博客 金烏工房

中国史に関する書籍・映画・テレビ番組の感想などをつれづれに語るブログです。

2025年2月に読んだ本

2025年03月01日 | 読書メーター
ダーウィンの呪い (講談社現代新書 2727)ダーウィンの呪い (講談社現代新書 2727)感想
ダーウィンの進化論、進化学から遺伝学、そしてそれらの闇の側面としての優生学の展開をたどる。自然科学としての進化論と社会進化論との関係に興味があって読んだが、社会進化論についても言及されていたものの、優生学の母胎になったということで進化論そのもの、あるいはダーウィンその人の発想にも問題の芽があったことを知る。科学は価値中立的でも科学を扱う人間は果たしてどうだろう?ということを考えさせられる。
読了日:02月01日 著者:千葉 聡

大地からの中国史 史料に語らせよう (東方選書64)大地からの中国史 史料に語らせよう (東方選書64)感想
農業史の概説ということだが、作物の品種改良から農機具の問題、食物、養蚕と被服、そして肥料と思ったより話題が広範。議論に関係して特定の文章の引用関係など、意外にも文献学に関係するような議論もある。こういうことは何を研究するにしてもつきまとう問題ということだろう。カブラなどアブラナ科の作物の時代ごとの描かれ方に注目したりなど図像学的なアプローチもあり、また著者の前著『妻と娘の唐宋時代』と同様、小説も史料として積極的に使用しており、小説を史料とする際のよい手本となる。
読了日:02月06日 著者:大澤正昭

イスラームからお金を考える (ちくまプリマー新書 476)イスラームからお金を考える (ちくまプリマー新書 476)感想
イスラーム圏で行われてきたムダーラバという商売、投資の方法、そしてそれを応用した無利子銀行など、資本主義経済のアンチテーゼとしてイスラーム経済を解説していく。どこかで見たような方法だなと思ったら、終盤で西欧もイスラーム経済の発想を取り入れていたことや、本邦の頼母子講がムダーラバの発想に類似していることが指摘される。「国家の体制や社会が異なる」なんてことは言わず、我々とは違う経済のあり方にも注目していくべきと思わせられる。
読了日:02月07日 著者:長岡 慎介

民族がわかれば中国がわかる-帝国化する大国の実像 (中公新書ラクレ, 832)民族がわかれば中国がわかる-帝国化する大国の実像 (中公新書ラクレ, 832)感想
近年動向が注目されるチベット族やウイグル族だけでなく、朝鮮族や日本人になじみのない回族やチワン族、更に漢族内のグループである客家や、中国の民族の総体とも言うべき中華民族も取り上げている。かつての漢人八旗なども含まれているという満族のあり方からは民族の内実の曖昧さがうかがえる。回族について漢人と回民の共存・反目の歴史を取り上げるなど、歴史性に着目するのは本書の特徴だろう。客家について巷間言われてることに実は根拠が薄いということや、民族服との絡みで漢服ブームについても取り上げられている。
読了日:02月12日 著者:安田 峰俊

漢字はこうして始まった: 族徽(ぞくき)の世界 (ハヤカワ新書)漢字はこうして始まった: 族徽(ぞくき)の世界 (ハヤカワ新書)感想
商標などの意匠としても使われることがある青銅器の族徽から殷周時代の文化や文字の展開をたどるという趣旨。メインの章が設問形式になっているのが楽しい。序章と終章の総論、章と章の間のコラムも読み応えがある。ただ、族徽の形や成り立ちからその氏族の職掌を探るというのは、著者が批判する白川文字学のあり方、古文字の字形や成り立ちから中国古代の文化を探るというのと方法として変わらないのではないかと思うが……
読了日:02月13日 著者:落合 淳思

同志少女よ、敵を撃て (ハヤカワ文庫JA)同志少女よ、敵を撃て (ハヤカワ文庫JA)感想
『戦争は女の顔をしていない』の個別のエピソードを深掘りしたような話だなと思ったら最後にオチが着いていた。クリミア併合など布石となる事件があったとはいえ、原著がウクライナ戦争以前に書かれていたというのには驚かされる。それで著者も苦労したようだが。
読了日:02月15日 著者:逢坂 冬馬

異教のローマ ミトラス教とその時代 (講談社選書メチエ)異教のローマ ミトラス教とその時代 (講談社選書メチエ)感想
「背教者」ユリアヌスが信仰したことでも知られるミトラス教。「はしがき」を読むとミトラス教研究の第一人者であるキュモンの学説の検討を中心にミトラス教の実像に迫るのかと思いきや、それももちろんあるのだが、ミトラス教やキリスト教も含めたローマ帝国の神々、宗教について検討した本だった。しかし考古史料も駆使しつつミトラス教が東方のミトラス神の信仰を承けつつローマで誕生したこと、主要な信者の身分、教義など、随分細かい所まで検討が可能なのだなと感心した。
読了日:02月17日 著者:井上 文則

倭寇とは何か:中華を揺さぶる「海賊」の正体 (新潮選書)倭寇とは何か:中華を揺さぶる「海賊」の正体 (新潮選書)感想
倭寇そのものに関する議論もあるが、どちらかというと倭寇が出没した時代以後の海の視点からの中国史というか、倭寇概念、倭寇性に着目した中国史という感じ。「倭寇」の「倭」の部分に着目したら前期倭寇と後期倭寇との区分はナンセンスだが、「寇」の部分に着目すると区分する意味が出てくるという話や、洋務運動から辛亥革命までの四象限の図式などは面白い。ちょっと議論が無理やり気味かなと思いつつも康有為や孫文の出身地、香港と台湾という地点など倭寇との符合に注目する所などはグイグイ読まされてしまった。
読了日:02月21日 著者:岡本 隆司

近代日本の対中国感情-なぜ民衆は嫌悪していったか (中公新書, 2842)近代日本の対中国感情-なぜ民衆は嫌悪していったか (中公新書, 2842)感想
日清戦争前夜から日中戦争の頃までの対中感情の推移を、特に子ども向けの雑誌の記事やイラストを中心にたどる。同時代の中国(人)に対して一貫して侮蔑や嫌悪、憎悪の感情が見い出せる反面、孔子や関羽など古典世界の偉人は一貫してリスペクトされているという、現実世界と古典世界との対応の乖離は、著者も指摘するように現代でもそう変わらない。「しかしよくもまあ」と当時の表現の数々に呆れるとともに、このことに対する反省なくして今の中国(人)の諸問題を批判するのは態度として不当ではないかと感じさせられた。
読了日:02月23日 著者:金山 泰志
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最近見てるドラマ(2025年2月)

2025年02月10日 | 読書メーター
『国色芳華』
『珠簾玉幕』『蜀錦人家』に続く唐代文化細腕繁盛記シリーズ第三弾。こちらは楊紫&李現主演。三作それぞれビジュアルにこだわりがありますが、本作が一番映像が綺麗ですね。内容は夫と義父母に愛想を尽かした牡丹こと何惟芳が離縁し、皇帝お気に入りの貪官・蒋長揚をスポンサーとし、気の合う女性たちと牡丹専門の花屋を開くという話です。で、仲間には自分と同じく夫に虐げられた者あり、義侠心に富んだ女侠あり、そして前二作と同じく崔十九のようなライバル的存在もありといった感じです。前二作ではいまいち弱かったシスターフッドを強調した展開となりそうです。

『異人之下之決戦!碧遊村』
哪都通の地区責任者の廖忠が臨時工の陳朶によって殺害され、本社では臨時工そのものの扱いが問題に。張楚嵐は同じく臨時工の扱いの馮宝宝、そして他地区の臨時工たちとともに陳朶の行方を追って碧遊村まで辿り着く。村では村長の馬仙洪以下、異人速成機で培養されたらしい異人たち手ぐすねを引いて待ち構えており…… 『異人之下』の続編というか番外編のような位置づけ。雰囲気もコメディタッチな前作からスリラー調に変わってます。本社に馮宝宝の身元を探られたくない張楚嵐が、同情の余地のありそうな陳朶と戦わざるを得ないという展開は深みがありそうなのですが、全13話の短編ということで掘り起こす前に話が終わってしまったという感じ。

『五福臨門』
母1人、娘5人の雌虎一家と恐れられてる酈家が范家に嫁いだ二娘を頼って洛陽から開封にお引っ越し。開封では新婦の方が相当額の婚資を用意する必要があるということで、金策のために一家で茶店を開くことにするが、范家の姻戚で三娘を目の敵とする名門の柴安も茶店の向かいに酒楼を構え…… ということで久々の于正プロデュース作。コメディということですが、人情喜劇ということなのか笑いのキレはイマイチ……
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2025年1月に読んだ本

2025年02月01日 | 読書メーター
近代日本の中国学: その光と影 (アジア遊学 299)近代日本の中国学: その光と影 (アジア遊学 299)感想
近代中国と関わった漢学者ないしは「支那学」者、画家、探検家、ジャーナリストと五つの区分に分けた論集で、「支那通」に割かれた部分は最後の第Ⅴ部ぐらいであるが、その実全編を通して当時の中国学の裏面とともに学者と「支那通」との相克がテーマになっているように思う。2000年代からこの方、中国学では研究者も専門に引きこもっているのではなく現実の中国を知らなければという空気が強くなっているが、戦前から同じようなことを繰り返しているのかもしれない。
読了日:01月02日 著者:朱琳,渡辺健哉

世界は説話にみちている 東アジア説話文学論世界は説話にみちている 東アジア説話文学論感想
説話学というより説話を題材にした図像に対する図像学的な議論が多い。対象とする地域も東アジアに限らず、特に第Ⅲ部は釈迦の母の摩耶の授乳とマリアの授乳を比較したりイソップ物語の東アジアへの伝来を扱ったりと世界規模になっている。第6章の鬼に関する議論は『怪異から妖怪へ』の鬼の章と併せ読むと面白い。こちらは仏教医学へと思わぬ方向への展望が示されている。『三国志平話』冒頭の裁判説話と本邦の幸若舞曲などとの距離が近いという指摘も面白い。
読了日:01月04日 著者:小峯 和明

824人の四次元事件簿 : 「清明上河図」密碼(なぞとき)第1冊824人の四次元事件簿 : 「清明上河図」密碼(なぞとき)第1冊感想
ドラマ版が良かったので取り敢えず第1巻をと思って手に取ったが、ドラマ版が原作のエッセンスを汲み取ってうまく話を組み立てているのがわかった。原作もミステリーとしての面白さはあるものの、ドラマ版の方に軍配を揚げたい。翻訳としては台詞の文体などに問題があり、AIに翻訳させたのかと思ってしまう。はっきり言って商業出版できたのが不思議なレベル。物語の方はぶつ切りで終わってます。原作は全6巻構成のようなので、2巻でワンセットということかもしれないが。
読了日:01月07日 著者:冶 文彪

新編 書論の文化史新編 書論の文化史感想
書作品自体ではなく歴代の書論でたどる、少し変わったアプローチ(だと思う)の書道史。関連する書作品の図版やその訳文が豊富なのも良い。第14章の、「菩薩処胎経」が六朝の墨跡を伝える資料として近代の日中の文人たちから珍重され、高く評価されながらも、六朝の資料も含んだ敦煌文献が発見された途端に顧みられなくなったという話を興味深く読んだ。ただ、著者には申し訳ないが第一部の内容は同意できない部分が多く、ない方がよいのではないかと思う。
読了日:01月09日 著者:松宮貴之

西遊記事変 (ハヤカワ・ミステリ)西遊記事変 (ハヤカワ・ミステリ)感想
西天取経の旅に出た玄奘一行に八十一難が課されることになり、李長庚こと太白金星は道門代表として釈門代表の観音菩薩とともにその企画立案を担当することになるが、諸方面の横槍もあり計画通りに事が運ばず、次から次へと予想外のトラブルに見舞われることに…… 『西遊記』の舞台裏というか八百長西遊記、「八百長三国志」こと陳舜臣『秘本三国志』の西遊記版という趣き。著者の『西遊記』の読み込みぶりが伝わってきて『西遊記』ファンも大満足なのではないか。それとともに官界や大企業で生きていく機微、世知辛さも伝わってくる。
読了日:01月11日 著者:馬伯庸

近代日本の中国認識 ――徳川期儒学から東亜協同体論まで (ちくま学芸文庫マ-58-1)近代日本の中国認識 ――徳川期儒学から東亜協同体論まで (ちくま学芸文庫マ-58-1)感想
江戸中期から日中戦争期までの中国認識の変遷を概観する。中国認識はアジア認識、西洋認識、ひいては自国認識の問題とも深く関係することに気付かされる。本書で指摘されている、日清戦争以来の中国を軽蔑することで中国を理解したつもりになるというのは、現在まで引き継がれている悪弊であろう。山東出兵を背景に、吉野作造によるもし日本が中国から自国民の保護を口実に攻め込まれたらどう思うか?という問いかけや、日本の民族主義を誇るなら中国の民族主義も正当に評価せよという三木清の言葉も、現在の中国理解に通じる考え方である。
読了日:01月15日 著者:松本 三之介

遊牧王朝興亡史 モンゴル高原の5000年 (講談社選書メチエ)遊牧王朝興亡史 モンゴル高原の5000年 (講談社選書メチエ)感想
遊牧のはじまり、騎乗の開始から匈奴の民族構成(西ユーラシア人も含まれていたとのこと)、遊牧民と鉄、近年「天子単于~」の銘文を有する瓦当が出土したことで話題になった龍城、これまた最近話題になった鐙の使用開始等々、著者の専門の(だと思う)モンゴル時代のことよりも古い時代に関する内容を興味深く読んだ。柔然、ウイグルなど類書であまり取り上げられていない勢力についても紙幅を割いている。考古学の視点から探る遊牧王朝史の良書。
読了日:01月19日 著者:白石典之

孝経 儒教の歴史二千年の旅 (岩波新書 新赤版 2050)孝経 儒教の歴史二千年の旅 (岩波新書 新赤版 2050)感想
新書にありがちなサブタイトルとメインタイトルを逆にすべき例。『孝経』を中心にして見る儒学学術史であり、儒学経典史といった趣。最後の章で鄭注に沿った経文全文の翻訳があるほかは『孝経』の内容そのものはあまり問題にしていないが面白い。今文・古文の対立の図式は清末の政治・学術状況を漢代に投影したものであるとか、鄭玄と王粛の学術上の位置づけの話、特に王粛の議論が意外と穏当であり、だからこそ漢代以来の礼制を受け継ぐ南朝で受け入れられたとか、孔伝が実は『管子』を多く利用しているといった指摘が刺激的。

読了日:01月21日 著者:橋本 秀美

恋する仏教 アジア諸国の文学を育てた教え (集英社新書)恋する仏教 アジア諸国の文学を育てた教え (集英社新書)感想
アジアの文学と仏教の関係に注目。日本と中国はともかくインド、韓国、ベトナムも取り上げているのは珍しいのではないか。作品と仏教、あるいは出典とされるものの結びつけが強引かなという箇所があるのが玉に瑕。しかし日本人の本来の心情が反映されているとされがちな『万葉集』にも仏教的な要素が見て取れるという指摘は面白い。また、インドの説話で最後を仏教的な教訓で締めくくっていればどんなことを語っても許されるというのは、中国で抗日ドラマの体裁を取っていれば多少の無茶は許されるというのを連想させる。
読了日:01月22日 著者:石井 公成

歴史的に考えること──過去と対話し、未来をつくる (岩波ジュニア新書 994)歴史的に考えること──過去と対話し、未来をつくる (岩波ジュニア新書 994)感想
中国・韓国との徴用工・従軍慰安婦問題など歴史認識に関わる問題、あるいは「処理水」問題など現代の問題、沖縄の置かれた立場、ウクライナ戦争などを、「さかのぼる」「比較する」「往還する」の3つの手法により歴史的経緯や事実を概観しつつ、日本政府の対応や我々日本人の態度が適切なものであったのかを検討する。こういうのも「役に立つ」歴史学のひとつのあり方だろう。本書では昨今話題の「台湾有事」については触れられていないが、これは本書の手法を踏まえたうえでの読者に残された宿題ということだろう。
読了日:01月24日 著者:宇田川 幸大

ユダヤ人の歴史 古代の興亡から離散、ホロコースト、シオニズムまで (中公新書)ユダヤ人の歴史 古代の興亡から離散、ホロコースト、シオニズムまで (中公新書)感想
高校世界史では古代と近代のシオニズム以降しか取り上げられないユダヤ人の歴史を通史として提示する。著者は近現代史専門ということだが、「選民思想」「一神教」の解説など、その他の時代についてもしっかりした内容となっている。ユダヤ人が常に組み合わさる相手を求めていたこと、そしてそのことが時としてユダヤ人に対する偏見や迫害につながるという構造、ユダヤ人が宗教集団などではなく「ネーション」として意識されるようになったのはシオニズム以降であるといったことを興味深く読んだ。
読了日:01月27日 著者:鶴見太郎

東アジア現代史 (ちくま新書 1839)東アジア現代史 (ちくま新書 1839)感想
「現代史」とあるが、19世紀の「西洋の衝撃」以後の近代史の内容も扱う。個別の内容には食い足りない部分もあるが、触れなければいけない事項は一通り揃っており、日本も含めた東アジア地域の近現代史を概観し、歴史認識問題、台湾問題などについて考えるうえでの土台とするには充分だろう。歴史認識問題は通史部分で経過を押さえるほか、終盤で改めて議論されている。各国の人口問題や格差問題にも紙幅を割いているのが特徴か。
読了日:01月28日 著者:家近 亮子

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最近見てるドラマ(2025年1月)

2025年01月09日 | 読書メーター
『大奉打更人』
お調子者のクズ系リーマン楊淩は架空世界大奉に転生し、しがない捕快の許七安となり、いきなり投獄されている所で目を覚ます。どうやら同居の叔父が任務中のミスで罪に問われたことから連座で投獄されたようだが…… ということで年末年始期待の新作ですが、漢詩の暗誦で名声を得るとか『慶余年』の焼き直しのような話が続きます。男主が加わる組織「打更人」が銅鑼→銀鑼→金鑼の階級制になっており、最上級の金鑼が全部で12人という設定はどう見ても聖闘士星矢ですし。ヤンキー版『慶余年』という感じです。テンポだけはやたらいいので、その程度のお話だと思って見るのがいいのかもしれません。『永夜星河』とともに頭を空っぽにして見れる作品です。

『私たちの東京ストーリー』
20年ほど前に好評を博した中国人留学生のドキュメンタリーが企画のベースで、ドキュンタリーと同様に大富が制作に関わっているということでTverで見てみることに。時は1989年、大学生の林凜は日本留学のチャンスを国歌から与えられ、日本語がまったくわからないまま来日し、まずは大学受験資格取得をめざして日本語学校に通うことに……という筋ですが、中国人留学生が粗大ゴミのテレビを勝手に拾って帰るのは違法じゃないと言い出したり、1989年の話のはずなのに東京メトロの案内版が映ってたりと毎回のようにツッコミ所があります (^_^;) 残留孤児の子孫が反グレ化していたり留学生の不法滞在問題を扱ったりと深刻な話題も随所に盛り込まれている作品なんですが、それとともにテレビの件など日本人が違和感を持ちそうな描写がしれっと出てくるのも見所かもしれません。
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2024年12月に読んだ本

2025年01月01日 | 読書メーター
少年の君 (新潮文庫 シ 44-1)少年の君 (新潮文庫 シ 44-1)感想
タイトルから青春小説だと思って読み進めていたら、気がついたらサスペンスになっていたという、ある意味不思議な小説。いじめのような社会問題も取り上げられていて凄惨な展開ではあるものの、これまで日本で翻訳されてきた中国小説と比べると、それほど強い政治性は感じられない。こういうものが翻訳されるようになってきたということで受け手の側の日本も変わってきたのかなと感じさせられた。
読了日:12月01日 著者:玖月晞

盗墓筆記2 青銅の神樹盗墓筆記2 青銅の神樹感想
三叔の行方や阿寧の身元、悶油瓶の謎など、1巻から引っ張った気になる要素は放置したままにして新たな冒険へ。1巻とおんなじような話が続くのかと思いきや意外性のあるラストだった。今回は1巻のように「帛書の拓本」など、パッと見レベルではおかしな要素はない。
読了日:12月03日 著者:南派 三叔

