博客 金烏工房

中国史に関する書籍・映画・テレビ番組の感想などをつれづれに語るブログです。

『人民的名義』その1

2017年04月30日 | 中国近現代ドラマ
『射鵰英雄伝』は少しお休みして、今話題の反腐敗ドラマ『人民的名義』を見始めました。タイムスリップ物でもSF的な作品でもなく、おそらくこのドラマで初めての完全な現代物です (^_^;) 今回は第1~5話まで鑑賞。

漢東省京州市(架空の省と都市ですが、南京がモデルの模様)の炭坑開発の認可をめぐって、京州市副市長・丁義珍の汚職が発覚。北京(中央)の反貪総局偵査処長・侯亮平と、現地漢東省の反貪総局局長・陳海とがそれぞれの地盤で二元捜査を行うことに。


主人公の侯亮平を演じるのは、新版『三国』の孔明役でお馴染み陸毅。あだ名は氏姓をもじった「猴子」(サル)。猪八戒から「猴哥」と呼ばれたりする孫悟空になぞらえられているのでしょう。陳海とは大学の同級生同士で、ともに中国共産党漢東省委員会副書記・高育良が漢東大学政法系(政法学科)で教鞭を執っていた時の教え子です。


侯亮平が標的とするのは、丁義珍から多額の賄賂を受け取って炭坑を認可したらしい北京の役人・趙徳漢。彼を演じるのは『レッドクリフ』の魯粛、『大秦帝国』の秦の孝公でお馴染み侯勇。この趙徳漢が侯亮平の追求をのらりくらりとかわしつつ、時に彼を恫喝すらしますが、別宅の存在を暴露されて遂に観念。


で、その別宅にいろんな人から貰った賄賂の百元札の束を冷蔵庫やら壁面の裏やらベッドのマットの下やらにため込んでいたことがバレるの図www この趙徳漢、「車で自宅から別宅に行こう」という侯亮平の言葉に対し「自転車で行くわ」と返したり(逃走を図っているのが見え見え…)、「女房が厳しいので故郷の農村に暮らす母親に月300元(日本の金銭感覚だと3万円ぐらいに相当すると思います)しか仕送りできない」と言い出したり、「現金じゃなくて美術品で賄賂を貰えば良かったのに?」という侯亮平の嫌味に対して「美術品は真贋を見抜けないからダメだ( ・`ω・´)」と答えたり、言ってることがイチイチおかしいのです (^_^;)

しかし京州市では、丁義珍の身柄捕縛をめぐって陳海が市や省のお偉いさんと折衝している間に、現場で丁を見張っていた陳海の部下・陸亦可らのチームが丁を逃がしてしまいます。携帯で何者かの通知を受けた丁義珍は行方をくらまし、妹が暮らすというロサンゼルスへと高飛びを決行。

何だか煮え切らないまま、事件は次のステージへ。京州市では女社長・高小琴率いる山水集団(山水グループ)による、大風服飾厰(大風服飾工場)の用地買収と立ち退きが問題に大風厰の工場員たちが立ち退きに強行に反対し、党京州市委員会書記の李達康とつながりがある山水集団側が地上げ屋を動員して、偽警官隊を派遣して立ち退きを強行させようとします。それでもらちがあかないと見るや、夜間にブルドーザーを動員して工場への突撃を図りますが、強制的に立ち退かされるぐらいなら工場を炎上させるぐらいの覚悟で臨もうと、門前に積み上げた土嚢に石油を染みこませており、たいまつの火の粉が散って土嚢に飛び火し、本当に炎上……

その様子を工場員の一人がスマホで撮影して動画サイトで中継しており、それを見た侯亮平と陳海が動き出し……というところで次回へ。いやあこのドラマ、めっちゃ面白いじゃないですかw ただ、細かい部分はちゃんと把握できているか正直心許ないですね。この記事でも色々誤解している部分があるかもしれません。『シンゴジラ』のように誰か登場人物が出てくるたびに「漢東省省委副書記」みたいな所属とか役職のテロップが出てくるのですが、『シンゴジラ』の方がこけおどして的な演出という側面が強いのに対し、こちらはガチでそういう補足情報が必要な状態です……
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2017年版『射鵰英雄伝』その4

