黒猫 とのべい の冒険

身近な出来事や感じたことを登載してみました。

痛くてやりきれない

2013年08月22日 10時35分41秒 | ファンタジー

 首が回らなくなって十日ほど経ったころ、右臀部の上部の筋肉が痛み出した。その痛みの震源が、股関節付近なのか尾てい骨の横なのか、自分でも判別がつかない。座っているとき以外、鈍痛と突き刺す痛みが交互に襲ってくる。会社の近くの整骨院では、冷房に当たって筋肉が硬くなったのがそもそもの首痛と腰痛の原因だろう、腰の痛みは首を回す代わりに捻ったりしたのではという診断。そう言えば、八月上旬、二日間の長距離運転をしたとき、右腰に負担がかかったことを思い出した。
「でも運転した直後から痛み出したわけじゃないんですよ」
「年老いて硬くなった筋は反応が鈍いし、痛みが出たら、そう簡単には治らないと思います」
 整骨院へ通い、湿布し、温泉にも行き、お盆には家でぐうたら暮らし、治療に余念はないのだが、一向に快復するきざしがない。今でも歩くと痛みが増幅し、とくに通勤途中の酷熱の中、痛みに耐えかねて吹き出す汗には閉口している。還暦を過ぎたばかりでこんな状態なら、次の六十年を一巡するなんて、できっこないじゃないか。
 そんな風に人生を恨みながら歩いていたとき、ふいに、四十年以上前のフォーククルセイダーズのヒット曲「悲しくてやりきれない」の一節が頭に浮かんだ。わかるところだけ、二回ほど声を出して歌ってみた。するとこの痛みがやりきれないのも、燃えたぎる痛みが明日も続くのも当たり前じゃないかという、楽な気持ちになった。
 ヴェイユの言うように、自身の中に痛みを感じることがなければ、他者の痛みを分かち合うなんてできないとすれば、私が味わっているこの痛みによって、本来の私があぶり出され、次の段階へ変化することにつながるのだろうと思う。(2013.8.22)
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