漢とは何か (東方選書 58)の
感想同時代の前漢から三国・西晋、唐代に至るまでの、官制、五徳の配当、史書編纂、年号、君主の諡号・廟号、祭祀などに現れる各時代の漢王朝観を概観。漢の記憶が薄れるにつれ、懐旧の対象に周王朝が加わるなど、変化が見られるのは面白い。ただ、第六章が本書のテーマとの関わりが薄いのは残念。
読了日:04月02日 著者:
物語 ウクライナの歴史―ヨーロッパ最後の大国 (中公新書)の
感想ウクライナに関わりのある文学者や音楽家が彩りを添える。中世以来のロシア、あるいはポーランドとの複雑な関係がわかる。豊かな農業・工業国であるがゆえに歴史的に多難に見舞われたのだとする。アメリカなどのウクライナ移民の活動、クリミアがウクライナ領となった経緯が興味深い。
読了日:04月07日 著者:
黒川 祐次死と運命 中国中古の思索 (法蔵館文庫)の
感想古代中国の死生観、運命論、欲望論に関する論考を集めたもの。著者の体験が所々織り込まれているのが面白い。登仙という発想が始皇帝の頃には見られず、武帝の頃にようやくむ出てきたこと、性悪説が『荀子』の中で決して重要ではなかったことといった説が注目される。また昨今の流行とは異なり、現代においても「無欲恬淡」を説いているあたりも要注目。
読了日:04月11日 著者:
金谷 治ハレム: 女官と宦官たちの世界 (新潮選書)の
感想オスマン帝国のハレムを構成する組織、役職、宮殿の構造について。愛妾・夫人は基本的に奴隷出身、王子の鳥籠制度など大きな違いはあるが、官僚組織のようになっている点など、オスマン帝国のハレムは中国歴代王朝の後宮と意外と共通点があるなという印象。後半に出てくる唖者と手話の話が面白い。
読了日:04月15日 著者:
小笠原 弘幸論考 日本中世史: 武士たちの行動・武士たちの思想 (日本史史料研究会ブックス)の
感想初学者向けのコラムあり、古文書や史料の読解あり、替え歌ありと、バラエティに富んだ構成。中世武士の名前に関する解説は参考になる。
読了日:04月17日 著者:
細川 重男漢字の音 東方選書57の
感想形声文字の声符と上古音・中古音・日本漢字音についての概説。藤堂明保などの語源論的発想を批判した附論が一番の読みどころかも。
読了日:04月18日 著者:
落合 淳思韓国カルチャー 隣人の素顔と現在 (集英社新書)の
感想ドラマ、映画、文学作品から読み解く韓国の社会と文化。ドラマが「すぐに過去の物語」になるというあたり、韓国社会の変化の早さが読み取れる。韓国社会への批判もあるが、良い所にも触れているのが好感が持てる。また韓国と比較して日本社会への批判が盛り込まれているのも良い。本書のラストで「韓国について知れば知るほど、日本について何も知らなかったことに気付かされる」とあるが、外国の社会を知ることは日本社会の問題点に気付くことでもあるのだろう。
読了日:04月22日 著者:
伊東 順子思考と行動の中国史の
感想これも『古代中国の24時間』などに類する、今流行りの社会生活史の一種ということになるだろうか。著者の意を汲むと、本書は「中国を一例とする前近代人の思考と行動」ということになるか。やはり今の流行りらしく中国と日本との違いを強調しているが、中国との違いを強調することは、残念ながら今の日本では中国への偏見を持たせるだけの結果に終わる可能性がある。日本というより現代人との感覚の違いを強調し、前近代の日本との違いだけでなく共通点も提示した方が良かったように思う。
読了日:04月27日 著者:
竹内 康浩読書メーター