永子の窓

趣味の世界

源氏物語を読んできて(142)

2008年08月27日 | Weblog
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【関屋(せきや】の巻  その(3)

源氏は、
「すこし心おきて年頃は思しけれど、色にも出だし給はず。昔のやうにこそあらねど、なほ親しき家人の内には数へ給ひけり」
――源氏は今まで少し不満に思っておられましたが、顔色にもお出しになりませんでした。昔ほどではありませんが、親しいお出入りの一人には数えておいででした――

 常陸の介の子息の紀伊守(きのかみ)は、今は河内守(かわちのかみ)になっております。
その弟の右近の将監(うこんのぞう)という人は、あの折りに、源氏の身内のように思われて免官になり、源氏について須磨に下りましたのを、源氏はお心に留められて、この度はお引き立てになりましたのを、世におもねった人々は、自分たちの行いを後悔することが多いのでした。

 源氏は、先の右衛門の佐をお召しになって、空蝉へお文をお遣わしになります。
佐は、
「今は思し忘れぬべきことを、心長くもおはするかな、と思ひ居たり」
――今はもう姉をお忘れになられた筈と思っていましたが、気を長く覚えておいでのことだ、と思うのでした――

お文には、
あの日は、尽きぬご縁を感じました。あなたはどうお思いでしたか。関守のような顔をして、あなたの傍に居る常陸介が、実に羨ましくも癪にさわりましたよ。ご無沙汰は
長いものの、あなたをいつも思っておりましたので、お逢いした今は、やはり思いが募ります。浮気がましいとお思いですか。

佐は、空蝉に申します。
 お返事はなさいませ。女の身としては、仰せに従ったとしても、非難されませんでしょう。

◆写真:関屋の風景

ではまた。