上野みえこの庭

日本共産党熊本市議の上野みえこのブログです。

驚くべき、「市役所建替えの賛否を問う住民投票条例案」につけられた市長の意見

2025-01-08 15:29:39 | 「市庁舎建替えの賛否を問う住民投票」条例制定を求める直接請求
驚くべき、「市役所建替えの賛否を問う住民投票条例案」につけられた市長の意見
憲法・地方自治法に規定された直接請求の制度すら否定する市長の暴挙

「熊本市役所の新庁舎建設の賛否を問う住民投票条例の制定について」を議題とする臨時議会が1月14日から17日までの4日間の会期で開催されることが正式に決まりました。
提案された条例案に付けられた市長の意見は、「住民投票」ひいては直接請求制度すら否定するような驚くべき意見です。
自治体のトップである市長の見識が問われるような内容の意見に、怒りの声が相次ぎました。
付けられた意見を紹介します。

「熊本市役所の新庁舎建設の賛否を問う住民投票条例の制定について」に付けられた市長の意見
熊本市役所の新庁舎建設の賛否を問う住民投票条例の制定に対する意見
地方自治法(昭和22年法律第67号)第74条第1項の規定に基づき熊本市役所の新庁舎建設の賛否を問う住民投票条例の制定について請求があったため、同条第3項の規定により、以下のとおり意見を付します。
1 熊本市役所の本庁舎整備に係る経緯
現庁舎(現在の本庁舎、議会棟及び中央区役所をいいます。)は、昭和56年の竣工以来、一度も大規模な改修を実施しておらず、建物全体の老朽化が進んでいました。
本市は、平成28年度に熊本市公共施設等総合管理計画を策定し、施設保全の在り方を事後保全から計画保全へ抜本的に見直しており、現庁舎についても長寿命化に向けた大規模改修について検討を進めていました。平成28年の熊本地震を受け、平成29年度に、大規模改修の手法検討調査と併せて、重要な防災拠点施設である現庁舎の耐震性能調査を実施しました。その結果、現行の建築基準法等が求める耐震性能を有していないことが判明したことから、今後の庁舎整備の考え方について検討を進め、令和元年度に本庁舎等整備に関する基本構想を取りまとめました。
その後、当該耐震性能調査の結果について、一部の専門家から疑問が呈されるとともに、市議会からも様々な意見が出されたことから、令和2年度に更なる調査を実施したところ、現行の建築基準法等が求める耐震性能を有していないという結果が再び示されました。
これに対して更なる検証を行うべきとの市議会等からの意見も示されたことから、改めて耐震性能の有無を含め多角的な視点で審議を行うため、令和3年に本庁舎等整備の在り方に関する有識者会議(以下「有識者会議」といいます。)を設置し、本庁舎等(本庁舎、議会棟及び中央区役所をいいます。)の整備の在り方について諮問しました。
有識者会議では、現庁舎の建て替えの是非を含め、耐震性能の有無だけでなく、防災の観点、財政の観点、資産マネジメントの観点、まちづくりの観点等の多角的な視点で本庁舎等の整備の在り方について審議が行われました。
その結果、令和5年5月30日に、有識者会議から「現在の本庁舎は、現行の建築基準法等が求める耐震性能を有しておらず、周辺への影響やアスベストの含有などの要因により耐震改修の実現性が低く、機械設備が地下に配置されているなど、防災拠点としての機能を果たすことができないリスクがあること、また、来庁者の待合スペースが狭く、様々な市民の相談室が不足していること、さらには職員の執務環境が狭あいであり、周辺の民間ビルを賃借していることなど、様々な課題を解消し、市民サービスの向上並びに、職員の働き方にも配慮した適切な庁舎規模を備え、将来の社会情勢の変化にも柔軟に対応し容易に機能転換ができるよう、建て替えるべきである」との答申が示されました。
この答申を踏まえ、令和5年第2回定例会において、あらゆる災害から市民の皆様の生命・財産を守ることに加え、市民サービスの更なる向上を図るため、総合的に勘案し、現庁舎を建て替えるという市の方針を示しました。
その上で、市民の皆様との意見交換の場である「市長とドンドン語ろう!」、市民アンケート、サウンディング型市場調査及び市民説明会を行い、取り巻く社会情勢の変化、技術の進展等を踏まえた新庁舎(新しい本庁舎、議会棟及び中央区役所をいいます。)の機能及び規模、建設候補地等について検討を進めるとともに、市民の皆様の代表である市議会においても議論いただいてきました。