2017年04月23日 | 武侠ドラマ
2017年版『射鵰英雄伝』第19~24話まで見ました。

トゥルイとジェベに、負傷したコジンを託され、黄蓉と看病することになった郭靖ですが、郭靖とコジンが許嫁同士であることを知った黄蓉はショックから郭靖のもとを去り、郭靖と黄蓉の関係を知ったコジンも同じく行方をくらませます。金庸作品は本当にリア充に厳しいですね……

そして黄蓉を連れ戻すべく決死の覚悟で桃花島を訪れた郭靖は、そこで「老頑童」周伯通と出会い、義兄弟であった「中神通」王重陽との思い出話を聞かされます。


回想シーンで出てくる王重陽を演じるのは、古装でお馴染み韓棟。

一方、楊康と穆念慈は父母の故郷牛家村に来訪し、慎ましくても互いの愛情に溢れた生活を期待する穆念慈ですが、楊康は長年父としてきた完顔洪烈の「私が李淵となればお前は李世民だ」という言葉に動かされ、密かに彼の息子の座に舞い戻って岳飛の残した『武穆遺書』捜索をサポートすることになります。

そして過去の女性経験から何やかやと郭靖の恋路を邪魔しようとする周伯通ですが(饅頭に仕込んだ黄蓉からの手紙をひったくって食べちゃったりする)、郭靖と黄蓉は無事再会を果たします。ここで何だかよくわからないうちに郭靖が周伯通と義兄弟の契りを結び、また周伯通の陰謀で「不通真経」と称して、梅超風の持っていた『九陰真経』下巻を暗誦させられたりしています。しかしそこへ「西毒」欧陽鋒が甥の欧陽克を引き連れて桃花島に到来。


今回の欧陽鋒。やはり張P版に比べるとイマイチ……

欧陽鋒は黄蓉と欧陽克との婚約を求めてやって来たのですが、真の狙いは黄薬師の持つ『九陰真経』です。更に郭靖の求めに応じて洪七公も到来し、こちらは郭靖の庇護者としてやはり黄蓉との婚約を求めます。で、郭靖と欧陽克は黄蓉の婚約者の座をめぐって三番勝負をすることになり、2勝1敗で郭靖の勝利かと思われましたが、ここで郭靖が梅超風から『九陰真経』下巻を奪って我が物にしたという疑いをかけられ(事実は二師父の朱聡が梅超風から掏り取ったものをそれと知らずに郭靖が所持し、更に周伯通がそれを『九陰真経』と気付いて、郭靖を騙して暗誦させたのですが)、桃花島を追われることに。

今回は郭靖・周伯通・洪七公の乗った船が沈没し、欧陽鋒・欧陽克の船に救出され、郭靖が暗記している『九陰真経』を紙に書き写せと迫られるあたりまで。周伯通が黄蓉の手紙を食べちゃったり、欧陽鋒が欧陽克に、実は彼が自分の息子なのだと告白しようとして躊躇する場面など、ちょこちょことアレンジが加わっていますね。しかし海のシーンで合成がモロバレなのはもう少し何とかならないものでしょうか……

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2017年版『射鵰英雄伝』その3

2017年04月16日 | 武侠ドラマ
2017年版『射鵰英雄伝』第13~18話まで見ました。

郭靖との結婚が取り沙汰されているということで穆念慈に色々嫌がらせというか意地悪をする黄蓉ですが、実は本人に郭靖と結婚する気がないということで、一転して仲良しになる二人。そう言えば郭靖と穆念慈、お互いに「穆世姐」「郭世弟」と呼び合ってるので、穆念慈の方が年上なんですねえ。

そして洪七公と分かれた郭靖・黄蓉は太湖で「帰雲荘」の主・陸乗風と出会い、しばらく厄介になることに。実はこの陸乗風、黄蓉の父・黄薬師のかつての弟子で、また太湖の湖賊の親玉なのでありました。その陸乗風の手下に楊康が捕らえられ、彼を助けるために梅超風が襲来し、その梅超風と仇敵同士の江南七怪も郭靖を追って帰雲荘に到来し……といった具合にあっという間に修羅場へと化していきます。

