博客 金烏工房

中国史に関する書籍・映画・テレビ番組の感想などをつれづれに語るブログです。

『大宋少年志』その4

2019年11月28日 | 中国歴史ドラマ
『大宋少年志』第19~24話まで見ました。

陳工殺害容疑で禁軍から追われる身となった元仲辛と趙簡ですが、趙簡が禁軍に射られた毒矢を射られてしまいます。その解毒剤が禁軍の元締めである韋衙内の父親の太尉の手元にしかないということで、衙内らは解毒剤を手に入れようとあれこれ画策します。

太尉と掛け合った結果、解毒剤を与えるかわりに、息子には以後七斎の面々との交際を禁じます。しかしそんな命令を素直に聞く衙内ではありません (^_^;) また解毒剤入手作戦の過程で西夏の密偵に尾行されたことから、元仲辛らは事件の黒幕は他ならぬ太尉ではないかと疑いはじめます。

七斎の面々の調査により、羽振りがよいように見える韋府の内情は火の車であること、太尉は陳工を殺害させて車行炮設計図を奪取し、西夏の密偵に高額で売りつけて急場をしのごうとしているのではないかという疑惑が高まります。父親が高位高官でありながら売国奴ではないかということで、国のために尽くすべきか父親に着いていくべきか、複雑な立場に立たされる衙内。

七斎の面々は、設計図引き渡し相手の西夏の密偵に扮して現場で太尉を取り押さえようと計画しますが、土壇場で計画が露呈。衙内の尽力で陸観年が援軍を率いて到来し、太尉は捕らえたものの、車行炮の設計図は西夏のスパイの手に渡り……と、ここでネタばらし。車行炮には実は重大な欠陥があり、設計図を流出させたのは、車行炮の生産によって西夏の力を弱めるための陰謀だったのです。(太尉や陸観年が自分で「陰謀」と言ってます)西夏側に設計図をつかませ、なおかつ不審を抱かせないため、また太尉は敢えて売国の罪で処刑されたことにし、名前を変えて嶺南で生涯を過ごすことになります。

七斎に陳工護送のミッションが与えられたのは、彼らをおとりにして敢えて西夏側に陳工の身柄を奪わせるためでした。本来は陳工は西夏に連行されてから設計図を描き上げるという手はずでしたが、案に相違して七斎の面々が陳工の身柄を確保したので、太尉の方でも色々計画の変更を迫られた模様。陳工の死も、枢密院に移された後に口封じのために自害したというのが真相なのでした…… 2000年代の『大宋提刑官』だと、こういう展開の場合ホントに身内が黒幕だったというオチで終わるので、時代は変わったなあという気がします。

これまでおぼっちゃまくんみたいな生活をしていた衙内ですが、父親と生き別れになり、家財を没収され、邸宅も封鎖され……と感傷に浸っているうちに新たな任務が到来。皇后の誕生日の宴に合わせて遼から使節団がやってくるというので、七斎の面々は宴で芸を披露する演芸団に扮して彼らを監視することになります。


使節団のトップである遼の王族雲霓郡主は小景とは旧知の仲……のはずが、彼女をひと目見た小景は偽物であると見破ります。


本物の郡主は彼らに捕縛されていたのでした…… どうやら遼国の王族内の内紛によるもののようで、元仲辛によって救出されます。しかし彼女は大変なじゃじゃ馬で、解放されるやいなや元仲辛を煙に巻いて開封の街中に逃亡。身柄を抑えられて小景と引き会わされ、誤解が解けた後も、何となくいい雰囲気になりかけていた元仲辛と趙簡の仲をかき乱したりと、碌なことをしません (^_^;) 

七斎の面々は偽郡主の一団を取り押さえますが、本物の郡主も何やら思惑があるらしく…… ということで各エピソードともゲストキャラが意外と魅力的です。
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『大宋少年志』その3

2019年11月22日 | 中国歴史ドラマ
『大宋少年志』第13~18話まで見ました。

第七斎の新たなる任務は、対遼・西夏用の秘密兵器の設計を手がける技師の陳工を、身柄の安全のために彼が所属する弓弩院から、禁軍の用意した安全な場所に秘密裏に護送すること。元仲辛らは陳工をうまく弓弩院から連れ出すことに成功するものの、馬車での護送中に謎の一団の襲撃を受け、陳工が行方不明となってしまいます。