これらの検討等を踏まえ、熊本市役所の新庁舎の目指すべき姿、規模、概算事業費、建設地等の新庁舎整備の基本的な考え方を熊本市新庁舎整備に関する基本構想(以下「基本構想」といいます。)として改めて策定しました。
そして、令和6年第3回定例会において、新庁舎整備に係る基本計画の策定並びに基本設計及び実施設計の実施に必要な予算について議決を頂きました。
2 新庁舎整備に係る今後の方針
基本構想において、新庁舎の目指すべき姿として、「あらゆる災害に対応できる庁舎」、「市民が利用しやすく、質の高い行政サービスが提供できる庁舎」及び「まちの賑わいに貢献し、まちづくりの核となる庁舎」の3つを掲げております。
これまで本市では、平成24年7月に発生した九州北部豪雨、平成28年4月に発生した熊本地震等、市民生活に甚大な被害を及ぼす自然災害が多く発生してきました。今後も、熊本地震以上に大きな地震、気候変動の影響による水害その他の大規模な自然災害がいつ発生するか分かりません。そのため、あらゆる災害に対応する防災拠点施設として、安全かつ継続的に機能する新庁舎を整備することは、行政の責務であると考えております。
併せて、年齢、障がいの有無等にかかわらず、誰もが利用しやすく、効率的で質の高い行政サービスを提供できる新庁舎を目指すとともに、市民の皆様に親しまれ、様々な世代の方が気軽に集うことができるにぎわいと憩いの場所となるよう整備を行いたいと考えております。
また、市民の皆様がこれまで以上に愛情や誇りを持てるまちとして、さらには、国内外の人々をひきつける魅力的なまちとして、本市が持続的な発展を遂げるためには、この新庁舎整備を、単なる施設の更新ではなく、新たなまちづくりの好機としていかなければなりません。このようなことから、現庁舎跡地については、本市の一等地にふさわしい利活用を通じて、多様なにぎわいを生み出すとともに、その周辺においても、民間企業の経済活動を後押しするような多面的な支援策により、新たな都市機能の誘致、老朽建築物の建て替えの促進を図り、これらのにぎわいを中心市街地全体に波及させていきます。
このように、新庁舎整備はもとより、これを契機としたまちづくりを通じ、災害に強く、にぎわいにあふれ、本市の歴史や文化と調和した、強くて魅力的なまちの実現に不退転の決意で取り組みます。
3 条例案の問題点
まず、熊本市役所の新庁舎建設の賛否を問う住民投票条例案(以下「条例案」といいます。)は、第12条において、「市長及び市議会は、本件建設にあたって、賛成の投票の数又は反対の投票の数のいずれか過半数の意思を尊重しなければならない」と規定してありますが、この条例案には、住民投票の成立要件に関する規定がありません。そのため、住民投票の投票率が著しく低い場合には、その結果が市民の皆様の意思を十分に反映しているとはいえません。
また、地方自治法により、法令に特別の定めがあるものを除き、刑罰について規則で定めることはできないとされているところ、条例案は、第10条において「公職選挙法、公職選挙法施行令(昭和25年政令第89号)及び公職選挙法施行規則(昭和25年総理府令第13号)に定める市長選挙の例により、規則で定める」と規定してあります。これは、公職選挙法に定める刑罰の規定も含めて包括的に本市の規則に定めるものであり、地方自治法上許されないものといえます。
なお、条例案は、第1条において、その目的を「熊本市が整備しようとしている市役所の新庁舎建設について、市民の賛否を明らかにし、その意思を反映させること」と規定されており、第6条第4項において、住民投票では、本件建設に対する「賛成」の意思か「反対」の意思のいずれかを表明することとされています。しかし、表明される「賛成」の意思の中には、基本構想が示す考え方の全てに賛成するものや一部のみに賛成するもの、「反対」の意思の中にも、全てに反対するものや一部のみに反対するものなど、様々な意思が含まれるものと思われます。そのため、単に賛否を問う住民投票を実施したとしても、市民の皆様の意思を十分に把握することはできないものと考えます。
