までも担っています。一方、給料は正規の3分の1から半分程度という状況で、任用期間は半年もしくは一年という期限付きで任用繰り返され、何十年と働いても昇給はなく、通勤手当等の各種手当も不十分なまま、年休や各種休暇でも正規職員との大きな差があるというのが現実で、増え続ける非正規職員の置かれた状況は深刻です。
もともと、住民のいのちや暮らし、権利を守る自治体の仕事は恒常的かつ専門性が求められ、臨時的で非常勤的な職員が担うことは想定されていませんでした。ところが、行政コストの削減を理由にどんどん非正規化がすすみ、任用根拠や更新の方法なども様々に、労働者使い捨ての状況が広がっています。
臨時・非常勤職員は大きく分けて「特別職非常勤」と「臨時的任用職員」、「一般職非常勤」とがあります。今回の法改定で、特別職非常勤は「学識・経験の必要」な職へ、臨時的任用職員は「常勤の欠員」の対応へと厳格化されることになっています。それ以外の臨時・非常勤職員が、原則として会計年度任用職員に移行します。
具体的な会計年度任用職員の問題点、その第1は、任用の問題です。任用は、試験または選考により、再任用もあり得るとされています。しかし、「1会計年度内を超えない範囲」と任用期間を明確にしたことで、更新しないことにも根拠を与えるものとなっている点です。
第2は、雇用の中断です。これまで設けられていた雇用の中断は「不適切」、「是正すべき」とされています。ところが、学校給食調理員や学校図書館司書など、学期単位の任用による空白期間は、不適切とはいえないとされており、例外的に雇用中断が残っていく可能性があります。どのような職種であっても空白期間は廃止し、継続的な雇用とすべきです。
第3は、フルタイムとパートタイムの規定があり、フルタイムには退職手当・特殊勤務手当等が支給できますが、パートタイムには支給できないなど、大きな格差が存在する点です。また、1週間当たりの勤務時間が常勤職員より短い場合はパートタイム会計年度任用職員となることも、実際には多くの臨時・非常勤職員がフルタイムでなく、パートタイムの会計年度任用職員にされてしまうという点です。
第4は、会計年度任用職員は一般職地方公務員となるので、上司の命令に従う義務、信用失墜行為の禁止、守秘義務、職務専念義務や政治的行為の制限など、地方公務員法に規定された公務上の義務・規律、人事評価が適用されます。同時に、フルタイム会計年度任用職員には、兼業禁止規定も適用されます。労働条件の面では正規職員との格差を残したまま、義務や規律、処罰だけは正規職員並みという矛盾した状況におかれることになります。
第5に、給料水準でも、「会計年度任用職員制度の導入等に向けた事務処理マニュアル」に「類似職務の級の初号給、職務の内容や責任、必要となる知識、技術及び職務経験等の要素を考慮し」すること、再任用にあたっても、「常勤職員の初任給決定基準や昇給の制度との均衡を考慮することが適当」であるとされているにもかかわらず、一方では「職務経験すべてを考慮する必要はない」としていることや、事務補助職員については正規職員の初任給基準額を上限の目安としていることは処遇上大きな問題です。また、「同一労働同一賃金ガイドライン案を踏まえ」としながら、正規・非正規の差が厳然と残され固定化されていること、フルタイムのみ支給対象となる期末・退職手当等についても「支給しなければならない」ではなく、「支給できる」となっていることは、自治体の財政等を理由に支給しないことも考えられます。
さらには、「現存する職を漫然と存続するのではなく、必要性を十分吟味したうえで適正な人員配置に努める」よう求めているために、会計年度任用職員の導入が、民間委託の拡大や、臨時・非常勤職員の削減につながっていくことも懸念されます。
会計年度任用職員の導入は、今後、公的業務の大半を会計年度任用職員に置き換えることが可能となるために、公の業務がどんどん民間へと委ねられていくことも考えられます。ひいては、非正規も正規も減らし、公の業務を縮小していくこととなり、継続性・専門性・地域性が求められる自治体職員の働き方が大きく変貌させられます。
以上のように、多くの問題点をはらんでいる会計年度任用職員の導入には賛成できません。今求められているのは、「官製ワーキングプア」をなくし、自治体の仕事を住民本位に守り発展させていくことです。そういう立場で、今後も市役所の働き方改革が行われていくよう、私どもとしても取り組んでいく決意を述べて、反対討論といたします。