本を読むには時間と金がかかるので、新聞、雑誌などに書評が載っていれば、くまなく目を通すことにしている。そんな習慣を何十年も続けているからなのか、本を一冊読み通すのに難渋するようになった。でも、書評読みを止める気にはならない。書評とはさっと読むだけで本を読んだ気になれるのだから、それも一つの読書法だと割り切っている。
みすず書房の月刊誌「みすず」1・2月合併号は、前年に発刊された内外の書籍を中心に、読書アンケートを特集している。数年前にも「みすず」を取り寄せたが、そのときは途中挫折。なにせ、約140名もの各界のつわものたちが、一人5冊前後の書籍と読後感想を披露するのだ。
取り上げられた書籍の一例をあげると、
加藤尚武氏推薦「大洪水の前にーマルクスと惑星の物質代謝」(斎藤幸平著)
成田隆一氏ほか推薦「柳田國男全自序集」(中公クラシックス)
野田正彰氏ほか推薦「ボランティアとファシズムー自発性と社会貢献の近現代史」(池田浩士著)
宮地尚子氏推薦「波」(ソナーリ・デラニヤガラ著)
など、600冊あまりの本が3段組みの紙面に紹介されている。タイトルを読むだけでも疲れてくるが、解説が短くもっと内容を知りたいと思わせるところが心憎い。今年はたっぷり時間があるので、書評読みの楽しみが長続きする。改めて、これだけの数の地味な本が出ているとは出版業界の気骨を感じる。ユメミテも売れることを夢見て辛抱強く営業を続けなくては。(2020.4.7)