逃げ延びる陳工の身柄を押さえた韋衙内と薛映は、前回の牢城営でのミッションのヘマから退学の危機にさらされたこともあり、手柄を独占しようと、密かに彼を薛映の父母が経営する甘味屋に匿うことにします。


しかしこの陳工、生来博打好きで女好き。女遊びがしたいと言いだし、韋衙内は仕方なく妓楼から妓女を呼び寄せますが、そこから彼の命を狙う一団の足が着き、店に刺客が襲撃……というか、陳工は足を着かせるためにそういう要求をしたのではないかという疑惑が浮上します。

ここらへんで元仲辛・趙簡らも二人が陳工を匿っているのに気付きます。そのまま彼を禁軍に護送すれば任務は完了のはずですが、どうも彼を襲った刺客は禁軍の手の者ではないかということで、このまま彼を引き渡せないと、秘閣に連れ込んで匿うことに。秘閣には、女子用の浴場につながる秘密の地下道があり、陳工と案内役の元仲辛を女装させ、浴場から秘閣内部へと連れ込むことにします。





ということで女装させられた二人。元仲辛の女装がなかなかサマになっているので、イケメンがちゃんと女装をすると美人に見えるという学びを得ました (^_^;)

その後も七斎の面々は、陳工が行方不明になったということで禁軍から呼び出されて査問を受けたり、理不尽に監禁されることに怒りを爆発させた陳工の無軌道な行動に悩まされたりしますが、ある朝遂に彼が手がけていた秘密兵器「車行炮」の設計図が完成します。

その頃合いで陳工を匿っていたことが陸掌院にバレてしまいます。七斎の面々は、彼を禁軍ではなく枢密院に護送することにしますが、陽動作戦で禁軍側を引っかけ、禁軍の都尉で韋衙内の父親の部下の馬山が陳工の襲撃を指揮していたことが判明。

馬山はスパイ容疑で禁軍に引き渡し、陳工は枢密院に無事に護送してめでたしめでたし……とはいかず、馬山はその後禁軍内で処分を下された様子がないということで、陳工の襲撃は禁軍全体の内意だったのではないかという疑惑が浮上。枢密院で安全が守られているはずの陳工も何者かに殺害されてしまい、彼の身の上を心配して最後に彼を訪問していた元仲辛と趙簡が容疑者として禁軍に追われることになり……
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『大宋少年志』その2

2019年11月15日 | 中国歴史ドラマ
『大宋少年志』第7~12話まで見ました。


秘閣では傀儡師の親分老賊など、軍務や裏家業の実務者が講師とスカウトされていますが、この人、梁竹も掌院の陸観年の誘いを受け、講師に就任します。元仲辛らの属する七斎の斎長の選定は彼ら三人の講師に委ねられますが、買収力で勝る韋衙内が斎長に (^_^;)

さて、七斎の面々は、囚人が採石場で労役に服する牢城営に潜入し、遼のスパイ馮主が隠したという密書を探し出すミッションを与えられます。情報の提供元は元仲辛が捕らえた韓断章。宋の弩の技師を買収しようと開封で活動していた馮主は、ひょんなことから正体が知られないまま別件で官憲に捕まり、囚人として牢城営に送られ、弩の技師の名簿を牢内のどこかに隠したまま病死してしまったとのこと。

韓断章は二院制を採る遼国の北院に属し、馮主は南院に属するというわけで、韓断章は対立する南院の勢力を弱めるため、敵国であるはずの宋側に情報を売ることにしたとのこと。段々私好みの展開になってきました。

まずは韋衙内・王寛・薛映・裴景の四人が囚人に扮して潜入しますが、どういうわけか連絡が途絶えてしまいます。そこで残る元仲辛と趙簡がやはり囚人に扮し、牢内の責任者の営頭と連携しつつ捜査することに…… 二人は囚人仲間の丁二から夜な夜な開かれているという「談心」という集会の誘いを受け、囚人たちに世の中の矛盾を説く説教師「伝道」に引きあわされます。彼らは牢内で反乱をおこし、脱獄を企んでいるようです。「伝道」たちの元締めとして更に「伝道尊師」というのがいるということなのですが、その正体は……


行方不明になったはずの韋衙内なのでしたwww 身分を隠して潜入したはずが、有力者の息子ということで牢内や採石場を監視する衛兵には正体がバレバレ。反乱を企む囚人たちも、「こいつを首領に祭り上げれば親父の太尉に要求を飲ませやすくなる」ということで、無理やり尊師に推戴されてしまった模様。

