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博客 金烏工房

中国史に関する書籍・映画・テレビ番組の感想などをつれづれに語るブログです。

『長安十二時辰』その6

2019年07月29日 | 中国歴史ドラマ
『長安十二時辰』第26~30話まで見ました。

龍波に捕らわれ、さっくり処刑されかかる李必ですが、「自分を殺すと張小敬を弁護する者がいなくなる」と聞染に訴えると、顔色を変えて龍波に助命を求め、釈放されます。龍波がなぜ聞染のことを気に掛けるのか今ひとつわからん部分があります…… 恋愛関係ということかもしれませんが、もっと深い事情があるのかもしれません。

龍波に両目をえぐられた何孚は、龍波が林九郎の殺害に乗ってこないのを知ると、「こうなったら自分だけで」とばかりに林九郎が馬車で外出した隙を突いて爆殺しようとしますが、林九郎の方はそうした動向をお見通しでした。何孚はたちまち捕縛され、林府に連行されていきます。


事件を太子と太子を支える一党の排除に利用しようとする林九郎。20年前に林九郎に陥れられた実家の名誉回復と養父の何執正の助命を餌として何孚に事件の黒幕は太子であると告白というかでっち上げさせようとします。

一方、靖安司では張小敬をスパイということにして幕引きを図ろうとする吉温に姚汝能は不満を隠せず、関係者に指令を送る楼台から太鼓の音で街中のどこかにいるはずの張小敬に「不退」というメッセージを送ります。丁老三殺害犯ではないかと彼の仲間たちに追われ、長安から出ることも考えていた張小敬ですが、このメッセージを察知して何とか龍波らを食い止めようと翻意。

で、葛老の協力を得ようと地下城に出向いたところで李必と再会。龍波から解放されてからも色々あって地下城にとっ捕まってたわけですね (^_^;) 張小敬は地下城でのクーデター計画を阻止して葛老から守捉郎(これも「不良人」と同様に当時の職掌の模様)を動かす権限を授けられます。

李必も解放され、ようやく郭利仕のもとへと辿り着きます。そして何孚のことを知って以来ショックで街を徘徊していた何執正とも合流し、李必・何執正と、これまた何とか合流を果たした檀棋の3人で林九郎のもとに乗り込みます。しかし何孚は林九郎の言葉を信じ、太子が黒幕だったと告げてその場で自害。助命されるはずの何執正も関係は免れないと取り調べに引き立てられることになり、李必も太子が黒幕だったと認めよと詰められます。

「しかしそれでは龍波はどうなるのだ!?」と反発すると、「龍波?そんなものはいない」とつれない返答。檀棋が張小敬を救出する際に右驍衛に闖入した案件で捕らえられ、彼女の命と引き替えに関係書類への署名を迫られます。更にそこへ姚汝能がやってきて実は林九郎のスパイとして靖安司に潜入していたことが明らかとなり…… 
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『長安十二時辰』その5

2019年07月24日 | 中国歴史ドラマ
『長安十二時辰』第21~25話まで見ました。

前回のラストで、事件の首謀者とされていた右刹が龍波の放った刺客によって殺害。張小敬&檀棋は右刹の遺体を運び出すふりをして刺客をおびき出します。


そこへ更に「右刹殺害のような重要な任務で私を起用しないのが気に障る」とばかりに魚腸が乱入。張小敬と本日二回目のバトルの末、捕縛されます。張小敬と檀棋は平康坊の火師が長安爆破計画に関与したという情報を得て現場に向かうことに。

状況を察知した龍波は、スポンサーの何孚の意向に逆らって魚腸救出を決定。何孚の実家は林九郎に陥れられ、彼は何執正に引き取られてからは知的障害を負ったふりをして淡々と復讐の機会を待っていた模様。龍波らのアジトの敷地(何孚の実家の敷地だったようです)も資金も何孚が提供していたようです。

