博客 金烏工房

中国史に関する書籍・映画・テレビ番組の感想などをつれづれに語るブログです。

『武神趙子龍』その10(完)

2016年06月28日 | 中国古典小説ドラマ
『武神趙子龍』第55~最終60話まで見ました。

劉備が西川に出征している間、荊州の防衛を任された子龍ですが、孫尚香が呉から連れてきた護衛隊長魏徳が民衆に横暴な振る舞いをしているのが問題に。で、子龍が裁判官として彼を裁くことになりますが、そこへ孫夫人の横槍が……と、なぜか『包青天』みたいな展開に (^_^;) 孫夫人はいち早く長沙に視察中の孔明に使者を送り、魏徳の赦免を勝ち取ります。こういう場合包青天だと使者が帰ってくる前に処刑してしまったりするのですが、最終的に魏徳を処刑するとはいえ、子龍はまだまだ甘いですねw

一方、西川では軍師として従軍した龐統が落鳳坡で戦死。劉璋の将張任の背後にいるのはもちろん高則です。龐統の戦死を承け、荊州から孔明が張飛・子龍を率いて出征し、劉備と合流。張任はなおも雒城に立て籠もって頑強に抵抗。そこで旅の商人に扮した宝月が子龍の愛馬「夜照玉」をそれと知らせずに張任に贈り、「夜照玉」に乗って出陣したところを落馬させるというセコい手で生け捕りに。「夜照玉」は伝説の馬として思わせぶりに登場するのですが、こういう使われ方をするとは(´Д`;)

ここでなぜか張任の副将雷銅が仇討ちとして劉備暗殺を図り、雷銅の娘が子龍に密告してそれを阻止するというオリジナルエピソードが挿入されます。これが呉懿の妹なら、彼女が呉夫人として劉備に嫁ぐきっかけになるということで、うまく話がつながったと思うのですが……

その後張魯の配下となったイケメン馬超が劉璋側の援軍として派遣されますが、旧知の公孫宝月の説得により劉備に帰順。妹馬玉柔(牛玉)をめぐる子龍とのわだかまりも、タイマン勝負で解消されます。

そして益州制圧後、夏侯淵の副将に収まった高則は子龍に最後の決戦に臨み、それぞれ因縁の青釭剣と倚天剣を手に刃を交え……

【総括】
ということで、オチは割と酷いです。高則との決闘を終えた子龍が、述懐ついでにさらっと今までのことを全否定してます (^_^;) まあ、最後は原典通り劉備が漢中王に即位して子龍らを五虎将に任命し、めでたしめでたしとなるのですが……

「トンデモ三国志」「お笑い三国志」などのありがたくない呼び名を頂戴している本作ですが、三国志要素にこだわりさえしなければ、言うほど悪い作品ではありません。これまでも触れたように、武侠的なアクションシーンのクオリティは意外に高いですし、動物などのCGのクオリティも于正版『神雕侠侶』や『花千骨』よりは上。話のテンポも良いです。ライト古装としては寧ろ上出来の部類だと思うんですよね。早速日本語版の買い手もついたということで、『呂布と貂蝉』のように三国志ファンからは非難囂々でしょうが、ライト古装の一定の達成を示した作品として、自信を持ってリリースして貰いたいと思います。


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『武神趙子龍』その9

2016年06月22日 | 中国古典小説ドラマ
『武神趙子龍』第49~54話まで見ました。

呉では劉備から荊州を奪取しようと、孫権の妹孫尚香との婚約をエサに劉備を呉に呼び寄せます。子龍・柳慎も護衛として呉に赴くことに。それで牛玉が孔明より助言を収めた三つの錦の袋を子龍に届けに行くという役回りです。

で、甘露寺で劉備と孫権兄妹の母呉国太との対面となるのですが、この呉国太、孫権の配下が密かに劉備を射殺しようとするのを見破り、酒杯を投げて矢を逸らしたり、外出して装飾品店で暴漢を蹴散らしたりと、実はカンフーマスターだったという設定になっております。尚香が武芸好きなのはなぜか?→おかんがカンフーマスターだからだろうという発想なのでしょうか (^_^;)


見た目も貫禄溢れる呉国太。

そして劉備は呉国太に気に入られ、尚香との結婚が認められます。ついでに子龍を追ってきた公孫宝月も呉国太の義女となり、尚香とは義理の姉妹に。一方、牛玉は子龍や宝月に馬騰の娘であることが知られてしまい、馬騰のスパイと誤解されたまま兄馬超に連れられて西涼に帰ることになります。