そして梅超風を見守り、密かに支援する謎のマスクマン。その正体は「東邪」黄薬師でした。


今回の黄薬師はイケおじです。


そして帰雲荘に紛れ込んでいた段天徳の口から父母の死の真相が明らかにされ、頑なに楊鉄心を自分の父と認めようとしなかった楊康も、自ら姓名を完顔康から楊康へと改め、父の仇である完顔洪烈を自ら討ち果たすと宣言、郭靖と義兄弟の契りを結びます。

郭靖と楊康は二人で仇討ちの旅へと出ますが、楊康は自分が金の貴公子としての身分を捨てざるを得なくなった一方で、武芸の素質は自分より劣るのに、洪七公から降龍十八掌を授けられ、将来は黄薬師の婿の座が約束されと順風満帆なのに嫉妬を隠せません。金庸作品にはイケメンとかリア充をちゃんと爆発させてくれるやさしさがありますね。

その間、郭靖は父親とともに桃花島に帰ったはずの黄蓉と再会し、欧陽克の魔の手から程瑶迦を救ったりしています。欧陽克、すっかり郭靖の降龍十八掌の練習台と化していますね……

楊康は自分を探していた完顔洪烈と再会し、「お前は父の仇だ!」と糾弾する一方で、これまで実の父子と信じてともに暮らしてきたことを思うと、彼に手を下せず、密かに逃してしまいますが、その様子を穆念慈が目撃しており……というところで次回へ。
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『グレートウォール』 「壁の国」の先輩からトランプ大統領へのメッセージ

2017年04月14日 | 映画
『グレートウォール』(原題:『長城』)

※ 最初にお断りしておきますが、ネタバレあります ※

万里の長城は、実は60年に一度中国内地へと襲来する未知の怪物「饕餮」の侵攻を防ぐためのものだった!「ブラック・パウダー」(黒火薬)を求めてはるばる西欧から渡来したマット・デイモン演じる弓の名手ウィリアムと相棒トバールも、「饕餮」との戦いに巻き込まれ、張涵予演じる元帥、景甜演じる女将軍、アンディ・ラウ演じる王軍師らとともに「饕餮」と対峙することに……

張芸謀監督、マット・デイモン主演ということで、「どーせゲーム・オブ・スローンズの中国版みたいなのを作りたかっただけやろ?」(ゲーム・オブ・スローンズでは、やはり万里の長城を模した「壁」が登場し、未知の存在の侵攻を阻むために立てられたという設定になっている)と大して期待もせず見に行ったのですが、正直この作品を舐めすぎでしたね。『グレートウォール』(長城)なんてタイトルを付けておいて、まさか終盤で長城が無用の長物になる展開になるとは……

まじめに、万里の長城を立てた「壁の国」の先輩である中国から、トランプ政権への「一所懸命メキシコとの国境付近に長城なんて作っても無駄やで?m9(^Д^)」というメッセージが込められているのではないかと思ってしまいます。思えば実際の歴史でも、万里の長城があってもモンゴルや清朝の侵攻は阻めなかったわけで……

そして中国人キャストの中で、男性陣はまず張涵予が何だかよくわからない経緯で早々に退場し、アンディ・ラウは長城を守る禁軍の軍師という何だかよくわからない役回り、林更新(ケニー・リン)らイケメンも大して印象に残らない中で、景甜は出番が多く見せ場もあり、女優でありがちなお飾り的な扱いではまったくなく、彼女のハリウッド・デビューを強く印象づける作品になっています。景甜のハリウッド進出を見届けるぐらいの気持ちで見に行けば楽しめるのではないかと思います。
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2017年版『射鵰英雄伝』その2

2017年04月08日 | 武侠ドラマ
2017年版『射鵰英雄伝』第7~12話まで見ました。

郭靖は趙王府で霊知上人の毒砂掌にやられた全真教の王処一を助けるため、薬材を探し求めますが、ここで黄蓉と再会し、彼女が実は女性であったことを明かされます。


李一桐演じる黄蓉。ネットでは「史上最も美しい黄蓉」という評価も見られます。于正の『半妖傾城』ではポテンシャルを無駄に消費させられている感があったので、本作で報われて本当に良かったです。

街中の薬材は楊康に買い占められたということで、薬材を盗み出すために二人して夜な夜な趙王府に潜入。ここでも黄蓉が完顔洪烈に雇われた黄河四鬼や欧陽克、はたまた王府に潜伏していた姉弟子の梅超風を散々に振り回し、小悪魔っぷりを発揮します。美しいというよりはかわいい彼女の立ち居振る舞いを見ていると、同じ金庸ドラマでも、ヒロインが脚本家でなければ主演男優しか得をしないキャスティングだった于正の『笑傲江湖』とか『神雕侠侶』は一体何だったのだろうかという気になってきます……

そして趙王府では楊康によって穆易(=楊鉄心)と穆念慈も監禁されており、楊鉄心は自分が死んだと思い込まされて完顔洪烈の王妃となっていた包惜弱と再会。楊康は二人から、この楊鉄心が実の父親であると知らされますが、到底信じる気になれません。楊・包の夫婦は一旦は王府から逃れますが、完顔洪烈の追っ手に包囲され、ともに自害の道を選びます。2008年の胡歌版はここでしばらく楊康が楊鉄心や郭靖らと共同生活を送るオリジナルエピソードを挿入していましたが、今回は原作通りあっさり二人を死なせています。

楊夫妻の葬儀を終えた後、江南七怪と丘処機らは楊鉄心の養女であった穆念慈と郭靖とを結婚させようとしますが、郭靖が自分は黄蓉と結婚すると宣言して柯鎮悪の怒りを買い、納屋のような所に監禁されてしまいます。ここで事態を知った黄蓉が髭面の易者に変装したりして、あの手この手で郭靖を解放させようというオリジナルエピソードが挿入されます。まさか柯鎮悪も数年後にこの「小妖女」とともに桃花島で暮らすことになるとは想像もしなかったでしょうw

モンゴルから連れて来た小紅馬に乗って郭靖と黄蓉は師匠のもとから逃れ、そこで「北丐」洪七公と出会います。


今回の洪七公は大物感に欠けるのが残念……

この洪七公から降龍十八掌の数手を教わることになった郭靖ですが、洪七公に「亢龍有悔の四字の中で最も重要なのはどれだ?」と聞かれて、取り敢えず上から順番に「亢」「龍」「有」と答えて外していき、「あ、わかった!悔だ!」と喜々として答える郭靖のアホさ加減が愛おしいです (^_^;)

で、三人が黄蓉を追ってきた欧陽克に絡まれたあたりで次回へ。今作はここまでほぼ原作に忠実に話を進めていますね。
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2017年版『射鵰英雄伝』その1

2017年04月02日 | 武侠ドラマ
『大秦帝国之崛起』と同じく中国のネットテレビ「愛奇芸」で配信中ということで、2017年版『射鵰英雄伝』の鑑賞を開始しました。2017年版の主役は楊旭文、『青雲志』の青龍哥哥を演じていた人ですね。全52話の予定ということですが、今回は第1~6話まで鑑賞。

郭嘯天と楊鉄心の義兄弟は全真七子の一人丘処機と意気投合しますが、二人は金兵によって攻められ、郭嘯天は討ち死にし、楊鉄心は行方不明に。


どこかで見たような金国の六王爺・完顔洪烈。『青雲志』の書書パパや『秀麗伝』の劉縯などでお馴染みの宗峰岩が演じています。

丘処機は子供を宿した二人の妻を捜索しますが、郭嘯天の妻李萍の身柄をめぐって江南七怪と争いになり、江南七怪が郭嘯天の遺児、丘処機が楊鉄心の遺児を探し出し、18年後に彼らを対決させて勝負を着けようということに。

で、江南七怪の皆さんはモンゴルで郭嘯天の遺児、本作の主人公の郭靖を探し当てるわけですが、武芸の飲み込みが悪いと愚蠢だの魯鈍だの言いたい放題。


青龍哥哥とは正反対の役柄の郭靖。

しかしチンギス・カンの目の前で見事な馬術と弓術を披露して大鷲を射止めたように、ジェベから習った弓術なんかは人並み以上に習得できているんですよね。江南七怪のみなさんは、Twitterなんかでよく話題に出てくる、体育の時間に碌にやり方を指導しないくせに逆上がりなんかができない生徒を叱りつける教師みたいなものではないかという疑惑が (^_^;) 

