東京多摩借地借家人組合

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雇用危機―住まいの安全網にも力を (朝日社説 5月31日)

2009年05月31日 | 追い出し屋被害 家賃保証会社
 雇用の不安定化とともに、安心して住める場所を確保できない人が増えている。いつ家を追い出されるかと、心配しながら暮らす人たちだ。

 各地で問題になっている「追い出し屋」のトラブルも、その一例だ。

 収入が不安定な非正規の労働者などは、連帯保証人になってくれる人がいなかったり、手持ちのまとまったお金がなかったりする人が多い。そうした人たちをターゲットに、家賃保証会社が保証人代わりになり、敷金・礼金不要で入居させる賃貸方式が、ここ数年で急速に広がっていた。

 家賃滞納時の立ち入りを認めるなど、借り主に不利な形の契約を結ばされることが普通だ。それが昨年以降、仕事が減るなどして家賃が少しでも遅れると、保証会社や管理業者から強引に退去させられる例が相次いでいる。

 留守中に鍵を勝手に付け替え、家財道具まで処分してしまう行為まであるという。国土交通省は、野放しだった家賃保証業の規制を検討し始めた。

 だが、それだけでは根本的な解決にはならない。背景には、雇用危機に直面する非正規の人たちへの住まいの支援策が、十分に整っていない実態があるからだ。

 低所得者向けの公営住宅はどこも高倍率のうえ、若い単身者には入居資格がない。そもそも非正規社員の場合、勤め先からの住宅補助をもらえる人が少ない。滞納をおそれる貸主は、普通の賃貸契約では貸したがらない。

 その結果、初期費用がいらない物件や寮付きの派遣の仕事を選ばざるを得なくなる。仕事や収入が途絶えると、路頭に迷うことになる。大量の「派遣切り」がその流れを加速した。

 働く貧困層の拡大とともに、住宅政策のほころびが出てしまったのだ。

 職と住まいを同時に失った人に対して、政府や自治体はあわてて雇用促進住宅のあっせんや公営住宅への優先入居の手を打った。4月にまとまった経済対策では、失業者向けに最長6カ月の住宅手当支給も打ち出された。

 だが、いずれも緊急の措置だ。家を失う人をこれ以上出さないような、永続的な支援を考えなくてはならない。

 たとえば、収入の不安定な労働者にも家主が貸しやすくなるよう、公的機関が家賃を保証し、滞納時に立て替えるようにはできないか。高齢者や障害者にはすでに制度がある。

 公営住宅の建設は抑えられたままでいいか。政府と自治体が家賃差額を補助して、民間賃貸住宅を低家賃で供給してもらう制度を拡充してはどうか。生活保護にいたる前の支援策として、公的な住宅手当の仕組みが必要ではないか。こうした議論も深めるべきだ。

 仕事を失っても、住まいさえあれば次のスタートを切りやすい。住まいの安全網はきちんと張っておきたい。

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