その後は例によって劉備の呉脱出、周瑜の死、龐統を副軍師に迎えて益州に出征と、あれよあれよという間に話が進んでいきます。その間に西涼ではドラマに出てこないまま馬騰がナレ死し、ともに曹操への仇討ちを誓ったはずの馬超と韓遂が仲違い。ここで曹操の偽手紙を仕立て上げ、韓遂に渡したのが高則という展開に。子龍との決戦に敗れた後、楽淵に命を助けられて改心したと思われた高則ですが、もちろん改心などしておらず、意味も無く楽淵を殺め、馬超と韓遂を離間させたのを手土産に曹操のもとに帰参。ラストがまたぞろ子龍VS高則だと思うと、いささかうんざりしてきますが……
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『武神趙子龍』その8

2016年06月15日 | 中国古典小説ドラマ
『武神趙子龍』第43~48話まで見ました。

曹操軍の追っ手から逃れつつ江夏へと向かう劉備一行。そんな中、子龍は一行からはぐれて負傷した糜夫人から阿斗を託され……



ということで、さすがに長坂坡は趙雲の見せ場とあって力が入ってますね。何となく三国無双風のアクションになっていますが。しかしこのドラマ、全60話の半分近くになるまで子龍がなかなか劉備どころか公孫瓚の配下にすらならず、最終回までに赤壁に辿り着くのかとやきもきしてましたが、気がつけばあっという間に長坂坡です。そして夏侯恩から伝説の剣こと因縁の青釭剣をゲット。それで戦闘が片付いたと思ったら、父親の死の真相を知りたい軽衣に真実を教えろと迫られますが、その軽衣も趙雲の口から真相が暴露されるのを阻止しようとした高則により誤殺。

そして竹林で剣を交える2人。このあたりも武侠的アクションも、竹林で一対一の対決というシチュエーションがベタながらもそれなりに見応えがあります。で、子龍は高則を打ち倒し、彼の手から倚天剣もゲット。ここで子龍に斬られて死んだかと思われた高則ですが、2人の戦いを見守っていた楽淵に助けられ……

その後は孔明が魯肅とともに呉に赴き、孫権や周瑜を説き伏せて曹操との開戦に誘導したり、周瑜が訪ねてきた旧友の蔣幹を騙したり、龐統が曹操に連環の計を検索したりと三国志ファンにはお馴染みのエピソードが展開され、赤壁の戦いを迎えます。三国志要素は極力端折り気味に進めてきた本作ですが、さすがにこのあたりはきっちり描いていきますね。しかし赤壁で曹操の水軍が炎上するシーンは『レッドクリフ』のパクリではないかという指摘が……

「少女時代ユナ出演の時代劇、「レッドクリフ」のワンシーン借用か?「制作費を節約しすぎ」」
http://www.recordchina.co.jp/a137058.html


炎上シーンだけでなく孔明が十万本の矢を集める場面もパクリのような気がしますがw しかし地元の山賊との死闘とか高則との決闘は力を入れて制作するのに対し、こういう所はコピペで済ますあたり、このドラマは何がやりたくて何がやりたくないのか方向性がはっきりしていて良いですね。問題は、三国志要素がやりたくない方に入っていることなんですけどねw

さて、その裏で我らが子龍は孔明に秘密のミッションを命じられ、柳慎とともに荊州南郡四郡のひとつ桂陽に潜入し、太守趙範の隠し銀を盗み出すことに。再びドラクエっぽい展開になってきました (^_^;) 

そこで唐突に軽衣の生き写し牛玉が登場。配役は軽衣と同じく少女時代のユナです。


子龍らには身元を隠していますが、実は馬超の妹という設定。

この牛玉と桂陽太守趙範の隠し銀をどうやって盗み出すかと画策する子龍ら。ひょっとして、孔明が曹操軍から矢を頂戴する話と、子龍らが趙範のもとから銀を頂戴する話が対になっているなどというアホな裏設定はありませんよね?

