黒猫 とのべい の冒険

身近な出来事や感じたことを登載してみました。

アウトドア嫌い(11)夜店

2016年09月27日 14時24分56秒 | ファンタジー

 先日の日曜日、早めの夕食を終えるころ、窓の外はかなり薄暗くなっていた。カーテンを閉めようとして、なにげなく窓を開けると、屋外の様子がどうも変。ピーヒョロ・ピーピーヒョロロと、トンビの啼き声のような笛の音が、風に乗ってときどき聞こえてくる。その日は近所の神社の祭りの最終日だと妻が言う。顔など洗って寝る準備を開始するまでには、だいぶ時間がある。それに外は日中の暖気が残っていて、上着がなくても大丈夫そう。
 人ごみが得意でない出不精な者にとって、時間がたっぷりあってもこんな気持ちにはなかなかならないものだ。思い切って、にぎやかななところにでも行ってみるか、ということで、妻と二人で数十年ぶりに、神社の境内から少しはずれた路地に出ている露店をのぞきに行くことにした。
 駅前の小さな商店街に足を踏み入れると、縦横の小路にぎっしり屋台が出ていた。狭い通路は、予想よりはるかに大勢の人々でごった返し、騒音が渦巻いている。いつもは暇そうにしている小さなイタリア料理店も満席。若い人たちは流行の衣装で身を引き締め、高すぎるハイヒールの女性などは危うく転びそうだ。昔と違い、屋台の中で働く若い女性の姿が目立っていた。彼女たちも各地の祭りを求めて旅しているのだろうか。
 金魚すくい、お好み焼きなどの焼き物、ホットドッグ、たい焼き、なかでもクロワッサンたい焼きという変わり種があった。カラフルなチョコバナナには目を奪われた。顔になったようなバナナの細工物は、ひとつひとつ手作りしているのだろうか。スマートボールは昔通りの台を使って健在。飴細工、おめん、こんぺいとう、射的、型抜きは数が少なくなった。
 見かけなかったものは、懐かしい天津甘栗、綿飴、輪投げ、ラムネ、ヨーヨーつりなど。とうとう綿飴に中身がないと、子どもにも見破られた?
 これだけの人が繰り出しているのに、徘徊する年寄りは数少ない。小さい子どもがいない老人たちは、夜店の板台にあふれんばかりの品物を目の前にして、その中からほしいものひとつ選べない。ただおし黙って自分の目や耳をヒクヒクさせるだけだ。
 孤独な老人とは、露天商にとって、いたずらに砂ぼこりを立てるだけの迷惑な客? コミュ二ティーに何も貢献できない用のない客?
 眠れもしないのに寝床でじっと目をつぶり、夜が明けるのを心待ちするのはやめよう、それよりも、体力が続く限り夜更かしして、そこにいるだけで多少とも場を盛り上げられる年寄りになろう、そして、有り金はたいて少しだけ使おう、と最近思うようにしている。(2016.9.27)
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