元来靖安司の警備は崔器率いる旅賁軍が担っていたのですが、旅賁軍が右驍衛の管轄下に再編されて以来無防備の状態となっておりました。自らの待遇に不満を抱いていた崔器も再編には乗り気でしたが、いざ管轄が移されると隊長だった彼も嫌がらせのように一兵卒として扱われることに…… そしてその隙を突き、龍波が手勢を率いて靖安司を襲撃。魚腸を救出するだけでなく、その復讐とばかりに身を守る術を持たない吏員たちを次々と虐殺していきます。


そこへ虫の知らせで危機を察したらしい崔器が「これはいかん!」と単身救援に駆けつけ、自分の身を犠牲にして李必を逃し、辛くも龍波らを撤退させます。しかしその際に靖安司に火が放たれ、内部調査用に収蔵されていた貴重な文書類もほとんどが灰に…… このあたりは日本でおこった事件を連想させる描写になっていますね。無論時系列的に制作側が参照できたはずがないのですが。

惨劇の情報はすぐさま「聖人」の耳に入り、林九郎に解決が委ねられます。林九郎は行方不明扱いの李必に替わり、腹心の吉温を新任の靖安司司丞として派遣。吉温は姚汝能ら生き残った吏員を取りまとめ、張小敬が龍波のスパイに違いないと決めつけて追補を命じます。彼がスパイのはずがないと知る姚汝能らは困惑と反発を隠せませんが……?

一方、逃げ延びた李必は龍波の後を追ってアジトを突きとめようとしますが、逆に追跡がバレてアジトへと連行。正直「何やってんの」としか (^_^;) 夕刻にその魔の手から逃れたばかりの何孚とも再会してしまいますが、林九郎への仇討ちにこだわったりと色々龍波らの気に障る言動をとり続けた結果彼らに幽閉されてしまいます。

そして靖安司の惨劇も自分がお尋ね者になったことも知らない張小敬は、探し求めていた火師がかつての戦友丁老三であることを知ります。丁老三からの「お前も協力しなよ?」という悪の誘いを断ると、実は自分も良心の呵責を覚えていたらしい丁老三は側にいた仲間たちを斬りつけます。そして張小敬に黒幕の名前を告げようとしますが、生き残った仲間が丁を刺殺し……

ということで、様々な事情から「無敵の人」となった多くの同胞が龍波らのテロを支えるという展開になってきています。そしてテロを阻止しようとする張小敬も、彼らと大して変わらない立場にあります。日本の事件とも重なって見えるのは、本作がそれだけ普遍性のある問題をテーマとしているということでしょうね。

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『長安十二時辰』その4

2019年07月19日 | 中国歴史ドラマ
『長安十二時辰』第16~20話まで見ました。


石油と「伏火雷」を積み込んで馬車で逃亡する「狼衛」の残党たち。祭りのために集まった群衆を蹴散らし、石油を撒き散らしてあちこち爆破させながら突進するので、長安の街中が大騒ぎです。張小敬が追跡して馬車から「狼衛」の残党を次々と振り落とし、最後は自ら馬車ごと湖に飛び込んで残りの火薬を爆破させたことで事なきを得ます。

「狼衛」の曹破延を捕縛し、3台の場所に詰め込まれていた桶15個分の火薬と石油を処分したということで、「聖人」の命により「闕勒霍多」事件の解決が言い渡されますが、靖安司内部に潜んでいたスパイにより、火薬は実は桶300個分存在していることが明らかとなります…… 

祝日を前に早く家に帰りたいとゴネる靖安司の吏員を前に、李必は捜査継続を決意。張小敬も湖から無事救出されたようですが、事件解決の命によって元の通り死刑囚の扱いとなったうえ、旅賁軍の頭領崔器により、秘密裏に右驍衛に連行されてしまいます。旅賁軍はこれまで靖安司の管轄下にあってその防衛や機動部隊の役目を果たしてきましたが、諸々の政治的な動きにより右驍衛の管轄下に移されたのでした……