華容道がすっ飛ばされ、荊州南四郡の接収もあっという間に終わり、趙雲が桂陽太守趙範の兄嫁との結婚を拒絶したあたりで、趙範の黒幕が元夏侯傑の副将耿純であることが明らかに…… ということで再び三国志要素が適当に端折られるターンに入りました……
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『武神趙子龍』その7

2016年06月10日 | 中国古典小説ドラマ
『武神趙子龍』第37~42話まで見ました。

劉備のもとへと向かう前に、単身李全の墓参りをする趙雲。そこへ待ち伏せしていた夏侯傑に襲撃されるも、返り討ちに。命ばかりは助けたはずが、これまた隠れて様子を見ていた高則が密かにとどめを刺して趙雲のしわざと偽装し、軽衣に趙雲が父の仇と思わせようとします。

一方、袁紹を父親の仇と付け狙う宝月は、文醜に行く手を阻まれ、しかも「強敵」と書いて「とも」と呼ぶ関係となった趙雲との縁で一度ばかりはと命を助けられます。文醜がここまでクローズアップされる三国志物が過去にあったでしょうか…… まあ、この後関羽にあっさり斬殺されるんですけど (^_^;) そしてなぜか冀州で諜報活動っぽいことをしている馬超(イケメン)と遭遇。


演義や史実とは異なり、割と曲者っぽい頭脳派キャラの模様。

この本筋の裏で例によって曹操と劉備の「君と余だ」の話とか、関羽が劉備の2人の妻を護衛しつつ曹操の客人になる話等々が飛ばし気味に語られます。三国志ドラマとしては、本来はこちらがメインのストーリーになるはずなんですが w 本作では割と人格者の文醜がファイアーエムブレムの戦闘シーンみたいなノリで関羽に斬られるのが悲しい……

そして劉備のもとに向かう趙雲一行は、途中でまたぞろ地元の山賊的な集団が経営する黒酒場に入店したり、たまたま途中の村で出会った少年Aが子供時代の姜維だったりと色々ありましたが、汝南で劉備と再会し、遂にその臣下となります。で、劉備や関羽・張飛とともに荊州の劉表のもとに身を寄せることに。そこから超高速で三顧の礼と博望坡の戦いが展開されます。徐庶?そんな人はいません。


本作の孔明。ここまで造型が適当でオーラを感じない孔明は初めて見た気がします。文醜や馬超のキャラクター造型がそれなりに練られているのと対照的です。

さて、高則と元夏侯傑の副将耿純は曹操の配下に収まっておりましたが、趙雲が劉備のもとで順当に頭角を現しているのに焦りを感じ、我々も何か手柄を立てなければということに。 耿純「それならこちらは劉備暗殺で手柄を立てましょう」 高則「それだっ!( ・`ω・´)」 何ですかその適当な展開は(呆れ) しかしその高則と趙雲の武侠バトルは、超高速で済まされてしまった博望坡の戦いより見応えのあるものとなっています。三国志ドラマとしてそれでいいのでしょうかw

そしてふらりと現れた龐統から示唆を与えられ、父親を殺害したのは実は趙雲ではなく高則ではないかと疑い始める軽衣ですが……

ということで趙雲と地元の山賊こと虎牙山の山賊との戦いが結着したあたりから、急にバタバタと三国志キャラが登場するようになりました (^_^;)
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『武神趙子龍』その6

2016年06月04日 | 中国古典小説ドラマ
『武神趙子龍』第31~36話まで見ました。

公孫瓚の冷遇に嫌気がさしていたところに軽衣が使者としてやって来たということで、宝月の引き留めを振り切り、常山に戻って夏侯傑に仕えることにした趙雲。しかしそこへ趙雲を亡き者にしようと図る高則に雇われた、地元の山賊の親分こと杜厥が生き残った部下とともに常山に向かう趙雲一行を襲撃。このあたりのアクションシーンは(武侠的な意味で)意外にクオリティが高いです。三国志ファンの期待には絶対に応えてくれない本作ですが、武侠ファンとか韓流ファンの期待にはしっかり応えてくれますw


公孫瓚とその娘の宝月。この場面ではなぜか公孫瓚が園芸趣味を披露したりしてますが……

真定県に戻った高則は、李全の持つ兵法書『楽毅百戦術』上巻を奪い取ろうと、まずは無実の罪で娘の飛燕を捕らえ、娘の解放と引き替えに兵法書を手に入れようとしますが、李全もそれを察して一晩で偽の兵書をこしらえて高則を騙そうとします。このあたりの騙し合いというか駆け引きもなかなか面白いです。本当に三国志以外の要素はそこそこ見応えがあるんですよね。このドラマ。しかしその策も高則に見破られ、娘の飛燕の解放と逃亡には成功したものの、李全は高則に斬殺されることに……

一方、趙雲は夏侯傑に暖かく迎えられたものの、実は自分の持つ『楽毅百戦術』下巻を奪い取るのが目的と察知。夏侯府にやって来た高則と激闘のすえに常山から何とか仲間たちとともに脱出。彼を幽州に連れ戻そうとやって来た宝月や、真定から逃れてきた飛燕、そしてなぜか宝月にまとわりつく龐統と落ち合います。


