東京多摩借地借家人組合

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更新料の性格について賃借人に誤認させ対価性の乏しい趣旨不明な金銭

2011年03月21日 | 最高裁と判例集
 更新料の支払いを定める条項が消費者契約法に違反して無効になるかが争われています。大阪高等裁判所平成二〇年一月三〇日判決は有効であるとし、大阪高等裁判所平成二一年八月二七日判決は無効として、最高裁判所の判断を待つ状況になっています。

 妥当な判決である京都地方裁判所平成二一年九月二五日判決
 同判決は更新料条項が無効であるとしました。
 「更新料は、極めて乏しい対価しかなく、単に更新の際に支払う金銭という意味が強い、趣旨不明瞭なものであって、一種の贈与的な性格を有する。本件更新料条項は、民法六〇一条に定められた賃貸借契約における基本的債務たる賃料以外に金銭の支払い義務を課すものであって、民法の規定に比して賃借人の義務を加重するものであり、賃貸人と賃借人間の情報の質及び交渉力の格差を背景に、更新料の性格について賃借人を誤認させた状況で、賃借人に対価性の乏しい相当額の金銭の支払いをさせるという重大な不利益を与え、一方で賃貸人には何らの不利益を与えないものといえ、信義則に反する程度に、衡平を損なう形で一方的に賃借人の利益を損なうものである。」
 賃借人の多くは、更新料の性格(何のために支払うものなのか)をよく認識しないまま、ただ契約締結時に更新料条項に異議を述べて騒ぎ立てても甲斐なく終わることを予感して、更新料条項の当否を不問に付して契約書に判を押しているのが通常でしょう。更新料を対価性の乏しい趣旨不明瞭な給付とした本判決は、契約締結当時の当事者の認識に重きを置いた至極妥当な判断だといえます。

 警戒を要する賃借人の立場を無視する判決
 もっとも、昨年、同じ京都地裁(ただし別の部)で、更新料を賃料の前払いのほか途中解約時の違約金の性格を有するものとし、更新料条項の効力を肯定した判決が言い渡されました(平成二二年一〇月二九日)。「途中解約時の違約金」というのは、従来あまり指摘がなかった観点です。

 更新料を支払う慣習はない
 このように更新料条項の効力についての裁判所の判断は分かれています。しかし更新料条項がない場合は更新支払義務がないことは確定した判例です。更新料の支払いと金額について合意ができなければ法定更新を主張することが適切です。

(弁護士 黒岩哲彦)

※消費者契約法第十条 民法、商法(明治三十二年法律第四十八号)その他の法律の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比し、消費者の権利を制限し、又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法第一条第二項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする。(東京借地借家人新聞3月号)



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