ということで、李必のの檀棋は変装して嫌がる姚汝能とともに張小敬救出に向かいます。林九郎の命ということで穏便に右驍衛から張小敬を連れ出そうとしますが、結局足が付いて強行突破を図ろうとしたところ、李必の要望に応えて「聖人」の側近の郭利仕が到来し、張小敬らの身柄を引き取ります。郭利仕のモデルは、玄宗に仕えた宦官の高力士です。

一方、李必は事件幕引き措置の真意を質すべく何執正の屋敷を訪ねますが、そこで何執正の義子何孚が事件に関与していることを察知し、監禁されそうになるところを命からがら脱出。何執正のことを案じ、このことは靖安司の面々には伏せておき、自分一人の秘密として抱えることに…… 秘密といえば、姚汝能も実は聞染を救出して(結局井戸に放り込まれたままでした……)何か良からぬ算段があったのか、密かに靖安司の牢獄に監禁しておいたのが、まんまと龍波のもとに逃亡されてしまいます。長安爆破計画の実働部隊は「異民族」ですが、彼らを背後で支援し、破滅を望んでいるのは「同胞」という構図が何となく見えてきましたね……

で、捕らえられた曹破延から指導者として右刹の名前が割り出されると、張小敬と檀棋は彼が潜んでいるらしい大秦景寺へと潜入しますが、その頃、右刹が龍波の雇ったと思しき刺客に襲われ……というあたりで次回へ。「狼衛」の面々が信仰している宗教はゾロアスター教かマニ教あたりかと思いきや、景教(ネストリウ派のキリスト教)だったということのようです。正確には、それをモデルにした架空の宗教ということかもしれませんが。


時刻は戌初(午後8時ごろ)。長安の夜はどっちぷり更けてきました。
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『長安十二時辰』その3

2019年07月13日 | 中国歴史ドラマ
『長安十二時辰』第11~15話まで見ました。いくつか誤解している点があったので、その1・その2に少しだけ手を入れてます。


すっかりイスラム国の協力者的なポジションになった聞染ですが、「狼衛」の生き残り曹破延&麻格爾を爆薬作りに勤しむ龍波らと合流させます。彼ら、面識があると思いきや初対面のようです。曹破延らはもと自分たちの上官で「戦神」と謳われた人物が龍波にペコペコしているのを見て衝撃を受けます。どうやら「狼衛」の面々より龍波の方が立場が上のようで、色々悲哀を感じてしまいます……

聞染は「狼衛」の宗教的指導者右刹とも面識があるというか、自分たちがやつらを動かしているみたいなことも口走っており、かなり「無敵の人」みがあるキャラクターになってきました。そんな彼女も龍波に恩人張小敬の命だけは助けてやって欲しいと懇願します。龍波に協力しているのも、長安が壊滅すれば張小敬の死刑どころではなくなるだろうという腹があるようです。しかし彼女を気にくわない魚腸に目を付けられてしまい、曹破延らが彼女を殺すように命じられた挙げ句、聞染は自分から井戸に飛び込むことに……

その頃靖安司では、「狼衛」の面々が口にする謎のキーワード「闕勒霍多」の正体は石油のことではないか、これを墨の原料に偽装して長安城内に持ち込んでいるのではないかと察知します。そして張小敬はその「闕勒霍多」の保管場所をかぎつけ、そこを守っていた曹破延と決戦。そこへ崔器率いる旅賁軍が突入。張小敬が「おいバカやめろ!」と止めるのも聞かず、「闕勒霍多」が保管されている家屋の扉を開けてしまい、なぜか地面に立てられていた燭台が倒れて導火線に火が付き……


大爆発だね!やったね!!\(^o^)/ 「闕勒霍多」は、正確には西域から持ち込まれた「伏火雷」という火薬を指し、石油は着火のための燃料ということのようです。そして焼け跡から聞染の服の切れ端を発見する張小敬。井戸に飛び込んでから曹破延が救い出していたようです。彼女の遺体が発見されていないことから、あるいはうまく逃げ延びたのかもしれませんが……?

