はなみたいに、スマホもガラケーも嫌いなヒトがここに一人いる。
父さんは、携帯なんていらない、と言っていたのに、母さんのスマホを見るなり、うらやましがってスマホに替えた。
ところが、今回の通信遮断が起きると、
「こんな騒動はイヤだ、静かな環境で心ゆくまでアナログ文化を楽しみたい、電子機器なんてひとつもいらない」と、せっかく手にしたスマホを返納するぞと息まく。
一体全体、父さんはどうしたいの? アナログ生活ってどんなものなの?
父さんはこう言った。
「ここから車で10分くらい走ったら人家は消え、鬱蒼とした森林になる。そこにあるらしいひなびた小さな小屋に、ダンボールに詰め込めるだけいっぱいの本を持っていく」
それらの本を読み終えるまで半年くらいかかりそうなのだが、この間、はなより生活能力がない父さんはどうやって生活するつもり?
はなも母さんも、いっしょに行かないんだよ、ぜったい。(2022.7.3)