かなり唐突に登場した龐統。見たまんま三枚目系の軍師キャラです (^_^;)

これからどうすべきかと迷う趙雲に対し、劉備に仕えるべきと示唆を与えます。宝月はなおも彼を幽州に連れ戻そうと必死ですが、龐統は「趙雲は天下の明君に仕えるべき知勇兼備の若武者。あなたの父上は果たして明君と言えますかな?」と、宝月に対して割と失礼なツッコミを入れてますw

で、こういった趙雲絡みの話の裏で、呂布が董卓を誅殺し、漂白の末に徐州の劉備のもとに身を寄せて太守の座を乗っ取り、最終的に部下に捕らえられて曹操のもとに突き出され、処刑されるまでの過程が超特急で描かれます。

趙雲絡みのオリジナルエピソード以外は、こんな具合にコーエーのシミュレーション『三国志』の歴史イベントみたいなノリで処理されていきます。このあたりは、それこそコーエーの『三国志』でオリジナル武将を10人ぐらい作って史実モードでプレーしてる感覚に近いような気がします。

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2016年5月に読んだ本

2016年06月01日 | 読書メーター
孔子 (角川ソフィア文庫)孔子 (角川ソフィア文庫)感想
著者による『論語』・儒教研究の成果を踏まえた孔子伝。個人的には、本旨からは外れるだろうが、三十歳以降の孔子がそれなりに裕福であったとする「孔子の生活」の項が面白かった。かねがね当時の諸子はどうやって生計を立てていたのかと疑問を持っていたが、その疑問の一部に答えうる内容となっている。
読了日:5月4日 著者:加地伸行

ある歴史家の生い立ち―古史弁自序 (岩波文庫)ある歴史家の生い立ち―古史弁自序 (岩波文庫)感想
疑古派や顧頡剛自身の古史学が形成された背景を確認しようと再読。康有為らの今文学や京劇を含めた民間伝承・民俗学への興味が大きな影響を与えていることを再確認したのはともかく、顧頡剛33歳の時の著作ということで、彼の「厨二」性が感じられたのが意外な発見だった。
読了日:5月6日 著者:顧頡剛

バイエルの謎: 日本文化になった教則本 (新潮文庫)バイエルの謎: 日本文化になった教則本 (新潮文庫)感想
本書ではまず子供用のピアノ教則本としてお馴染みのバイエルがお膝元ドイツはもちろん、日本でも「魔改造」が施されていくことを過程を追っているが、その部分は文献学・版本学的な面白さが味わえる。そして現地での取材により、非実在説すら唱えられていたバイエルの実在を確かめていく過程は、人文学の研究の手法や過程をそのまま描き出しており、その点でも興味深い。人文学的研究法のサンプルの一種として提示するには面白い題材ではないかと思った。
読了日:5月8日 著者:安田寛

興亡の世界史 オスマン帝国500年の平和 (講談社学術文庫)興亡の世界史 オスマン帝国500年の平和 (講談社学術文庫)感想
本書では19世紀以後のオスマン帝国を「近代オスマン帝国」として、オスマン帝国から分離したギリシア・エジプトなどと同じくその後継国家と位置づけ、それ以前の14世紀から18世紀末の500年間を主に扱う。通史的な部分よりも、帝国の官人たちの生活や近世の社会の様子の話の方を面白く読んだ。
読了日:5月15日 著者:林佳世子

台湾とは何か (ちくま新書)台湾とは何か (ちくま新書)感想
ひまわり運動・蔡英文新総統・尖閣&南沙諸島問題など、最近の台湾の政治・外交に関するトピックには一通り触れている。台湾と沖縄を重ね合わせる視点、国民党が対中協調姿勢を示すことで、却って中国が日台関係の構築に文句を言えなくなったこと、中国も「本土化・台湾化」が急速に進む台湾の変化を受け入れたうえで中台関係の再構築をはかっていること、台湾報道に関する朝日新聞の変化(積極的・肯定的に台湾に関する報道を行うようになったこと)など、注目すべき指摘が多い。
読了日:5月17日 著者:野嶋剛

第一次世界大戦史 - 諷刺画とともに見る指導者たち (中公新書)第一次世界大戦史 - 諷刺画とともに見る指導者たち (中公新書)感想
君主や軍・政の指導者の動きを中心に見る第一次世界大戦。前著『黄禍論と日本人』と比べて当時の諷刺画がいまいち生かされていない感じがするのは残念だが、第一次世界大戦へのアプローチとしては新鮮。ヴィルヘルム2世らドイツの指導者のその後と、ヒトラーとの関わりで締めるラストには一抹の哀愁を感じる。
読了日:5月19日 著者:飯倉章