一方、前回の混戦の折りに「狼衛」のアジトから聞染と勘違いさせられて王韞秀を誘拐してきてしまった熊火幇の面々ですが、大理寺評寺の元載によって人違いだと知らされます。張小敬に弱みを握られているらしい永王は、彼の力で何とか張小敬を告発できないかと持ちかけますが、元載は王韞秀の話から張小敬が「狼衛」のアジトで囚われた際に林九郎の邸宅の図面を描いて逃れようとしていたことを知り、この一件を利用して告発しようと思いつきます。

靖安司では、張小敬を抜擢したのは吏員の徐賓が「大案牘術」(山のような文書の中から必要な情報を分析する技能のことで、今で言うビッグデータのようなもの……らしいです)によって選抜したという触れ込みでしたが、実は徐賓が以前から張小敬とは飲み友達で、その才覚を惜しみ、「帯罪立功」によって死刑を赦免されることを期待して推薦したということが明らかとなり、波紋を呼び起こし…… というあたりで次回へ。ただいまの時刻は申正のあたり(午後5時ごろ)。夕刻が差し迫ってきました。
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『長安十二時辰』その2

2019年07月08日 | 中国歴史ドラマ
『長安十二時辰』第6~10話まで見ました。

張小敬は龍波の足取りをつかむべく、長安中の娼妓たちの元締め葛老と接触。


崑崙奴の身から地下城のボスに成り上がったという葛老。彼の支配下にある娼妓の瞳児が龍波と接触していたということで、彼女から情報を得ようとしますが、瞳児や葛老は張小敬に何やかんやと条件を突きつけてきます。

で、張小敬は葛老のもとに放っていた密偵を暴露し(情報収集のため長安中に密偵や協力者がいる模様)、更に自身の小指を詰めるという犠牲を払って龍波が出入りしているアジトらしき場所を知りますが、自分から子分となる密偵を相手側に売り渡したということで、これまで自分に従ってきた長安中の「不良人」たちの信望を失ってしまいます。


こちらが話題にのぼっている「狼衛」の協力者龍波。馴染みの間柄らしい女刺客の魚腸と合流し、材料を仕入れて某所にて爆薬の製造にせっせと励んでいます。

そして李必は政敵の林九郎に談判し、靖安司に詰めていた軍人たちを引き下がらせることに成功します。しかし事と次第によっては自分の官職と命を賭けてもいいと林九郎に請け負ってしまったたため、ピンチは脱したものの別の方向で崖っぷちの状態に…… ここらへんで李必らが情報収集したり張小敬が回想したりで、張小敬の過去に関する話が所々で挿入されます。塞外での激戦で生き残って長安に戻れた張小敬ですが、その時の戦友聞無忌が商売のショバ代をめぐって熊火幇といさかいとなって命を失い、その仇討ちのために熊火幇やその背後にいる自分の上司を殺害したというような事情があったようです。

そして聞無忌の唯一の身寄りとして残された娘の聞染は、この一件から長安という街そのものに強い憎しみを持つようになり、「狼衛」の協力者となった模様。何だかISの協力者となった若者の身の上とかぶる部分もありますが……

その聞染、大将軍王宗汜の娘である王韞秀を人質として「狼衛」のアジトに連れ込ませることに成功しますが、そこで瞳児から得た情報をもとにアジトの探りを入れていた張小敬とバッタリ再会。事情を察した張小敬はアジトに突入して囚われの身となりますが、張小敬を探していた熊火幇の面々が彼の身柄を奪おうとアジトに突撃、更に騒ぎを聞きつけた靖安司の兵隊が攻め入って混戦状態に。

