黒猫 とのべい の冒険

身近な出来事や感じたことを登載してみました。

グノーのアヴェマリア

2014年09月10日 14時37分16秒 | ファンタジー


 先日、ラジオを聞き流していたとき、たまたまバッハの「平均律クラヴィーア曲集の前奏曲第一番ハ長調」という曲の一部分が流れた。クラヴィーアとは鍵盤楽器全般を指す言葉。そのころはピアノの登場する前で、オルガンやチェンバロなどの学習用?に作られたという。
 単調だが耳障りの良い曲で、どこかで聞き覚えがあるような、ないような、じれったい気持ちで鑑賞していると、解説者がもったいぶった調子で次のような意味の話をした。
「フランスの作曲家シャルル・グノーは目立った活躍をした作曲家とは言えない。だが、このバッハの前奏曲第一番ハ長調の曲を聴き、その奥に、あの「アヴェマリア」の旋律を発見したことは歴史に残る大功績だ」
 要するに、アヴェマリアは正真正銘、バッハの手になるのであって、グノーは旋律の発見者だということ。この放送をグノーが聞いていたら、どんなコメントを付けたのだろう。
 一方、作曲はグノーによるもので、バッハのクラヴィーア曲集を伴奏にしただけ、という違う解釈もある。しかし、いずれも、グノー一人ではこの曲は生まれなかったという点で一致する。過去の積み重ねなくして現在を語れないとは誰もが認めるところだが、私としては、バッハの曲にインスパイアされたグノー独自の作曲なのではと思う。
 なぜそう思うか。グノーは、このメロディーを紡ぎ出してから、書き換えを繰り返したという。ゆっくりと時間をかけて生ものを熟成させるように、彼の生涯かけてこの曲を深化させたのだ。(2014.9.10)
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