東京多摩借地借家人組合

アパート・賃貸マンション、店舗、事務所等の賃貸のトラブルのご相談を受付けます。

網入りガラスが自然にヒビが入ったが、弁償しないといけないのか

2006年02月06日 | 増改築と修繕
(問)ベランダの網入りガラス2面の破損代金を請求されています。自然にヒビが入ったのでも、弁償しなければならないのでしょうか。(北区 学生)

(答)網入りガラスに何もしないのにヒビが入ったという経験をした人、現在ヒビが入っているという人は結構多い筈である。普通、ガラスに物が当って割れる場合はぶつかったところから放射状に亀裂が入る。
ところが、自然にヒビが入いたと考えられる網入りガラスは、陽当りのよい部屋の南側に位置している筈である。そして、ヒビはガラスの下部に集中。このヒビ割れはガラスの端から始まり、次に90度の方向に曲線を描いて割れるという特徴がある。このような状態にヒビ割れていたら、それは金属とガラスの熱膨張率の差から自然にヒビ割れが生じたものである。また最近、結露や雨水が下方のパッキンの中に溜まり、鉄製の網の錆による体積の膨張も原因の一つと考えられるようになっている。近頃業者は、網入りガラス交換に際し底面と下方側面に防水テープを貼っている。これは切口の網部分からの水の滲入を防ぐためである。熱と錆二つの理由が競合していると考えるのが合理的であろう。
質問者と同様の問題で争われた保土ヶ谷簡裁の判例がある(平7・1・17)。「網入りガラスは切断する際に網も切らなければならないために切り口に傷がつきやすく、そのため端部の強度が網のないガラスの半分程度に落ち、より小さな温度差で割れが起こり易いこと、熱割れの特徴は必ず端部から生じ、しかも端部に直角に生じること、本件建物の窓ガラスの破損は右熱割れの特徴に符号するものである」として網入りガラスは熱膨張により破損し易いと認定し、賃借人がガラスを破損したということを認めるに足りる証拠がないから、賃借人が窓ガラス破損の責任を負う謂れはないと判示している。ガラスの破損は貸主の負担すべきものとして、借家人の金銭的負担を免除している。ヒビ割れの根本原因は、網入りガラスの切口の錆止め対策不備に因るものである。錆の拡大がなければ、熱膨張だけではガラスの亀裂は起こり得ない。
 結論、判例などからも相談者は網入りガラスの破損代金を払う必要はない。

 借地借家問題のご相談は 東京多摩借地借家人組合まで

  042(526)1094 相談は毎週 月・水・金

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 小泉「改革」の本音見えた | トップ | 退去時敷金から賃料の1か月... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

増改築と修繕」カテゴリの最新記事