そして全真七子の筆頭・馬鈺が1年余り内功を指導したことにより、10年経ってもマスターできなかった武功を次々とマスターしていく郭靖。馬鈺の「内功の基礎ができていないようでしたので、少し手ほどきをしたまでです。」という一言に、江南七怪の皆さんもさすがに気まずい表情を浮かべておりますw

郭靖の庇護者であるチンギス・カンは、金国の傘下に入るか否かをめぐって義兄弟のジャムカやセングンと対立し、郭靖は彼らとの戦いで功績を挙げ、コジンとの婚約を認められ、「金刀駙馬」の称号を授けられます。草原を舞台にした戦争シーンは割と見応えがありますね。ドラマでこのクオリティなら、原作を3部作の映画にして、第1部を丸々モンゴルの話に充ててもいけるのではないかと思いました。

しかし郭靖は父の仇を討たないうちは婚約を受け入れるわけにはいかないと、江南七怪(正確には梅超風との戦いで一人死んでしまったので六怪ですが)とともに父母の故郷江南へ。そこで乞食少年に扮した黄蓉や、金国六王爺の王子・完顔康こと楊康、穆念慈らと出会い……というところで次回へ


郭靖の義弟にしてライバルとなるはずの楊康。この時点ではまだ出生の事情を知りません。

ということでここまで快調に話が進んでいます。武侠アクションもまずまずで、于正版『笑傲江湖』と『神雕侠侶』を思い出しながら、これが本来あるべき金庸ドラマの姿と満足しながら見てます (^_^;) 本作のOP・EDは、数あるドラマ版の中でも定番とされるTVB1983年版のテーマ曲のひとつ「鉄血丹心」のアレンジなのですが(TVB1983年版には3つテーマ曲がありますが、大陸での再放送時にはこれが流れることが多い)、これはもう反則ですね。この曲が流れて盛り上がらないわけがないと。

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2017年3月に読んだ本

2017年04月01日 | 読書メーター
犬と鬼 知られざる日本の肖像 (講談社学術文庫)犬と鬼 知られざる日本の肖像 (講談社学術文庫)感想環境や文化の保護に対する意識が低い、政府機関が発表する統計数値は嘘ばかり、国家が国民や外国向けに情報を操作し、政策への批判を妨げる、外国人が当該国を魅力的に見せるのが任務だと思っている……今の中国のことではない。原著が出版された2002年当時の日本に対する批判である。今となってはその批判の多くが中国にもあてはまる所を見ると、日本は東アジアの中では特に酷くもないかわりに、特に優れているわけでもないのだろう。著者は日本学とともに中国学も専攻していたとのことなので、今度は日中比較論を期待したい。読了日:03月02日 著者:アレックス・カー

武田氏滅亡 (角川選書)武田氏滅亡 (角川選書)感想武田氏は長篠合戦による敗戦から滅亡へと一直線という感じでとらえていたが、本書では1575年の長篠敗戦から1582年の滅亡に至るまでの経過を詳細に描き出す。この7年の間に何回か滅亡を回避できるチャンスがあったのではないかと思う一方で、武田勝頼が頼りとしたのが高遠諏方氏の旧臣保科氏で、殉死したのも、勝頼が高遠城主であった時以来の旧臣が多いということで、結局武田氏家中が彼を「諏方勝頼」としての立ち位置から脱皮させてくれず、勝頼が武田氏後継となった時点で滅亡は必然的だったのではないかとも思ってしまった。読了日:03月09日 著者:平山 優

『老子』 その思想を読み尽くす (講談社学術文庫)『老子』 その思想を読み尽くす (講談社学術文庫)感想副題にある通り、『老子』の訓読・現代語訳はおまけで、その思想についての考証がメイン。部分的に『老子』が『荘子』の影響を受けているという指摘や、民本主義とでも言うべき後代の民主主義や無政府主義に通じる思想が読み取れるといった指摘は面白いが、これらの指摘の多くは、郭店簡本『老子』の年代を無理に戦国末まで引き下げずとも、通説通り戦国中期のものと位置づけても充分通用するのではないかと思う。この点だけが残念。次回作としては、出土文献本を踏まえた『周易』の思想について書いて欲しい。読了日:03月17日 著者:

