東京多摩借地借家人組合

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住まい連が寮・社宅問題と住宅セーフティネットで政府に申入れ

2008年12月20日 | 国民の住まいを守る全国連絡会
内閣総理大臣 殿
厚生労働大臣 殿
国土交通大臣 殿
2008年12月18日

国民の住まいを守る全国連絡会
代表幹事 坂庭国晴

「寮・社宅」問題と住宅セーフティネットに関する緊急申し入れ書

ご承知のように、製造業を中心として非正規労働者・派遣労働者の違法・無法な「雇い止め」・「解雇」が行われ、職を失うとともに、社員寮からの退去が迫られ、住まいを失うという深刻な事態が広がっています。こうした事情に対する対応が貴職らの手によって実施に移されようとしており、当面の救済策として、一定評価すべき施策も見られます。しかし、このような事態が起こる要因は、労働者の住まいを「社員寮」に頼らざるを得ないという、わが国特有の住宅問題があり、かつ住宅セーフティネットが事実上存在しないという、住宅政策の無策があります。
 「寮・社宅」問題では、かって提起され日本政府も賛成したILO(国際労働機構)の「労働者住宅に関する勧告」(第115号・1961年・ILO第45回総会で採択)を改めて想起し、この勧告等による対処が求められます。また、わが国における実効ある住宅セーフティネットを公的住宅を中心として直ちに実施し、ホームレスやネットカフェ難民など、住宅難民を生み出さない措置が必要です。
 私たちはこのような考えに立って、以下の諸点を緊急に申し入れますので、速やかな対応と回答を求めるものです。

Ⅰ.「社員寮・社宅」の居住問題について
1.「寮・社宅」問題の認識について
政府は、前記のILOの勧告にあるように、「特殊な環境を除いて、使用者が労働者に直接に住宅を供給することは、望ましくない」という認識をもち、「公共的な住宅を供給することの重要性」を再認識すべきです。これは、寮や社宅が企業の雇用と一体のものであり、雇用等が切れれば退去させられることをはじめとして、企業の介入を受ける極めて不安定な居住形態であるからです。「寮・社宅」問題について改めて政府として検討することを要求するものです。
2.社員寮などへの継続居住について
 ILOの勧告では、①労働者の雇用契約が切れた場合、適当な期間内に施設を再所得する権利
を有すること、②労働者あるいはその家族は・・・適当な期間引き続いて占有する権利を公平に有
すること。などを指摘しています。これは雇用契約が切れた場合であっても継続居住の権利を有す
ることを示したもので、ましてや雇用契約が切れる前に解雇するような場合は、無条件に継続居住
を行い、当面の生活安定が図られるよう派遣会社や派遣先企業を厳しく指導すべきです。
 なお、継続居住の場合の社員寮等の家賃(使用料)負担については、国や自治体の援助も時と
して必要ですが、第一義的には派遣会社、派遣先企業が責任をもって負担すべきです。
3.社員寮への国内法の適用などについて
 ILOの勧告では、「住宅が使用者によって供給される場合には」として、①労働者の基本的な人
権、特に団結の自由が認められること。②雇用契約の終了による、住宅の賃貸もしくは占有契約の
終了については、国内法と慣行が充分に尊重されなければならない。③徴収される家賃は、労働
者の収入の適当な割合以上に高いものとならないこと、などを規定しています。
 これは、社員寮であっても借家(給与住宅)であり、国内法である「借地借家法」が充分尊重され、
適用されることを意味しています。そして、これらの法律等を根拠とした慣行が尊重される必要があ
ります。なお、派遣会社によっては、徴収する家賃が高額なものがあり、1住戸に何人もの労働者を
詰め込むなどの事例も見られます。こうしたことを是正させるためにも、国内法の適用や居住水準
の改善についての指導を関係者に行うべきです。
 
Ⅱ.実効ある住宅セーフティネットの即時実施について
1.雇用促進住宅の全面的活用と廃止方針の撤回について
 公的住宅である雇用促進住宅の入居については、政府によって一定の対応が行われ、当面の居住の安定が図られることは前進です。同時に今後の対応として、雇用促進住宅の廃止方針は撤回し、改めてこの住宅の役割を位置づけ直し、雇用の安定と住居の安定を一体として確保する公的住宅として強化していくことを要求します。
2.都市再生機構(UR)住宅の空家の積極活用について
 独立行政法人都市再生機構の賃貸住宅(旧公団住宅)は、「住宅確保要配慮者の居住の安定を図る上で重要な役割を担うストックと考えられ、優先入居の実施等を通じて、住宅セーフティネットを充実させることが重要」(国土交通大臣の「住宅セーフティネット基本方針」)としています。
 大都市部における非正規労働者、派遣労働者の住宅確保の受け皿として、公的住宅であるUR住宅を積極活用すべきです。例えば、東京都足立区所在の花畑団地は2,725戸のうち空家が1,000戸以上ありますが、政府やURの計画では、この空家を含め1,358戸の住宅を解体・除却する方針を立てています。こうした無謀な計画(UR賃貸住宅ストック再生・再編方針など)を撤回し、セーフティネットの住宅として、一定の修繕とルールづくりを行い、直ちに提供することを求めます。
3.公営住宅の「目的外使用」での入居などについて
 公営住宅は入居資格がないと応募すらできない現状にありますが、国の基本方針で「DV被害者世帯について、被害者が若年単身である場合に対応した目的外使用の実施について特段の配慮を行うこと」等としています。今回のような「雇い止め」・「解雇」などは、人災とよぶべき被害を労働者が受けていることに他なりません。「目的外使用」での入居について、検討と実施を要望します。
 また、公営住宅は大都市圏では応募倍率が極めて高く、「入りたくても入れない」状態が続いています。今こそ借上げを含めた公営住宅の確保と拡大を行うことを要求します。
 そして、公営住宅入居階層で公営住宅に入居できない者を対象とした、国と自治体による家賃補助制度の導入を強く求めるものです。
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