『ハウジングプア―住まいの貧困と向きあう』
著者 稲葉剛
(NPO法人自立生活サポートセンター・もやい代表理事、住まいの貧困に取り組むネットワーク世話人)
「ホームレス」「ネットカフェ難民」「派遣切り」「たまゆら火災」「宿泊所ビジネス」「追い出し屋」・・・
みんな「住まいの貧困」が問題だ!
ワーキングプア(働いても働いても抜け出せない貧困)と手をたずさえて、ハウジングプア(住まいの貧困)が、生活を不安定で困難なものにしている。
―――〈もやい〉で生活困窮者の自立支援を続ける筆者が、ハウジングプアという概念で貧困の実態をとらえ、解決への展望を語る。
四六版・並製、228頁
ISBN978-4-903295-24-4 C0036
定価 1800円+税
発行=山吹書店
発売=JRC
この本の印税の一部は住まいの貧困に取り組む活動に使われます。
詳細・ご注文は下記をご覧ください。
http://yamabuki-syoten.net/main.html
*10月30日(金)に東京堂(神保町)、11月5日(木)にジュンク堂(池袋)にて、稲葉剛と冨樫匡孝(<もやい>スタッフ)によるトークセッションが開催されます。
詳細は下記をご覧ください。
http://www.moyai.net/modules/weblog/details.php?blog_id=561
*朝日新聞(大阪版)2009年10月23日付夕刊「単眼 複眼」欄で紹介されました
月10万円で暮らせる社会を 稲葉剛氏「ハウジングプア『住まいの貧困と向きあう」
「ハウジングプア」という言葉が取りざたされている。きっかけは、昨年末から今年初めの「派遣村」だ。減収や失職の末に住む場所もなくすという現実を私たちに突きつけた。
東京・新宿を拠点に、失職者や路上生活者らの支援に取り組んできたのが、NPO法人自立生活サポートセンター・もやい。結成にかかわった稲葉剛氏(40)の著作「ハウジングプア『住まいの貧困』と向きあう」(山吹書店)が出版される。そのなかで、稲葉氏はハウジングプアが深刻化していく過程を克明に描いている。
まず「家はあるが居住権が侵害されやすい状態」。例えば「派遣切り」で社員寮から退去を迫られる非正社員らである。職を失い、収入が不安定になると、「屋根はあるが、家がない状態」になる。24時間営業のネットカフェや個室ビデオ店での生活者ら。そして、駅や公園、河川敷と「屋根がない状態」へと連なっていく。
氏の著作は徹底した現場での活動に裏打ちされている。だからこそ、ハウジングプアに陥った人の寝る場所が、路上であるか、ネットカフェであるかには重きを置かず、「完全に地続き」と結論づける言葉はずしりと重い。住まいの貧困問題の取材を続ける私にとっても、座標軸となる視点だ。
日々の支援活動を通じ、氏は「暮らし(ライフ)は仕事(ワーク)と住まい(ハウス)によって支えられる」と確信するに至った。この社会で住まいの喪失は、仕事へのアクセスを困難にする。経済面と人間関係の「二つの貧困」が絡まり、当事者は容易に抜け出せない。
氏は、最後のセーフティネットである生活保護制度の前に、住まいを確保する際に必要な連帯保証人や家賃を公的に支援する制度を手厚く整備することを提唱する。幾重もの網を張り巡らせて「月収10万円で安心して暮らせる社会」を実現させたいと願う。
貧困はもはや身近に迫った危機である。現代ニッポンを考えるうえで、羅針盤となる提言だ。(室矢英樹)