「介護もトライアスロンも楽しんで」

90代両親を介護の日々ですが、合間に走って泳いで、バイクにも乗って年1回のトライアスロン大会参加を目標に楽しんでいます。

美女鬼蜘蛛のお話

2015年02月12日 22時11分07秒 | 美女鬼蜘蛛


1999年夏から2001年10月までの間この蜘蛛の観察をする機会があり、この3年間は私にとってとても楽しく興奮した日々でした。その後は残念ながら長い間この蜘蛛を目にすることはありませんが、この蜘蛛のことが今でも忘れられません。当時の記録をこのブログに転記します。



庭の不思議な蜘蛛さん

1999年夏、庭木に一つの蜘蛛の巣を見つけました。それは均等な輪の間隔を保った芸術品とも言える、それはそれは綺麗な蜘蛛の巣でした。その蜘蛛の巣を見ていたら、たまたま小雨が降ってきたのです。すると、その蜘蛛は自分で張った巣を端からくるくると畳んで行くではありませんか!そして、すべてを丸め終わると何と!葉っぱに作ってある自分のお家に隠れてしまいました。うわぁー!何だ何だ!何だったんだ今のは!!とびっくり仰天。畳み終わるまでわずか10秒か15秒の出来事でした。久しぶりに心臓がドキドキ、感動ものでした。   

それからと言うもの毎日毎日、もう一度またあの早業を見たいものだと、何度も庭に出ては雨が降ってこないかなーと楽しみにしていたのです。葉っぱの中に隠れていた蜘蛛は、しかし、1週間後に突如として姿を消してしまったのでした。私は思いっきりがっかりしてしまい、でも、どっか別の葉っぱに移っただけじゃないだろーかと辺りの葉っぱをくまなく探したのは言うまでもありません。しかし、残念なことにその蜘蛛を二度と見ることはありませんでした。

それから丁度一年後2000年夏、8月19日(土曜日)です。同じ庭木の葉にあの蜘蛛の家を見つけたのです。そして蜘蛛の巣もその葉っぱの直ぐ横に作ってあります。ずっと忘れることなどできなかったあの蜘蛛の家を見つけたのです。すぐさまハシゴを持ってきてそれに乗り、葉っぱの家を覗いて見ました。ん?居ないぞ?と思った時です、その葉っぱの下にもう一つこれはでかいなと言える別の家を見つけました。今回はその蜘蛛の巣、蜘蛛の家を写真に収めることができましたので公開いたします。 



クロガネモチの木に張った蜘蛛の巣。200年8月20日午後1時撮影
3/4周だけの巣(きれ網と言うのだそうだ)、左上部分には横糸が張られていない。
縦糸は横糸に比べて細い。 



その後の観察で網を張るのは夜間に限られ、その網は獲物が掛かる度に大きく破損してしまう。獲物を完食後の夜にまた新しい網を張っている。破損した網も食っていると思われますが、素人では確認のしようがありません。



普段蜘蛛が隠れている家。葉っぱの左右両端から蜘蛛の糸で屋根を作り、葉っぱを筒状にしている。その屋根の内側に腹を上に向けて張りついている蜘蛛が中央部に透けて見える。


 
この屋根は雨が降っても水を弾き、葉の上端から進入した雨は葉を伝って下端から落ちるので蜘蛛は濡れる心配がない。

家を移動する場合はやはり夜間に新たな葉に家をつくる。古いものが破損していなくても新たな家をつくっている。これは新規に網を張った位置に関係しているからだろう。  


ハエをゲットし巣に持ち帰ったところに遭遇。

 

蜘蛛の体色(裏側)は葉と同じで保護色。昨年一度しか見ていないが、去年より体長が倍くらいに大きくなっている。とは言ってもこの蜘蛛が去年見たのと同じかどうかは確認のしようがないが。このハエは約30分で完食(?)してしまった。正確には30分後に覗いた時には何も掴んでいなかったのです。ひょっとしたら、一部を地上に落としてしまったのかも知れないし、他の昆虫などに獲物を横取りされたのかも知れない。ただし、食いきれない獲物の一部を取っておく様なことはしていなかった。すくなくとも蜘蛛の家の中には保存されていない。


昼間の蜘蛛は獲物が掛からない限り外に出てこないので全身の撮影は出来なかった。夜行性だろうと思い、21日夜覗くとたまたま外に出てきていた。腹部が異常にでかい。昨日食ったハエのせい?かもしれない。去年見たものより倍以上でかい様な気がする。体長(足は除く)は約1cm。背中の中央に大きな斑点がある様に思ったのだが、今回の撮影では横の帯と小さな斑点が見える。 

8月21日午後9時撮影



2000年9月12日
この日は秋雨前線と台風17号の影響で各地で大雨の被害が出た。当然蜘蛛は切れ網を仕舞いこんで葉の家で雨宿り。夜、雨が止んだので新たな切れ網を作っているかなと思い、表に出て蜘蛛を見に行く。

すると、網の基幹糸に2匹の蜘蛛が居るではないか!一匹はすぐにいつも見ている蜘蛛と分かったが、もう一匹はかなり小さい蜘蛛なのでどんな蜘蛛なのか判断がつかない。外は暗く光を当てるとすぐに蜘蛛は巣に逃げこんでしまうので玄関の外灯だけの薄明かりの中でしばらく様子を見ていた。すると、小さい方の蜘蛛が上方から基幹糸を伝わって大きい蜘蛛の元へササッと近寄り、ほんの一瞬接触するとまたササッと30~40cm離れるということを何度も繰り返している。まったく別の種類の蜘蛛がちょっかいを出しているのかなと不思議に思いながらも、部屋からデジタルカメラを取り出し再び外へ。







まだ2匹は同じことを繰り返している。
脚立をセットし、2匹が接近したところを狙って適当にシャッターを切る。適当というのは外は暗闇なのでデジタルカメラの画面には被写体が写し出されていないからだ。レンズの角度と方向を適当に蜘蛛たちに向けてシャッターを切るしかないのです。デジタルカメラは写したその場ですぐ見れるのでその結果から角度と方向を修正できるがこれが結構難しいのです。
5枚中3枚の撮影に成功。ピントがずれているのは勘弁してください。


私は蜘蛛さんの正体が是非知りたくなりました。しかし、私のホームページを覗いてくれる奇特な人は少ないでしょうし、その少数の人の中で蜘蛛さんの正体を知っている人となると多分それはゼロであろう、と私は勝手に判断を下しました。そこで私はその道の専門家にメールを出して教えを乞うという反則技にでました。 

9月22日
まず、インターネットの検索で「蜘蛛」と入力し、出てきたものが「くも」 せきね みきおというホームページでした。これは多分?当然?専門家であろうと考え、私のホームページを見てくれるよう、そして蜘蛛さんが何者なのか教えてくださいとメールを出したのです。すると翌日に折り返し関根様より返事のメールが入っていました。関根様からの蜘蛛さんについての情報を掲載いたします。 

・・・(前文省略)
さて、本題のクモの名前ですが、腹部前方の黒い斑紋、後方の4つ並んだ黒斑、脚が黄褐色、そして切れ網を張り、網の一端にある木の葉の表面を丸めて、テント状に糸を張って住居を作り、その中にひそむ事、網の中心と住居とは1本の糸「呼糸」(こし、と呼ばれる)によりつながっている事、以上により判明いたしました。

ビジョオニグモ Araneus mitificus、漢字では美女鬼蜘蛛、です。
名前の通り、とっても綺麗なクモですね。 ビジョオニグモは、アオオニグモより成体の出現は遅めです。
成体の出現期間は、8~11月。 産卵期は、10~11月。 白色で楕円形の1.5cmほどの「卵のう」を広葉樹の葉に生みつけ、葉の一方をまるめて包みこむ。 卵はそのままの状態で越冬し、翌年3~4月に発生が始まり、3月下旬から5月上旬にかけて孵化する。 1卵のう中の卵数は100~450個で、個体
と地域でかなり異なる。
体長は、メス8~10mm、オス5~6mm。
本州・四国・九州・沖縄に分布。
以上は、新海 栄一・高野 伸二「クモ基本・50」1987、森林書房より抜粋しての引用です。(残念ながら、この本は絶版)

この写真の小さい方はオスです。

とっても素晴らしい写真で感激です!!
交接しようとオスが、メスにトライしてるところだと考えられます。

「雨が降ってくると切れ網をたたむ」事、僕の調べた範囲ではこの行動に言及した書物はありませんでした。
網をたたむクモでは、オニグモ・ヤマシロオニグモ・サツマノミダマシ・ワキグロサツマノミダマシ・コゲチャオニグモ・トリノフンダマシ類では知られていて夕方張った網に同位元素を与えて、翌夕張った網から同位元素が検出されたことにより、食うという証明がされています。
最近出た本で、大崎茂芳 『クモの糸のミステリー』 中公新書,2000年,\680が参考になると思います。

ビジョオニグモの降雨時の網たたみ行動は、大変に面白い貴重な発見だと思います。
僕の裏山にも、ビジョオニグモがいますので、気をつけてみたいと思います。
・・・・(以下省略)

という訳で「美女鬼蜘蛛」という名前のメス、当然美人な、と小さな方がオスということが判明いたしました。
関根さん本当にありがとうございました。この場を使って改めてお礼申し上げます。 
 
今後は次のような事柄も期待できるのではないでしょうか?
1) 降雨時の網たたみ行動をビデオ撮影
2) 蜘蛛さんの産卵の観察・写真撮影
3) 卵のうの観察と撮影
4) 孵化時の観察と撮影
5) オスの住居探索
などなど



10月8日

お目当てである降雨時の網たたみは、昨年(1999年)初めて美女鬼蜘蛛を見た時に偶然見ることができましたが、その後はなかなか現場を押さえることが出来ません。

ある時は、家族4人で出掛けようとした時にちょうど小雨が降ってきましたが、蜘蛛さんは直ぐには網をたたんでくれませんでした。10分程待っていましたが、彼女は様子を覗っているだけです。出掛けなければならないので、その時は諦めて家族で家を後にしました。2時間ほどで帰宅すると彼女の網はきれいさっぱりたたんでありました。 

またある時は、私と次男(当時2歳)だけで留守番をしている時にパラパラと雨が降ってきました。 これは絶好のチャンスとばかり、子供を抱っこして今か今かと待っていました。 10分くらい待っていた時です。 何かくさいな~と思ったので、子供のお尻に手をやると、うんこをしているではありませんか!次男は肌が弱いので、そのままにしていると直ぐにお尻が真っ赤かになってしまいます。女房殿に怒られるのもいやなので、大急ぎで部屋に戻って、おむつを換えました。そして、また子供を抱っこして外に飛び出したのです。ありゃ~~ たたんである~~~~!!! ほんのちょっとの差でまたもや見ることが出来ませんでした。
これがホンとの「クッソ~!」でした。

休みの日に、家にいて、何も用事がなく、そしてちょうど雨が降ってくるという状況はとても稀なことです。
しかし、しかし、本日私は家族と一緒にこの目でしかと見ることができたのです。
 
今日も朝からなんか雨が降りそうだな~という予感はしていました。そして、雨が降ってきたのです。女房も長男(当時5歳)も日頃の私の望みを知っているので、一緒に外に出て蜘蛛さんを見上げます。私もいつもの様に次男を抱っこして、玄関の軒先から蜘蛛さんを覗きます。待つこと約20分以上、もう結構な雨の量です。その時です。遂に彼女が住居から体を出しました。そして、自分の網をたたみ始めたのです。それは7~8秒ぐらいのできごとに感じました。1年2ヶ月ぶりに見ることができた美女鬼蜘蛛の降雨時のあみたたみ行動です。女房殿も蜘蛛には興味がないのですが、この時ばかりは「わー!すごいすごい!!」と喜んでくれました。

去年の個体はほんのパラパラ程度、雨が落ちてき始めて本当に直ぐに網たたみを行いましたが、今年の個体は今までの観察からすると、雨が降り出してから20~30分しないとたたまない様です。 これは個体ごとによってたたみ始めるまでの時間にばらつきがあると言うことなんでしょう。

残念ながらビデオ撮影は行いませんでした。 この目で直にしっかりと見たいと思ったからです。
次にいつ見る機会に恵まれるのかは分かりませんが、その時はビデオに収めたいと考えています。  






コメント (2)
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