現代日本人の法意識 (講談社現代新書 2758)現代日本人の法意識 (講談社現代新書 2758)感想
離婚の際に立場の弱い女性が不利益を被りがちなことや、一旦成立したきまりをとにかく絶対視する態度、冤罪が発生しやすい構造、司法やマスコミが政権と癒着しやすいこと、日本で未だに死刑が廃止されず、肯定視されがちなこと等々、裁判や法制にかかわる諸問題の根底には日本人に近代的法意識が欠如しているという問題があり、それは法律や制度は近代化したものの、法意識が江戸時代の感覚を多分に引きずっていることによるものだという内容。司法に興味はなくても社会・政治問題に関心のある向きは一読すべき。
読了日:12月08日 著者:瀬木 比呂志

〈ロシア〉が変えた江戸時代: 世界認識の転換と近代の序章 (歴史文化ライブラリー 613)〈ロシア〉が変えた江戸時代: 世界認識の転換と近代の序章 (歴史文化ライブラリー 613)感想
ラクスマン来航以来のロシアとの接触が江戸日本の地理認識や文明観を変えたという議論。西洋世界に対する認知がそれまでは暦のための天文学程度にしか利用されていなかった科学・技術の重要性に対する認識を生じさせ、それらを生み出せなかった中国に対する蔑視や文明国が未開の地域を支配するという植民地主義的な見方を内面化させることとなった。また武士たちの蘭学の興味は外国への脅威への対応の模索と表裏一体であった。江戸幕府の意外な外交・危機対処能力とともに日本の近代化が持つ危うさや歪みを考えさせられる内容となっている。
読了日:12月10日 著者:岩﨑 奈緒子

四字熟語で始める漢文入門 (ちくまプリマー新書 473)四字熟語で始める漢文入門 (ちくまプリマー新書 473)感想
細かいアラはありそうだが、漢文入門として取っつきがよい。関係する文献の一部分、一文だけ取り上げているのもミソで、全体を通して読もうとする気にさせてくれる。四字熟語の出典は書名だけでなく篇名まで挙げてくれるとなお良かったが。
読了日:12月12日 著者:円満字 二郎

中国目録学 (ちくま学芸文庫シ-47-1)中国目録学 (ちくま学芸文庫シ-47-1)感想
特に本編はそう長くはない文章ながら目録学の基本的な流れに加えて、営利出版と非営利出版との傾向の違い、印刷術の発明によって最初に印刷に賦された書物の種類、朝鮮で活版が盛行した事情といった話題、そして蔵書家のあり方や類書、輯佚、校勘など関連する事項の解説などが詰め込まれており、目録学を中心として様々なことに目配りがきいた本となっている。
読了日:12月13日 著者:清水 茂

教員不足──誰が子どもを支えるのか (岩波新書 新赤版 2041)教員不足──誰が子どもを支えるのか (岩波新書 新赤版 2041)感想
小泉時代の行政改革と第一次安倍政権時の教員免許更新制の導入により悪化した公立学校の教員不足。妊娠や病気など何らかの事情により欠員が出れば同じ校内の教員に皺寄せが行きがちとなるが、その実態は文科省等の統計からは見えない。そして教員の激務ぶりが知られるにつれ就職の選択肢として教員が敬遠されるようになり、ますます状況が悪化する。現場からの生々しい報告もあるが、メインは教員不足が発生する構造の分析が中心。参考事例としてのアメリカの教員不足の状況も興味深い。 
読了日:12月15日 著者:佐久間 亜紀

日本の漢字 (岩波新書 新赤版 991)日本の漢字 (岩波新書 新赤版 991)感想
日本独自の漢字・異体字・読みなど歴代の漢字の諸相、幽霊文字、地名などの形で特定の地域で使われている漢字、自衛隊、学生運動、メディアなど特定の文脈での漢字の略記、映画の字幕の事情、作家が生み出した漢字等々、日本の漢字使用の状況総ざらい的な内容となっている。中国や韓国など漢字文化圏に属する外国との比較がなされているのもよい。
読了日:12月17日 著者:笹原 宏之