大阪アースダイバー大阪アースダイバー感想
現在の大阪から、過去の(特に古代の)大阪のありようを幻視する試み。漫才がえべっさんにつながり、大阪のおばちゃんがアマテラスにつながりと、まさに「くらげなすただよえる」としか言いようがない内容だが、地理誌としてはこういうのもありかなと。ご多分に漏れず本書の著者も「維新」に関しては色々言いたいことがあるようだが、「維新」への批判は、やはり本書のように大阪の歴史や大阪人の心性から語られねばならないだろう。
読了日:5月20日 著者:中沢新一

中国近代の思想文化史 (岩波新書)中国近代の思想文化史 (岩波新書)感想
「革命思想」を含めた外国の思想をどのように受けれたかという問題やジェンダーに関する問題が中心となっているが、顧頡剛や聞一多といった「国学大師」の活動を時代の全体の流れの中でどう位置づけられているかが個人的な読みどころだった。胡適や傅斯年の例が目立つが、「新中国」成立の前後に台湾を含めて海外に亡命した文化人は存外少ないという指摘が意外。
読了日:5月24日 著者:坂元ひろ子

尼崎百物語 (のじぎく文庫)尼崎百物語 (のじぎく文庫)感想
尼崎市制百周年を記念して、同市に関わる百の昔話を収録。「百物語」とあるが、怪談だけでなく、中国大返しの際に明智光秀の兵に追われた秀吉が寺に逃げ込んで味噌すり坊主に扮した話や、人々のために領主に逆らって命を落とした義民に関する伝承など、普通の昔話や史伝に類するものも取り扱っている。こうした阪神間の地域ごとの歴史や物語を掘り起こすことが、大阪とのつながりとともに地域の独自性を浮き彫りにすることになり、「維新」に対抗する根拠にもなっていくだろう。
読了日:5月27日 著者:

和僑  農民、やくざ、風俗嬢。中国の夕闇に住む日本人 (角川文庫)和僑 農民、やくざ、風俗嬢。中国の夕闇に住む日本人 (角川文庫)感想
雲南省の少数民族の村で暮らすVIPPER、上海でリアル魯智深のような生活を送るやくざ、はたまた上海で現地人と交わらず理想的な日本のサラリーマン社会を営む駐在員一家等々いろんなタイプの中国在住日本人が紹介されているが、共通点はみんな心の奥底で、中国で過去の日本で存在した理想的な日本人らしいくらしを追求していること、そしてそのような生活は中国でも急速に成り立たなくなっているということで、本書は中国版『逝きし世の面影』ではないかと思い当たった。
読了日:5月30日 著者:安田峰俊

ミャンマーの柳生一族 (集英社文庫)ミャンマーの柳生一族 (集英社文庫)感想
「バーレ清盛」のようなネーミングセンスは本作でも健在。今回は軍事政権下のミャンマーに「江戸幕府」を見出す。一見不可能に思える歴史の追体験も、場所と発想次第でいくらでも可能になるという見本みたいな本かもしれない。幕末の日本人が開国に対応できた理由を、各民族が入り乱れてくらすミャンマーの社会から見出す過程が面白い。
読了日:5月30日 著者:高野秀行

大学とは何か (岩波新書)大学とは何か (岩波新書)感想
中世ヨーロッパにおける大学の誕生から、明治日本での大学の設置、そして現代日本の「大学改革」までを総ざらい。18世紀末までに西欧で大学は一旦「死」を迎え、ナポレオン戦争を経たドイツで、大学が新しい形で甦ったこと、学生運動が華やかなりし頃の日本の大学で読書会や自主講義の開催など、中世ヨーロッパの頃の大学の原点に立ち返るような動きがあったと評価できるといった指摘が面白い。ただ、今後大学がどうなるべきかという展望が、著者にももうひとつつかめていないような印象を受けたが…
読了日:5月30日 著者:吉見俊哉

中国文化 55のキーワード中国文化 55のキーワード感想
『テーマで読み解く中国の文化』とコンセプトが似通っており、出版時期・出版社も一緒だが、こちらは長白山天池の怪獣やUFOの目撃証言を取り上げたり、「芸術写真」や「広場舞」をネタにしたりと、より通俗的な文化を取り上げている。『テーマで読み解く~』の方がメインカルチャーを中心に紹介しているので、二つ合わせ読めば中国文化の裏表両面を理解できるということになるだろう。
読了日:5月31日 著者:
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