こ と の 端

散文でロジックを
環境 経済 エネルギー 電気 教育 などの "E" に関するちょっと気になったこと

身 中 の 虫

2009-09-05 12:04:18 | Weblog
誤った政策を続けてきたことによって

国民が失ったものは

取り戻せない

だが

富を失わせていたそのメカニズムの実態を

政府と国民は承知しておかなければならない

起きていたことの経過の意味を知らなければ

これからも同じ失敗を繰り返し

貧困化するプロセスを永遠に続けるようになる


この国がもっていた経済活性を奪っていったのは

ドル資本と呼ばれる一群の行為

主に土地や企業買収などの工作の結果であった

その方法は

市場でだぶついているドルを回収し

それを売って円を買う

というドル安政策に則っていた

ドル余り現象を解消しながら

海外資産を増やすビジネスを世界中で繰り広げ

為替介入を誘発して

米国債を石油消費国に買わせてきた


あらゆる国がドル資本の跳梁跋扈に苦しんでいるのだが

先進諸国の国民が豊かであるうちは

貧困化する事実をそれと察することができない

最もその被害を大きく受けたのはタイであった

外資の流入を政府が急遽禁止したことによって

富の国外漏出を阻止した実績をもつ最初の国となった


当然ながらドル資本が一斉に引き揚げる対抗措置をとったのだが

それが却ってタイの経済を早く回復させることになった

外資がでていけば ドルを買い戻さなければならない

外貨の方がドルよりも下がっていたのであれば

ドルによる再投資の波がおきたとしても

それで獲得した収益を還流させることは困難だ

資本を回収するためには

ドルが相対的に安くなっていなければならない

このため海外からやってきたドル資本は国外へは出られず

ローカル市場に流動性の厚みを残し

それをより力強いものへと復活させることができたのだった


買収された土地の値段は

ドル資本が引き揚げる際売り急ぐと

必然的に値下がりする

このため

不動産市場を活性化させる効果や

企業買収だけではなく

その反対である企業売却が優勢となり

資産価値は若干低下しはするものの

購買力が上がることによって

適度なインフレ圧力が生じ

健全な経済成長を促すようになっていった


発行し過ぎて余らせたドルを手段として

ドル資本という勢力に

外貨を大量に手に入れさせる戦術のことを

ドル安政策というのである


この政策のもつ目的の意味が分かっていなければ

際限なく外貨準備高を増やす展開へと陥るのだ

濫発したドルが市場に滞留した状態のまま

そこに残されていると

ドルの需要がおきても

その市場にダブついているドルと交換されるだけとなり

ドルそのものの新規発行はできない

基軸通貨の発行事業で生計を立てている米政府にとって

ドルの追加発行を阻害するものはすべて

不利益の原因となる


ドルの需要を高めるために原油相場を

高値へとどれほど誘導していったとしても

ドルの発行権を拡大する効果を誘発できなければ

米政府が得るメリットはゼロなのだ

ドルを常に追加発行することができる状況こそが

アメリカにだけ富を積み上げさせる結果をもたらすのである

このような効果をもつドル安政策を続けてきたことによって

アメリカは軍備を拡張するための資本を

そこに集約することができたのだった


米政府はドルを新規に発行し続ける目的で

既発のドルを金利を上げて速やかに回収し

世界中から富をかき集めつつ

その外貨を用いて

当該国の市場でドル資本に利益を上げさせることによって

その収益が生む税収で潤っていたのだった


ドルを外国に売りつけるだけで

高くなった外貨で

ローカル市場で得てき収益を

より効率よく

ドルへと戻すことができたのだ

ドルの価値が利益回収の段階で相対的に下がっているのなら

少ない外貨でより多くのドルを手に入れることができる


ドルを押しつけられた国の政府と中央銀行とが
 
為替対策として高くなった自国通貨を売って

価値の下がったドルを有利な条件で買えるよう

米政府とドル資本とが共謀して

誘導してきたという一連の経過が

ドル安政策に更なる合理性を与えているのだが

それは見掛け上の利益であるに過ぎなかった


ドルの価値が下がっている間

ドル建ての在外資産は

アメリカから本国へ戻ることができない

損失が確定することになるだけだからだ

しかもドルの資産価値はドル安政策で次第に逓減していく

このため

債権国の保有資産は目減りする一方となり

資産価値は年々軽くなっていく

ドル建ての債券を処分することができないのは

損失を確定させることができないのと

長期金利を急騰させるという結果になるからだ


ドル資本がやってきた国の政府は

一見有利な条件で買ったはずの大量のドルを持て余し

安全確実な方法で運用する必要に迫られる

このため

米国債を好んで買うようになっていったのだった


国が所有するドル建ての債券や

ドル預金

金塊 などを総称して

外貨準備高と呼ぶ


これらはドル資本と呼ばれる勢力が

市場で余っているドルを回収し

投資する先の国がもっている固有の資産を

買収する目的で

再利用してきたその結果を表す指標でもあったのだ

ドルの通貨価値は

このようにしてファンダメンタルズの結果として

表向き一定の水準を保つよう

安定的に維持されていたのである

これが国際経済から公平性を奪っていた


ドル高外貨安という状態は

ドル資本が計上した外貨建ての収益が

大量にその国から流出した

ということを示す結果を伝えていたのである

ドル安外貨高という状態は

余ったドルの大量流入ということを意味していた

外貨準備高の累増とは 経過の推移を表すための指標であった


大量のドルが濫発されていたにも関わらず

原油相場を決定する機関であるWTIで

原油価格が高騰を続けていたブッシュ政権の間

ドルの需要は果てしなく高められていたのだった

サブプライムローンの破綻は

その経過を形成する氷山の一角

それが崩落しただけのことに過ぎなかった


日本がもつ外貨準備高は

一昨年の段階に於いて

邦貨換算で100兆円を超える規模に達していた


日本はこの外貨準備高を取り崩すことが

永遠にできない

何故なら

一旦回避したはずの円高が

政府日銀の手によって

たちまち再現されてしまうことになるからである

また

ドル建ての長期債を市場で大量に売却しようとすれば

その利率は高くならざるを得ない

売り急ぐ場合なら

長期金利の水準を急伸させるという結果さえ生むのだ


これは長期借入金で成り立っている企業の収益を

直接圧縮することでもあるため

法人が得るはずの収益を急速に低下させてしまうことになる

その企業の株価は従って急落し

市場経済システム全体に急ブレーキがかけられる

そのような展開を辿った事実を実際にひき起したのは

ほかならぬ日本の橋本元総理本人であった


日銀が為替市場に介入するための資本は

財務省が発行した短期証券である

毎年財務省は借り換えを行わなければならない立場なのだ

ドル安政策が続けられている間を通じて

日銀は円高を回避するために

市場介入を行なっていた

そのきっかけは ドル安政策のきっかけとなった

あのプラザ合意であった

85年秋のこと


回収される惧れのないドル資産がその結果アメリカに積み残され

外貨準備高は恒常的に増加するようになっていった

中国ではイラク戦争がはじまったころから

この経過が顕著になっていき

今では世界一だった日本を急追して抜き去り

今年その日本に倍の差をつけるまでに巨大化した

中国が軍事力を大幅に増強することができたのは

ドル資本によって売りつけられたドルで米国債を買わずに

軍備を増強するためにそれを使うようになったからなのだ

この間の経緯を知れば

アメリカが中国の軍事力をドルという通貨を用いて強化した

ということができるのだ  

まことに愚かな結末であった 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする