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毎日社説: 脱法ハウス 行政が「住」の受け皿を

2013年07月10日 | 政治経済
毎日新聞 2013年07月09日 02時33分


 倉庫や貸事務所として届けられながら、実際には狭い空間を仕切って作った個室に多数の人が住む「脱法ハウス」が問題化している。

 近年、東京など大都市圏で目立つが実態は不明だ。一つの建物に数十人から100人を超える人が住んでおり、火災が起きれば多数の犠牲者を生みかねない。建築基準法や消防法に反するケースもあるようだ。

 太田昭宏国土交通相は、都道府県や政令市などに実態調査と報告を求めた。現状の把握は、対策の必要性を判断する第一歩で、当然の措置だ。報告を踏まえ、こうした施設に対する法や規制のあり方を早急に検討してもらいたい。

 5月に閉鎖された東京都内の施設の場合、薄い壁で仕切られた個室に窓はなく、約1・7畳の居住空間に1畳の寝台が付いているだけだった。キッチンとトイレは共同だった。

 運営業者は、ホームページで「話題沸騰中のシェアハウス」と宣伝していたが、消防などには「24時間利用可能な貸事務所だ」と説明していたという。

 建築基準法や消防法、自治体の条例などは、互いに補完し合いながら防火対策を定める。共同住宅は事務所などに比べて規制が厳しい。法の隙間(すきま)に目をつけた商法と言える。

 実際、この運営業者は、こうした実態が報道されたとたん、施設を閉鎖したり、「住民」に閉鎖通告をしたりした。脱法的であることを認識していたとしか思えない行為だ。

 入居している年齢層は幅広いが、20〜30代も多い。敷金や礼金、連帯保証人が不要で、入居手続きも簡便だ。就職のためには住所が必要なため、「脱法ハウス」に住民登録をしていた人も少なくない。

 経済が低迷する中で、職も住むところもない人が若者を中心に激増した。路上やネットカフェなど本来、人が住む場所でないところに多くの人が住まざるを得ない現実を直視しなければならない。需要がある以上、一部の業者の行為を貧困ビジネスと批判するだけでは済まないのだ。

 危険な施設が閉鎖されるのは当然だが、受け皿がなければ追い出された人は路頭に迷ってしまう。

 市町村や区など住民に最も近い立場にある行政がまず、当事者の声を聞き住宅政策を見直してもらいたい。

 公営住宅などは、高齢者が優先されるため、働く世代が入りにくいとかねて指摘される。また、生活保護受給者や職がない人に対する支援策と比べ、低収入の生活困窮者に対する「住」の支援が不十分だと言われる。条例の整備などを通じ、「住」支援を前進させてほしい。また、背景に社会構造の変化がある以上、国も明確な施策を示すべきだ。

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