三体0【ゼロ】 球状閃電三体0【ゼロ】 球状閃電感想
『三体』の前日譚ということだが、終盤の衝撃的というか唐突な展開にはこれで本当に『三体』とつながるの?という感じ(これについては一応「訳者あとがき」に説明がある)。面白いと思ったのは、球電に伴って発生する怪奇現象の種明かし。夢というかロマンを感じる。若い女性の描き方は相変わらずだなと思ったが。
読了日:12月20日 著者:劉 慈欣

死者の結婚 (法蔵館文庫)死者の結婚 (法蔵館文庫)感想
死者を擬制的・象徴的に結婚させることで供養するというムカサリ絵馬などの風習が古くからのものというわけでもなく、意外と現代的なものであるという議論が面白い。沖縄や中国の冥婚など、類似(するように見える)の風習との比較も行っているが、アフリカでの亡霊結婚が結婚の一形態と評価出来るのと比べて東アジアのそれはあくまで葬祭儀礼であるという話には納得。文庫版で追加された補論はそれはそれでいいという内容だが、死霊婚と直接関係するものではなく場違い感を抱いた。

読了日:12月22日 著者:櫻井義秀

「史料学」講義: 歴史は何から分かるのだろう「史料学」講義: 歴史は何から分かるのだろう感想
日本史に関するもののみとなるが、歴史学において史料にはどんなものがあるのかというより、どういうものが史料になるのかを議論した本ということになるだろうか。この種の本には珍しく文字史料に関する議論の比重が比較的低く、絵画史料や考古学史料を含めたフィールドの史料に関する議論が占める比重が高い。今時の概説ということでジェンダーについても言及されている。史料の文字情報だけでなく物情報、伝来情報、機能情報についても議論している点は昨今の中国簡牘学の論調と共通している。
読了日:12月24日 著者:小島 道裕

ヤンキーと地元 (単行本)ヤンキーと地元 (単行本)感想
沖縄のゴーパチに集うヤンキーたちの生活誌。『ハマータウンの夜郎ども』の日本版・沖縄版というか『ちむどんどん』のにーにーの世界というかそんな感じ。参与観察で出会ったヤンキーたちの暮らしぶりや彼らとの会話が中心なので、もう少し分析的な話も読みたかった気がする。安田峰俊のルポと雰囲気が似ている。安田氏の場合は社会学を意識しているわけではないと思うが、取り上げられる人々の世界観が共通しているからだろうか。
読了日:12月27日 著者:打越 正行

怪異から妖怪へ怪異から妖怪へ感想
「怪異」「神」「妖怪」といったキーワードに対する概説と、「鬼」「天狗」「河童」など個別の妖怪についての議論からなる二部構成。今回はそれぞれもともと祥瑞などの怪異だったものが時を経て妖怪と見なされるようになった経緯に着目。化野燐による怪異や妖怪は本当に怖いものなのか?という問いかけ、そして京極夏彦による妖怪をチョコレート、怪異を菓子に例えた議論が面白い。
読了日:12月29日 著者:大江 篤,久禮 旦雄,化野 燐,榎村 寛之,佐々木 聡,久留島 元,木場 貴俊,村上 紀夫,佐野 誠子,南郷 晃子,笹方 政紀,陳 宣聿,京極 夏彦

熱狂する明代 中国「四大奇書」の誕生 (角川選書 675)熱狂する明代 中国「四大奇書」の誕生 (角川選書 675)感想
白話小説を軸にして見る明代史。モンゴル時代に白話文が書記言語となった経緯から、明代にかけて知識人を中心に人々が「楽しみのための読書」を受容するようになり、知識人を書き手として四大奇書を中心とする白話小説が出版される過程を描く。平民の気質を持った激情的な明朝皇帝、清代以後ネガティブに評価された明代の学問、武官的な資質を備えた明朝の文官と文官的な資質を備えた明朝の武官、目的は手段を正当化すると信じた胡宗憲や張居正ら等々、様々な面で明代史の再評価を行っている。
読了日:12月30日 著者:小松 謙
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