このほかにも、条例案には、問題点が散見されます。
4 条例案の制定に対する意見
本庁舎等は、重要な防災拠点施設であり、災害時において、市民の生命及び財産を守るために必ずその機能が維持されなければなりません。また、合併による市域拡大及び政令指定都市への移行に伴い、市役所が担う事務の量とこれに従事する職員の数がともに増加し、本庁舎等内の執務スペース、待合スペース等の不足・狭あい化が進んだ結果、市民の皆様から御不満の声を頂いております。
そのため、現庁舎の建て替えは重要な施策であり、その実施については災害リスク、事業費、長期的な視点での本市の財政負担、まちづくり等の様々な情報からなる複雑多岐にわたる論点を踏まえて、総合的に判断されるべきであります。そして、その判断を行うのは、市民の皆様の代表であり、重要な意思決定に関する事件を議決する役割を担っておられる市議会であると考えております。
一方で、条例の制定の請求を始めとする直接請求制度は、市長及び議会による間接民主主義を補完するため、重要な意義を持っていることは理解しております。しかしながら、現庁舎の建て替えにつきましては、6年以上にもわたる市議会における議論はもとより、「市長とドンドン語ろう!」や、市民説明会、市民アンケート等を通じて、広く市民の皆様から御意見を頂き、その意見を反映しながら検討を進めてきたものであります。
また、現庁舎の建て替えには、一定の財政負担が生じるため、その負担を可能な限り軽減することが重要です。有利な財源である合併推進債を活用することにより、市の財政負担を大幅に軽減することができますが、その活用条件は、令和6年度中に新庁舎整備に係る実施設計に着手することであり、活用期限が迫っております。
この機会を逃せば、この軽減分について将来の世代に負担を強いることとなります。
現庁舎の建て替えは、これらの議論等を踏まえて、基本構想を策定し、新庁舎整備に係る基本計画の策定並びに基本設計及び実施設計の実施に必要な予算について、市議会による十分な審議を経て議決を頂き、事業を進めているものであります。
これまで広く市民の皆様から御意見を頂きながら、市民の皆様の付託を受けた私と市議会議員の皆様とで多くの議論を重ね、まちづくりを含めた多角的な観点から総合的に検討を進めてきた中で、熊本市役所の新庁舎建設について単に賛否を問う住民投票を行うことは、この6年以上にも及ぶ熟議を顧みないものであり、認めがたいものであると考えます。
以上のことから、本庁舎の建て替えにつきましては、今後もより積極的な情報発信に努めるとともに、アンケート、ワークショップ、パブリックコメント等を実施し、広く市民の皆様の御意見を頂きながら、地方自治制度の根幹をなす議会制民主主義の手続に沿って進めてまいりますので、私は熊本市役所の新庁舎建設の賛否を問う住民投票条例を制定する必要はないと考えます。
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「市庁舎建設の賛否を問う『住民投票条例制定』をめざす市民総決起集会」にご参加を!

2025-01-08 14:55:48 | 「市庁舎建替えの賛否を問う住民投票」条例制定を求める直接請求
「市庁舎建設の賛否を問う住民投票」を成功させましょう!
「市庁舎建設の賛否を問う『住民投票条例制定』をめざす市民総決起集会」にご参加を!
私たちが取り組んできた「熊本市新庁舎建設の賛否を問う住民投票条例」制定請求は、集めた署名の規定数達成が昨年末に確定し、12月25日に市長へ住民投票条例制定請求を行いました。
今年に入り、1月7日に熊本市議会の議会運営委員会が開かれ、「熊本市役所の新庁舎建設の賛否を問う住民投票条例の制定について」を議題とする臨時議会が1月14日から17日までの4日間の会期で開催されることが正式に決まりました。
住民投票条例が制定されるよう、臨時議会を目前にした「市庁舎建設の賛否を問う『住民投票条例制定』をめざす市民総決起集会」が、下記のとおり行われます。
どなたでも参加できます。
お誘い合わせて、ぜひご参加ください。

日時:1月10日㈮午後6時30分から
場所:熊本市民会館大会議室



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