11月7日新国立劇場小劇場で、ジョーダン・ハリソン作「プライムたちの夜」を見た(演出:宮田慶子)。
新国立劇場開場20周年記念公演。
米国の新進作家の作品で、2014年初演。ピュリツァー賞候補となり、映画化もされた由。
85歳で認知症のマージョリー(浅丘ルリ子)は、亡夫ウォルターの若い頃の容姿をしたアンドロイド(佐川和正)を話し相手に暮らしている。
娘テス(香寿たつき)とその夫ジョン(相島一之)が時々訪問して買い物などの面倒を見ている。
マージョリーとアンドロイドの会話から、彼女のこれまでの人生が少しずつ明らかになってくる。
彼女とウォルターにはテスの他に息子デミアンもいたが、デミアンは13歳の時自殺した。
テスは母の家に来るといつもイライラしている。夫と母が仲良くすることも、父のアンドロイドに対して母が自分に対するより優しいように
見えることも我慢ならない。
ヘルパーも何人か来ているらしい。
最初マージョリーは青い柄ものの服。次に登場する時は赤い柄の服。
休憩後、テスとマージョリーが向き合っている。
マージョリーは白い服を着て、しゃんとしている。二人が話すうちに、驚いたことに彼女がアンドロイドだと分かる。
マージョリーは死んだのだ。
テスは母の死後、精神的に少しおかしくなり、ジョンにカウンセリングを受けるよう言われている。
母(のアンドロイド)「あなたの他に(私に)子供はいるの?」
テス、少し迷って「いいえ、私一人」
母「そう・・・重荷よねえ」
テス「!・・・ロボットに憐れまれるって・・・」
この後、暗転し、テス役の女優がカーデを脱ぎ、ノースリーブ姿で椅子に座り、それまでとガラリと変わった柔和な微笑みを浮かべて
ゆっくりと美しいはっきりした声で話し出す。
最初の衝撃の後なので、少し会話を聞いているうちに事態が分かってくる。
テスが話していた通り、彼女は夫ジョンとマダガスカルに旅したが、そこで自殺したのだった・・・。
ジョンもまた、傷を癒すために、こうしてテスのアンドロイドに二人の過去を教え始めるが、これが「ただのキャッチボール」に過ぎず、
「自分と会話しているだけ」で何の慰めにもならないことに気づき、絶望して席を立つ。
最後のシーン。ウォルターとマージョリー、そしてテスの3人のアンドロイドがテーブルを囲んで話している不思議な光景。
ウォルターが語る思い出は、かつてマージョリーが望んだ通り、書き換えられている。
誰が何のためにこの3体を動かしているのか不明。
だがえも言われぬファンタジックな情景だった。
ラスト、若くして死んだ息子の話になり、マージョリーが発したセリフに思いがけず涙が止まらなくなって困った。
インプットされた多くの情報の中から、機械的に出てきた言葉に過ぎないというのに、あたかもアンドロイドにも魂が宿っていて、
そこからの叫びであるかのように聞こえたのだった。
マージョリー役の浅丘ルリ子が適役。途中、失禁シーンもあるが、立派に演じ切り、女優魂を感じさせた。
ウォルターのアンドロイド役の佐川和正も好演。いかにもロボットらしい口調がおかしい。
原題は主人公の名前そのままの「マージョリー・プライム」。
邦題はラストシーンからとったと思われる。そのセンスが好きだ。
新国立劇場開場20周年記念公演。
米国の新進作家の作品で、2014年初演。ピュリツァー賞候補となり、映画化もされた由。
85歳で認知症のマージョリー(浅丘ルリ子)は、亡夫ウォルターの若い頃の容姿をしたアンドロイド(佐川和正)を話し相手に暮らしている。
娘テス(香寿たつき)とその夫ジョン(相島一之)が時々訪問して買い物などの面倒を見ている。
マージョリーとアンドロイドの会話から、彼女のこれまでの人生が少しずつ明らかになってくる。
彼女とウォルターにはテスの他に息子デミアンもいたが、デミアンは13歳の時自殺した。
テスは母の家に来るといつもイライラしている。夫と母が仲良くすることも、父のアンドロイドに対して母が自分に対するより優しいように
見えることも我慢ならない。
ヘルパーも何人か来ているらしい。
最初マージョリーは青い柄ものの服。次に登場する時は赤い柄の服。
休憩後、テスとマージョリーが向き合っている。
マージョリーは白い服を着て、しゃんとしている。二人が話すうちに、驚いたことに彼女がアンドロイドだと分かる。
マージョリーは死んだのだ。
テスは母の死後、精神的に少しおかしくなり、ジョンにカウンセリングを受けるよう言われている。
母(のアンドロイド)「あなたの他に(私に)子供はいるの?」
テス、少し迷って「いいえ、私一人」
母「そう・・・重荷よねえ」
テス「!・・・ロボットに憐れまれるって・・・」
この後、暗転し、テス役の女優がカーデを脱ぎ、ノースリーブ姿で椅子に座り、それまでとガラリと変わった柔和な微笑みを浮かべて
ゆっくりと美しいはっきりした声で話し出す。
最初の衝撃の後なので、少し会話を聞いているうちに事態が分かってくる。
テスが話していた通り、彼女は夫ジョンとマダガスカルに旅したが、そこで自殺したのだった・・・。
ジョンもまた、傷を癒すために、こうしてテスのアンドロイドに二人の過去を教え始めるが、これが「ただのキャッチボール」に過ぎず、
「自分と会話しているだけ」で何の慰めにもならないことに気づき、絶望して席を立つ。
最後のシーン。ウォルターとマージョリー、そしてテスの3人のアンドロイドがテーブルを囲んで話している不思議な光景。
ウォルターが語る思い出は、かつてマージョリーが望んだ通り、書き換えられている。
誰が何のためにこの3体を動かしているのか不明。
だがえも言われぬファンタジックな情景だった。
ラスト、若くして死んだ息子の話になり、マージョリーが発したセリフに思いがけず涙が止まらなくなって困った。
インプットされた多くの情報の中から、機械的に出てきた言葉に過ぎないというのに、あたかもアンドロイドにも魂が宿っていて、
そこからの叫びであるかのように聞こえたのだった。
マージョリー役の浅丘ルリ子が適役。途中、失禁シーンもあるが、立派に演じ切り、女優魂を感じさせた。
ウォルターのアンドロイド役の佐川和正も好演。いかにもロボットらしい口調がおかしい。
原題は主人公の名前そのままの「マージョリー・プライム」。
邦題はラストシーンからとったと思われる。そのセンスが好きだ。
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