しかし残る王寛ら三人の行方は韋衙内も知らないということで、趙簡は王寛が目を付けていたという採石場の旁らの山洞に忍び込みます。趙簡はそこで王寛と再会しますが、薛映が毒虫に刺されて伏せっているうえ、山洞の中に隠れ住む謎の一団に人質に取られてしまい、動けなくなっているとのこと。

一方、元仲辛は営頭に「伝道」たちの反乱計画を報告し、外部から兵を動員して鎮圧させようとしますが、副営頭と名乗る人物から呼び出されたと思ったら、営頭が急死したと知らされます。もちろん殺害したのは副営頭で、副営頭も反乱を企む伝道たちとグルだったというオチ。その副営頭や伝道たちは、山洞の謎の一団とも連携しているのですが、その正体は、素大姐こと素星橋率いる汴水の船頭の一座なのでした。彼女たちは開封の水運を一手に握っていましたが、馮主に陥れられて採石場に送られ、馮主も罪に問われると彼を殺害して密書を奪い、殺人の罪を逃れるため山洞に逃げ込んで立てこもっていたとのこと。

素星橋と元仲辛とが旧知だったこともあり、王寛らを助け出したうえ、目的の密書も入手して破棄。彼らの協力を得て「伝道」たちの反乱を鎮圧します。そして気弱な性格だったはずが、段々不審な言動をするようになっていた丁二の正体が判明。


実は西夏のお偉いさんの子弟で、スパイとして牢内に潜伏して反乱を煽っていたとのこと…… このまま父親の命ずるままに故国に戻れずにずっと宋で諜報活動に従事するのかとくすぶっていたところ、彼の正体を知らずに趙簡がかけた励ましの言葉がきっかけとなってありのままに生きる決心を固めた模様。彼は牢内から逃げ延びますが、また再登場の機会があるでしょう。

こうして秘閣に戻った七斎の面々ですが、実は素星橋にも後ろ暗いところがあったことが判明…… そして彼らに新たな任務が……というところで次回へ。内容が濃密でなかなかいい感じです。
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『大宋少年志』その1

2019年11月06日 | 中国歴史ドラマ
全65話中53話までで放映・配信が止まったままの『封神演義』ですが、湖南衛視でその後番組として放映されたのが本作『大宋少年志』。「どうせよくある古装学園アイドルドラマだろう」と冷ややかに見てたら、意外と評価が高いというので見てみることに。全42話中、今回は第1~6話まで鑑賞。

時は北宋慶暦年間。「戦神」と謳われた勇将元伯鰭は祈川寨の戦いで西夏に対して大敗を喫するも、ただひとり生還し、周囲から白眼視される。この戦いで弟が戦死した禁軍の将・梁竹は、仇討ちのため元伯鰭を捕らえ、更に彼の異母弟で太学の学生・元仲辛を人質にとろうとするが…… というところから話が始まります。


元仲辛(上画像青服)はもともとの素行不良に加えて、兄の後ろ盾だった宰相の樊大人が失脚したことで退学処分に。そこへなぜか彼のルームメイトで品行方正な優等生・王寛(上画像白服)も自主退学。二人は謎の女から怪しげな妓楼へと招待され、そこで太尉のドラ息子韋衙内(上画像中央)や妓女の小景と出会います。


彼らを妓楼に招いたのは、宋の宗室出身で王寛の元婚約者・趙簡でした。彼女は有意な若者を秘密裏に養成するための男女共学の学校「秘閣」の学生で、開封に忍び込んだという遼の密偵をおびき出すため、政治上微妙な立場にある元仲辛に協力を求めます。

元仲辛は報酬5万貫と兄元伯鰭の釈放を要求して協力に同意した、と見せかけて、遼の密偵・韓断章と接触。報酬1万貫で遼のスパイとなることを承諾した、と見せかけて、知り合いの傀儡団と連携しつつ宋・遼側の双方を手玉に取り、双方から報酬をせしめた上、兄を救出して開封からの脱出を図ります。しかし梁竹の手からは逃れられず、拷問で痛めつけられても彼と相手をしようとしなかった元伯鰭が、弟を傷つけられたことで梁竹を打ち倒し、更には秘閣の掌院(校長)・陸観年の仲裁もあり、元伯鰭は釈放のうえ、樊大人の新たな任地に同行することに。