隊長の崔器はこれで「狼衛」は壊滅したと李必に報告させますが、実は「狼衛」の首領曹破延らは聞染とともに逃亡しており…… というあたりで次回へ。ここらへんまでで未時七刻(午後4時前ぐらい)ですが、張小敬の過去の話なんかも入っている都合で時間の進行がだいぶ遅くなりましたね。

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『長安十二時辰』その1

2019年07月01日 | 中国歴史ドラマ
『延禧攻略』を見始めたタイミングでナンなのですが、『長安十二時辰』の配信が始まってしまったのでそちらに切り替えます。今回は第1~5話まで鑑賞。本作は『三国機密』と同じく馬伯庸原作で、中国時代劇版『24』とでも言うべき内容のようです。全25話予定ですが、全23話予定のセカンドシーズンの配信も準備中の模様。


時は唐の天保三載、上元節を翌日に控えた正月十四日の巳の刻。ということで毎回こんな感じで時刻表が表示されます。ただ、第1話が巳正(午前11時頃)から始まり、第5話の時点で午時七刻(午後2時前ぐらい)なので、綺麗に1話が1時間で対応しているというわけではありません。また「天保」というのは唐の年号「天宝」をもとにした架空の年号です。天保(=天宝)三載は西暦で744年、唐の玄宗の時代の話ですね。どういう事情か人名等、所々で実在の名称が架空のものに置き換えられています。

上元節を翌日に控えて長安では各坊の城門が解放され、街全体がはやお祭り気分ですが、長安の犯罪取り締まりを担う靖安司では、数年前に出征地で行方を絶った塞外民族による部隊「狼衛」の面々が隊商に扮して長安の西市に入り込んでいるという情報をキャッチ。


靖安司の司丞で実質的に靖安司の指揮官を担っている李必。TFBOYSの易烊千璽が演じています。太子李璵(後の肅宗)の側近で若きエリートです。彼は「狼衛」の摘発にあたって首都の混乱を最小限に抑えるため、死刑囚の張小敬に追跡させることとします。


李必とともに本作の主役となる張小敬。元「不良帥」(「不良人」すなわち岡っ引きの元締めとなる与力・同心に相当するようです)ということで、上司を斬殺したり、熊火幇のメンバー34人を殺害したりとおっかない前科がある模様。この張小敬が「狼衛」のメンバーと追跡劇を繰り広げる一方で、「狼衛」の首領曹破延らは足が付かないように自分と関わった人間を殺害したりと、着実に犠牲者を増やしていきます。そして張小敬は「狼衛」の目的が祭りに乗じて長安の街全体を火の海にすることにあると察知。


このタイミング゛、靖安司の主理で李必の保護者的役割の何執正が「聖人」こと玄宗皇帝から引退を命じられてしまいます。そして「狼衛」の陰謀阻止は李必には扱いきれないと、「聖人」、あるいは太子の政敵林九郎(=李林甫)の命を受けた軍人たちが靖安司の指揮権の返上を迫りますが、李必は一時辰(2時間)だけ待って欲しいと食い下がります。張小敬は「狼衛」のメンバー図格魯が持っていた長安輿図(長安の地図)が協力者の龍波という人物の手元に渡ったということで、彼の行方を追跡しようとますが……

というあたりまで。長安の街並みや人々の服飾、小物類など、大きな所から小さな所まで見応えのある映像になっています。話の方は今のところテロリストというか右巻きの方が好んで口にするスリーパーセル()による大規模テロをいかに防ぐかという展開なんですが、強いて挿入する必要がなさそうな太子と林九郎との政治的暗闘が背景として描かれているのが中国時代劇らしいなと。

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2019年6月に読んだ本

2019年07月01日 | 読書メーター
死体は誰のものか: 比較文化史の視点から (ちくま新書)死体は誰のものか: 比較文化史の視点から (ちくま新書)感想
日本ではなぜ死体は隠されるのか?死体は一体誰のものか?(すなわち死体の処理を決める権利は死者本人も含めて誰にあるのかということ)そうした疑問に、中国学者でありクリスチャンである著者が取り組んでいく。日本の事例や考え方を、漢族・チベット・ユダヤ教とキリスト教のそれと比較しつつ、私たちの「当たり前」は果たして当たり前なのか?その当たり前は昔から変わりなく受け継がれてきたものだったのか?ということを考えさせる。
読了日:06月01日 著者:上田 信

壱人両名: 江戸日本の知られざる二重身分 (NHK BOOKS)壱人両名: 江戸日本の知られざる二重身分 (NHK BOOKS)感想江戸時代、武士の籍だけでなく百姓・町人など庶人の籍も名跡・株と化していた。それを維持するために、合法・非合法の手段により一人の人間が複数の名跡をなのる「壱人両名」が常態となっていた。ここからどのような問題を生じたか、当時の秩序や身分観はどのようなものだったのかを、豊富な実例の紹介とともに論じる。みんなが普通にやっていることで、普段は見過ごされているが、何かの拍子で重大な罪状になり得るものと考えれば、著者が終章で仄めかしているように、現代にも通じる視点を提供するものとなるだろう。読了日:06月03日 著者:尾脇 秀和

中国S級B級論 ―発展途上と最先端が混在する国中国S級B級論 ―発展途上と最先端が混在する国感想中国のB級ニュースは自虐的な自国批判の報道から生まれてきた、タクシーのシェアライドが普及した中国だが、タクシー関連の規制は日本並みに強固だったとか、興味深いネタがそこかしこに盛り込まれている。B級が基礎になってのS級中国、現在もなおB級とS級が併存しているという議論が展開されるが、本書で触れられるシャオミの発展のしかたは日本の電機製品の発展の径路と同様であるようにも思う。日本やアメリカの発展と対比して、殊更に中国にだけB級にこだわる意義がどこまであるのかという疑問もやはり感じてしまうが…読了日:06月05日 著者:高口 康太,伊藤 亜聖,水彩画,山谷 剛史,田中 信彦

多数決を疑う――社会的選択理論とは何か (岩波新書)多数決を疑う――社会的選択理論とは何か (岩波新書)感想一人一票という形のシンプルな多数決は本当に民主的なのかという疑問から、ボルダルール、コンドルセ・ヤングの最尤法など、代替案となり得る投票・集約ルールや、それらのルールがワールドカップの予選トーナメントなど、意外な場゛応用されていることを紹介していく。いまある現実をあるべき「民主主義」の姿と混同する愚、そして「対案」となるルールを作り出すためのヒントを教えてくれる。読了日:06月07日 著者:坂井 豊貴

日本で生まれた中国国歌: 「義勇軍行進曲」の時代 (シリーズ日本の中の世界史)日本で生まれた中国国歌: 「義勇軍行進曲」の時代 (シリーズ日本の中の世界史)感想中国の国歌「義勇軍行進曲」の作曲者聶耳、国民党政権の文化政策や映画の統制を担った邵元冲、その妻張黙君と、日本留学経験のある三人を中心に描く近代日中関係史。日本が中国にとって近代社会や文化を学ぶ入り口の役割を担ったこと、日本が中国を下に置き、日本への反発が強まっても、なお日本への関心を持ち続けたこと、日本側からも少数ながら現実の中国を認識し、正当に評価しようとしたさまが描かれる。相互不信の空気の中で相互認識を求める動きがあったのは、最後に著者が示唆するように、確かに現在の日中関係とも重ねられるかもしれない。読了日:06月09日 著者:久保 亨

諡-天皇の呼び名 (単行本)諡-天皇の呼び名 (単行本)感想天皇の諡号制度とその変化について総覧。在所号・山陵号などの一見機械的に定められていたかのように思える追号についても、加後号や自ら追号を定める遺諡が行われるようになると、漢風諡号と同様に「評価」の要素が加わるようになったというのが面白い。「光」の付く号については、帰納的な分析だけでなく、実際にどういう意図で贈られたかを記述した文献があると議論がより確実になると思う。読了日:06月12日 著者:野村 朋弘

