コロナウイルスの脅威ばかりか、こんなときでも経済至上主義を唱える日和見為政者たちに接していると、気持ちがどんどん落ち込んでいきそうになるので、思い切って難しい本に挑戦しようと、「仮面の道」(クロード・レヴィ・ストロース著、ちくま学芸文庫)を手に取った。
読む前に、ページをパラパラめくってみると、見たことがあるような仮面の写真が次々出てくる。目が飛び出した仮面は、確か中国大陸の長江流域からも出土しているはず。甲骨文の「臣」の原型かと思うようなやつだ。
ところで、仮面とは英語ならマスク。またもや今話題のマスクか、とげんなりしつつ、マスクにあたる日本語を調べてみた。
①仮面とは、正体・本心を隠すみせかけのもの。宗教儀礼に使うもの。
②覆面とは、顔を覆うもの。姓名などを明かさない、知られないようにするもの。
③面とは、顔。顔に似せて作ったもの。顔につけるもの。
これらの名称を付けた単語はいっぱいある。たとえば、月光仮面、鉄仮面、仮面夫婦、能面や覆面作家とかタイガーマスクとか、あげればきりがないけれど、なんといっても今一番有名なのは、時の総理の名を冠したアベノ仮面、いやマスクだ。ネコだけがサイズぴったりと喜んでいるらしい。
不思議なことに、マスクはなぜか日本語で表記されない。確かに、仮面でも覆面でもお面でもなんだかしっくり来ない。外気内気遮断用耳掛け付き布地では舌をかんでしまいそう。
そこで私が眠りを絶って考案した名称を紹介しよう。日本古来からの使用方法を尊重して、顔につける布の意味で、「お面布」あるいは「面布」はどうだろうか。読み方は、「おめんぷ」「めんぷ」。意味も文法もゴロもまさにぴったり。
日本語の名前がついたら、まがい物は恥ずかしくて世の中に出てこられないだろうな。(2020.4.27)