ロビンの観劇日記

芝居やオペラの感想を書いています。シェイクスピアが何より好きです💖

井上ひさし作「兄おとうと」

2014-10-01 23:02:58 | 芝居
8月19日紀伊国屋サザンシアターで、井上ひさし作「兄おとうと」をみた(演出:鵜山仁)。

音楽劇。伴奏はピアノ(朴勝哲:いつもながらの名演奏!)。

君主や支配層ではなく人々の利福の方法を説き民本主義を唱えた大正デモクラシーの先駆者・吉野作造には、正反対の思想を持つ弟がいた。
兄に劣らぬ秀才で十も歳の違う高級官僚・信次である。仲がいいのか悪いのか、会えば毎回大討論、そんな二人が結婚したのは賢い上に
仲のいい姉妹だった…。

役者が皆うまい。
いくつもの役を掛け持ちする小柄な女優が誰かと思ったら、宮本裕子さんだった(チラシをよく読まずに出かけたので)。
女中、窃盗犯、袁世凱の娘、説教強盗、大連の怪しげなカフェの経営者・・と八面六臂の活躍。しかも体の動きがしなやかで美しく、どの
役も素晴らしい。彼女は昔「夏の夜の夢」でハーミア?をやった時から、その名前を脳裏に刻んだ人だった。その後「十二夜」で確かヴァイオラ
も見た。
小嶋尚樹という人も同様。文部省役人、巡査、右翼の男、説教強盗、ブリキ会社社長・・。
高橋紀恵さんは「サド侯爵夫人」のタイトルロールが見始めで、その後「冬のライオン」など見てきた。
辻萬長、大鷹明良、はお馴染みの常連。
剣幸はたぶん初めて見たが、声もよく、おっとりしているようでしっかり者の奥様をくっきりと演じる。

ただ、妻たち姉妹の描き方があまりに子供っぽくて白けてしまう。
それと、こういう芝居に歌や踊りが入るのは好みではないが、作者が入れたいと思ったのだから仕方がない。評者に言わせれば、戯曲の
力の弱さを補うために歌が必要だったということになる。せめてその音楽がもう少しよかったら、恥ずかしさも薄れるのだが。

最後は舞台奥のスクリーンに「大震災」「尖閣」「特定秘密保護法」…という文字が浮かび上がり、狂気を孕んだこの時代に対峙する
演出家の意図が伝わってきた。

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