谷崎光『北京大学てなもんや留学記』(文春文庫、2008年7月)
留学前にこういうのも読んでおくかという感じで読んでみました。SARSが流行した年に名門北京大学に留学していた著者による体験記です。中国留学にあたってのワナがこれでもかと列挙されていますけど、大半は注意していてもどう仕様もないことばかりなんですが(^^;)
以下、ツッコミ所というか面白かったポイント。
○中文系にいた著者の知人は古代文字の書き取り各20個が宿題だった。
……私の専門がまさにその古代文字なんで、やっぱりそういう書き取りをみっちりやらされることになるんでしょうか(^^;)
○共産党員の資格は大学院への進学や留学、公務員試験などに有利。犯罪をおかしても法律ではなく党規で処分され、階級の降格・除籍などで済まされる。
……これ、どこまで本当なのかわからないですが、犯罪に対する処分の仕方は古代の二十等爵制に似てますね。(秦漢期には男性庶民を対象に一律に一級ずつ爵位を授与する制度があり、爵位を有する者は犯罪をおかしても爵位と引き替えに刑罰が減免された)
○この国では権力側のクリーンヒーロー、『遠山の金さん』や『暴れん坊将軍』や『水戸のご老公』の物語は成り立たない。
……いやいや『包青天』がありまんがな(^^;) ドラマでは清朝皇帝もしょっちゅうお忍びで出掛けては人助けをしてますし。ただ、著者の言うように印籠にあたるものは出しませんけどね。
○オーディション番組の『超女』が大ブームになったのは、自分たちが自分たちのスターを選んだから。
……これについては
『チャイニーズカルチャーレビュー』の第4巻でも触れられてましたね。
○清華大と北京大とのカラーの違い
……両方とも北京の名門として知られる大学ですが、著者によると清華大がスマートだが人情味に欠けるというイメージなのに対して、北京大学はバンカラだが情に厚い傾向があるとのこと。
色々と両校の学生の比較をしていますが、特に笑ったのは北京大男子学生の夏休みの過ごし方の一例。「貧困地区でボランティア。チャンバラ小説を読みつつ酒でも飲んで酔っぱらう」だそうです。「チャンバラ小説」というのは言うまでもなく武侠小説のことですね。ということは、清華大学の学生は金庸なんか読まず、一時期北京大生に神扱いされていた周星馳の映画なんかも見てないんでしょうか(^^;)