増補 中国「反日」の源流 (ちくま学芸文庫 (オ-29-1))増補 中国「反日」の源流 (ちくま学芸文庫 (オ-29-1))感想本論では明清と江戸時代以来の日中の社会・統治構造の違いが近代化の過程や相互理解に影響を及ぼしたこと、中国が近代化を志したタイミングで日本がそれに逆行する対応を行ったことが双方の関係を抜き差しならぬものに追い込んだことを概観する。補論では、中国が一体であると主張したがるのは逆に中国が多元的であることを示しており、反対に日本は一元的であるので、中国蔑視となると官民こぞってという状態になってしまうという意見が面白い。読了日:06月16日 著者:岡本 隆司

台湾総督府 (ちくま学芸文庫)台湾総督府 (ちくま学芸文庫)感想台湾総督府、あるいは朝鮮なども含めた日本の植民地統治について、西欧の「異化」とは違って同化政策が展開されたという違いはあるが、単一産品の生産様式を押しつけられたという点、現地人による議会ではなく「御用」的な評議会が設けられた点、高等教育や就職での差別的待遇など、やはり共通点も数多い。台湾人の「親日」は、国民学校などの日本人教師個人への敬愛の念によるもの、あるい戦後の国民党による統治のアンチテーゼであり、「日本の統治がよかったからだ」というのは曲解であるという著者の指摘は肝に銘じたい。読了日:06月18日 著者:黄 昭堂

ブルボン朝 フランス王朝史3 (講談社現代新書)ブルボン朝 フランス王朝史3 (講談社現代新書)感想前半の近世の君主たちは、リシュリュー、マザラン、あるいは文化的パトロンとしてのポンパドール夫人といった人材に恵まれ、君主の資質の割に幸運に恵まれていたような印象を受ける。後半の近代の君主たち、革命発生以来失策を重ね続けたルイ16世、時代錯誤の政治思想しか持ち合わせていなかったルイ18世とシャルル10世の兄弟3人の歩みは、フランスが王を必要としなくなる過程として見ることができる。『百科全書』に関連して出てくる「文化は拒むことができない―それこそはブルボン朝の宿命だった」という言葉が印象的。読了日:06月23日 著者:佐藤 賢一

松永久秀と下剋上:室町の身分秩序を覆す (中世から近世へ)松永久秀と下剋上:室町の身分秩序を覆す (中世から近世へ)感想下剋上を体現した梟雄として知られる松永久秀だが、その実像は三好長慶・義継に忠節を尽くした人物であり、よく知られる奈良の大仏の焼き討ちや平蜘蛛の釜も事実とは異なるとする。久秀自身とともに、三好長慶と足利義輝の(肯定的あるいは否定的)再評価の書ともなっている。儒者の清原枝賢、キリシタンの内藤如安と高山飛騨守・右近父子、柳生宗厳など、意外な人物と主従関係を持っていたのが興味深い。読了日:06月26日 著者:天野 忠幸

事大主義―日本・朝鮮・沖縄の「自虐と侮蔑」 (中公新書)事大主義―日本・朝鮮・沖縄の「自虐と侮蔑」 (中公新書)感想明治期の日本で朝鮮の政治状況を揶揄する言葉として生まれた「事大主義」がやがて日本、沖縄の状況を批判する言葉として用いられるようになり、更には戦後の朝鮮半島にも持ち込まれるといった変転を描く。本書は言葉がひとり歩きしていくとはどういうことかという良い見本となっている。最後の、現代日本では「事大主義」が「空気を読む」といった場合の「空気」という言葉に置き換えられ、未決の問題として残されているという指摘が重い。読了日:06月28日 著者:室井 康成
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