ひとり残された元仲辛は秘閣への入学を承諾。ということで趙簡に小景(裴景)、郷兵出身の双刀使い・薛映と、元々学生だった三人に、新入学の王寛・韋衙内と元仲辛を加え、秘閣の第七斎メンバーが勢揃い。秘閣は十斎(10クラス)から成り、1斎の定員は10人以下とのこと。陸観年は彼らに新たな課題のため、斎長(学級委員長)を決めるよう申し渡すが…… というところで次回へ。話が進んでいるように見えてあまり進んでないのが気になりますが、出だしは悪くありません。
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2019年10月に読んだ本

2019年11月01日 | 読書メーター
日本語と論理: 哲学者、その謎に挑む (NHK出版新書)日本語と論理: 哲学者、その謎に挑む (NHK出版新書)感想
「日本語は非論理的な言語か?」という疑問から入る言語哲学論だが、単数と複数の区別など基礎的な問題を、ごく単純な文章を対象に考察していくというスタイルで、この種の本を読み慣れていない側からするとかなり面食らったというのが正直なところ。最終章で触れられる、総称文が我々の偏見を助長するという方向でしばしば悪用されるという問題、全称文と総称文の区別が曖昧にされてきたという論理学自体が抱える問題については興味深く読んだ。
読了日:10月03日 著者:飯田 隆

薔薇戦争 イングランド絶対王政を生んだ骨肉の内乱薔薇戦争 イングランド絶対王政を生んだ骨肉の内乱感想
高校世界史的には1455年から1485年までの30年間とされてきた薔薇戦争の流れを、1399年のランカスター朝の成立から説き起こす。戦争の流れ、人物関係など、コンパクトにまとめられていると思う。(巻頭の王室系図は何回も見返すことになったが)ヘンリー4世によるリチャード2世の廃位をはじめとする簒奪劇は、中国で後漢→魏→晋と繰り返された簒奪劇を連想させる。
読了日:10月04日 著者:陶山 昇平

中国古代史 司馬遷「史記」の世界 (角川ソフィア文庫)中国古代史 司馬遷「史記」の世界 (角川ソフィア文庫)感想
黄帝をはじめとする五帝の時代から司馬遷の同時代となる前漢の武帝の時代まで、更には唐の司馬貞が補った三皇のことなども加えつつ、『史記』の内容を時代に偏ることなく紹介しているが、解説がいちいち俗流なのが欠点となるか。このあたりは先日来Twitterで話題となっている、古典を現代語訳ではなく原文で読む意味を逆説的に示してしまっているのかもしれない。
読了日:10月08日 著者:渡辺 精一

チョンキンマンションのボスは知っている: アングラ経済の人類学チョンキンマンションのボスは知っている: アングラ経済の人類学感想
「チョンキンマンションのボス」ことカラマの動きを通して香港在住タンザニア人たちの生態を描き出す。彼らが体現する、無理のない範囲で相互扶助を行う「ついで」の論理と、大陸中国で流行りの信用スコアによる評価経済との簡単な比較が終盤で展開されるが、もっと本格的な比較が読みたい気もする。カラマの服を洗わずビニール袋に詰めて置いておく、ビジネスの相手との約束の時間を守らないといった一見不合理な行動に彼なりの戦略が隠されているという話も面白い。
読了日:10月11日 著者:小川 さやか

二重国籍と日本 (ちくま新書 (1440))二重国籍と日本 (ちくま新書 (1440))感想
前半で2016年に問題となった蓮舫氏の二重国籍問題及び日本・台湾間の国籍問題、後半で二重国籍問題一般を議論する。第一章は当時の蓮舫問題の推移のよいまとめとなっている。蓮舫氏が法務省より受けたとされる、日本では台湾出身者に中華人民共和国の国籍法が適用されるという説明については、確かに台湾出身者や関係者にそういう説明がされていたことがあるようだ。蓮舫氏については本人の努力ではどうにもならない部分も多く、バッシングは理不尽ということになるだろう。
読了日:10月13日 著者:

「異形」の古墳 朝鮮半島の前方後円墳 (角川選書)「異形」の古墳 朝鮮半島の前方後円墳 (角川選書)感想
日本のネットでは政治的な扱いをされがちな朝鮮半島の前方後円墳に関する専論。その被葬者に関する研究史を敢えて後回しにするという構成からも窺われる通り、その位置づけを征服・被征服関係のようなわかりやすい話に落とし込んだものではない。冒頭で、朝鮮半島の前方後円墳が都出比呂志の「前方後円墳体制論」に疑問を突きつける存在であると位置づけているのがおもしろい。
読了日:10月15日 著者:高田 貫太