中国の誕生―東アジアの近代外交と国家形成―中国の誕生―東アジアの近代外交と国家形成―感想当然ながら「中国」の国号論ではなく、ネイションとしての「中国」が形成されていくさまを、清朝の外交史と、「属国」「領土」「主権」など国際政治に関わる翻訳概念と旧来からの秩序観念との折り合いをどう付けていったかを中心に追うという内容である。その折り合いは現在でも完全につけられたとは言い切れず、現在にも尾を引いているとのことだが、その問題は「中国」だけでなく、中東やアフリカも共有する普遍的な問題なのではないか、現在は世界的にその精算が迫られている時代なのではないかと思ったが…読了日:03月20日 著者:岡本 隆司

シリーズ<本と日本史> 4 宣教師と『太平記』 (集英社新書)シリーズ<本と日本史> 4 宣教師と『太平記』 (集英社新書)感想本書は実のところ『太平記』も宣教師の視点というのも取っ掛かりにすぎず(古典としては他に『平家物語』も取り上げられている)、戦国時代には共通の「歴史認識」と「日本人」としての国民意識が芽ばえつつあったのではないかというのが眼目となっている。戦国時代は乱世と言いつつも、南北朝時代などとは違って統一国家への展望や希望が見えていた時代なのかもしれないと思った。読了日:03月21日 著者:神田 千里

中国侠客列伝 (講談社学術文庫)中国侠客列伝 (講談社学術文庫)感想第一章・第二章の『史記』の世界の侠客たちの話は毎度お馴染みという感じで何の変哲もないが、お馴染みでない話が展開され始める六朝あたりから著者の本領が発揮され、ぐんぐんと面白くなる。『桃花扇』に侠を見出すという議論も少なくとも日本ではほとんどなかったのではないだろうか。「新派武侠小説」など現代の侠客物語にも触れて欲しかったというのはさすがに無理筋か…読了日:03月23日 著者:井波 律子

中国のフロンティア――揺れ動く境界から考える (岩波新書)中国のフロンティア――揺れ動く境界から考える (岩波新書)感想アフリカ・東南アジア・台湾の金門島を舞台に現代中国外交を考える。中国からの視点だけでなく現地からの視点も交え、現地政府や現地人から見て中国の経済支援のありがたみと限界を指摘している。特にアフリカの話は『「その日暮らし」の人類学』の中国人に関する部分を補完する内容になっていると思う。とにかく中国を批判すればいい、反中の視点さえあればいいという中国論とは一線を画している。読了日:03月25日 著者:川島 真

叢書「東アジアの近現代史」 第1巻 清朝の興亡と中華のゆくえ 朝鮮出兵から日露戦争へ (叢書東アジアの近現代史)叢書「東アジアの近現代史」 第1巻 清朝の興亡と中華のゆくえ 朝鮮出兵から日露戦争へ (叢書東アジアの近現代史)感想内容的には著者岡本隆司氏のこれまでの著書のダイジェストというか、上澄みを掬った感が強い。特に後半部は、清朝における「領土」「主権」等の概念を論じたりと、近刊の『中国の誕生』のダイジェストとなっている。新しい知見はそれほど盛り込まれていないが、国際関係や外交を中心として見る清朝史としてはよくまとまっていると思う。読了日:03月27日 著者:岡本 隆司

日本の近代とは何であったか――問題史的考察 (岩波新書)日本の近代とは何であったか――問題史的考察 (岩波新書)感想日本で複数政党制が成立した淵源を幕藩体制下の合議制に求めたり、「東亜新秩序」を地域主義の一種と位置づけ、東アジア・東南アジアでの垂直的な国際関係が戦後も継続したことなど、興味深い指摘が多々見られる。昨今話題の教育勅語についても言及があり、一般国民に対して憲法以上の影響力を及ぼし、天皇を教主とする「市民宗教」の教典の役割を果たしたと位置づけている。このような当時の位置づけを踏まえれば、文面から「いいことも書いてある」と評価することはできないだろう。読了日:03月29日 著者:三谷 太一郎
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