君主号の世界史 (新潮新書)君主号の世界史 (新潮新書)感想
トリビアルに世界各地の君主号について取り上げるのではなく、取り上げる地域は割と限られているが、中国→西洋→日本と、うまく文脈をつなげてある。王と皇帝の位置づけについて東西で一脈通じているという評価や、天皇については元来「王」号呼称になじんでいたという話、チャールズはなぜ「皇太子」と呼ばれるのかといった話題が面白い。
読了日:10月17日 著者:岡本 隆司

なぜ科学を学ぶのか (ちくまプリマー新書 (335))なぜ科学を学ぶのか (ちくまプリマー新書 (335))感想
「科学」という言葉の由来、科学的な発想とは、環境問題、軍事利用の問題、科学・技術と経済性、科学者としての倫理など、まさになぜ科学を学ぶのかという根本に立ち返った内容となっている。軍事開発された技術の民生利用について、「戦争は発明の母」というのはどこまで本当か?と、その実態にツッコミを入れているのは面白い。
読了日:10月17日 著者:池内 了

執権 北条氏と鎌倉幕府 (講談社学術文庫)執権 北条氏と鎌倉幕府 (講談社学術文庫)感想
時政・義時から時宗・貞時・高時に至るまで、伊豆の無名に近い氏族から出発し、「将軍権力代行者」として鎌倉幕府の独裁者の立場を確立するまでの鎌倉北条氏の歩みを見ていくことで、「北条氏はなぜ将軍にならなかったのか」という問いに答える。北条氏は自ら将軍になる必要はなく、なりたくもなかったということだが、中国には強いて皇帝になる必要はないはずなのに、皇帝になりたい人間がたくさんおり、実際彼らが次々と皇帝になったことを思えば、やはり日本の武士政権の(あり方ではなく)発想が特殊ということになるかもしれない。
読了日:10月20日 著者:細川 重男

ローマ教皇史 (ちくま学芸文庫 (ス-21-1))ローマ教皇史 (ちくま学芸文庫 (ス-21-1))感想
ローマ帝国時代のローマ司教から現代の教皇(ヨハネス・パウルス2世以降は解説で補足)まで、歴代の教皇の事績や公会議、論争を総覧。古代・中世の司教・教皇に多く紙幅を割いている。ディオクレティアヌスの大迫害、ゲルマン諸民族やビザンティン皇帝との関係、教会大分裂、宗教改革など、その時々の危機に対してどう向かい合ってきたのか(あるいは向かい合ってこなかったのか)が読みどころ。
読了日:10月23日 著者:鈴木 宣明
持統天皇-壬申の乱の「真の勝者」 (中公新書 2563)持統天皇-壬申の乱の「真の勝者」 (中公新書 2563)感想
「女帝の即位は実子を皇位継承から外すことと引き替えに成り立つ」という理解が全編の鍵のひとつとなっているが、これは学界でどの程度支持されているのだろうか。ほかにも『万葉集』の位置づけなど、「話としては面白いが……」というのが目立つ。
読了日:10月24日 著者:瀧浪 貞子

芝園団地に住んでいます : 住民の半分が外国人になったとき何が起きるか芝園団地に住んでいます : 住民の半分が外国人になったとき何が起きるか感想
副題のように、住民の多くが外国人になるという今後の日本、あるいは移民の排斥が進むアメリカなど世界各国の縮図として芝園団地での問題を見ていく。日本人と中国人というだけでなく、高齢者と若者という世代の違い、長期間の在住と2、3年といった短期間の在住という在住期間の違いといったように、あらゆる点で日本人住民と中国人住民とが対照的であるのが、問題を複雑にしているように思う。
読了日:10月26日 著者:大島 隆

アイヌ文化で読み解く「ゴールデンカムイ」 (集英社新書)アイヌ文化で読み解く「ゴールデンカムイ」 (集英社新書)感想
『ゴールデンカムイ』は漫画もアニメも未見、アイヌ文化についても全く知識がないという状態だったが、おもしろく読めた。アイヌの英雄叙事詩ユカラのノリがドラゴンボールのようだという話、アイヌの地名が東北地方などにも残っているのではないかという話に引き込まれた。本書でアイヌのことには興味が持てたが、『ゴールデンカムイ』自体はまあそれなりにという感じになったのは、本書としては成功なのか失敗なのか…
読了日:10月29日 著者:中川 裕

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